コレは記録、遠い世界。どこかの誰かの、記憶のカケラ。
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彼らは何かに祈っていた。
祈る様に座り込む無数の人々。
中心に居る何かは、その全身を覆う様な黒いモヤを、人々に分け与えていた。
黒いモヤを纏った人は、剣を持つ人々と争い、次々と地へ沈んで行く。
そうしてモヤは溜まっていき、空や地が破れる様に崩れ去った。
荒れ果てた土地を前にして。
人々は手を取り合い、豊かな自然を取り戻して行った。
そうして蘇った土地には、小さな祭壇が描かれている。
──────
「ここまでが、我が受け継ぐ魔族の歴史だ」
おそらく、ダンジョンコアの手間。
多くの人間が、休憩地点としてしか認識していないその場所で、壁の一部を指でなぞりながら『魔族』はそう語った。
劣化が激しく、ところどころ崩れたその壁画は、読み取ることが難しいものも少なくないが。話を聞いてから見れば、確かにそう描かれているのが理解できる。
魔王と言うべき、力を持った存在が、戦う力を求めた人々に力を与え、『人間』と『魔族』の戦いが始まった。
その戦いで『魔力』は一箇所に沈澱し、その土地では天変地異とも言うべき現象が起こり始めた。
そこで危機感をもった人々が協力し、土地を興し、その地の魔力を循環させる『宝珠』を安置した。
……非常にあり得る話だし、流れとしても理にかなっているのだが。少し違和感を感じる。
そんな小さな引っかかりに唸る私を他所に、彼女は話を続ける。
「そして、今回。マオ嬢をお呼びしたのは、他でもない。貴女にはこの地の『魔力』を『継承』していただきたい」
「いのるのー?」
「うむ、見たところ、貴女は今、『魔力』が枯渇状態にあるご様子。全てとは言いませんが、出来るだけ『継承』していただく事で体も楽になるかと」
「たすかるー!」「……馬鹿! 危険すぎます!」
元気の良い幼子の声にハッと視線を上げ、会話に割り込む。聞くだけでも無茶のある作戦だ。
この土地一帯の『魔力』を一人の『魔族』に吸収させるなど、正気ではない。
ポーションを一気飲みするのとは違うのだ、たとえ『魔族』であっても『魔力変異』を起こしても不思議ではない。
「いや、ソレがそうでも無いのだ。お前、自分の『魔術』がどう言うものか忘れてないか?」
「私の魔術……? いえ、私のは『魔導』と言って……」
私の術。『魔導』は『魔術』とは異なる体系の技術だ。
『魔力』を増幅し、思うがままに生み出すのが『魔術』だとすれば、『魔導』はその逆。
『魔力』を消費し、定められた形に再現するのが『魔導』だ。
そんな力で、『継承』を再現したとすれば……。
「そうか……むしろ魔力が際限なく消費されていく?」
「うむ。さらに言えば、お前の匙加減で『魔力』を残す量も調整できる」
ま、上手くいけばだがな? と、ウインクを決める『魔族』の言葉に納得し、思わず肩の力が抜ける。
あまりにも、都合の良い話だ。
偶然迷った砂漠の先で、塔の現状を知る魔族に出会い、魔力異常を知り。
運良く、魔力を消費する者と、魔力が不足してる者がおり。
さらにその場所には、魔力を扱うに十分すぎる触媒『宝珠』が存在している。
まるでお膳立てされているかの様な現状だが、だからこそ。
むしろ、信用できる。
「いいでしょう。やりますよ」
頷き、祭壇の間に足を踏み入れた私は、成功を確信し、作業に取り掛かるのだった。