コレは記録、遠い世界。どこかの誰かの、記憶のカケラ。
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○○年、雨の月
『花の都ー花の魔族討伐記録』
記録:魔導士
○未確認であった強力な魔族に対する報告
・対象は既に討伐済み。
・出現地点は『花の都』、花の月に行われた『花祭り』の会場。その一画に存在するステージを覆うように存在しているのを発見。
・舞う様に襲いくる人型の花を燃やし尽くしながら前進し、討滅に成功した。
追記
・翌日、古民家の傍に存在した花を媒体に復活。再度焼却した後。再発生の危険をなくすべく、街中の全ての花を焼却した。
・街中に散らばる遺骨を家族に届けるため、支援を申請する。
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「結局……リリーちゃんは見つからなかったね」
「あぁ……生存者もゼロ、不気味に踊る亡骸の中にもあの子はいなかった」
「見たことのない魔物もいたし……考えたくは無いけど食べられ……。んん、まだ決まったわけじゃない。探すよ!」
極めて冷静に、情報の整理を続ける若者二人を無視して、一人。戦いの跡地に訪れる。
そこは小さな空き地だった。
灰と残骸に埋もれ、規則的に並べられた煉瓦がかろうじて、そこに庭があった事を主張している。そんな空き地。
近くには無骨なコンクリート張りの建造物が佇み、寂しげに傾いている。
「『解錠』」
男の言葉に傾いた箱が鈍く光り、軋んだ音と共にその壁の一部を地中に隠していく。
そうして現れたのは、青い花畑。
異様に甘ったるい匂いが充満するその空間は、まるで霧の中の様に視界が遮られ、その深淵を観測させる事は決してない。
ただ、気味の悪い粘着質な音と共に、異様な何かが蠢いているのを感じさせるだけ。
「『障壁』」
半透明の壁が遮り、その霧ごと這いずり回る物を封じ込める。
ソレは芋虫であるかもしれないし、植物の蔦であるかもしれない。あるいは物質ですらない液状の何かかもしれない。
ソレがなんであれ、関係は……ない。
「『収束』『循環』『熱量変換』『固定』……『圧縮』、『圧縮』。『圧縮』!」
ただ、無表情の男の前に、圧倒的な『熱』が発生する。今にも爆発しそうなそれは、何もない空間に留まり、過剰なエネルギーを光へと変換している。
壁の向こうでは、ただ、『何か』が蠢くのみ。それを決して認識せず、ただ目を離す事はしないまま……
「『解放』。喰らい尽くせ『大焼却』」
その力を前方に解放した。
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「もー! なんの音かと思ったじゃん! 魔物が出たなら言ってよ!」
「そうだぞ、コイツはともかく、俺なら壁役くらいはやれる。」
ワイワイガヤガヤと騒がしい若者たちが、独断で動いた私を責めるように問い詰める。
気楽なものだ…だが、それでいい。
旅も続けて早くも2年、魔王との決戦も控えている。悲劇など慣れて次の戦いに備えてなくてはならない。
二人に曖昧な笑顔で返した私は、一拍置いて言葉を返す。
「問題ありません、そんなことより弔いの続きを始めましょう。これで安全な筈ですから」
敵が一匹でいる事など、滅多にない。
そう経験則で感じ取っているが故に、訝しげに眉を顰めた少女とは対象的に、無骨な戦士はニッと笑って肩を組んでくる。
「ふーん?」
「まぁ、一応警戒しながら進めようぜ。大人な魔導士さんも、威力を間違える時くらいあらぁ」
きっと何も分かってない筈なのに、ただ、笑い飛ばしてくれる戦士に感謝しながら。
私達は空っぽの棺を前に手を合わせたのだった。