想起「サーカスのチラシ」
コレは記録、遠い世界。どこかの誰かの、記憶のカケラ。
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さぁさ! よってラッシー! 見てラッシー!
人呼んで『道化の魔族』ラッシー曲芸団が本日上陸!
古びた食器も、ボロボロの人形も!
このラッシーの手にかかれば、愉快な仲間に大変身!
友達いっぱい! 仲間もいっぱい!
大事な大事な家族達と、
是非最高のひと時を過ごしてくれ!!
──────
「おばか! 街中でそれしたら危ないって言ったでしょ!」
「イヒヒ。サーセン!」
「サーセンじゃないよぉ!」
ガチャガチャ、バリバリ、トコトコ、ゴーゴー。
騒がしい街中から身を隠す様に、俺たち『勇者』パーティと、『道化の魔族』は路地裏で話し込んでいた。
表では、空を飛んでいた鳥と、体積を犠牲に加速する風船が速度の限界競う様に飛び。
籠から転がり落ちた果物に足が生えたかと思うとあちこちに散らばるのを必死の形相で店主が駆け出し。
転んで泣いている少女の頭を、母親の手元から飛び降りた熊の人形が優しく撫で付けている。
「デモ、呼んだのはユーシャさんじゃナイデスカー?」
「そーだけど! 広場で安全にやるって言ってたじゃん!」
頭を抱える『勇者』とは逆にキョトンとした顔で話を聞く『道化師』。
『忍』は状況を把握するべく街中に一度出て、スッと静かに戻ってくる。
「んー……広場。キケンな物は動いて無さそう」
アサハの言う通り、空中を舞う物に刃物は見受けられなければ、バウンドするボールや踊り出した人形達に、広場の喧騒は徐々に楽しげな物へと変わっていった。
「ワタクシ悪くありませんネ〜?」
「肯定。悪くはない、むしろ最高のエンターテイナー」
ニヤニヤと口を開く『道化師』に、どこかズレた反応を返す『忍』。思わず天を仰ぐ『勇者』の肩に手を置いた俺は、いい笑顔で声をかけた。
「うん、(コイツを呼んだ)お前が悪い」
「なんでさー!!」と言う少女の甲高い声と共に俺たちの休日はスタートしたのだった。
──────
商店街から少し離れた、とある屋敷の一室でシワがれた怒声が響き渡る。
「探せぇ! 何としても見つけろォ!」
室内は面白おかしく変形を続ける書類達が、縦横無尽に飛び回り、いかにも堅気ではない風貌の男達に構うことなく動き回っていた。
大小折々の鍵も逃げ惑っており錚々たる現場が生まれていた。
ソレも仕方ない事なのだ。
室内と対照的に静かさを感じさせる邸内では、一才の家具が置かれておらず、聞こえるのは衰弱した何者かの吐息のみ。
術の対象となるものが、あまりにも少なく、その分盛んに動き回るのも当然の話。
それが、『魔力』を豊富に含む、『契約書』の類であれば動くなと言う方が無理な話だ。
『契約書』は魔族に古くから伝わる魔道具の一種であり、その込められた『魔力』によって、時に人の行動をも縛り付けることすらある『魔族』の道具だ。
むしろ、人間の街にいながら『魔族』との親和性が高い逸品を使っている方が悪いとさえ言えた。
そうしてバラバラと動き回っていた紙束は、偶然。術者が近くに来たことで、笑う様に開閉を始めた窓を出て風に乗り。
『幸運』にも。歩いていた少女の顔に張り付く形で……
ソレに縛り付けられた何者かを救う事になるのだ。