「おや?」
「あっドリーム、どうしたの?今日はお休みでしょ」
「まぁなんと言いますか、貴方に会いたいなと思ったので……それより、机のソレは?」
休日、何となく話がしたいと思いトレーナー室に行くと案の定我がコンパスたるトレーナーはそこに居た。想定外なのは机に見覚えある機械や、親しみある匂いの豆等がある。
「あぁコレ?」
「ソレ以外無いでしょう、珈琲豆という事はコーヒーメーカーですか?」
「うん、ドリーム珈琲よく飲むでしょ?美味しい珈琲振る舞ったら喜んで貰えるかなって思ってさ」
「ほう、では私は楽しみにしながら待ってましょうかね……早速頂いても?」
「え?あーうん、ビギナーだから美味しさは保証できないけどソレでいいならね」
「はい、貴方が私の為に振舞ってくれる……それだけでその珈琲は価値ある物になります」
「光栄だね、じゃあまずは豆を挽くからソファにでも腰掛けてよ」
私は彼の導きの元ソファに座り、持ってきていた本を開きながら話し掛ける。
「それにしても貴方が珈琲をいれられたとは、ビギナーと言ってましたが独学で?」
「最初はそうしようと思ってたけど、なんかこうしっくりこなくてね。珈琲好きの方に教えて貰ってる所だよ」
「あら、そんな御友人がいらっしゃったのですね。今度お伺いしてみたいものです」
「お伺いってそんな大仰な、ドリームも知ってるヒトだよ」
「私が知ってるヒト?」
はて、妹やかの貴婦人のトレーナーは紅茶を嗜んでると聞きはしたが、珈琲は無かったはず。私が知っていて、珈琲を嗜んでそうな〝トレーナー〟だと──
「マンハッタンカフェだよ」
「は?」
「彼女、噂には聞いてたけど大の珈琲好きらしくてね。ここにあるモノも彼女薦めで同じメーカーの物にしたんだよ」
「………」
私は、想定外の──ウマ娘の名が〝彼〟から出てきた事により私はどうやら頭に血が昇ったらしい。なんも聞こえない。
「それで、ドリーム?どうしッ!」
私は彼が座る椅子を無理やり引き、首を掴み椅子に座らせたまま壁に叩きつける。
「うぐっドリーム、何を」
首は絞めない、あくまで問答をする為の処置であるから強く掴むに留める。
「私は貴方に言いましたよね、愛しのコンパス。私に貴方は絶対必要不可欠、貴方が私の傍から離れる事は決してあってはならない。だから他のウマ娘とは必要以上に交友を深めないで下さいと」
「ドリーム、コレは」
「えぇ、えぇ、分かっております。貴方は本当に先程言った通りサプライズで私を喜ばしたかったんでしょう、ですがそこから私以外のウマ娘と発展しないとも限らない。ソレが感情というものです、ソレが恋というものです。何時以下なる時でも芽生え、熱を持たせてしまうモノなのです。愛しのコンパス、貴方の職柄ウマ娘との接触が必要不可欠なのは理解しています。だからこそ必要な時は私に連絡してくださいと、その場合は私の都合を無視して貴方に合わせると、そう話していた筈ですよね?」
「ご、ごめん……実力が上がってから話をしようと思ってたんだ、僕が軽薄だった許して欲しい」
「いえ、こちらこそ急に手を上げてすみません。お体は平気ですか?」
彼が本心から謝罪し、懸念している事柄は無いと判断した私は彼に謝罪し背中をさする。
「うん、平気だよ。それよりも珈琲作り再開していい?さっきのお詫びって訳じゃないけど、美味しく作れるように気持ちをうんと込めるよ」
「えぇ、お願いします」
私はソファに戻るとカバンからメモ帳とペンを持ち出し、書き込む。
【マンハッタンカフェ】
トレーナーとの間柄:珈琲の先生、○月✕日現在ではそれ以上の情報無し