旅する狼達よ、鋼鉄の城にて吠えろ(シャングリラ・フロンティア×ソードアート・オンライン)   作:しらすの番人

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もう八月突入とかマ?


この層だけの船

 

「お爺さん、戻ったぞー」

 

「まだいらっしゃいますかー?」

 

「なんじゃ、随分と早かったのう」

 

現在時刻は12時手前。8時くらいにこの四層に到達、9時を過ぎたくらいにはこの「凄腕船大工のお爺さん」という名のクエストを受けたので、約三時間程でこのイカダが屋根についいている建物に戻ってきたのだ。

 

俺達は10時30分程に一体目の巨大熊「マグナテリウム」を倒したのだが、もし材料が足らず戻って来ることになるのは面倒くさかったので、二体目の巨大熊も捜索・討伐することになった。俺は三層フロアボス戦であまり暴れることが出来なかったため、熊にほぼずっと張り付いて攻撃してたら俺一人でも皮や爪などの素材をそれなりにゲットすることができた。これらが船造りに必要になるのかは分からないが、熊は結構強かったので素材は売れば良い金額になってくれるだろう。売るまでは結構ストレージが圧迫されてしまうが。

 

「⋯脂は取れたのか?」

 

「もちろんです!」

 

俺達はそれぞれドロップした「幻の熊脂」を実体化させる。SAOの世界の脂は皆そうなのかそれとも巨大熊の脂だけがそうなのか、脂は壺の中に入った状態で実体化した。俺的には多分前者で、脂を使い切るかすると壺ごとなくなるのではないかと思う。

 

「本当にヌシのものを持ってくるとはな⋯それも短時間でこの量⋯⋯大したものじゃ」

 

「じゃが言ったろ?水運ギルドの奴らに材料は全部取られたんじゃ。じゃから船を造るには他の材料も必要なんじゃ。次はそうじゃな⋯⋯木じゃな、南東の森に生える丈夫な木を──」

 

「よっしゃやっぱ熊に木こりさせて正解だったな!お前ら木出せ!」

 

そうして俺達は「銘木の心材」を実体化させる。お爺さんは話を遮られたことを気にすることもなく、ただあんぐりと口を開けている。

 

「何と──ハハ!これはすごい!」

 

お爺さんはあんぐりした顔から一転し笑い始めた。クエストログも進行している。SAOのNPCってこんなに感情豊かだったっけ??

 

「さて、また材料を言う前に確認じゃ、お主らはどんな船を作りたい?」

 

「どんな船か⋯⋯」

 

「別に簡単な条件言ってくれるだけでええ。何人乗りだとかこういう船にしたいとかざっくりしたやつでもな。」

 

「とりあえず八人以上のやつだよね」

 

「余裕を持って十人以上乗れるやつ造って貰った方が良いんじゃないかな?スペースも広く使えるし」

 

「見た目は派手な方が良い、絶対」

 

「ドン!と迫力のある船が良いです!」

 

「⋯⋯ふむ」

 

さしものお爺さんも一斉にごちゃごちゃ言われ考えている。これを一気に聞き取れるのは聖徳太子くらいのものだろう。

 

「大きさは十人以上乗れる大型船、見た目は壁などを高くして派手に、強そうに見せる。これでどうだ?」

 

お爺さんすげぇ!ちゃんと聞き取ってやがった!

 

「そんな感じかなぁ」

 

「良いと思います!」

 

「まぁその分、材料はきっちり取らせて貰うけどな。」

 

「それはもちろんですとも」

 

「よし分かった、それじゃあ次に──」

 

そうしてお爺さんはその後、脂と木材の他に、釘になる「火炎熊の爪」、座席に張る「火炎熊の毛皮」、更にカッコいい船にするためといい、「炎獣の衝角」と「火炎熊の牙」を要求された。

 

「よし、これで材料は揃ったな。ではお主ら、作りたい船の仕様を決めてくれ」

 

その次の瞬間、俺達全員に船の小さい模型が浮かんだシステムウィンドウが表示される。ここから船の色や名前、細かい形を決定していくようだ。

 

「俺こういうのパパッと決めちゃいたいんだよなぁ」

 

「あー分かる、アバターは考えるけどこういうのはちょっとねぇ」

 

「僕もあんまり得意じゃないかな⋯⋯」

 

「じゃあ細かいのは女子組でやるから、男子組は名前でも考えてくれる?」

 

こういうのに限ってはペンシルゴンとルストはめっちゃ細かい。かたや自分の顔や体を自分で作り、かたやカッコいいものだと大体のやつには夢中になるやつだ。レイ氏や秋津茜もこだわる所はこだわるのは分かるが、京ティメットだけはあまりこういうのを細かく決めるイメージがない。

 

「名前、名前かぁ」

 

「うーん、猪突猛進とか」

 

「案を出すのは良いことだけど流石に却下」

 

「「魔王の船(サタン・シップ)」とか」

 

「ペンシルゴン限定じゃねぇか!」

 

「獅子奮迅」

 

「モルドは四字熟語しか出せないのか??」

 

「エクスカベーター」

 

「言葉はカッコいいけどなんで機械??」

 

「「じゃあサンラクも出してよ」」

 

「うぐ」

 

確かにツッコミばかりで俺は何ひとつ案をだしていないな。うーん、渓谷を進む船ってことで「キャニオンシップ」、熊の素材を使ってるから「メイド・オブ・ベアー」⋯⋯どれもしっくりこないな。⋯⋯あ、これなら。

 

「俺達のギルドは八人だから、「八芒星」って書いて「オクタグラム」はどうだ?」

 

「⋯⋯ふーん」

 

「⋯⋯サンラク」

 

これはダメか?案外いい名前だと思ったんだが。

 

「「採用!!」」

 

二人から即OKサインが出た。

 

 

「ふむ、名前は「八芒星(オクタグラム)」か⋯⋯良い名前じゃ。ほれ、これがお主らの仲間が決めた船の見た目じゃ」

 

「「「なにこれ」」」

 

見ると全体的に黒と紫が混ざったような色で、所々灰色と白が混ざっている。船の先頭部分には先程お爺さんに渡した衝角が三つ突き出ていて、その下に牙がずらりと並べられていた。見た目が完全に悪役海賊とかが乗ってそうなものになっている。こんな禍々しい船に「八芒星(オクタグラム)」なんてカッコいい名前を与えなければならないのか。いや船自体の見た目は別にいいんだが名前とマッチしなさすぎじゃないだろうか。

 

八芒星(オクタグラム)⋯良い名前ですね!!」

 

「やるじゃん男子組」

 

「この船にピッタリな名前だね」

 

どこがだよ、とツッコミたくなる。ペンシルゴン・秋津茜・京ティメット・ルストは満足げな顔をしているのに対し、レイ氏はこちらを物悲しそうな表情で見ている。どうやらレイ氏だけがまともだったが抑えきれなかったのだろう。

 

「じゃあわしは今から船を造るために工房にこもる。完成したら教えてやるから、大人しく待っとれ」

 

「あ、ここら周辺にいるなら外に出てても構わんぞ」

 

そう言うとお爺さんは奥の道具部屋へと消えていき、ガコンという音と共に建物全体にしばしの間振動が響いた。どうやら中にあったのであろうエレベーターらしきもので地下の工房に行ったようだ。

 

「どうします?これから」

 

「どうするも何もねぇ、待つしかないんじゃない?」

 

「お爺さんの言い方的に離れすぎるともしかしたらクエスト進まなくなっちゃうのかも」

 

「あ、じゃあ私あの砂浜で遊びたいです!多分あそこならクエストの範囲外になりませんよね?」

 

「あー確かに、多分ここからなら30メートルくらいしか離れてないね」

 

「やることもないしそれでいいんじゃないか?」

 

ということで俺達はレイ氏の裁縫スキルで水着を作って貰い、お爺さんが船を造るまでの時間を遊んで待つことにした。ゲームとは言え水辺で遊ぶのなんていつぶりだっただろうか。モルドを砂に埋めたり、近くのショップで売っていたバレーバールもどきでバレーをしていたらあっという間に時間が過ぎていった。

 

 

「ほれ、これじゃ」

 

現在時刻は15時30分手前。俺達は船が出来たと呼びに来てくれたお爺さんと共に工房にいる。約三時間かけてお爺さんが造ってくれた船は、完璧に設計図通りであり、お爺さんの技量の高さを窺わせた。

 

「すごいです!それに大きい!ありがとうございます、お爺さん!!」

 

「⋯わしも久しぶりに満足のいく船造りが出来て楽しかったわい。」

 

お爺さんは満足げに背伸びをしながらそう言う。随分大変な作業だったのだろう。お爺さんが着ている作業服は油などで随分汚れてしまっている。

 

「じゃが、わしがこんなになってまで一生懸命造った船を沈めたら承知せんぞ?」

 

「逆にどんなことしたらこの船沈められるんだよ⋯⋯」

 

船の全体は八メートル程で、横幅も二メートルはある。十人というより二十人乗れるサイズの超巨大船だ。これは相当な力を加えないとまず転覆や破壊はされないだろう。

 

「大丈夫です!私達は絶対にこの船は壊しませんし、壊させません!!」

 

「...それでは、今からこの船はお主らのものじゃ。今水門を開けてやる、どこへなりとも漕ぎ出すがよかろう」

 

「「「「「「「「え?漕ぐ?」」」」」」」」

 

「あ言い忘れとったわ。この船に船頭なぞいない、お主ら自身で櫂を握り、漕ぐんじゃ」

 

そう言うとお爺さんは少し離れて人数分の櫂を船に放り込んだ。

 

「櫂は人数分やる。動かし方は自分達の体で学べ。そら、乗った乗った!!」

 

お爺さんはそう言うと水門を開けた。その影響で水が流れ出し、浮いていた俺達の「八芒星(オクタグラム)」も少しずつ動き始めた。

 

「置いてかれる!?」

 

「まぁお爺さんありがとな!この船は大事に使わせて貰うぜ!!」

 

「お爺さんバイバイ〜」

 

「お主ら、達者でな!!」

 

そうどこか嬉しそうな顔で俺達を見送ってくれるお爺さん。俺達は船に乗り込み、お爺さんに感謝と分かれを告げ、どこを目指すわけでもなく櫂を取って漕ぎ出した。

 




エルフ関連行けなかった⋯
次から第四層のエルフ戦争開幕です。

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