旅する狼達よ、鋼鉄の城にて吠えろ(シャングリラ・フロンティア×ソードアート・オンライン) 作:しらすの番人
「よし、道が合ってるならここの先が灰エルフ達の拠点のはずだな」
「灰エルフってフォールンエルフのこと?もう略語作ったのサンラク」
「フォールンエルフだと長いし、他が森と黒エルフなのに一つだけカタカナは違和感あるだろ」
「まぁ確かに」
「呼びやすいし僕も灰エルフで呼ぼうかな」
「⋯この目の前にいるとするならば少し慎重に行動しないとですね」
「この人数だと流石に多いし、探索班と待機・観察班に分けるべきかな?」
ガリウス達も含めた俺達十一人は洞窟内に突入し、ゆっくりゆっくりと進んだ。我らが「
そして現在、約三十メートル程前方には小さな船着き場と、地面を進んだ先に鉄製の扉が見えていた。ここに来る途中で、森エルフ達の拠点へ続いているのだろう道との分岐がいくつかあったが、ついて来てくれているガリウス達の案内があったので、この扉の先が灰エルフ達の拠点と見てまず間違いない。
「あ、皆さん!先にある空間みたいな所から何か話し声みたいなのが聞こえてきます!」
よしならそんなデカい声じゃなくて声量を小さくして言ってくれ秋津茜。
俺達操縦組は櫂の角度を浅くし、船の進むスピードを遅くする。
「結構大人数がいるみたいです、流石にこの距離からだと何を話しているのかは聞こえませんけど」
秋津茜は「忍者っぽいから」という理由で、「聞き耳」スキルをスロットにセットしている。何でも耳に集中して話を聞いたり、壁の向こうからの声とかを聞こうと頑張っていたらいつの間にか取れるようになっていたとか。なので秋津茜はスキルを取っていない俺達より少し遠くの声も聞き取れるようになっている。
ちなみにエルフ族は元々耳が良いそうで、秋津茜と同じくらいの時にガリウス達も声が聞こえる、と報告をしてくれていた。
船着き場付近になり、聞き耳スキルを取っていない俺達も向こうから聞こえる複数の声を聞くことが出来た。
「うーん、人族とか、我らはとか、所々単語は聞こえてくるんですけど会話全部は聞き取れないですね⋯熟練度がまだ低いのと、この壁は鉄製なので防音性能が高いみたいです」
「ふむ⋯これどっちに行くのが正解だと思う?」
俺達が今見えているのは、鉄製の扉が近くにある船着き場と、扉の横に続いている水路。現在、このまま水路を進むか、船着き場に船を止めて扉を開けるかの二択のどちらかを選ばなければならない状況にある。
「オレはこのまま進むのが良いと思うぜ。この扉、開ける時絶対音が鳴るぞ」
「あとこれは考えすぎかもっすけど、何か開けた瞬間作動する罠とかもフォールンエルフ達は使ってくるので、あの扉にも無いとは言い切れねぇっす」
ペンシルゴンやレイ氏も扉は何か違和感があるとのことで、俺達はこのまま水路を進むことを選択する。こういう時は大抵、扉だーって開けようとした純粋なプレイヤーを陥れるための罠があるものだ。そういう初見殺し的なものがあるクソゲーは最近少なくなってきたというかゲームそのものが初見殺しなゲームがあるため、純粋な罠を見ることは久しくなかった。おそらくこの扉を開けようとするとガリウスの言う通り大きめの音が鳴り、今現在広間で楽しげに喋っているやつらが襲ってくるのだろう。
船を少しずつ進め扉の横を曲がると、前方に広い水面が見えてくる、何本かの水路が合流するホール状の広場的なものがあるようだ。
空間に入る手前、トンネルの出口ら辺で一旦船を止める。声ははっきりと聞こえる程響いているため、このホール状の空間に喋っているやつらが居るのは確定だろう。
船が動かないことを確認した俺達は船首へと移動し、空間を見渡す。
広場は予想以上に広い。半円形の形をしているホールは百メートル程はあるのではないだろうか、明らか人工的な形をしているホールだ。現実的に見るならここを洞窟内の休憩場として使い鉱石などを掘っているのだろう。だがここはSAO、人工的とはつまりここにNPCやらがいるわけで
中央部にある幅広な階段、その桟橋の下に、やつらはいた。
「「「「「「「「⋯⋯!」」」」」」」」
桟橋の横に停められているのは、俺達が追ってきた大型船。問題は船ではなく、船にある木箱などを揚げしているやつら。
彼等は革鎧を着込み、顔は覆面で隠されているが、所々から見える薄暗い灰色の肌と頭から伸びている赤茶色の髪。彼等は──
「フォールンエルフ⋯⋯」
「な?ちょっと怖い雰囲気してるだろ?」
水路を進む途中でミーアが言っていたことによると、
大地切断やら聖体樹やら知らない単語は後でガリウスとかに聞くとして、灰エルフ自体は毒や罠や目眩ましなども使う、油断ならない相手だという。
「やっぱり、ギルド自体がフォールンエルフと繋がっていたのでしょうか?」
「まぁそうだろうね、それに水夫達が灰エルフを全然警戒してないあたり、よほど深く繋がっているみたい」
やはりというか、予想通り、水運ギルドは「灰エルフと繋がり、貿易していた」ということを隠すために、ロービアでの船市場を独占し、秘密を外に出さないようにしていたのであろう。
「あの木箱の中身は一体⋯⋯?」
現状分かることは、水運ギルドは灰エルフと繋がって貿易していた、ということのみ。何を取引しているのか、あの木箱には一体何が入っているのかは、実際に調べないと分からない、恐らくあの木箱の中身も重要な秘密に直結しているような気がする。
「灰エルフが水夫に何か渡してる」
ルストが指す方向を見ると、リーダーっぽい雰囲気をしている一人の灰エルフが水夫に小さい袋を渡し、水夫はその中身を見て満足そうに頷いている。そしてその水夫は仲間達に撤収の合図を出した。
「⋯⋯絶対金じゃん」
「やっぱり世の中金なんだなあって」
「汚い世の中だぁ」
船に水夫が乗り込んだことを確認すると、二人の操縦士が櫂を動かし、船を動かす。
一瞬こっち来るのでは?とも思ったが、幸い俺達ほ反対側の水路を通り帰ってくれた。
「これからどうしましょう?」
水夫達は帰ったが、以前として灰エルフ達は階段の下にいる。船から降ろされ、運ばれてった木箱の中身が気になるが、このまま船で進めば灰エルフ達と戦闘になるであろうことは想像に難くない。
「うーん、そうだ。いっそのこと、罠の方行っちゃおうか」
その後、ある意味で正解とも不正解とも言える選択となったものを、ペンシルゴンは選択したのだった。
〜第四層・水路ダンジョン〜
木箱の中身を知るためだけに灰エルフ達がいる場所へ突っ込むことをためらった俺達は、先程の水路を進むか鉄の扉を開けるかで選ばなかった「鉄の扉を開ける」ということを実行した。幸い、懸念していた罠などはなく、代わりに長く、広い通路となったダンジョンが広がっていた。
全員で行動するという案も出たが、こういう時は少人数の方が動きやすく、何かあった時逃げやすいので、俺・レイ氏・秋津茜・ミーアの少人数でダンジョン奥の探索。残ったメンバーは近場の探索と船の監視・防衛にあたることになった。メンバー選出は、聞き耳スキルを持つ秋津茜以外はジャンケンで負けた人が担当することになった。そもそも秋津茜以外は面倒臭いという理由で、探索に志願する者はいなかった。唯一ミーアは、灰エルフを知る者が一人は同行した方がいいでしょうとのことで自ら名を上げてくれた。
ここは圏外なためメッセージなどの連絡がつかない、なので何時戻れるかなどの連絡が出来ないのだが、何かあればすぐ戻る、それまでは何もないと信じ待っててくれという、いささか忍耐力が試されるものをあいつらに告げて来てしまったが、ほぼ探索をしない代わりだと思って受け入れて欲しい。
そして俺達が探索を開始して40分ほど。行き止まりなどが多い迷路みたいなダンジョンをウロウロしていると長い階段の先に、遂に目的であった木箱がたくさん積み上げられれた倉庫のような場所についた。
「ほんとにありましたね⋯⋯」
「皆さん少し静かに、ここ、見張りのの人たちがいます」
秋津茜がそう言うので、俺達は囁き声で話すことにした。
奥にいる衛兵は俺達に気づいていないようだが、それは衛兵が反対側を向いているからで、もしこちらを見られたら気づかれるかもしれない、なので俺達は壁際へと移動した。
「どうにかして衛兵の気を逸らせないでしょうか...?これだと木箱の中身を確認しようとすると確実に見つかりますよね⋯⋯」
「それにあの大きな扉から何か物音も聞こえてきます」
秋津茜とミーアは元から聞こえていたのだろうか、俺とレイ氏が耳をすますと、扉の奥から何かを叩いたり擦ったりする音が聞こえてくる。
「⋯⋯サンラクさん、物を投げるのは得意でしょうか?」
するとミーアは落ちていた石を拾い、俺に渡してくる。
「...なるほど」
これで衛兵の気を逸らせ、ということだろう。衛兵の近くの木箱に当てることが出来れば、衛兵が確認する間に反対側の木箱を確認することが出来る。位置的に俺達から近いのは倉庫の真ん中辺りにある木箱なので──
「ふっ」
聞こえないような声で石を投げ、その石は見事俺の狙い通り俺達から一番遠い木箱に命中し、衛兵の注意がそちらに向く。ということはその反対、つまり俺達に一番近い木箱の方の注意は疎かになるわけで。
一気に木箱へと駆け抜けた俺達は無事に木箱の裏側に隠れられ、衛兵にバレないことに成功した。
「さて、中身は何だ?」
物音を立てないよう、ゆっくり、ゆっくりと木箱の蓋を開けていく。そして、箱の中に入っていたのは──
「え?」
「これは⋯⋯」
「空⋯⋯ですね」
「あんなに大事そうに運んでたのにですか?」
俺達は何が起こってるのか分からないという風に顔を見合わせる。だが、入ってないものは入ってない。木箱の中は完全に空っぽだったのだ。
「他はどうでしょう?」
他にも隣、そのまた隣の木箱の中身を確認していくが、どれも空。
「どうなってんだこりゃ?」
「もう中身は運ばれた後なんでしょうか?」
その時ギギギ!と大扉が開く音がした。それと同時に大人数の足音が近づいてくる。これは不味い!と咄嗟に思い、俺達は俺とレイ氏、秋津茜とミーアで別れ、側板から木箱の中へと飛び込んだ。
「レイ氏、早く!」
「ひゃい!」
俺は扉を速攻で開け、先にレイ氏を箱の中に入れた後、俺も素早く箱の中に飛び込む。本当なら一人一つずつ箱に隠れるべきなのだろうが、コツコツと足音が近づく中で、そんな時間はない。
「ひゃう!?」
先に入った右腕に妙な感覚が伝わるが、今はそれに構っていられない。体も木箱の中に押し込み、急いで蓋をする。その数秒後、木箱に空いている少しずつの隙間に、幾つかの人影が視界の中に映り込んだ。
先頭に立っているのはこれまた灰エルフの、体格のいい男。手袋そして、右腕にハンマーを持っているので、職人と言うべき男だった。名前が「Eddhu:Fallen Elven Foreman」と表示されている。エドゥー:フォールンエルフ・フォアマン、だろうか、確かフォアマンというのは「監督者」という意味を持っていたはずだ。つまりあいつがここの灰エルフどもの現場責任者ということだろう。
「今日の荷揚げで、予定の物は全て揃いました」
エドゥーは後ろにいる十人ほどの灰エルフ達にそう言う。この木箱には何も入ってないのに何が揃ったのか問いただしてやりたい、という思いをしまい込める。
「うむ。まずはご苦労だった。」
そう返すのは金属と革の鎧を身に着け、真紅のマントをしている美声のエルフ。
「だが、組み立ての方は遅れが出ているそうだな?」
「申し訳ありません閣下。遅れは三日後に解消する予定です」
「ふむ、では予定通り五日後には全て完成すると思って良いのだな」
閣下、と呼ばれた男は何者なんだと見てみる。すると名前とカーソルを見て絶句した。
この閣下と呼ばれた男は「Nltzahh:Fallen Elven General」と書いてある。ノルザー?名前がてんで分からないが、真に驚くべきは「ジェネラル」、つまり「将軍」ということと真っ黒に染まったカーソルである。第三層のグレトリクセルでも色はもっと薄かった。それに俺のレベルは22と、第三層の時よりも上がっているのにこれである。おそらくこいつは少なくともレベル35オーバーくらいはあるのではないだろうか。
「我が命に変えても必ず、ノルツァー閣下」
「頼んだぞ、エドゥーよ」
するとノルツァーだった閣下はこちらの方へ着実に近づいてくる。居場所バレたか?と思ったがノルツァーは俺とレイ氏がいる木箱から数メートル離れた場所で止まった。
「我々は実に滑稽だな、遥か古の時代に聖体樹の恩寵を断たれて尚、エルフ族の禁忌に縛られているのだから」
「⋯⋯下らぬ禁忌さえなければ、この資材を集めるために、人族なんかと取引しないで済んだのですが」
そう答えたのは、先程のエドゥーではなく、イメージするなら秘書っぽい声をした女の人の声だ。
「言っても詮無いことだ、カイサラ。今はいくらでも金貨を払ってやればよい。我らが秘鍵を全て手に入れ、聖堂を開くことが出来れば、人族の最大の魔法さえも跡形もなく消えるのだから」
「⋯⋯そのためには、特務隊司令官が取りそこねた第一の秘鍵を取り急ぎ奪還せねばならん。五日後の作戦、諸君らの働きに期待しているぞ」
すると控えていた灰エルフ達ははっ!と答え、閣下含め灰エルフ達はそのまま消えていった。
「ほーん⋯」
予定の量は揃った。計画。エルフ族の禁忌。人族との取引。秘鍵。奪還。五日後の作戦。そしてこの空の木箱、大扉から聞こえていた何かを叩く音と擦る音───なるほど?第一の秘鍵は俺達がガリウスと共に守ったあれだよな?つまり秘鍵が森エルフ側にあるのは理解している。灰エルフと森エルフの拠点は水路で繋がってる可能性が高いことから、この大量の木箱はもしかして「あの!楽郎君!!」
「ん、どったの玲さん」
「あの、その⋯右腕⋯⋯」
「⋯⋯あごめん玲さん!!」
数秒かけてやっと俺がどんなに不味い状況にあるのか理解した。何をしているのか俺の右腕はレイ氏の二つある内の果実の右側の方を押してしまっていた。それに更に不味いのが、この箱の中が狭すぎるせいで俺と玲さんが抱き合ってるみたいになってるのが非常にヤバい。てか全然意識してなかったけど顔近すぎるわこれ。
「こなっ⋯くそっ⋯⋯」
「⋯っ!?」
焦りが全面的に出てしまっているのか、閉めた蓋を開けようとしても引っかかって中々開けられない。それどころか俺が右腕を引っこ抜こうとすることでまたむにむにとした感触が──ってヤバい、更に玲さんの顔が赤くなってしまっている。不味い、本当に不味い。
するとパカッと上の蓋が空き、中に光が差し込む。
「⋯⋯何してるんですか?」
「あ⋯⋯やぁミーア。助けてくれてありがとう。実は中々出れなくてさ、あはははは⋯⋯」
「⋯⋯サンラクさんってそんな人だと思いませんでした」
「ぐほぁ!??」
帰りは顔をずっと赤くした玲さん、俺に無視を決め込むミーア、何も知らない秋津茜、気まずすぎる俺とまじで大変だった。いや俺のせいと言えばそうだけど元はと言えば急に来たノルツァー達が悪いと思う。あいつ絶対許さん。
女の子と狭い所で二人なんてそれはもうアレだよねサンラクくぅん!?(ディプスロ風)
これは責任取らなきゃなあサンラクぅ
ちなみにヒロインがヒロインちゃんだと確定したわけではないです。でもやっぱヒロインちゃんとの純愛、良いと思います。