旅する狼達よ、鋼鉄の城にて吠えろ(シャングリラ・フロンティア×ソードアート・オンライン)   作:しらすの番人

40 / 91
なんかここ最近戦闘シーンほとんど書いてない


一度ならず二度までも

 

「くあぁぁ、良く寝たぁー」

 

外で小鳥がチュンチュンと鳴いている。窓から入ってくる明るい光は、ここがSAOだということを忘れそうになるほどリアルであり、暖かいものだ。同じ部屋で寝ているカッツォ・モルド・ガリウス・ルイドはまだ起きていない。

 

「あ、もう9時なのか」

 

昨日俺達は司令官室でレムザードと別れて、ルイド・ミーアと合流し食堂へと向かった。ここは城なので、当たり前だが三層の時の食堂とは広さが全然違った。だが料理の味自体は三層のものも負けていなかったのが凄いところだ。コッペパン風のものにジャム風のものをかけて食べ、その後ミネストローネ風のスープを口に入れた時には心が温まったね、それと同等クラスの料理が滞在している間食べられるだけでも嬉しい。日付を跨ぐまで続いた食事の後は、皆疲れていたのかお風呂には入らず全員睡眠を選択した。SAOでは眠気、というのはあくまで脳に伝えられるただの情報に過ぎないので、耐えようとすれば耐えられるとは思うのだが、やはり寝たのと寝てないのじゃ集中力がまるで違う。

 

「カッツォ〜、モルド〜、ガリウス〜、ルイド〜、朝だぞー」

 

今日やることというか、五日の迎撃戦までにやらなきゃいけないことはあるが今日で終わるだろう。そう、武器や防具の新調である。第一層から使ってきて鍛冶屋などで度々メンテナンスをしてきた「アニール武器」の一つである「アニールブレード」だが、流石に三層の時点で少し厳しいものがあった。ここまで良く持った方だろう。安全を最重視するなら一層毎に武器などは新調するべきなのだ。それでもここまで頑張ってくれたアニールブレード君には感謝を述べなきゃだ。一層最強片手剣であるアニールブレードより、三層の途中で宝箱から出てきた量産であろう短剣の「ウーデン・ダガー」の方が少し強いのがこの世界での武器の一層毎の強さが表れている。

 

「むにゃ⋯⋯おはよー」

 

「おはようっす」

 

「ん⋯⋯サンラクか、早いな」

 

「うん...?朝か...二度寝しよっと」

 

「おいこら両生類」

 

だが、アルゴからの情報によるとエルフの鍛冶師は普通の町中にいる鍛冶師より特別で、たまにだがとても良い武器を作ってくれるとか何とか。武器の新規作成も出来るが、既存の武器をインゴットにし、それを使っての作成も出来るようなので俺はそれが楽しみであるのだ。

 

「気持ちのいい朝だね」

 

「だよなぁ、実を言うと俺もまだこのベッドで寝てたいし」

 

「このベッドがフカフカ過ぎるのが良くないと思う」

 

「このベッドに使われてンのは俺達森エルフが一生懸命に育てたヤギから取ってる羊毛だからな、上質なのは当たり前なンだよ」

 

エルフと聞くと少し自然に生きる種族というものを想像するのだが、ここまで文明的とは流石に誰も思わないだろう。多分SAOのエルフ達が例外だとは思うが、近代文明のことを少し教えれば余裕で俺達の文明まで追いついてくるのではないだろうか。

 

「もうこのまま鍛冶師さんの所に行くんすか?」

 

「そのつもりだ、今しなきゃいけないことはとりあえずこれだけだし、とっとと終わらせられるならその方がいいしな」

 

どうしてガリウスだけでなくルイドも俺達と一緒に寝てるのか?それはガリウス・ルイド・ミーアは元々三人で行動していた「特務隊」本当の名を「特殊任務遂行隊」だったからだそうだ。三層の時ガリウスが一人だったのは、他二人が別任務中だったので、仕方なくレムザードにガリウス一人だけが付いていったからだそうだ。それで三層の時にガリウスが俺達の正式な案内人、メタ的に言うとクエストキーマンになったため、その仲間であるルイドとミーアも俺達と行動を共にすることになった、という訳だ。

 

「じゃあ早く行こうよサンラク。武器新調早く終えて風呂入りたいな。俺出来るなら毎日シャワーだけでも浴びたいんだよね」

 

「それ僕も少し分かるかも」

 

そうやって美容とか健康に気を使って中性的な見た目してるから「受け」なんて言われるんだぞ。そういやカッツォがSAOに巻き込まれて魔境連中はどう受け止めているんだろう、しばらくウオミロイドの素材提供も無いし過去動画を延々見てたりするのだろうか。イカン、考えるだけでぞわぞわしてきた。

 

〜第四層・ラティエル城鍛冶工房〜

 

「ここがラティエル城の鍛冶工房だ」

 

「自分達も大変お世話になってる場所っすね」

 

「うお、中々デカいな」

 

「ここまで本格的なのSAOでも初めてじゃない?」

 

ラティエル城一階の正門から見て左の建物の一番奥に、俺達が武器を新調することになる工房があった。工房、と言うだけあって壁には工具がズラっと並んでいるし、出来上がっている武器も収納スペースにキレイに並べられている。今までのNPCの鍛冶師達は一通りの工具や鉄床はあってもここまで規模がデカい工房を持っている鍛冶師はいなかった。まだ素材などが揃いきってないプレイヤー鍛冶師達は言うまでもない。

 

「久しぶり、ゼル爺さん。元気にしてたか?」

 

「お久ぶりっす」

 

「その声はガリウスとルイドか。まだ生きておったな。久しぶりじゃのう、して、その者達は?」

 

「初めまして、俺はサンラクって言います。少しの間ここに滞在させて貰うことになりました」

 

「同じくサシカッツォです。カッツォでいいですよ。」

 

「初めまして、僕はモルドって言います。」

 

「ガリウス達が世話になっているようじゃな、ガリウス達の友人なら大歓迎じゃ。ワシは「ゼル」。鍛冶一本で生きるしがない鍛冶師じゃ」

 

「鍛冶一本⋯⋯相当な腕をお持ちなようで」

 

「何、普通ならこやつらみたいに外に出なきゃいけないものを、鍛冶に回させて貰ったのよ。工房(ここ)に来たということは、お主らの目的は武具の強化か?それとも作成か?」

 

「作成の方で、そろそろ武器を新調しなければいけなくなって来たので」

 

「材料さえあれば今からでも作れるぞ。」

 

そうゼル爺さんが言うのと同時に俺・カッツォ・モルドの三人に「武器作成」「武器強化」などが書かれたメニューウィンドウが表示される。俺達三人は相談の結果、まずは俺が最初に武器を作ってみる、という話になった。

 

「剣をインゴットにして、そのインゴットを素材にして武器を作るってことは可能なんですか?」

 

「もちろんできるぞ」

 

アルゴが言っていたことはどうやら真実だったらしい。別に疑っていた訳でもないのだが。俺はストレージから愛剣である「アニールブレード+8」を実体化させ、お爺さんに渡した。

 

「良い剣じゃ⋯⋯相当使われておる。お主、中々に腕の良い剣士じゃな?武器を見たら分かる、汚れこそあるが欠けたりなどが一切していない」

 

「ありがとうございます?」

 

「どれ、少し待っとけ」

 

するとゼル爺さんはレンガで作られた鍛冶炉に乗せる。するとどんどん剣はその形を崩していき、最終的に長さ二十センチ程の長方形のインゴットへと変わった。

 

「すげぇ...」

 

元のアニールブレードの色を引き継いだ光沢のある黒色のインゴット、そこには剣の形こそないが、あれは俺の剣だった、と言い切れる程に、俺が剣として使っていた時と同じようなオーラを放っている。

 

「オニキス・インゴット⋯⋯」

 

俺は武器作成のボタンを押し、「心材」を選ぶボタンを押して最初に見えた名前を呟いた。当然、インゴットなど他に持ってないので、これがアニールブレードがインゴットに変わったものなのだろう。「オニキス・インゴット」をタップし、他にも基材である「将軍王の角」や添加物である「火炎熊の脂」などを選択し、決定ボタンを選択。

 

「お願いしやす」

 

ゼル爺さんの目の前の作業台にインゴットと基材と添加剤が入っているのであろう革袋二つが出現する。ゼル爺さんは集中モードに入ったのか無言で革袋二つを炉に放り込む。やがて炎の色が白に変わり、それを見計らっていたかのようにインゴットを投入。そして熱せられたインゴットを手袋をした手で掴み、金床は移動。取り出したハンマーでインゴットを叩き始める。

 

「⋯⋯⋯」

 

カーン、カーン、カーン...ゼル爺さんはハンマーを一定間隔毎に叩く。それはどこか、違う世界の鍛冶師である兄貴の姿に似ていた。三十回を超え、四十を少し過ぎた辺りで、ゼル爺さんはハンマーを叩くのを止めた。

 

「⋯⋯完成じゃ」

 

「これは...」

 

アニールブレードの黒を少し薄めにしたどこか優しい黒。柄には俺が選択した将軍王の角が反映されたのかアニールブレードとは違い白色になっている。そして眩い程の光沢、剣先は鋭く、側面には二つのラインが入っている。その剣の名を「グレイスソード」。剣の強さを表していると言っても過言ではない強化回数は──

 

「え!?強化回数16!?」

 

「「は!?」」

 

えぐい、えぐすぎるぞグレイスソード!!アニールブレードの強化回数は8だったので、およそ二倍強くなったと言っても過言ではない代物だ。

 

「ありがとうございます!ゼル爺さん!!」

 

「ほっほ、良いってことじゃよ」

 

その後カッツォとモルドも武器を作成。モルドは強化回数12の武器を作ったが、カッツォは10と三人の中だと一番低かった。基礎スペックはどれもアニール武器達より大幅に上がっているので、全然良い結果である。俺はグレイスソードとウーデン・ダガーをそれぞれ+5まで強化し、防具は売っていたものを購入。カッツォも同じく強化と防具の新調。モルドはそれらに加え、片手盾を作って貰っていた。何でも俺達のギルドにはタンクがいないから少しでもマシになったら、だそうだ。正直めちゃくちゃありがたい。無事やるべきことを終えた俺達は昨日入れてない風呂へと向かうのだった。

 

 

〜ラティエル城・脱衣場〜

 

「まさか風呂つっても大浴場とはな」

 

「その代わりめちゃくちゃ広いんすよ、泳げるくらいには広いっす、なんせ「大」浴場っすからね」

 

俺達は一階の工房から二階の大浴場脱衣室に移動した。場所が真反対なために移動するだけでも三分程かかった。

 

「よっしゃ、そンじゃ入るか」

 

「ちょいちょいちょいちょい!?」

 

「ンだよ」

 

ガリウス君はバカじゃないか?何で素っ裸で入ろうとしてんだよ、いや風呂は裸で入るものだな、だとしてもだ。

 

「え?何か水着とか来たりタオル持ってかないの?浴場なんでしょここ」

 

「何だそれ、オレ達は基本風呂に入る時は手ぶらだぞ?」

 

立派なものをぶら下げながらいいやがって。男同士でも裸だとそれが見えるだろうが。誰が男と素っ裸で風呂入りたいんだよ、タオルとか持ってくだろ普通。

 

「⋯⋯もしかしてルイドも?」

 

「そうっすね、逆に裸以外で何か持って入ることにビックリっす。不思議な文化もあるもんすね。」

 

それはこっちのセリフだが!?別に一人ならそりゃ素っ裸だが仲間とは言え人の目の前で堂々とあれをぶら下げながら入る程俺達のメンタルは強くない。というよりルイド、お前は真面目系だと思ってたのにここでズレがあるとは...

 

「僕達のタオル貸しますよ」

 

「それで大事な部分隠してね」

 

「「大事な部分って?」」

 

「「「息子に決まってるでしょうが」」」

 

というハプニングがありながらも、ガリウスとルイドはタオルで、俺とカッツォとモルドは水着を着ることで男の大事な部分を隠しながら浴場へと入るのだった。

 

 

「うわぁ、大きい」

 

湯けむりが凄いのと打たせ湯であろうものと水が流れる音で前は良く見えないし音もあんまり聞こえないという状況だが、とても拾い浴槽だということは分かる。なんせけむりが凄いのもあるが浴槽が奥まで見えないのだ。大型スーパー銭湯でもこの浴槽を超えるデカさの風呂は存在しないと断言出来る程大きい。

 

「まぁ流石にシャワーはないよね」

 

「それよりもマジで泳げそうな程デカいなこれ!カッツォ!奥まで競争しようぜ!」

 

「お、いいねぇサンラク!それにここなら良い泳ぎの練習場所にもなりそうだ」

 

「子供かよ」

 

「ガリウスも最初来た時は似たような感じだったでしょ」

 

「それはお前もだろうが」

 

「それと一緒ってことっす」

 

「ぐ⋯⋯」

 

「「いやっふうううう!!!」」

 

「滑ったら危ないよー?」

 

すまんモルド!今だけは心のままに任せてこの浴槽に飛び込みたいんだ!それにここはプライベート、見ず知らずの人がいるならまだしも、午前10時から風呂に入るやつらなんてそうそう居ないだろ!!

 

「「あっはははははは!!」」

 

ドバッシャアアアン!!俺とカッツォは勢いよく浴槽の中に飛び込む。深さもプール程はないがそれなりにはある。温度はそんなに熱くはなく、この大浴場は深さが少しないだけの温水プールに近いものだった。

 

「よっしゃあカッツォ!見えないがあっちの向こうまで競争だな!どっちが早いのか決めようじゃねぇか!!」

 

「望む所だよサンラク!!悪いけど本気で勝てせて貰うよ!!」

 

たかが温水プールでの競争?そんなものは関係ねぇ!遊びにでも本気になれるんだよ!それが男であり、ゲーマーという生き物だ!!

 

「「よーい、ドン!!」」

 

「⋯⋯!?待ってサンラク!カッツォ!!」

 

「んー⋯⋯?あ、これまずいかもっす」

 

()()()()()()()()()()()()

 

「そんな呑気に言ってる場合じゃなくない!?」

 

何かモルド達が言っていたような気がするが生憎もう水中の中なので何も聞こえない。壁を蹴ってスタートしたレースは多分互角だろう。俺はクロールで泳いでいるがカッツォもクロールだろうか。てか泳ぎにくいななんだこれ、あまりスピードも出ていない気がする。クソ!カッツォに負けたら「所詮こんなもんだね」とか言って煽られるに違いないのに!やっぱリアルと感覚が違うってだけでこんなにも違うんだな。

 

──この時の俺達は過去最悪でバカだった。湯けむりが凄いからって奥を確認するのが疎かになってた。あるいはモルドの言葉をちゃんと聞いていればあんなことにはならなかったのかもしれない。俺達がSAOでの泳ぎに慣れていなくてスピードが全然出ていなかったのがまだ不幸中の幸いだったが。

 

むにっ、と感触が伝わった。クロールしてかいている右手が、何かとてつもなく柔らかいものを掴んだ。壁か?にしては弾力があり、むにむにしすぎているような。兎にも角にも、これがゴールならゴールでカッツォはどうなったのか確認しなければならない。俺は頭を水中からだし、左にいるであろうカッツォを見る。すると、カッツォも俺と同じように右手を差し出し、唖然とした表情で前を見ている。俺は負けたのか、結局掴んだものは何だったんだと正面を見ると。

 

「「⋯⋯oh」」

 

俺とカッツォは同時にそんな声を出した。掴んでいたのは柔らかい壁?全然そんなものではない。寧ろそっちの方が何千倍もマシだった。俺達が掴んでいたもの、それは──

 

「サ、サンラク君⋯?あの、これは⋯⋯」

 

「⋯ねぇカッツォ君?これは一体どういうことなのかな??」

 

──それは、俺はレイ氏の、カッツォはペンシルゴンの、「胸」だった。

 




二度目のラキスケだやったねサンラク!!何でヒロインちゃんと鉛筆は気づかないんだよとか思っちゃいますが、それは近くでさえも見えなくする湯けむりと流れる水の音が解決してくれるんですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。