旅する狼達よ、鋼鉄の城にて吠えろ(シャングリラ・フロンティア×ソードアート・オンライン) 作:しらすの番人
「・・・・・・ボスの名前すら違う!!」
「Fuscus the Vacant Colossus」
第五層フロアボス、「フスクス・ザ・ヴェイカント・コロッサス」の【顔】であろうそれは、面白がるように、見定めるように、もしくは──何か遠くを見つめるように、不敵にニヤリと笑った。
そして顔は、笑うのをピタリと止め口を開けた。
「guooooooooo!!!」
「強制デバフか!!」
強制なのか体が全く動かず、全員のHPバーの左下に「防御力減少」と「対デバフ耐性減少」のデバフを示すアイコンが追加されていた。
そして、変わった要素はもう一つ
「おい!地面の線見ろ!」
ボスの顔が出てきてここからが本番ってことか?さっきまでの幾何学的な模様をした線、いや今も幾何学的模様を描きながら動いてはいるが、その「線自体」の本数が増え、動く速度も顔が現れる前よりいくらか速くなっている。
「さっきよりも速くなってやがる!」
「皆落ち着け!良くみれば避けられる速度だ!まずは冷静に!顔が現れても攻撃手段自体は変わらないはずだ!線を踏まなければ問題ない!!」
普通なら今のディアベルの言葉は正解で、混乱を落ち着かせられる。だがディアベルは全員がその通りに出来ない可能性を考慮していなかった。
「あ、う・・・・・・」
「ネズハ!!君は一旦下がってくれ!途中で線を踏んでもいい!俺がサポートする!!」
「わ、分かりました!」
キリトがそう声をかけ、ネズハがそれに頷く。
キリト曰く、ネズハは重度の「フルダイブ不適合者」らしく、SAO内で上手く遠近の感覚が掴めないそうなのだ。第二層でネズハがやっていたらしい強化詐欺は、仲間内で自分だけ活躍出来ていないから行ったものなんだそうだ。
チャクラムも、近距離で戦いにくいネズハのためにキリトが選んであげた武器だという。
今まではネズハでも何とかなっていたが、線が増えたことと速度が速くなってしまい、反応出来なくなってしまったのだろう。
「俺達は変わらずボスの腕と足を出して攻撃しよう!線の密度と速度が上がった分こちらも事故りやすくなっている!ここが正念場だぞ!!」
ディアベルの声に俺達は応える。というかいつの間にかディアベルが仕切ってるんだよなぁ。あいつには人をまとめる天賦の才でも与えられたのだろうか。
「秋津茜、頼んだ!」
「分かりました!」
さっきと同じように、秋津茜が線を踏み、カッツォに衝撃派を耐えてもらって、俺とエギルで攻撃の作戦を繰り返す。──が
「なんか攻撃強くなってるんですけどおおお!?」
「なんとか耐えてくれカッツォ!!」
ボスの顔が現れたからなのかは知らんが、秋津茜が踏んだことで出てきた足は、今までよりも速く、力強く地面にぶつかった。当然、発生する衝撃波も強くなっている。
「良く耐えたカッツォ!」
「後は俺らに任せな───っておいおいおい!いくら何でも戻るのが早すぎだろ!?」
線を踏むことで出てくる腕と足は、時間経過により戻っていく。それはつまり、その時間が攻撃出来る制限時間と同じ。だが、さっきまでだったらまだ地面に文字通り足をつけたままだったのに、もう戻ろうとゆっくりと動き出し始めている。
ソードスキルを二発当てたら撃退に成功するんだ。もし地上で当てれないなら空中で当てればいい。
だが、俺は空中で当てるからいいとしても、エギルには何としても一発当てて貰うしかない。
「エギル!威力じゃなくて速度重視のソードスキルに変えてくれ!!」
「おう?・・・・・・分かった!!」
エギルはすぐに出る単発のソードスキル、名前は知らない──を何とか足が地上から離れる前に当ててくれた。後は俺が当てるだけだ!!
「届いてくれよ!!!」
今俺が使える片手剣ソードスキルの中で、唯一上に跳躍して攻撃することが出来るソードスキル【ソニックリープ】を発動、意識を限界まで上に向け、足を切り裂け!!
「おぉおおお!!」
空中に戻りつつある足に追いつき、そのままくるぶしら辺を上から下に斬りつける。ソードスキルの加速状態が終わり、上を見た俺は、撃退成功の目印となるだらーんとした状態の足を確認した。
「よっしギリギリセーフ!」
「まさか戻る時間も短縮されてるとはねぇ・・・・・・」
「他のとこも苦戦し始めてんな」
見ると俺達の他に足を出していたモルド・京ティメット・ナイジャン・アルゴのグループが撃退成功させないまま足を戻してしまったようだ。あそこは近距離特化の武器構成になってたのがいけなかったか。
腕は比較的楽な方らしく、一度回避さえしてしまえばその後はずっと攻撃出来る。衝撃波が出る分、足の方は攻撃に使える時間が短いのだ。
「片手剣だとソニックリープで衝撃波を避けながら攻撃出来るか・・・・・・?」
衝撃波は目視一メートルを超えるくらいはデカいが、ソニックリープならその高さを超えられる。だが単発技なので基本的には連撃技を当てられるのが一番だ。
ジャンプ、連撃、ソードスキル、避ける・・・・・・
・・・・・・ジャンプで衝撃波避けながらソードスキル使えばいいんじゃね?
ソードスキルは特定のモーションを構えて、ライトエフェクト・サウンドエフェクトが出始めて剣を振ったら発動する。空中で発動なんて試したことはないが、空中で発動出来ないなんて証明されてるわけでもないしワンチャンいけるんじゃね?
「カッツォ、もう一回いけるか?」
「もちろん、さっきもいけたしもう大丈夫」
「よっしゃ、じゃあエギル、秋津茜、もう一回いくぞ!!」
「おう!」「はい!」
腕二つと足一つが撃退成功時点で、フスクスの一本目のHPバーがちょうど残り25%くらいになっている。ここで出てくる足を撃退することで一本目のHPバーを削り切ることが出来るはずだ。
「踏みます!」
秋津茜が踏んだその位置に赤い紋様が出現する。そしてカッツォが衝撃波を受け止めるために盾を構える。そしてエギルはその後ろに隠れる。ここまでは同じ。
だが俺はカッツォの横ら辺で衝撃波をジャンプで避ける準備をする。そしてジャンプした瞬間、剣を前に構えて【レイジスパイク】を発動して足に突っ込む。
最悪ソードスキルが発動しなくても衝撃波は避けられるので、そうなったらまた【ソニックリープ】で飛んで当てるだけだ。
「来るよ!3、2、1」
もうタイミングを読んだのであろうカッツォが衝撃波が来るまでのカウントダウンを始めている。正直めちゃくちゃ助かる。
「0!!」
「よっと、さて──」
まず第一段階として衝撃波を避けるのは成功。そして剣を前に構えて前かがみに──
「頼む!!行けぇぇぇぇ!!!」
俺の声に応えるように、「グレイスソード」は白のライトエフェクトと滑らかな音を出し、俺の体を運ぶように黒足へと導いた。
ガゴォォン!!
俺がその次見たのは、エギルのソードスキルが足にあたり、成功を示す黒足の状態。
「guo⋯⋯OOOOO!!!!」
もはや何を叫んでいるのか分からない重低音、大抵は怒り状態になるかボス本体の攻撃開始だが、まだHPバーが一本しか削れていない以上は後者だろう。さしずめまたデバフ付与あたりじゃないだろうか
「今だネズハ!行け!!」
「てええええい!!」
ボスに注目していた全員の視線は、ネズハが投げたチャクラムへ。
いや、十メートル以上離れているぞ?流石に当たらなくないか?
と思っていたのだが、あれよあれよとチャクラムはフスクスの額にある赤い紋様へと近づいて───
「goooooo!!!???」
当たりやがった当てやがった!!ネズハの感覚がおかしくなるのは近距離のみ。遠距離は関係なく投げられる!
ボスのHPバーはさっきの一段削り切ったのとは別に二本目のバーが半分削られている。ネズハによる攻撃キャンセルの作用だろう。
「あの赤い紋様が弱点だ!!皆ももし狙える機会があったら迷わず攻撃してくれ!!」
キリトはそう言うが何しろあの高さだ。それこそチャクラムくらいの遠距離攻撃でもない限り当たりはしないのではないか。⋯⋯⋯これ投剣スキル取ってたら当たったのか?
だが、これでやっとボスの討伐準備が整った。
ネズハの役割は定期的に来るボスのデバフ付与無効化。
その他のメンバーは全力で腕と足に攻撃を仕掛ける。
この作成で重要な存在はネズハだ。俺達は失敗しても何度でも腕と足を呼び出せばいいが、ネズハは一回失敗してしまうと全員にデバフがかけられてしまう。
特に防御力低下はタンク陣のHPへの影響が大きい。効果時間も先程は二、三分経っても切れなかったのででかなり長い。
その無効化という役割をこのメンバーの中でも一番のビギナープレイヤーであろうネズハに任せるのは申し訳ないが、先程の技量を持つネズハを信じるしかない。
ここに第五層フロアボス討伐作戦第二ラウンドの火蓋が切って落とされた。