旅する狼達よ、鋼鉄の城にて吠えろ(シャングリラ・フロンティア×ソードアート・オンライン) 作:しらすの番人
「これで二本目!」
アスナやルストのいるグループが足を倒したことにより、フスクスの二本目のHPバーが消失した。
どうやらフスクスは、腕や足を一回撃退する事に「HPバー25%分の割合ダメージ」、そしてフスクスのデバフ攻撃をキャンセルすることで「HPバー50%の割合ダメージ」らしいことが判明した。
もう一つ悪い知らせが分かったのだが、フスクスはこれら以外のダメージは一切通さないことだ。ネズハが紋様が消えている時にチャクラムを額に当てていたが、フスクスのHPはまったく減っていなかった。
つまり完全なギミックボスってことだ。しかも攻略法が分かるとそんなに難しくないタイプの。動く線を踏んでしまうと攻撃されるので不意打ちの面はどうしても消えないが、それは線が届かない壁側まで移動することで完全に回避出来る。
確かに強い、強いがここはまだ五層である。デスゲームを作った茅場でも流石に五層ではそんなに苦戦しないよう設計しているのだろう。いやまあ後九十五層残ってると考えれば十分に強いのだが。
「あと一本削れば半分だ!皆、気を抜くなよ!!」
「「「「おう!」」」」「「「「了解!」」」」
というわけで残る腕と足一本ずつを処理してから、腕と足の本数リセットを待つ方針となった。フスクスは、何も線を踏めば最大二本ずつ腕と足が出てくるシステムじゃなく、右手・左手・右足・左足、となっているので、例えばまだ四本全部が残っている状態で右手を撃退した場合、その右手は残りの手足を全部撃退するまで出現しないのだ。
「guooooo・・・・・・」
「またデバフか!?」
「ネズハ!いけるか!?」
「任せてくだ・・・・・・さい!!」
またしてもデバフ攻撃のためにうなりだしたフスクスに、ネズハはチャクラムを投げる。というかデバフ攻撃の頻度多すぎない?こっちはネズハいるからまだいいけど、効果に対して待機時間が見合ってないからな??
「これは・・・・・・当たるね」
「あいつすげぇよな、スナイパーライフルとか持たせてみたい」
「・・・・・・今鯖癌のこと考えてたでしょ」
「・・・・・・・・・・・・」
何のことか分からんなぁ、お、ほらネズハの投げたチャクラムが当たったぞ
「guooooooooo!!!???」
「あいつ良いの貰ったら叫ばないといけないとかそういう縛りしてる?」
「流石にそういうのじゃないでしょ」
ともあれ、ネズハの活躍によりフスクスのデバフ攻撃はキャンセル。それとさっきのデバフ攻撃キャンセル時にはHPバーが半分減少していたので──
「これで半分、だな」
「これを繰り返せば勝てそうだけど十分に注意しなきゃね」
確かにこのままだと拍子抜け感は否めない。だがこんなもんで良いんじゃないだろうか。実際最初は混乱しまくってあわや大惨事になる可能性もあったんだし。
ただまぁ、最終形態くらいは覚悟しといた方が良いだろう。何せこのフスクスの状態はまだ「ゴーレム」ではない。必ずどこかでフスクスに動きがあるはずだ。
「・・・・・・おい待っとくれ!壁が!!」
「「「「!?」」」」
「いきなり変化か!?」
「俺達も運が無いね!!」
ウルフギャングの驚きに満ちた声で、全員が壁を見た。
壁が、動いているのだ。
うねうねと気持ち悪く動き始めた壁は、密度が高くなったり、低くなったり。ある種恐怖を覚えるその壁は、まるで勝てるのか?それとも逃げるのか?と問うように。
「これどうする?今までに見た事が無い現象だ」
「まぁ怪しいがボスに何か関係あるのかこれ?」
そして俺達はちょうど、何かを話しているディアベルとキリトを見つける。そして彼らは手を上げ皆を注目させ、こう言ったのだ。
「皆!一旦下に戻ろう!無理しなくていい!生きてさえいれば何回でも挑戦出来る!!」
「キリトさんの言う通りだ!ここは一旦引こう、何か嫌な予感がするんだ!!」
キリトとディアベルの突然の言葉に俺達は少し固まってしまう。
「・・・・・・だとよ、どうする?」
「まぁどうするも何も、皆一旦下がるっぽいし、それに攻略法は分かったからね、一回引くのもアリなんじゃない?」
そうこう俺達が話してる間にも、あいつらは「階段から近いやつから退避を!」と呼びかけ、誘導している。長いものには巻かれろ、だ。ここは一旦皆に合わせようと俺とカッツォは走り出そうとした。
「・・・・・・秋津茜?俺達も行くぞ」
「・・・・・・無いんです」
「「え?」」
「天井を見て下さい!!ボスの顔が無くなっちゃたんです!こうスーって!」
「「何だって!?」」
俺とカッツォは上を見上げる。・・・・・・確かに、さっきまで天井の中央にあったフスクスの顔が無くなっている。それどころか名前もHPバーも無くなっている。まるで最初からいなかったみたいに。
「・・・・・・何だ?」
「壁の動きはただのブラフで、実際はボスが何か行動するのを見せないよう誘導してた、とか?」
「フスクスが消えている以上その説が正しそうだな。さて、何が起きる──?」
不吉な予感を覚えるが──これはクターニッドの時と似ている。未知なるモノへの恐怖。そして、違和感。茅場はこれを想定しているんだ。壁が不気味に動くという、まだ未知なるモノを見た時、茅場はどう動くと踏んでいる?茅場は人間の心理をどう使う?
未知なるモノを見た時、人は怖くなる。なぜなら自分はそれを知らないから。知らないと何が起きるのか分からないから。ソレを感じた時、人はどうするのか───そう、
「──ダメだ!!階段には近づくな!!!」
「ローバッカ!ナイジャン!!」
俺が見たのは、階段を下ろうとしているローバッカとナイジャン、二人に声をかけるエギル。そして、階段を中心に現れる、一際大きな赤い紋様。
「危ない!!」
「させま、せん!!」」
「アスナ!?」
「レイ氏!?」
アスナとレイ氏がローバッカとナイジャンを突き飛ばした直後、赤い紋様からはフスクスの顔が出現し、ローバッカとナイジャンを庇った二人のことを、腰のあたりまでを咥えこんだ。
「階段が、顔になりやがった!!」
「カッツォ!まずは二人を助けるぞ!!」
「あいよ!!」
俺達は顔がある所まで全力ダッシュし、そのままの勢いで【レイジ・スパイク】を発動──ダメだ、やはり当たりはするがダメージが通らない。
「紋章は!?額の紋章を攻撃すればいいんじゃないか!?」
「・・・・・・ダメだ、コイツ紋章がねぇんだ!!」
俺はこの場を打破出来る最大の考えを言ったつもりだったが、それは普段からは想像出来ないエギルのなさけない声と共に否定されてしまった。
「顔や手足が消えたり出てきたり・・・・・・この層のボスは一体どうなってるのかな?」
「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないってペンシルゴン!早く玲ちゃんを助けなきゃ!!」
フスクスに体を咥えこまれた瞬間から、レイ氏とアスナのHP、そして恐らく防具の耐久値はどんどん減少している。このままだとあと二分もしたら取り返しのつかないことになってしまう。
「フスクス・ザ・ヴェイカント・コロッサス・・・・・・そういう意味だったのカ」
「どういうことだアルゴ!?」
「ヴェイカントは《虚ろな》、コロッサスは《巨像》。虚ろな巨像。それはこの部屋全体を指す言葉なんダ」
「つまるところ、「この部屋全部がボス」なんダ。だから顔も移動出来るし、手足も自由に消えたり出来ル。・・・・・・部屋の動きも自在だろうナ」
やっぱりこの意味深な壁の動きはブラフだったんじゃねぇか!!茅場の思惑にまんまと引っ掛かりやがったキリトとディアベルには後で反省が必要そうだぁ。
「・・・・・・待てよ、てことは額にあったはずの紋章も?」
「あァ、自由に移動出来るんだろうサ。つまり、ここからレイちゃんとアーちゃんを助けたいなラ、この部屋にあるはずの紋章を見つけて叩かなきゃならなイ。」
「「・・・・・・っ!!」」
ついに二人の防具の耐久値がなくなってしまった。皆必死に顔を殴ったり口を開こうとしているがびくともしていない。
・・・・・・嘘だろ。そんなに時間もない状況であの紋章を見つけなきゃならないのか?この部屋全体から?現在進行系で動いてる可能性もあるのに?
そんな時間、どこに───────いや
弱気になってんなぁ俺!!ついに神ゲーに長時間ログインしっぱなしで頭が可笑しくなりやがった!!
たまにはこういうクソゲー要素も楽しまなきゃだよなぁ!!!
「全員で弱点探せ!!まだ見つかる!!!」
全員の意識が部屋に向いた時、フスクスの口からガン!という音がなり、鎌のような刃が突き出した。
「・・・・・・おああぁっ!!!」
「「「「「!!??」」」」」
「誰だ!?」
「もう誰もいないはずじゃ!?」
「あんた達は早く弱点を探して!!私はこいつを食い止める!!」
「───うそ・・・・・・ミト?」
ミト、参戦!!