「ねぇ、愛しのコンパス」
「……なんだいドリーム」
俺の担当ウマ娘、ドリームジャーニーにはある癖がある。
「貴方は、キスを〝もう〟してしまっていますか?」
「スゥー………あいにくと、まだ未経験だよ」
ソレは、急に俺の事を愛しのコンパスと呼ぶ時、ソレは彼女が俺への恋慕を止めれてない時だ。
「そうですか、ソレはとてもいい事を聞きました」
「一応言っとくが、生徒から教育者でも、教育者から生徒でも、世間一般では恋愛感情を持ち合わすのはタブーだからな」
「もちろん存じ上げています」
「ならどうして俺が座ってる椅子を無理やり動かしてるんですか」
「時に愛しのコンパス、恋の熱情は時も場所も立場も厭わないそうです」
「うん、分かったけどなんでそのまま俺の膝上に対面で座って来た」
「ソレは勿論私への愛に熱を出す為です、所で〝トレーナーさん〟此方はなんですか?」
「ん?」
ドリームが見せてきたスマホには、俺とあるウマ娘が廊下かどこかで談笑してる姿があった。
「私は構わないんですよ、今から貴方の首もとに噛みつき、その後〝1人っきりの空間で〟貴方と過ごしても」
要するに極刑宣告か、でもこれは俺が悪いな。
そう判断し、俺はドリームの腰に腕を回し彼女の唇と自分の唇を重ねる。
「ごめん、キミを〝怖がらせる〟様な事をした俺の不徳だ。許して欲しい」
「なら、もっと私を求めてください愛しのコンパス。貴方の行先は他でもない、私のはずです」
「〜ッ!このおませさんがッ」
「なら仕置きをください」
そうして俺は自業自得とはいえ、まんまとドリームの策に乗せられ……いや、自ら乗ってしまった。
♢
寮へと向かう道すがら、私は年甲斐もなくスキップしていた。
(凄かったな、あのトレーナーがあんな風になるなんて)
自ら誘い、喰らわせ、そして誰よりも満足していた。愛し人の初めてを貰い、自らの初めてを捧げた。恋慕においてこれ程心穏やかにならないイベントもそう無いだろう。
「にしても、〝コレ〟はどうしましょうか」
仕置きをくださいと言った時の彼の顔、剥き出しの雄の感情、ソレをさらけ出させる事が出来た。けどそれにより起こった問題〝点〟がある。
「ルームメイト以外にも、大浴場や脱衣場もありますし………この時間ならトレーニングルームのシャワー室がまだ空いてましたね」
今日はそこで済ましてしまいましょう。
そうして彼女は帰路から外れ、トレーニングルームへと向かった。赤い印に、思いを馳せながら。