悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】 作:高々鷹々
その幹部、オタクにつき
私は、地球への侵略を目論む悪の組織──その幹部の一人である。名乗るほどの名前は無い。組織の中では『黒騎士』と呼ばれている。
侵略のためにこの星にやってきた我々だが、その目的を邪魔する存在がいる。
魔法少女たち──マギアカリーナ。これまで決行してきた作戦は、
そのせいで風邪が悪化し、侵略のための個人的な拠点、というか、今の自宅において一週間ほど休みを取ることとなったのはご愛敬だろう。
だが私は悪の組織の幹部だ。ただ休むだけなんて生ぬるいことは言っていられない。私は魔法少女たちへの対策を講じるべく、この星の娯楽──アニメや漫画などの媒体を通して、魔法少女を学ぶことにした。この星の格言に、『
そうして、一週間の間ほぼずっと魔法少女コンテンツに触れ続けた私は──立派な魔法少女オタクとなっていた。
だって、面白いんだもん! 我々のような無骨な戦士たちが戦ってるよりも、華やかで可愛いし! 女の子同士の友情とか、けっこう好きだし! 仲間と協力して強敵を打ち倒し、世界を救う! 素晴らしいじゃないか! 出来ることなら、私もそっち側でいたかったわ!
・・・・・・話がそれた。ともかく私は魔法少女のオタクとなり、今もこうして他の幹部と共にモニター越しに戦っているマギアカリーナたちをガン見している。*1 もし全身を覆う甲冑がなければ、私のニヤケ顔が組織内に露見していたことだろう。今ばかりは、この息苦しい装備に感謝している。
『ブーハッハッハッハ! この新しいコワガーレで、お前たちをペチャンコにしてやるトン!』
組織の下っ端──確か、ブダーンだったか。毎回、お決まりのように怪物『コワガーレ』を生み出し、人々に強い恐怖の感情を抱かようとしている、紫の衣服を纏ったブタみたいな奴。
にしても、『コワガーレ』とか直接的すぎるだろ名前が。組織は何とも思っていないのか? それとも、わかりやすさを重視してるのか? もしこの戦いがアニメなら、低年齢層向けにだろう。
『くぅっ!』
『マゼンタ!』
今回、怪物の素材にされたのは、工事現場にあったロードローラーだ。『コワガーレ』は地球の物質を素材にして生み出される怪物であり、倒せば元に戻る。怪物による被害は消えないが、そこは魔法少女たちの担当だ。彼女たちの力によって、破壊された街や物は毎回キチンと修復される。
『今までのとは、パワーが違い過ぎます・・・・・・!』
『でも、攻略法はあるはず!』
今のところ、魔法少女は三人。そのうち増える*2とはいえ、今回のコワガーレを相手するのは厳しいだろう。
まぁ、魔法少女がこんなところで負けるはずがないし、苦戦もまた戦いを盛り上げるスパイスだ。こちらの目的としても、彼女たちを殺そうとしている訳ではない。もしそうなったら全力で阻止する所存である。*3
『無駄無駄ァ! お前たちでは、このコワガーレを止められないトン!』
『シアン、イエロー! 私がコワガーレを受け止めるから、横から攻撃して!』
『確かに、側面からの攻撃なら、コワガーレを横転させられるかもしれない、けど・・・・・・』
『マゼンタちゃん一人で攻撃を受け止めるなんて、無茶です!』
マゼンタ、シアン、イエロー。色の三原色から名前を取ってきた名前だろう。ということは、追加枠はブラックかホワイトか? 今からワクワクが止まらないな。
『うっく、あああぁあ!』
『ば、バカな!? コワガーレの巨体を、一人で!? 何トンあると思ってるトン!?』
迫り来るロードローラーのローラー部分を、マゼンタが障壁の魔法を展開して受け止める。バリアー系統はイエローの得意分野だったはずだが、無茶をやるなら自分が引き受けるのがマゼンタの性格だ。こういうのって、良いよね・・・・・・! あとブダーン、お前それ言いたいだけだろ。
コワガーレを攻略したところだし、そろそろ必殺技で終わりだろう。折角だし、近くに見に行くか。
私が身を翻すと、幹部の一人が声をかけてくる。
「おや、黒騎士。もういいのかい? それとも、君も戦いに行くのかな」
「・・・・・・失礼する」
何か私も、悪の組織らしい格好いい返しをしようと思ったのだけど、思いつかなかったので適当に返事した。こんなところに時間をかけて必殺技を見逃しでもしたら、ショックで三日は寝込む自信がある。
大急ぎで戦いの近くの物陰に転移すると、ちょうどマギアカリーナたちが杖を構えたところだった。
「行くよ、二人とも!」
「アナタの悪事もここまでよ!」
「これ以上、この街を傷つけさせません!」
三人が魔力の宿った杖を交差させると、彼女たちと同じカラーリングの魔方陣が
「「「セレスティア・セレーネ!!!」」」
放たれたのは、極大の光。それはコワガーレを包み込み、浄化していく。それはまるで、曇天を晴らす陽光のようだった。
くっそ、今日は詠唱省略バージョンか! ブダーン、貴様が尺を取るからだぞ!*4
魔法の反動で風が吹き荒れ、それと共に魔力が周囲へと散っていく。この魔力が、壊れた街並みを癒やすのだ。ついでに私の心もすっごい癒やされている。ここまで近くで魔法少女を見るのは、久しぶりだった。
相変わらず可愛いなぁ・・・・・・。改めて、私は彼女たちの姿を目に焼き付ける。
三人とも、フリルやリボンが多めの衣装であることは前提として。まず目を引くのはマゼンタだろう。
マギアマゼンタは名前の通りマゼンタ、というよりはピンクを基調とした衣装で、一番オーソドックスなタイプだ。胸元に大きなリボンのある白い半袖に、同じく後ろ腰にリボンの付いたピンクのスカート、そして白いタイツ。靴は同じくピンクのローファーで、膝近くまでリボンが巻かれている。
ピンク色の長い髪はツインテールに結ばれており、左側の根元には魔女帽の、右側には星のアクセサリが。
昔ながらの魔法少女、といった感じの色バランスで、一見するとセーラー服にも見える王道デザインだ。
マギアシアンもシアン、というよりは水色がベースだ。ノースリーブのぴっちりとした水色のインナーに、手首から肘までを包む袖だけのパーツ。下半身はインナーと地続きのスカートに、太股までを覆うハイソックス。一番装飾が少なく、動きやすそうなのが彼女だ。
腰以上にある長い髪を星型のシュシュでポニーテールに結んでおり、横一文字に切り揃えられた前髪からも、スポーティーな印象を受ける。
袖や裾などにフリルこそあしらわれているものの、一番装飾の少ない彼女はパッと見だとスクール水着のようにも見えるデザインだ。動きやすさ重視なのだろうか。
そしてマギアイエロー、彼女が一番フリルが多い。黄色い半袖のワンピースの上から、フリルだらけのエプロンドレスを上から纏ったような衣装に、両手を肘まで覆う白手袋、そして膝上まである白いソックス。リボンはエプロンの後ろを留めているものくらいで、どことなくクラシカルな印象を受ける。
黄色いウェーブのかかったボブヘアは、フリルの付いたカチューシャで飾られている。
一番露出の少ないのも彼女で、全体的にメイドみたいなデザインだ。サポート寄りの性能が反映されているのだろう。
彼女たちこそが地球を守るために戦うマギアカリーナ──我々の敵にして、私の推しである。
「こうなったら、トンずらこくに限るトン! あばよ!」
あ、ブダーン、まだいたのか。魔法少女たちに気を取られすぎて、存在を忘れていた。
ブダーンはゴムボールのようなものを地面に叩きつけ、それによって発生した煙幕と共に消えた。
「ふぅ・・・・・・なんとかなりましたね」
「そうね。でもマゼンタ、アナタ無茶しすぎよ。バリアの魔法なら、イエローに頼めば良かったじゃない」
「えへへ、ごめん・・・・・・私がやらなきゃ、って思っちゃって」
はぁ~、尊い。ここが天国か?
イエローはその場に座り込み、一番ダメージの多いマゼンタをシアンが気遣う。甲冑の下の私の顔は、大変キモいことになっているだろう。
だが、私はこのまま帰る訳には行かない。確認したいことが出来たのだ。
私は物陰から歩み出し、マギアカリーナの前に姿を現す。
「敵を一体倒しただけで気を抜くとはな」
「っ、アナタは・・・・・・!」
「黒騎士・・・・・・!」
必殺技を打っているときや、戦っている最中。思えば、気になるタイミングは度々あった。そして今、どうしても気になってしまった。この疑問を抱えたまま、帰るなんて出来ない。
私は腰から剣を抜いて、構えた。
「相手してもらおうか。マギアカリーナ」
──魔法少女のスカートの中って、どうなってるんだろう。*5
黒騎士
悪の組織の幹部にして魔法少女オタク。休日は溜まってる魔法少女アニメを見て過ごす。
衣装のイメージ
・マギアマゼンタ セーラー服
・マギアシアン スクール水着
・マギアイエロー メイド服
低年齢層向けとは・・・・・・?