悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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長くなりそうだったので、途中で切りました。


総集編の時期①

「お姉様とお呼びしても?」

 

 黒騎士からすれば唐突としか思えない発言は、彼女──シュヴァルツからしてみれば、至極当然の流れから生まれたものだった。

 

 そもそも彼女は、黒騎士に憧れて悪の組織に入った存在である。今でこそエネルギー資源を求めて地球に侵略しているこの組織だが、元々は故郷の防衛組織だった。その頃に彼女は黒騎士に助けられ、以降ずっと憧れと共に生きてきたのだ。

 『シュヴァルツ』という名前も、『黒騎士』と同じ意味合いの言葉だ。尤も、その姿から自然と呼び名が付いた彼とは違って、自分で名乗っているのだけど。憧憬のあまり、そう名乗るようになってしまった。

 

 彼に助けられ、彼を目指して鍛錬を積んできた。そして、とても幸運な事に彼の部下として配属された。この時点で、彼女のテンションはストップ高だと言って良い。

 

 そんな中、誰も見たことが無いとすら噂されている彼の姿を──それも、絶世の美人としか言えないような姿を見て、彼女の思考は弾け飛んだ。

 

「・・・・・・なんて?」

 

「お姉様とお呼びしても、よろしいでしょうか?」

 

「それは、構わないが・・・・・・意図がわからない」

 

(わたくし)がそう呼びたいからです」

 

「そ、そうか・・・・・・」

 

 しかし、そんな事は黒騎士には伝わらない。性別の概念が存在しない彼は、その呼び方への抵抗感は薄かったが、疑問は(ぬぐ)えなかった。

 

「・・・・・・取り敢えず、映像を見るか。シュヴィー、君はその格好のままで良いのか?」

 

「お姉様がお望みならば着替えます」

 

「邪魔にならないなら構わないが・・・・・・」

 

 何故こんなにも自分に好意が寄せられているのかわからない彼の声は、困惑の色が強かった。それをまるで気にした様子もなく、シュヴァルツはテキパキと装備を外していく。残ったのは、競泳水着ほどの布面積しかないインナースーツと、膝上までを覆うソックスのみだ。

 彼女はその上からどこからか取り出したシャツとスカートを着る。そうすると、地球人とさして変わらない格好だ。Tシャツにデカデカと書かれた「I♡黒騎士」の文字を除けば。

 

「どこで調達してきたんだ、その服・・・・・・?」

 

「レイン様に用意して頂きました。地球の文化は面白いですね」

 

 部下のあんまりな姿に、黒騎士はちょっと引いた。自分の部屋着が「I♡魔法少女」シャツであることを棚に上げて。

 

「・・・・・・取り敢えず、見るか」

 

「はい!」

 

 黒騎士は思考を放棄し、モニターに目を向ける。元気な返事と共にシュヴァルツもまた正面を向くが、チラチラと視線が自分に飛んできているのを、黒騎士は感じていた。

 

『ブーハッハッハッハ! さぁ、今日からお前たちを毎日(まいにち)恐怖のトン底、いやドン底に沈めてやるトン!』

 

 映像が始まると、まず映ったのは地球における初めての任務を開始したブダーンだ。手始めにと自動車をコワガーレに変えて、人々を追いかけ回す。

 

 暫くそうして人々に恐怖を与えていた自動車コワガーレを前に、ある子供が逃げる際に転んでしまう。そこに割り込んで子供を助け出したのが、マギアマゼンタだった。

 

『もう大丈夫だよ』

 

 マゼンタは子供を逃がした後、コワガーレと戦い、(から)くも勝利を収める。彼女一人では必殺技を放つ事が出来ないようで、機転を効かせてエンジンに炎の魔法を放って爆発させたのだったか。

 しかし、魔法で修復できるとは言え爆発によって街を壊してしまい、彼女はもっと別のやり方があったはずだと痛感する──というのが、アニメ『マギアカリーナ』の第一話、もとい我々と魔法少女たちとの始まりの戦いだった。*1

 

「マギアマゼンタは炎の魔法を得意としているが、町中では周りを気にして過度に使わないようにしている心優しき少女だ。責任感も強く、自分たちで直せるからと言って街を壊す事を良しとしない」

 

「つまり、そこが弱点ですね。市民を人質に取るのが有効に思えます」

 

「いや、私が言いたいのは──まあいいか」

 

 マゼンタのその精神は美しく尊いものである──そう言いたかった黒騎士だったが、持ち前のコミュニケーションに対する面倒くささによって口をつぐんだ。

 

「何を言おうとしたのですか、お姉様? 教えてください」

 

「気にするな。君の分析は正しい。彼女たちは人々を守るために戦っている。守るべきものがある事は強さでもあり、同時に弱みにもなり得る」

 

 だが、きっと──彼女たちはその弱点をものともしないだろう。そういった確信が、黒騎士の中にはあった。

 その根拠を示すかのように、映像が切り替わる。

 

 次の場面では、とある学校にてブダーンが『さすまた』をコワガーレにして暴れ回らせていた。さすまたコワガーレの放つさすまたは生徒たちを捕らえ、地面に突き刺さって拘束する。

 

 そうして何人もの生徒が動けなくなるものの、現れたマゼンタによって救出される。怒りで鼻息を荒くするブダーンの指示を受けたコワガーレにマゼンタは応戦するも、一瞬の隙を突かれてさすまた攻撃を受け、壁に縫い付けられてしまった。

 

『ブッハッハ! お前はそこで他の奴らが苦しむ姿を見ているが良いトン!』

 

『くっ、うぅ・・・・・・!』

 

 小型のさすまたによって両手足の動きも封じ込まれたマゼンタの姿は、非常にそそられる*2──もとい、かなりのピンチだ。炎の魔法を使えば拘束は()けるかもしれないが、きっと自動車コワガーレを爆発させた事が頭を(よぎ)っているのだろう。もし学校を燃やしてしまったら、という懸念もある。

 

『そこまでよ!』

 

 そんな窮地(きゅうち)に現れたのが、マギアシアン──新たなマギアカリーナだ。彼女はコワガーレを蹴りの一発で吹き飛ばし、その隙にマゼンタを助け出す。

 

『ありがとう、シアン!』

 

『ふん、借りは返しただけよ』

 

 何度見ても、このやり取り良いな・・・・・・ この頃のシアンはまだマゼンタに対してやや冷たい態度を取っていたのだ。思うに、あくまで一時的な協力のつもりだったのだろう。

 恐らく、マゼンタが助け出した生徒の一人がシアンなのだ。その恩を返すべく、彼女は魔法少女になった。

 

 そして起き上がってきたコワガーレに対し、マゼンタとシアンは鋭い視線を向ける。

 

『私たちの学校に酷いことしたこと、許さない!』

 

『正直、まだ色々とよくわかっていないのだけど──アナタを倒せば良いってことだけは、わかるわ』

 

 重なり合った二人の思いに反応してか、それぞれのステッキの先端にある星形の水晶から、まばゆい光が溢れれ出す。

 

『マゼンタ! シアン! いまならふたりでまほうがつかえる!』

 

『えっ、二人で!?』

 

『そう! がったいまほう!』

 

 妖精(ふぁーたん)の導きによって、二人は合体魔法──つまりは必殺技を放てるようになったのだ。

 

ラーマ・ディ・フィアマ!!

 

 

 さすまたコワガーレが浄化され、その余波で学校が修復されていく様子に思わず拍手しながら、私は口を開く。

 

「マギアカリーナは、基本的に一人では強大な魔法を使う事は出来ない。仲間と協力し、力を重ね合わせる事で、何倍もの力を発揮する。共に戦う仲間こそが、彼女たちの一番の魔法なのかもしれないな」*3

 

「つまり、各個撃破が望ましいですね。分断して一人ずつ確実に倒して行くのが上策かと」*4

 

 その正論はNGだ。そんなこと、私も理解している。当然、ブダーンや他の幹部もだ。

 しかし、そうしないのにもそれなりに理由がある。

 

 まずブダーンだが、恐らくそこまで考えていない。基本的にコワガーレの能力は生み出すまでわからない、という側面もあるが、毎回(まいかい)目に付いた良さそうな物をコワガーレにしているようにしか見えないのだ。計画性が見受けられない。が、魔法少女の敵役としては満点だ。それで良い。だから私も改善を求める事などしない。

 

 レインは彼女たちの力を研究するために敢えて万全の状態で戦わせようとしている(ふし)があるし、セニオは分断策を使ったが、想定が甘かったため魔法少女たちに乗り越えられた。

 

「さて、では次はマギアイエローの登場回を──」

 

 と口にしたところで、私の端末に連絡が入る。相手はセニオだ。

 私が無言で通信を切ると、シュヴィーが小首を傾げる。

 

「出なくて良いのですか」

 

「直接来ているのではなく通信な辺り、大した要件では無いだろう。

 それよりも、こっちが優先だ

 

(わたくし)との時間が、優先・・・・・・」

 

 頬を赤らめるシュヴィーに、私が困惑していると、再び端末が震えた。

 

「・・・・・・面倒な。シュヴィー、少し待て」

 

「お姉様のためなら、いつまででも」

 

 どうしてこうも一々反応が大きいのか。私は眉間の間を押さえつつ、セニオからの通信に出るのだった。

*1
存在しない記憶

*2
変態

*3
良い事を言った顔

*4
マジレス




黒騎士
最近はマギアカリーナたちとの戦闘記録を魔法少女アニメっぽく編集するのが趣味。お前はどこを目指しているんだ。

シュヴァルツ
半分くらい映像じゃなくて黒騎士の横顔を見ていた。
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