悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】 作:高々鷹々
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「
そう名乗った少女──シュヴァルツに対して、魔法少女たちはステッキを構えて警戒しつつも、まずは対話を試みるつもりのようだった。
彼女たちはまだ、『ブダーン』と『黒騎士』という敵しか知らない。相手が組織だった存在だと、完全には把握できていないのだ。そのため、まだ攻撃を受けていない今のうちに、相手がどういった存在なのかを確かめたかった。
「私たちの敵、って・・・・・・貴方、あの紫ブタ──ブダーンの仲間なの?」
「・・・・・・アレと仲間と扱われるのは、少々気に食わないのですが」
真っ先に、シアンが問う。すると、返ってきたのは遠回しな肯定だった。三人のステッキを持つ手に、力が入る。
「教えて! 貴方たちの目的って、何なの? どうして人を苦しめようとするの?」
「そんな事も知らずに戦っていたのですか。少々
彼女たちは、
「ですが、答える義理はありません。私たちには私たちの事情があって、この星を攻撃しています。
そう
だが、ふとイエローが気付く。この、質問に答えずに煙に巻く感じに、覚えがあったのだ。
「シュヴァルツ・・・・・・確か、ドイツ語で『黒騎士』、だったはずです」
「黒騎士!? 貴方は、黒騎士と関係があるの!?」
マギアカリーナ、特にマゼンタにとって、『黒騎士』は特殊な存在だ。敵として戦っているのに、こちらを成長させるような事をしたり*1、コワガーレ攻略のヒントをくれたり*2、会ったことのある人物であるかもしれなかったり*3。だからこそ、少しでも情報が欲しい。
その思わぬ問いかけに、シュヴァルツは──
「あります。とてもあります。もう関係しかないと言っても良いでしょう。
「・・・・・・???」
シュヴァルツの意味不明な発言に、マゼンタは背中に宇宙でも背負ってそうな顔でフリーズする。近くの森林の中で、黒騎士は静かに頭を抱えた。
「お、お二人ってそういう関係、なんですか・・・・・・!?」
「過言では無いかと」*5
思わぬ所に
「・・・・・・少々、喋りすぎました」
「ッ、来る!」
シュヴァルツが大剣を片手に、突撃してくる。それを散開して回避した少女たちは、普段のように前衛と後衛に別れて戦おうとする、が──
「貴方が一番厄介ですので」
「うくっ!?」
「イエロー!?」
その陣形を無視して、真っ先に攻撃されたのはイエローだ。なんとか防御は間に合ったものの、重い斬撃に吹き飛ばされる。
「くっ、
「よっ、と!」
シアンがステッキから出現させた刃を振るうも、シュヴァルツは地面に剣を突き立てて回避し、そのまま剣を支柱に蹴りを繰り出した。それは彼女の身体に深く突き刺さる。
「あぐ!? っ、なんの!」
「ほう。耐えますか」
反撃にしてはあまりに重い蹴撃だったが、シアンは半ば無理矢理耐えきって、尚も
「この場所じゃ、でも・・・・・・
「思い切りは悪くないですね。良いとも言えませんが」
場所の問題からして威力は出せないのだろうが、実力差を鑑みて自分の一番得意な魔法を繰り出したのだろう。シュヴァルツはそう推察しながらも、攻撃自体は拳撃で相殺する。
「だったら!
詠唱と同時に、ステッキから稲妻が走る。それをシアンが離れたタイミングでシュヴァルツに向けて放った。
「ッ、効いてない・・・・・・」
「残念ですが、この装甲は生半可な電気を通しません」
「──こうなったら!」
「合わせるわ!」
二方向から急接近し、挟み撃ちに出るマゼンタとシアン。シュヴァルツは難なく迎撃し、それぞれ剣と蹴りをぶつける、が──
「
振るった剣が砕いたのは、いつの間にか復帰していたイエローが魔法で作り出した鏡だった。どうやら、マゼンタの姿を反射し誤認させていたようだ。
「ハアアアアア!」
「囮、ですか。しかし甘いです」
挟撃に見せかけた、三方向からの攻撃──しかし、これにもシュヴァルツは対応する。斬撃と蹴りを放った姿勢のまま更に一回転し、剣で攻撃を受け止めたのだ。
そしてそのまま、至近距離で重量のある大剣を叩きつければ──マゼンタは鈍い音と共に地面に激突した。
「あっ、うぐぅ!?」
「マゼンタ!」
「マゼンタちゃん!」
もし生身だったら、確実に──そう思わせるような一撃だった。思わず二人は悲鳴に近い声を上げる。
「お仲間を心配している余裕が、ありますか」
だが、それはシュヴァルツにとって隙と呼べてしまう。瞬時に移動した彼女は、連続して二人に刃を叩き込んだ。
「ぐぅッ!?」
「うあっ!?」
同じように、地面に転がる二人。実力差は、圧倒的だった。
「・・・・・・思ったよりも
シュヴァルツの声に
「・・・・・・まだ、」
だが、シュヴァルツはまだわかっていない。黒騎士が惚れ込んだ、彼女たちの強さを。
「えぇ、そうね・・・・・・」
「まだ、です・・・・・・・」
立ち上がる。拳を、杖を握りしめて、足に力を入れる。痛む身体を必死に動かして、ほぼ零に近い魔力を総動員して。彼女たちは、立ち上がる。
「・・・・・・? もう勝負は付きました。差は明確です。なのに何故、立ち上がるのですか」
「まだ、負けてない」
杖を、構える。もう魔法なんて一発も打てないだろう。それでも、構える。
「守りたいものがあるから──」
「譲れないものがあるから──」
「──だから、諦めない。負けられない!」
このままやっても勝てないのは百も承知だ。それでも、折れる訳にはいかない。大切な物を護るために。絶対に、諦めない。
「──」
シュヴァルツは、目を見開いた。年端もいかない少女であるというのに、ここまでの覚悟。強き精神。
これが、魔法少女──ああ、確かに。
目を奪われる。魅了される。心を焼かれる。
「・・・・・・見事、ですね」
「ああ。見事だ」
「ッ!!??」
突如として隣に現れた黒騎士に、シュヴァルツは思わず飛び
「黒、騎士・・・・・・」
「その心意気に
ボロボロの姿で、しかし黒騎士を見ても一歩も引いていない。彼は兜の下の笑みをますます濃くした。
「もう一度言おう。見事だ、マギアカリーナ。心からの賞賛を送る。
──シュヴァルツ。お前には、後で話がある」
「ッ!?」
そうして黒騎士は、シュヴァルツを引き連れ身を
「では、さらばだ。魔法少女たち」
そう言い残して、二人の黒い戦士は彼女たちを置き去りに、立ち去っていった。
黒騎士
後で話がある(内容意訳:あの登場、メッチャ格好良かったよ! 立ち回りも完璧! 後で褒めないと! あと、やっぱり魔法少女はくじけなかったでしょ!? どうよ、俺の推し!!)
シュヴァルツ
黒騎士に失望されたと思って本気で凹んでるし、このあと説教されると思い込んでいる。なお実際はべた褒めされる模様。
戦闘描写、ニチアサよりもバトルアニメだよな、って思いつつ、でもこういう魔法少女モノもあるしな・・・・・・の精神で書いてます。