悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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シュヴァルツ、(勝手に)初陣

(わたくし)の名前はシュヴァルツ──貴方たちの、敵です

 

 そう名乗った少女──シュヴァルツに対して、魔法少女たちはステッキを構えて警戒しつつも、まずは対話を試みるつもりのようだった。

 彼女たちはまだ、『ブダーン』と『黒騎士』という敵しか知らない。相手が組織だった存在だと、完全には把握できていないのだ。そのため、まだ攻撃を受けていない今のうちに、相手がどういった存在なのかを確かめたかった。

 

「私たちの敵、って・・・・・・貴方、あの紫ブタ──ブダーンの仲間なの?」

 

「・・・・・・アレと仲間と扱われるのは、少々気に食わないのですが」

 

 真っ先に、シアンが問う。すると、返ってきたのは遠回しな肯定だった。三人のステッキを持つ手に、力が入る。

 

「教えて! 貴方たちの目的って、何なの? どうして人を苦しめようとするの?」

 

「そんな事も知らずに戦っていたのですか。少々(あき)れますね」

 

 彼女たちは、妖精(ふぁーたん)に『地球がピンチである』『悪い奴らが侵略してきている』と教えられこそしたものの、肝心の『なぜ侵略してくるのか』を知れずにいた。戦っているのがブダーンや黒騎士という、マトモに会話しようとしない面々だった弊害である。

 

「ですが、答える義理はありません。私たちには私たちの事情があって、この星を攻撃しています。

 (わたくし)たちはアナタ方の平和を害する者。戦う理由は、それだけで十分でしょう」

 

 そう(あしら)われ、マゼンタは歯噛みする。

 だが、ふとイエローが気付く。この、質問に答えずに煙に巻く感じに、覚えがあったのだ。

 

「シュヴァルツ・・・・・・確か、ドイツ語で『黒騎士』、だったはずです」

 

「黒騎士!? 貴方は、黒騎士と関係があるの!?」

 

 マギアカリーナ、特にマゼンタにとって、『黒騎士』は特殊な存在だ。敵として戦っているのに、こちらを成長させるような事をしたり*1、コワガーレ攻略のヒントをくれたり*2、会ったことのある人物であるかもしれなかったり*3。だからこそ、少しでも情報が欲しい。

 その思わぬ問いかけに、シュヴァルツは──

 

あります。とてもあります。もう関係しかないと言っても良いでしょう。

 (わたくし)と言えば黒騎士様、黒騎士様と言えば(わたくし)。そう言っても過言では無いかと」*4

 

「・・・・・・???」

 

 シュヴァルツの意味不明な発言に、マゼンタは背中に宇宙でも背負ってそうな顔でフリーズする。近くの森林の中で、黒騎士は静かに頭を抱えた。

 

「お、お二人ってそういう関係、なんですか・・・・・・!?」

 

「過言では無いかと」*5

 

 思わぬ所に(ひそ)んでいた恋愛の気配に、イエローが(さと)く反応する。敵の前だというのに色恋へ反応した彼女に、シアンは「アナタね」と半眼を向けた。

 

「・・・・・・少々、喋りすぎました」

 

「ッ、来る!」

 

 シュヴァルツが大剣を片手に、突撃してくる。それを散開して回避した少女たちは、普段のように前衛と後衛に別れて戦おうとする、が──

 

「貴方が一番厄介ですので」

 

「うくっ!?」

 

「イエロー!?」

 

 その陣形を無視して、真っ先に攻撃されたのはイエローだ。なんとか防御は間に合ったものの、重い斬撃に吹き飛ばされる。

 

「くっ、ラーマ(刃よ)!」

 

「よっ、と!」

 

 シアンがステッキから出現させた刃を振るうも、シュヴァルツは地面に剣を突き立てて回避し、そのまま剣を支柱に蹴りを繰り出した。それは彼女の身体に深く突き刺さる。

 

「あぐ!? っ、なんの!」

 

「ほう。耐えますか」

 

 反撃にしてはあまりに重い蹴撃だったが、シアンは半ば無理矢理耐えきって、尚も果敢(かかん)に攻撃を繰り出す。

 

「この場所じゃ、でも・・・・・・フラム(炎よ)!」

 

「思い切りは悪くないですね。良いとも言えませんが」

 

 場所の問題からして威力は出せないのだろうが、実力差を鑑みて自分の一番得意な魔法を繰り出したのだろう。シュヴァルツはそう推察しながらも、攻撃自体は拳撃で相殺する。

 

「だったら! トーノ(雷よ)!」

 

 詠唱と同時に、ステッキから稲妻が走る。それをシアンが離れたタイミングでシュヴァルツに向けて放った。

 

「ッ、効いてない・・・・・・」

 

「残念ですが、この装甲は生半可な電気を通しません」

 

 (ほとばし)った電流は、回避すらされることなく無効化された。

 

「──こうなったら!」

 

「合わせるわ!」

 

 二方向から急接近し、挟み撃ちに出るマゼンタとシアン。シュヴァルツは難なく迎撃し、それぞれ剣と蹴りをぶつける、が──

 

スペッキオ(鏡よ)・・・・・・!」

 

 振るった剣が砕いたのは、いつの間にか復帰していたイエローが魔法で作り出した鏡だった。どうやら、マゼンタの姿を反射し誤認させていたようだ。

 

「ハアアアアア!」

 

「囮、ですか。しかし甘いです」

 

 挟撃に見せかけた、三方向からの攻撃──しかし、これにもシュヴァルツは対応する。斬撃と蹴りを放った姿勢のまま更に一回転し、剣で攻撃を受け止めたのだ。

 そしてそのまま、至近距離で重量のある大剣を叩きつければ──マゼンタは鈍い音と共に地面に激突した。

 

「あっ、うぐぅ!?」

 

「マゼンタ!」

「マゼンタちゃん!」

 

 もし生身だったら、確実に──そう思わせるような一撃だった。思わず二人は悲鳴に近い声を上げる。

 

「お仲間を心配している余裕が、ありますか」

 

 だが、それはシュヴァルツにとって隙と呼べてしまう。瞬時に移動した彼女は、連続して二人に刃を叩き込んだ。

 

「ぐぅッ!?」

「うあっ!?」

 

 同じように、地面に転がる二人。実力差は、圧倒的だった。

 

「・・・・・・思ったよりも呆気(あっけ)なかったですね」

 

 シュヴァルツの声に(にじ)むのは、失望だ。自分の敬愛する相手が高く評価しているから、どれだけの強さか確かめてみたが──まるで足りない。この程度なら、幹部最弱であり非戦闘員のレインですら勝てるだろう。ちなみに幹部最強は黒騎士様だ(シュヴァルツ調べ)。

 

「・・・・・・まだ、」

 

 だが、シュヴァルツはまだわかっていない。黒騎士が惚れ込んだ、彼女たちの強さを。

 

「えぇ、そうね・・・・・・」

「まだ、です・・・・・・・」

 

 立ち上がる。拳を、杖を握りしめて、足に力を入れる。痛む身体を必死に動かして、ほぼ零に近い魔力を総動員して。彼女たちは、立ち上がる。

 

「・・・・・・? もう勝負は付きました。差は明確です。なのに何故、立ち上がるのですか」

 

「まだ、負けてない」

 

 杖を、構える。もう魔法なんて一発も打てないだろう。それでも、構える。

 

「守りたいものがあるから──」

 

「譲れないものがあるから──」

 

「──だから、諦めない。負けられない!」

 

 このままやっても勝てないのは百も承知だ。それでも、折れる訳にはいかない。大切な物を護るために。絶対に、諦めない。

 

「──」

 

 シュヴァルツは、目を見開いた。年端もいかない少女であるというのに、ここまでの覚悟。強き精神。

 

 これが、魔法少女──ああ、確かに。

 

 目を奪われる。魅了される。心を焼かれる。

 

「・・・・・・見事、ですね」

 

「ああ。見事だ」

 

「ッ!!??」

 

 突如として隣に現れた黒騎士に、シュヴァルツは思わず飛び退()きそうになるほど驚いた。まるで気配が無かった。

 

「黒、騎士・・・・・・」

 

「その心意気に(めん)じて、今回は退()くとしよう」

 

 ボロボロの姿で、しかし黒騎士を見ても一歩も引いていない。彼は兜の下の笑みをますます濃くした。

 

「もう一度言おう。見事だ、マギアカリーナ。心からの賞賛を送る。

 ──シュヴァルツ。お前には、後で話がある

 

「ッ!?」

 

 そうして黒騎士は、シュヴァルツを引き連れ身を(ひるがえ)す。

 

「では、さらばだ。魔法少女たち」

 

 そう言い残して、二人の黒い戦士は彼女たちを置き去りに、立ち去っていった。

*1
偶然

*2
勘違い

*3
それは合ってる

*4
過言

*5
だから過言だって




黒騎士
後で話がある(内容意訳:あの登場、メッチャ格好良かったよ! 立ち回りも完璧! 後で褒めないと! あと、やっぱり魔法少女はくじけなかったでしょ!? どうよ、俺の推し!!)

シュヴァルツ
黒騎士に失望されたと思って本気で凹んでるし、このあと説教されると思い込んでいる。なお実際はべた褒めされる模様。


戦闘描写、ニチアサよりもバトルアニメだよな、って思いつつ、でもこういう魔法少女モノもあるしな・・・・・・の精神で書いてます。
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