悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】 作:高々鷹々
私は黒騎士──悪の組織の幹部であり、魔法少女オタクである。今もマギアカリーナたちが戦う姿を見るべく、街に降り立っていた。無論、魔法少女たちにはバレない位置に陣取るのも忘れていない。
眼前で繰り広げられているのは、三人の魔法少女と、スピーカーを元にしたコワガーレ──そして、療養中のブダーンに代わって任務を引き継いだ男、ガツンドだ。
彼は
「ほな、お手並み拝見や、マギアカリーナ。コワガーレ!」
「これって・・・・・・誰かの泣いてる声!?」
「そんな、これじゃ本当に助けを求めている人が居ても、判別できません!」
「そーゆーことや。ほら、確認せんで
マギアカリーナが戦うのは、コワガーレを倒すことためだけではない。誰かを守り、助けるためだ。そこを突いた、
「いやらしい手段を取りますね、あのガツンドとか言うの。これなら、まだブダーンの方がマシでした」
私の隣で同じく観戦しているシュヴィーが、顔を
周囲からは『助けて! 誰か!』『痛い・・・・・・痛いよぅ・・・・・・』『子供が取り残されてるんだ!』といった、生々しい誰かの悲鳴が響いている。恐らく、周囲のスピーカーを乗っ取って合成音声を流しているのだろう。聞いていて気分の良いものではない。
「くっ・・・・・・二人は救助をお願い! コワガーレは、私が!」
「待って、待ちなさいマゼンタ。悲鳴を確認をするにしても、私の魔法は戦闘向き過ぎて使いにくい。コワガーレは、私が抑えるわ」
いつものごとく飛び出そうとしたところを、シアンが止める。マゼンタは躊躇いながらも、「・・・・・・わかった!」と頷き、イエローと共に声の発生源へと向かっていった。
こういう場面では、いつも無茶ばかりしていたマゼンタを、ちゃんと止められるようになって・・・・・・いけない、彼女たちの成長に感動して、涙が。
「・・・・・・
「そうか」
耐えられなくなったのか、シュヴィーがどこかへ駆け出して行った。恐らく、マギアカリーナに隠れて周囲のスピーカーを停止させるつもりだろう。
今でこそ、我々は悪の組織として侵略活動を行っているが──以前は、もっと激しい戦いだってあった。その記憶が、ガツンドの策を許せないのだ。恐らく、シュヴィーも。
「たった一人でコワガーレと戦えるんか? 笑わせるわ」
「笑ってられるのも今のうちよ。アナタたちなんて、私一人でも十分だわ」
良いな。その強気さ、気高さ・・・・・・最高だ。流石は魔法少女。*1
シアンは魔法でステッキから刃を生成し、更に剣も作りだして、二刀流の構えを取った──地味に新魔法だ。
「
そして、コワガーレへと向かっていく。スピーカーコワガーレは全身から音を出して攻撃するが、シアンは構わず突貫し、斬撃を放つ。
「ほぉん、中々やるようやな。けど、そのやせ我慢がいつまで続くか見物やな」
あの上から目線な態度、腹立つな・・・・・・*2
ブダーン、お前は優秀だったんだな。『トン』とか変な語尾だと思ってたけど、いま思えば愛嬌があってキャラも立ってて、ちゃんと意味あったんだな。
ガツンドのあの様子、今回は魔法少女たちの実力を測ろうとしているのだろう。セニオの部下らしい、戦術的な視点だ。気に食わない。
彼を視線に入れたくないのもあって、私はマゼンタとイエローに視線を向ける。
「こっちは! 良かった、スピーカーだ・・・・・・」
「この辺りの確認は終わりました! 次は向こうに!」
「うん!」
あのマゼンタのセリフ──助けを求める人が居なかったと、安心しているのか。素晴らしい・・・・・・流石だ。魔法少女を体現した精神だ。
スピーカーもある程度は止められたようだし、もうすぐ合流して、合体魔法で
私も、鎧の機能を使って遠隔でハッキングし、スピーカーを停止させて居たが──それももう終わりになりそうだ。
魔法少女たちの活躍を目に刻み付けつつ、サポートもこなす。これぞ完璧な立ち回りというものだろう。*4
「ちっ、思ったよりも早いな。想定の倍近い早さや」
周囲からの声が
「シアン! 大丈夫!?」
「・・・・・・マゼンタ。ごめんなさい、いま耳が聞こえないの」
「そんな、私の魔法じゃ、聴覚は癒やせません・・・・・・」
シアンは至近距離で爆音の攻撃を受け続けたからだろう、聴覚が一時的に麻痺しているらしかった。
私はこの兜のノイズキャンセリング機能を使ってなんとかしたのだが・・・・・・まさか使うことになるとは思っていなかった。
「なら、私たちだけでやろう、イエロー!」
「っ、はい! やってみせます!」
声は聞こえないものの、二人の雰囲気から察したのだろう。シアンが後ろに下がる。
コレはまさか──マゼンタとイエローの合体魔法! これまで無かった組み合わせに、私のテンションはうなぎ登りだ。
二人はステッキを掲げて、詠唱を始める。
「光よ、心を照らせ!」
「炎よ、光と共に!」
「「フィアマ・デ・パルディーソ!!」」
放たれたのは、巨大な炎。しかし、激しさは無く、どこか優しさすら感じるような、浄化の炎だ。
温かな炎に包まれ、コワガーレがスピーカーへと戻る。その余波は光となって、傷付いた町並みを修復していった。
「・・・・・・ふん。これで勝ったとは思わない事や」
ガツンドはそう捨て台詞を吐いて、姿を消した。恐らく、拠点へと転移したのだろう。ブダーンとは違って、味気ない去り方だった。
▼△▼△▼△
ガツンドが去り、マギアカリーナもまた帰っていった。黒騎士もまた帰還するつもりだが、その前にシュヴァルツを探し出さなければいけない。
黒い甲冑姿で歩いては目立つどころの話ではないので、鎧を脱いで軽く散索していると、五分もせずに彼女は見つかった。鎧を身に着けた姿のまま、人目に付かない物陰で立ち尽くしている。
近づくと、声をかけるまでもなく黒騎士に気付く。
「ぁ・・・・・・お姉様」
「戦闘は終わったぞ。・・・・・・何かあったのか」
何かを
彼の言葉に、シュヴィーは顔を伏せる。
「・・・・・・子供を、助けました。あのスピーカーから出る音に紛れて、本当に助けを求めている子供が居たんです。
私が、初めてお姉様に会った時と同じくらいの歳の、子供が」
彼女は、つい先程の光景を、思い出す。
『全く、
文句を言いながら音の発生源を探り当て、シュヴァルツは建物に入った。そこに居たのは、年端もいかない少女だった。足が本棚の下敷きになって、身動きが取れない状態の。
『ッ──』
シュヴァルツは、言葉を失い──そして、少女を助け出した。本棚を持ち上げ、少女を抱える。
幸い、運が良かったのか大きな怪我は無さそうだった。自身で歩けそうだったため、彼女を立たせると、少女は泣きはらした瞳のまま、笑顔になった。
『お姉ちゃん、魔法少女でしょ? ありがとう!』
再び、言葉に詰まる。自分は、魔法少女ではない。むしろその逆だ。少女に恐怖を与えたのは、自分たちだ。
けれど、彼女の笑顔が、いつかの自分に重なって。
シュヴァルツは、嘘をついた。
『・・・・・・ええ、そうです。ほら、早く安全な場所へ』
そうして少女を逃がし──自分たちのやっている事を突きつけられ、動けなくなってしまった。
「わかっていた、つもりでした。
シュヴァルツは、目の前に立つ憧れへと視線を向ける。あの日、自分を助けてくれた
「そうか。・・・・・・
黒騎士は、それしか言えなかった。それだけ言って、シュヴァルツを抱きしめる。他に彼女を
彼女の気持ちは、全てでは無いにせよ、わかる。自分たちは侵略者なのだ。例え地球人を手にかけていなかったとしても、傷つけ、苦しめている。その事実は、酷く重い。
彼は自身の胸元で静かに涙を流すシュヴァルツの頭を撫でながら、同時にこうも思っていた。
黒騎士
上司としてシュヴァルツに寄り添う気持ちも本当だが、オタクとして光堕ちフラグに歓喜もしている。心が二つある。
シュヴァルツ
理想と現実のギャップに苦しむ。奇しくも光堕ちフラグを一つ達成。
ガツンド
関西弁リザードマン。精神攻撃もしかけてくる、ニチアサに居ちゃいけないタイプの敵。
・小ネタ マギアカリーナの三人の名前