悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】 作:高々鷹々
その日、私はブダーンに代わって新たに配属された戦士──ガツンドの部屋を訪れていた。頼んでもないのに、当然のような顔をして付いてきたシュヴィーに関しては、特に言及しないでおこう。
「・・・・・・邪魔するぞ」
「ヌ、黒騎士か。丁度いい、貴様の意見も聞こう」
ゲッ、セニオ・・・・・・彼も居たのか。最悪だ。
だがここで引き返すとまた文句を言われるので、諦めて大人しく入室する。
「どーもどーも、黒騎士サン。俺になんかご用ですの?」
「・・・・・・前回の任務だが。あの戦い方は──」
「なんや、黒騎士サン。もしかして
「察しがいいな」
私が最後まで言う前に、ガツンドが口を挟む。私は気にしないが、やめた方がいいぞ、そういうの。隣でシュヴィーがピキッてるし。
「我々の目的は感情エネルギーを集めることだ。マギアカリーナを倒す事では──」
「せやけど、あのマギアカリーナっちゅう連中のせいで、任務に支障をきたしてるのも事実ですわ。なら、アイツらを倒して懸念事項を減らした方が
「・・・・・・」
だから遮るなって・・・・・・シュヴィーの目付きが鋭くなってるだろう。
「黒騎士、貴様がどう思おうとも、我はあの小娘どもを排除する。そっちのシュヴァルツ──対魔法少女用の戦士とやらも、碌な功績を上げていないようだしな」
「・・・・・・!」
セニオの言葉は、事実だ。私が割って入ったのもあって、彼女は魔法少女との戦いで大きな戦果を上げられていない。まだ一度しか戦っていないのにその判断は早計だと思うが──いや、セニオからすれば、自ら戦いに出ない時点でマイナスなのか。
「悪いが、それは私の方針によるものだ。今はまだ彼女というカードを切るには早い。まずはマギアカリーナの実力を──」
「もう戦士として配属されてるのに、それは甘いんとちゃいます? それに、アイツらの実力なら記録映像でいくらでも確認できますやん。それに──」
「いい加減にしていただけますか」
またも私の言葉を遮ったガツンドを、今度はシュヴィーが遮った。その瞳からは、明確に怒りが見て取れる。
「何度も何度も黒騎士様の言葉を遮って・・・・・・礼儀がなっていないとは思わないのですか。
それに、功績を上げられていないのは
今お姉様って言いかけなかったか? 頼むぞ、セニオは私の素顔を知らないんだ。ここでお姉様呼びをされると、私がとんでもない変態になってしまう。
「フン、どうだかな。黒騎士の事だ、マギアカリーナを庇ってシュヴァルツを出撃させていないのではないか?」
「セニオ様。
キッと強い視線でセニオを睨み付けるシュヴィー。セニオはやれやれと肩をすくめた。
「上手く飼い慣らしたものだな。これではとても、役に立つとは思えない」
「・・・・・・ガツンド、だったか。お前の部下もまた、マギアカリーナを相手に敗走したはずだが」
「貴様ッ・・・・・・!」
正直、私もシュヴィーを悪く言われて怒りの感情が無い訳ではない。が、ここで怒ってはただの口喧嘩になりかねない。それはあまりに無駄だし、何より私が疲れる。
「言うてくれるじゃないですか、黒騎士サン。
・・・・・・次はあのガキ共をぶちのめしたりますよ。そっちの女にも、負けるつもりは無いんで」
「・・・・・・!」
お互いに睨み合うガツンドとシュヴィー。このままでは話にならないので、私は引き上げる事にした。・・・・・・まだ話したかった事の半分も話していないのだが。
しかし、これ以上は平行線だろう。私は感情エネルギーを優先すべき*1だと言うのに対し、セニオらはマギアカリーナへの対処が先だと言う。
本当は、昨日の任務で一般人を巻き込んだ件についても話すつもりだったのだが、今の彼らならば『マギアカリーナを倒すためには多少は仕方ない』とか言いそうだ。なんとも悪の組織っぽい。*2
「邪魔をした。失礼する」
「フン。貴様らは我々の戦いを、せいぜい見ておくんだな!」
私が見るのは、お前たちの戦いではなく魔法少女の姿だ。
そう口には出さず、私たちは退出した。
私の部屋に戻って、鎧を脱ぐ。戦ってもいないのに、精神的に疲れた。
私に
少しだけ降って湧いた邪念を振り払って、私は口を開く。
「しかし、彼らも見る目がないな」
「お姉様?」
「シュヴィーは最高の部下だと言うのに」
ここまで魔法少女の素質がある部下なんて、そうそう居ないんじゃないだろうか。
「・・・・・・ありがとうございます。
ふむ。反応からして、喜んではいるが、セニオらの言葉が
「シュヴィー。セニオたちの言葉を気にする必要は無い。言いたい奴には言わせておけば良い」
「・・・・・・お姉様」
それでも、彼女の表情は浮かばない。もう少し背中を押す必要があるか。
「以前も言っただろう。周りは気にしなくて良い。自分の判断に従え」
「それで、もし・・・・・・組織と──お姉様と敵対する事になっても、ですか?」
そのセリフに、私は思わず口元を綻ばせた。察するに、光堕ちはもう目前だ。
「ああ。それに、私は何があっても君の味方だ。例え私の部下では無くなっても、な」
悪の組織だろうと、魔法少女だろうと、私はシュヴィーの味方をするだろう。むしろ魔法少女であった方が強く味方するまである。
「でしたら・・・・・・迷いは無くなりました。
お姉様が味方で居てくれるなら、
待て、そのセリフは違う! 光堕ちじゃなくて、死亡フラグだから!!
黒騎士
本編史上最大に焦った。シュヴィーにはキョトンとされた。
シュヴァルツ
光堕ち街道まっしぐら。それはそれとして、でっかい恋愛フラグも建築中。
セニオ
デュエリストじゃねぇ、リアリストだ。
※サブタイトル、及びイエローのセリフ色を修正しました。