悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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おまたせしました。
約一週間、投稿できずにすみませんでした・・・・・・体調を崩しておりました。
その分、今回はちょっと長めです。

※これまでのサブタイトル、及びイエローのセリフ色を修正しました。ただサブタイトルはノリで付けたので、そのうちまた変えたりするかもしれません。


覚醒! マギアネーロ!①

 町中で、コワガーレの咆哮が響いた。突然現れた怪物に人々は恐怖し、逃げ惑う。

 

 そして、誰かが助けを求めて叫んだ。

 

「そこまでだよ、コワガーレ!」

 

 人々の想いに応えるように現れたのは、マギアカリーナ──三人の魔法少女たち。平和の守護者だ。

 

 三人はステッキを構え、コワガーレと対峙する、が──コワガーレの様子がおかしかった。

 

 黄色い身体に、鳥類を思わせる頭部。首は長く、膨らんだ腹部はまるで風船のようだ。

 そして、何より動かない。その巨大な腹部を膨縮させ、耳障りな叫びこそ上げるものの、暴れ出す様子は無い。

 

「えっと、倒して良い、んだよね?」

 

「当たり前でしょ」

 

「妙なコワガーレですね・・・・・・」

 

 三人がステッキを重ね、必殺技の詠唱を始めようとした時、コワガーレを黒い影が叩き斬った。

 

「待っていました。貴方たちが現れるのを」

 

 着地と同時に振り返ったのは、彼女たちの敵──シュヴァルツ。彼女は大剣一つで、マギアカリーナたちの合体魔法を擬似的に再現し、自らコワガーレを撃破したのだった。

 

「・・・・・・どういうつもりかしら」

 

 シュヴァルツは、コワガーレの元になったびっくりチキンを拾い上げ、三人を見据えて。

 

「貴方たちに・・・・・・お話があります」

 

 そう切り出した。

 

 マギアカリーナたちに、少なくない動揺が走る。

 というのも、ブダーンや黒騎士、目の前のシュヴァルツ、そして先日現れたガツンド──彼らはこちらと戦いこそすれ、対話という対話をして来なかったのだ。なぜ彼らがコワガーレを生み出し、人々を襲うのか。彼女たちは、まるで知らない。

 

「話って?」

 

 真っ先に反応したのは、マゼンタだ。ステッキを下ろして、シュヴァルツへと歩み寄る。シアンはギョッとして呼び止めた。

 

「待って、マゼンタ。罠かもしれないわ。仲間が側に(ひか)えているのかも」

 

「でも、もし本当に話があるんだったら、聞いてみないと」

 

「気持ちはわかりますけど・・・・・・」

 

 イエローは、マゼンタの態度にひっそりと溜め息をついた。最近は無茶こそ減ってきたものの、彼女がこうなったら何を言っても曲げないのは、嫌というほど理解していた。シアンも同じだ。

 けれど、だからと言って自分たちまでマゼンタに賛同する訳にはいかない。シアンもイエローも、警戒を解くつもりはない。

 

「勿論、簡単に信じてくれるとは思っていません」

 

 想定通りの反応だったのだろう。シュヴァルツは自身の武装を解除する。鎧を外し、大剣を手放し、装備の機能の大半を停止させる。まだ動いているのは、組織にバレないようにするためのジャミング能力だけだ。

 

 そこ居たのは、いつか出会った少女──黒木志由そのものな姿に、マギアカリーナは驚愕する。

 

「ッ!?」

 

「これでも信用できないと言うなら、武器も捨てます。

 私は、貴方たちと戦うつもりはありません」

 

 その言葉通り、彼女は鎧や大剣を、マギアカリーナの側へと滑らせるようにして放る。残ったインナースーツは胴体と脚を覆うのみで、ほぼ肌着も同然だ。

 流石にここまで肌を(さら)すのには羞恥心を覚えるのか、シュヴァルツの頬は少し赤らみ、唇を噛んでいた。

 

「ま、まだ武器を隠し持ってるかもしれないわ!」

 

「その、これ以上は、流石に恥ずかしいのですが・・・・・・」

 

「脱げって言ってる訳じゃないわよ!」

 

 耳まで赤くしながら、インナースーツに手をかけたシュヴァルツに、同じく顔を真っ赤に染めたシアンが叫んだ。

 

「マゼンタちゃん、どうしましょう」

 

「信じるよ。私は、貴方を信じる。お話、聞かせてください」

 

 そう言って、マゼンタはシュヴァルツへと歩み寄り、右手を差し出した。シュヴァルツはどこかほっとしたような顔で、その右手を掴もうとして──

 

「コワガーレ! やるんや!」

 

 怪物の、咆哮が響いた。

 

 瞬間、視界が閃光に包まれる。

 

 思わず目を閉じ、再び開いた時には──左右が反転した、見知ったはずの街の中だった。

 

「ここは・・・・・・っ、やっぱり──」

 

「ガツンドですか。してやられましたね」

 

 やはり罠だったとシアンは真っ先にシュヴァルツへとステッキを向けるも、彼女もまた苦い顔で周囲を睨んでいた。格好も、インナースーツのままだ。

 

「どういう状況か、わかるんですか」

 

「恐らく、コワガーレに取り込まれました。状況から見るに、鏡──それも、かなりの大きさの物です」

 

 シュヴァルツは静かに状況を見極める。ガツンドの狡猾(こうかつ)さからして、自分が彼女たちと接触しようとした段階で、既に隠れ潜んでいたのだろう。そして、自分ごとマギアカリーナを排除しようとした。

 

「取り込まれました、じゃないわよ! じゃあここは、コワガーレの中ってこと!?」

 

「そうなります」

 

「出られないんですか?」

 

(わたくし)の装備があれば、直ぐだったのですが・・・・・・どうやら、こちらには来ていないようです」

 

 シュヴァルツは口の中で舌打ちした。どうやらガツンドは、本気で自分を消そうとしているらしい。それか、装備を回収できれば同じだけの戦力になるとでも思っているのだろうか。

 

「じゃあ、どうしろって言うのよ! 早くコワガーレを倒さないと・・・・・・!」

 

「シアン、落ち着いて? 今は争ってる場合じゃないよ」

 

 マゼンタの言葉に、シアンはハッとなる。どうやら、シュヴァルツに騙された、という勘違いへの怒りが、残ったままだったらしい。

 それだけでは無い。今まで散々街をメチャメチャにしておいて、今更『話がしたい』などと言われた事にも、腹が立っていたのだ。

 

「・・・・・・悪かったわね。少なくとも今の状況は、アナタの意図したモノじゃ無いんでしょう?」

 

「はい。それを証明しろと言われると、難しいのですが・・・・・・」

 

「罠だったら、そんな格好のままで居るはず無いもの」

 

 指摘されて思い出したのか、シュヴァルツは思わず腕で体を隠した。肌にぴっちりと張り付いたスーツは肩から下しか無く、腰の布もかなりの角度で、ハイレグもかくやという露出度だった。

 脚を覆うソックスも膝上までで、太腿はばっちり見えている。唯一外していなかった武装であるヒールも相まって、かなり扇情的な格好だ。

 

「純粋な疑問なんですけど・・・・・・その、どうしてそのような格好に? その上から武装して戦っていたんですよね」

 

(わたくし)だって着たくて着ているのではありません! これはその、開発者がこちらの方が武器の性能を発揮できると・・・・・・!」

 

 普段は装甲で隠れているし、動きやすいので悪くないのだが──シュヴァルツにも羞恥心はある。何より、自身の敬愛する黒騎士を取り合うライバル(と、勝手に思っている)マギアカリーナにそれを指摘させるのは、屈辱的だった。

 

 空気が弛緩(しかん)したのを感じて、マゼンタはシュヴァルツへと切り出す。

 

「シュヴァルツさん、で良いのかな。ここから出るの、協力して欲しいんだ」

 

「・・・・・・そうする他なさそうですね。武器が無い状態では、(わたくし)一人でここから脱出するのは難しいですし」

 

 話は、その後で、だ。シュヴァルツのしようとした話も、彼女の姿が自分たちの知り合いそのもの──というか、恐らく本人である事も。

 かくして、魔法少女とシュヴァルツの、共同戦線が敷かれる事となった。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

 私は、悪の組織の幹部であり、黒騎士と呼ばれている──魔法少女オタクである。*1

 

 シュヴァルツがこっそりと出撃したのを確認し、何かマギアカリーナへアクションを起こすのだろうと尾行したのだが。

 

「まさか、ガツンドも居たとはな」

 

 彼女たちのやり取りに意識を向けすぎて、ガツンドに気付けなかった。*2 黒騎士、一生の不覚だ・・・・・・。

 

 気を取り直そう。

 街で暴れているのは、ミラーコワガーレ──大鏡を元にしたコワガーレだ。鏡の世界にマギアカリーナたち、そしてシュヴィーを取り込み、敵対者を無力化した。

 

 マギアカリーナたちならば内部からの脱出自体は可能だろうが、それでもどれだけ時間がかかるかわからない。その間に民間人から感情エネルギーを集める算段だろう。そこから、マギアカリーナへの対処はシュヴィーよりも自分が優れているとして、シュヴィーを、ひいては私を失墜(しっつい)させるのが狙いと見た。

 

「セニオならもっとストレートに来るはずだ。ガツンド自身の策か」

 

 シュヴィーが魔法少女たちと接触しようとしたこと自体は、恐らくシュヴィーの装備によるジャミングでなんとかなるはず。今だけは、レインが無駄に積んだ機能に感謝だな。

 レインの事だから、この使われ方は想定していなくて、機能を詰め込めるから詰め込んだだけなんだろうが。

 

「さて」

 

 ここから私がやるべきは、シュヴィーがマギアカリーナに覚醒するのを見る事だ。

 そのためには、まずあの鏡の中の世界に行かなければならない。幸い、あのコワガーレは一般人も鏡の世界に取り込んで、恐怖を与えている。アレに私も(まぎ)れよう。

 

 だがその前に、あの妖精──ふぁーたんを探し出さなければ。彼(彼女?)がいなければ、シュヴィーが魔法少女の力を得られないからな。

 

 建物の屋上に跳んで周囲を見渡せば、妖精(ふぁーたん)は直ぐに見つかった。木の陰に隠れて、コワガーレを見ている。いつも、そうやって彼女たちの戦いを見守っていたのだろう

 

『マゼンタ、シアン、イエロー・・・・・・ここからじゃようす、わからない』

 

「なら、私が連れて行こう」

 

 鎧を外し、素顔の状態で、ふぁーたんの前に姿を現す。ふぁーたんは元から大きい瞳を更に広げて、大げさに驚いた。

 

『このまえの! ふぁーたんのこと、みえてる!?』

 

「バッチリと。

 私も、彼女たちの手助けをしたい。一緒に来て貰おう」

 

 そう言って、返事を聞くより先にふぁーたんを掴んで駆け出す。

 

『ごういん!? まって、ふぁーたんのことみえてるなら、きみもマギアカリーナに──』

 

「舌を噛むぞ」

 

 何か話しているが、走っているのもあって聞き取りにくい。コワガーレが暴れていて、人々の悲鳴が途絶えないのもあるだろう。

 

「ナァーッハッハッハ! コワガーレ、もっと人間を取り込むんや!」

 

 マギアカリーナを無力化して調子に乗っているのだろう。ガツンドは高笑いしながらコワガーレに指示を出す。一般人の波の中にいる私に気付く様子もない。

 

 なるほど、私が組織の中で素顔を隠していたのは、こういう時のためだったのか・・・・・・!*3

 

「よし、行くぞ」

 

『このひと、はなしきかない!』

 

 妖精(ふぁーたん)が何か言っているが、今の私はかなりテンションが高く、周りのことを気にしている程の余裕が無い。

 シュヴィーが魔法少女に覚醒する大舞台だ、見逃す訳にはいかないからな。*4

 

 コワガーレは私たちに向けて身体の大半を占める鏡を発光させると、私の視界は閃光に包まれた。

*1
それで良いのか

*2
戦犯

*3
思い込み

*4
コイツにとっては確定事項




黒騎士
光堕ち展開を見逃さないために野次馬根性を発揮した。テンションが高くなると人の話を聞かなくなるタイプ。

シュヴァルツ
私、シュヴァルツ! どこにでもいる普通の悪の組織のメンバー!
ある日、魔法少女たちと対話しようと思ったら、武器も装備も無い状態で、鏡の迷宮に取り込まれちゃった。しかも、魔法少女たちと一緒に!? これから一体、どうなっちゃうの〜?(尚タイトル)
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