悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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総合評価が1000ポイントを超えてました。皆様のお陰です、ありがとうございます。


覚醒! マギアネーロ!③

 (わたくし)は、母星の()()()()()()──そこに所属する、戦士です。名乗るほどの者ではないですが、お呼びの際は是非シュヴァルツと呼んで頂けると。

 

 幼い頃、黒騎士と呼ばれる存在に助けられた(わたくし)は、その姿にずっと憧れ、いつかその背中に追いつきたいと、鍛錬を重ねました。

 そして、とうとう組織の一員になり、それなりの階級まで上り詰める事は出来たのですが──その頃には、組織は他の星に侵略を行うようになっていました。

 

 正直、複雑でした。(わたくし)が目指したものは、憧れていた存在は、もう無くなってしまったのでは無いかと。

 けれど、黒騎士様は変わっていませんでした。初めてお会いした時から変わらぬ(たたず)まいと、圧倒的な存在感。本部からあの人の部下になるよう通達が来た時には、本当に、跳び上がるほど嬉しかった。思わず天井を壊してしまったのですが、些末(さまつ)な事でしょう。

 

 改めてお会いした黒騎士様は──本当に、美しかった。よく倒れなかったと思います、(わたくし)。そのまま勢い余って『お姉様』と呼ばせて頂けるようになりましたが、それだけ(わたくし)にとっては衝撃だったのです。

 

 考えてもみてください。幼い頃から憧れ、目指していた相手が、鎧を脱ぐと実はべらぼうな美人だった──最強では? いえ、言うまでもなく、お姉様は最強ですが。

 

 だからこそ、(わたくし)は迷ったのかもしれません。お姉様は、組織の()りようが変わっても、変わらなかった。けれど(わたくし)は──

 

 あのとき、地球の子供を助けたとき。その子供の姿が、過去の自分に重なりました。そして(わたくし)は、気付いたのです。自分たちがしている事の、重さに。

 

 わかっていたはずなのです。自分たちは侵略者で、他者を傷つける悪の組織なのだと。けれど、(わたくし)が目指したのは、お姉様のような──あの日の黒騎士様のような、誰かを助ける存在なのです。

 

 ああ、だからこそ、なのかもしれません。

 

「イエロー、お願い!」

 

「そこです、スペッキオ(鏡よ)!」

 

「これで・・・・・・終わりよ!」

 

 コワガーレと戦う少女たち──マギアカリーナを見ていると、嫌気が差します。それは、自分たちのしている事への罪悪感で、同時に──誰かを守るために戦えている彼女たちへの、嫉妬なのかもしれません。

 

「シュヴァルツさん、大丈夫? 怪我とかしてない?」

 

「・・・・・・ええ。問題ありません」

 

 そんな彼女たちに守られている現状は、正直に言ってあまり面白くありません。(わたくし)も、せめて武器さえあれば戦えるのですが。

 

「なら良かった!」

 

 何より、彼女──マギアマゼンタ。彼女がこちらを、『守る対象』として地球人と同じように扱っているのが、気に食わない。

 

 私は、あの頃の私じゃないのに。誰かを守る側に、立ったはずなのに。

 

「・・・・・・やるせない、ですね」

 

 (わたくし)のその呟きは、誰にも届く事なく宙へと消えた。

 

 

 

 

 私にはバッチリ届いているがな。*1

 

 訓練で鍛えた動体視力を持ってすれば、端末越しであっても、(わず)かな唇の動きから発言くらいは読み取れる。

 

 ここからは私の直感になってしまうが、光堕ちはすぐ目の前だ。今、シュヴィーの心は沈んでいる。恐らく、ここから何かイベントを(はさ)んで、覚醒だ。*2

 そのためにも、早く合流しなければ。せめてふぁーたんだけでも届けたいのだが・・・・・・。

 

『くろき! まよった!』

 

「頭が痛くなってきたな」

 

 現在、我々は道に迷っていた。私もふぁーたんも元はこの星の住人では無い上に、この鏡の世界は迷宮と化している。どうやら、リアルタイムに形を変えているらしく、厄介極まりない。

 

「余りやりたくは無いが、空間の連続性を斬って移動するか・・・・・・? いや、ここが作られた世界である以上、強度に問題があるか」

 

『ちょっとなにいってるかわからない』

 

 思わず思考が口に出ていたらしいく、ふぁーたんがバケモノを見るような目を向けてくる。失礼な、身体構造は地球人とそんなに変わらないというのに。

 ともかく、それだけ手詰まりということだ。

 

『くろき、どうしよう!』

 

「そこで私を頼るのか・・・・・・」

 

 どうしたものか。手段はあるにはあるが、どれも私の正体がバレるようなものばかりだ。*3 マギアカリーナに力を貸す妖精であるふぁーたんにそのことが知られれば、当然(とうぜん)私は彼女たちと敵対する事になってしまう。*4

 

 私たちが顔を見合わせていたその時、端末から耳障りな哄笑(こうしょう)が響いてくる。

 

『ナァーッハッハッハ! 中々やるやないか、マギアカリーナ!』

 

 

▼△▼△▼△

 

 

「ナァーッハッハッハ! 中々やるやないか、マギアカリーナ!」

 

 鏡の世界に囚われた彼女たちの前に現れたのは、コワガーレを作りだし、マギアカリーナをこの世界に取り込んだ張本人──ガツンドだった。

 

「ガツンド・・・・・・!」

 

「お、なんや。シュヴァルツ、まだ生きとったんか。とっくにくたばっとるモンかと思っとったけど──まさか、マギアカリーナに守ってもろうてたとはなぁ」

 

 そう言った彼の態度は、どこまでもシュヴァルツを見下したものだった。自分が出世する上での目の上のたんこぶだった彼女が無力に守られている状態は、彼からすればよほど面白いのだろう。

 

「せやったら、準備した甲斐があったわぁ」

 

 そう言ったガツンドの影から、黒い人型の何かが()()でる。

 それは、真っ黒な身体に、シュヴァルツの鎧を装備した──意思なき傀儡(かいらい)。正真正銘の、人型兵器だ。

 

「シュヴァルツの鎧の力を引き出せるように作った人形や。強さも(おんな)じ。いや、それ以上かもしれへんな?」

 

「どこまでも、巫山戯(ふざけ)真似(まね)をしてくれますね・・・・・・!!」

 

 自分の装備──黒騎士のディテールに寄せて(あつら)えてもらったソレを利用され、シュヴァルツの怒りの炎が強くなる。

 

 武器を失ったまま吠える彼女をせせら笑って、ガツンドは腕を上げた。

 

「ミラーコワガーレの能力を発展させて生み出した──名付けて、『ミラー・ドッペル』や!

 せっかく復活させたコワガーレも、だいぶ削られてもーてるみたいやし。この子に頑張ってもらわな」

 

 実際、倒されたコワガーレのうちの半分ほどは黒騎士の仕業なのだが──ガツンドはそれを把握していない。

 

「シュヴァルツさんは下がってて!

 シアン、イエロー、行くよ!」

 

 マゼンタのかけ声の元、マギアカリーナたちが構える。

 黒い鎧──ミラー・ドッペルもまた大剣を振り上げ、魔法少女たちへと襲い来る。

 

(わたくし)はまた・・・・・・守られる事しか、出来ないのですか」

 

 繰り広げられる戦いを前に、シュヴァルツは歯噛(はが)みする。目の前で起きている戦闘は、とても生身の状態では割り込めない。

 

 彼女の鎧を纏った意思なき人形、ミラー・ドッペルの戦い方は、シュヴァルツとは全く正反対のものだった。

 

「うぐっ!」

 

「くっ、コイツ・・・・・・!」

 

 接近戦を仕掛けたマゼンタの魔法を(かわ)し、そのまま腕を掴んで盾にして、シアンに攻撃を躊躇(ちゅうちょ)させる。

 

「きゃあっ! うぅ・・・・・・あっぐぅ!?」

 

「きぃちゃん!!」

 

 同じ相手の、同じ部位を執拗に狙い、痛めつける。

 

「あうっ!?」

 

「ぐ、うぅ・・・・・・!」

 

 そして、機械的なまでに正確な攻撃と防御。

 

 マギアカリーナたちは、これまでの戦いで確かな経験を積んできた。にも関わらず、圧倒される。

 

「ナァーッハッハッハ! コレが俺の作り出した『ミラー・ドッペル』の力や! コイツなら、あの黒騎士にだって勝てるかもしれへんなぁ!」

 

 再び、先程よりも高らかに哄笑するガツンド。その顔は、勝利を確信していた。

 

「まだ、私たちは・・・・・・うぐっ!?」

 

 地面に転がり、立ち上がろうとしたマゼンタに、ミラー・ドッペルは蹴りを入れた。

 マギアカリーナたちは、満身創痍だった。立ち上がろうとするも、力が入らないのか再び倒れ込んでしまうほどに。

 

 そのまま追撃しようとした黒い人形の前に、割って入る影があった。

 

「ァ? なんや、シュヴァルツ。今ええとこなんや。水差すなや」

 

「聞き捨てならないですね。そんな(まが)(もの)で、黒騎士様に勝つだなんて。

 他人の力ばかり使って、貴方自身が強くなったとでも錯覚しましたか?」

 

 明らかな挑発。しかし、ガツンドはそう理解していながらも、自身の怒りを抑えられなかった。

 

「回りくどい事すんなや、先に死にたいならそう()やぁ良いモンをなぁ!

 まずはその女からや、ミラー・ドッペル!」

 

 主人の命令に従い、人形は標的を変える。相手が生身であろうと関係なく、大剣を本来の主へと振るう。

 

「ッ!」

 

 正確無比な攻撃は、しかし直線的で狙いもわかりやすい。日々鍛錬(たんれん)によって鍛えているシュヴァルツは、どうにかミラー・ドッペルの攻撃を回避する。自身の武器の性能を熟知しているのもあるだろう。

 

 そうして、一方的に攻撃されながらも、紙一重で避け続けるシュヴァルツだったが──しかし、限界はある。

 

「ぐっ、がふっ!」

 

 ミラー・ドッペルの放った蹴りが、腹部に突き刺さる。一度でもマトモに攻撃を受けてしまえば、もう立て直せない。

 

「お、ぐ・・・・・・いぎっ!?」

 

 続く刃をどうにか躱すも、突き出された拳までは避けきれずに受ける。そのまま回し蹴りをぶつけられ、派手に吹き飛んだ。

 地面に激突し、いくつもの傷を作りながら転がるシュヴァルツ。余りに痛々しい姿に、マゼンタは思わず悲鳴に近い声で叫んだ。

 

「シュヴァルツさん!!」

 

「ぇほ、くっ・・・・・・」

 

 それでも、シュヴァルツは立ち上がろうとする。そのしつこさに、ガツンドは顔を(しか)めた。

 

「なんなんや、お前。

 武器も立場もぜーんぶ俺が奪った。勝ち目だって無いのはわかってるやろ。

 なのに、なんなんや、お前。力と一緒に、賢さまで失ってしまったんか?」

 

 シュヴァルツは、立ち上がる。彼女を突き動かすのは、たった一つの思いだ。

 

「ッ、例え、力が無くとも! (わたくし)は、あの()決めたのです!

 誰かを守れる存在に、なると・・・・・・!」

 

 それは、決意にして覚悟。自分自身に対する、誓い。誰かを守りたいという、純粋なる心。

 

 それに呼応するように──(まばゆ)い輝きが、彼方から飛来する。

 

「あれって・・・・・・!」

 

「私たちの時と、同じ・・・・・・」

 

 シュヴァルツの手に収まったのは、コンパクト。しかし、ただの化粧品ではない。魔法のアイテムだ。

 

「これは・・・・・・」

 

『それをつかって! そうすれば、マギアカリーナになれる!』

 

 いつの間にやら、シュヴァルツの近くに浮遊しているのは、いつか見た猫のような妖精──ふぁーたんだ。

 

「ふぁーたん! どうやってここに!?」

 

『いろいろあった! ほんとに、いろいろ・・・・・・』

 

 遠い目をするふぁーたん。その表情には、疲弊が滲んでいた。

 

「なんやようわからんが・・・・・・無駄な足掻きされんのも(しゃく)や!

 ミラー・ドッペル!」

 

 急展開に少々フリーズしていたガツンドだったが、そのまま黙ってみているはずもない。自らの傀儡に、命令を下す。

 

 だが──突如、突風のような斬撃が、ミラー・ドッペルへと襲いかかった。複数方向からの、回避不能な攻撃。それを受け、人形は防御せざるを得なくなる。

 

「な、なんや!? どこから!?」

 

 動揺するガツンド。それだけで、稼ぐべき時間は十分だった。

 その攻撃に思い当たる節があったのか、シュヴァルツは涙混じりに少し微笑む。そして、コンパクトを掲げた。

 

「マギア・リナッシェレ!」

 

 彼女は、宣言する。自分は、変わるのだと。変わったのだと。他ならぬ自分自身に、そして今も見守ってくれている誰かに。

 

 光と共に、彼女の姿が変わっていく。

 長い黒髪は紫に染まり、側頭部のあたりで結ばれ、ツーサイドアップに。アンダースーツは輝きと共に弾け、フリルがあしらわれた黒いワンピースへと変化する。

 両手を叩いて鳴らせば、肘までを覆う紫のオペラグローブが出現。同じように踵を鳴らせば、太股までを紫のソックスが包み、黒いガーターベルトが補強する。

 そのままヒラリと一回転すると、スカート部分から布が追加され、レース生地でドレスを形作る。

 仕上げとばかりに髪を掻き上げれば、結ばれた根元に星の装飾品が(きら)めいた。

 

「心に従う、それが(わたくし)の光だと信じて!

 マギアネーロ! それが、今の(わたくし)です!」

 

 憧れという光を取り戻した、新たな星。マギアネーロが、ここに覚醒した。

*1
ややメタ発言

*2
展開潰し

*3
まだバレていないと思っている

*4
既に敵対はしている




黒騎士
ずっと撮影してるし、ずっと感動して泣いてる。物陰からずっと見ていた。

シュヴァルツ→マギアネーロ
衣装のモチーフは黒と紫のウェディングドレス。こんな時なのに全力で黒騎士への愛を表現してる。
実は背中は大胆に開いてるし、ドレスも前側はスカートくらい短くなってて、ガーターベルトまで見える際どい感じ。
一番布の量が多いはずなのに、露出も多い矛盾を引き起こしている。

最初は普通のナイトドレスの予定だったんですけど、予想以上に黒騎士への愛が爆発したキャラになったので、ウェディングドレスに切り替えました。
ネタバレ:必殺技はケーキ入刀。
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