悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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八月になりましたね。予定では、七月中に完結させるつもりだったんですが、体調を崩したのと予定より長くなったのでまだまだ続きます。


お久しぶりです、ボス

 私は、母星の平和維持組織『アークス』──その幹部である。以前は母星にて人々を守るために戦い、周囲からは『黒騎士』と呼ばれるまでになった私だが、今は地球を攻撃する侵略者だ。組織ごと、そうせざるを得なくなった。

 

 長いので詳しい説明は(はぶ)くが──我々の母星は発展と技術の進化を続けた結果、感情をエネルギーに変換する(すべ)を生み出した。しかし、エネルギーの不足は解消されず、むしろ増え続ける人口と進み続ける技術に、悪化するばかりだった。

 それに対する不満さえ、物理的にエネルギーに変えてしまえたのが、感情エネルギー化システムの利点であり、重大な欠点でもあった。

 そこから大小様々な問題が勃発(ぼっぱつ)し、我々は対応に追われ──結果的に、母星に住む大半の生命体が、感情を失った。エネルギー変換装置が暴走し、人々の感情を全て奪ってしまったのだ。

 

 故に、我々は他の星へと侵略し、感情エネルギーを集めている。暴走の結果(こわ)れてしまった装置を直すために、そして今度はエネルギーを感情へと戻すために。

 

 我々はあくまで、母星の平和のために戦う組織だ。けれど、そのために他の星の生命体を傷つける事に躊躇(ためら)いが無いかと言われれば、断じて否である。

 だからこそ、組織の中でも意見が別れ、しかし我々しか動ける人間がいないため、共に歩むしか無いのだ。

 

 セニオは、この戦いを戦争と捉えている。地球を侵略対象として、母星の人々を最優先に考えている。

 

 レインは、戦いはあくまで補助で、実験をメインに()えている。エネルギーを感情に戻すために、研究を重ねている。

 

 ボスは恐らく、そもそも戦いに積極的では無いのだろう。だからこそ、自分たちの手で生み出した感情しか集めていない。過剰に感情を奪い、地球を母星のための生け贄にするつもりは無いのだ。

 

 私は・・・・・・何だっただろうか。忘れてしまった。ただ、惰性(だせい)で組織に身を置いていた。今更、何かを変えるほどの活力が、私には残っていなかったのだ。いくつかの感情を、エネルギーに変えてしまったからだろう。ただ淡々(たんたん)と、成すべき事を成していただけ。

 

 まぁ、今となっては過去の話だがな。戦う理由? 魔法少女が見たいからに決まっているだろう!!*1*2*3

 

 つまらない事を考えるのは()めにしよう。今日は、久しぶりにボスに呼び出しを受けているのだ。

 

 ノックをしようと手を持ち上げると、それよりも早くボスの声が聞こえてくる。

 

『さっさと入れ』

 

「・・・・・・失礼する」

 

 入室と同時に、私は鎧を外した。要件がわかりきっていたためである。

 

 私がボスの腰掛けるソファの正面へと座ると、ボスはこちらへとその鋭い視線を向けてくる。

 

「──マギアネーロ、良い・・・・・・」

 

「ああ、良い。とても良い」

 

 多くは語らず、私たちは『良い』とだけ口にして頷き合う。(はた)から見れば異様な光景が展開されていた。*4

 

「よくやってくれたな、黒騎士──いや、マジで」

 

「ああ。私も、上手くいったときには涙が止まらなかった」

 

 先日の、シュヴァルツがマギアネーロへと覚醒し、組織を抜けて魔法少女となった件。私は、撮影した動画をボスへと送信しておいたのだ。そのままのデータと、私が編集したものとの二本を。

 

「いやー、シュヴァルツをお前の部下にした甲斐(かい)があったぜ」

 

 そう言いながら、ボスは前脚(まえあし)で器用にリモコンを操作し、モニターにて動画を再生する。

 

「思わず五周しちまったよ。途中から見たのも含めれば、もう二十回くらい見てる気がすンな」

 

「流石だな、ボス」

 

 流れている映像は、ちょうどシュヴィーがミラー・ドッペルの行く手を(はば)んだところだ。そして攻撃を必死に回避し、しかし当てられてしまう。

 

・・・・・・ッ!」

 

 しかし、シュヴィーは立ち上がり──突如(とつじょ)飛来したコンパクトを手に、変身する!

 

『心に従う、それが(わたくし)の光だと信じて!

 マギアネーロ! それが、今の(わたくし)です!』

 

うおおおおおお!」

 

 興奮のあまり漏れ出た声が、重なる。やはり、感じることは同じらしい。

 

「コレだよコレ、私が見たかったのは・・・・・・!」

 

「ああ。こういうのが良いんだ、こういうのが」

 

 話が進まないので一時停止し、両者共にソファに背中を預ける。*5

 興奮の冷めないまま、ボスが口を開いた。

 

「前々から、アイツには才能があると思ってたが──やっぱりだったな。

 マギアカリーナになって、活き活きしてやがる」

 

「彼女は逸材だったさ。順当にフラグを積み重ね、逆境を乗り越えた。

 ・・・・・・途中、よくわからない部分もあったが」

 

 私の言葉に、ボスはオモチャを見つけた子供のように笑う。いや、犬の状態だからあくまでそう感じるだけだが。

 

「良いじゃねぇか。あそこまで真っ直ぐな愛情を向けられるなんて、中々ないぜ?」

 

 まるで、弟妹の色恋沙汰に口を出す姉のような口ぶりだ。実際、傍観者(ぼうかんしゃ)の立ち位置からすればそうなるのだろう。

 

「私としては、少々困るのだがな。私は性別が無いし、恋愛の感情も薄い。彼女の思いは嬉しいのだが」

 

「お前は生まれが生まれだからなぁ・・・・・・。

 ま、最悪レインに頼めば生やしてもらえんだろ」

 

 下ネタはNGだ。

 

「それはさて置き、だ。

 マギアネーロ──可愛すぎだろ。何だよ、最強か? やっぱり魔法少女が最強なのか?

 

ああ、可愛い──前は鎧もあってソリッドだったが、フリルが増えてキュートさが増した」

 

 私が()けているのを察してくれたのだろう。路線変更された話題に、私も全力で乗っかる。

 

「過程だけじゃなく、衣装の変化まで楽しめるなんてな。お得すぎねぇか、光堕ち?

 

「わかる。一粒で何十回も美味しい」

 

「それに、マゼンタのネーロを受け入れる姿勢もイイんだよな」

 

「シアンの『借りを返せ』というセリフにも(うな)らされた。彼女らしさが良く出ている」

 

「イエローはやっぱり清涼剤だよな、戦闘でも精神面でもサポートしてくれる。一家に一台とは言わねぇから、私の家にもくれねぇか?

 

「だがやはり、シュヴァルツの住まいは何とかしなければな。今はイエローの家に泊まっているらしいが・・・・・・」

 

「ンなもん、お前の家で良いだろ

 

「その手があったか」

 

 そうして私たちは、時間の許すギリギリまで魔法少女トークを繰り広げた。

 

 なお、この後シュヴァルツから『お姉様にだけ、特別ですよ?』とお泊まり会の動画データが送られてきて、我々が発狂する事になるが──それは余談だろう。

*1
台無し

*2
感情ギラギラ

*3
オタクさぁ・・・・・・

*4
既視感

*5
賢者タイム




黒騎士
後方オタク面。マギアネーロは私が育てました。

マギアネーロ(シュヴァルツ)
黒騎士の心を射貫くために色々とやっている。この後ちゃんと黒騎士の家に転がり込む。

ボス
久しぶりの登場。自分も魔法少女に会いたいので仕事を抜け出せないか画策中。
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