悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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ちょっと今回の話、もしかしたら後で書き直したり消したりするかもしれません。ご了承ください。


ダブスタクソオタク

 私は、悪の組織『アークス』の幹部、黒騎士──この口上も、もう何度目かわからないな。

 母星を救うためとは言え、我々が地球を攻撃し、人々を恐怖させているのは事実。故に、私はいつも己に対して、『悪』であると突きつけ続けている。

 まぁ、その方が魔法少女の敵っぽいからというのもあるが。

 

 そんな私だが、今日はシュヴィー──先日マギアネーロに覚醒し、魔法少女の追加戦士となった彼女から、呼び出しを受けていた。なんでも、他の魔法少女に私を含めた面々で、話がしたいのだとか。

 

 現在の私の立ち位置は非常に複雑な物になっている。プライベートでの姿──黒木としてマゼンタの変身者と遭遇し、一度は疑われたものの、なんとかその疑惑を晴らした。*1

 しかし、私の部下だったシュヴィーと一緒に彼女たちと買い物をしたりしたので、私も悪の組織に関わりがあると勘づかれているだろう。というか、ほぼバレてる可能性が高い。

 故に、いま彼女たちと会うのは非常にリスキーではあるが──

 

 ピンポーンと、インターホンが響く。

 

『黒木さんですね。少々お待ちください』

 

 欲望に勝てなかったよ。

 目の前にあるのは、豪邸と言っても差し支えないような、立派な建築物。マギアイエローの変身者、キミの家だ。

 

 だって、見たいだろう!? マギアカリーナたちのプライベート! シュヴィーも加わり、彼女たちの過ごし方も多少の変化があるはず。オタクとして、そこは見ておきたい。*2

 

『! お姉様ですね! (わたくし)がお迎えに向かいます、玄関はどちらでしたっけ』

 

志由(しゆ)ちゃん、大人しくしていてください。また迷われても困るので』

 

 インターホンの向こうから聞こえてくる愉快なやり取りに、私の口角は天井知らずだ。いかんな、あまりにニヤついていると気色悪がられるかもしれない。

 

 口元を押さえて表情を戻していると、玄関の扉が開く。やってきたのは、使用人らしき初老の男性だ。前にキミが言っていた『じいや』とは、恐らく彼のことだろう。

 

「どうぞ。ご案内いたします」

 

「感謝する」

 

 彼の先導に従い、案内されたのは、一つの部屋。扉が閉まっているので視線で訊くと、開けるよう(うなが)された。

 

 木製のサイズ感のある扉を開けると、目の前に黒く大きな物体が飛んでくる。

 

「お・ね・え・さ・ま~!!」

 

「っと。久しぶりだな、シュヴィー。いや、志由と呼んだ方が良いのか?」

 

「どちらでも! お姉様に呼ばれるなら!」

 

 部屋に入るなり飛びついてきた、シュヴィー改め志由だ。尻尾を幻視しそうなくらいの勢いの彼女を、取り敢えず受け止める。

 

「あの突撃を受けて、ビクともしないなんて・・・・・・流石は黒騎士、といったところかしら」

 

(あおい)、なんかその言い方だとこっちがワルモノみたいだよ?」

 

 やはり、私の正体については共有済みらしい。もう隠すつもりも無かったので、それは構わないが。

 

「一週間ぶりですね、お姉様! ふんふん、お姉様の香り・・・・・・」

 

「動きづらいのだが・・・・・・」

 

 腕を背中側に回してぶら下がってきたので、腰に腕を回して支えていると、首元を()いでくる志由。おかしい、以前の彼女はここまでじゃ無かったはずだ。

 

「その、どうやら黒木さんに会えていなかった反動らしくて・・・・・・」

 

「ずっと桜桃(ゆすら)に会えなかった時の黄美(きみ)みたいね」

 

「葵ちゃん? 何か言いましたか?」

 

 キミの圧を感じる視線に、目を逸らすアオイ。そこのところ詳しく聞きたいが、それは難しいだろう。

 

「それで、今日はどういった要件だ。私の事は、もう聞いているのだろう?」

 

(わたくし)が会いたかったからです!」

 

「そうか・・・・・・」

 

 吹っ切れすぎでは?

 お泊まり会の動画を送ってきたあたりから薄々(かん)づいていたが、魔法少女に覚醒したのと同時に、色んなストッパーも外れていないだろうか。

 

『はなし、すすまない・・・・・・』

 

「あ、あはは・・・・・・

 その、今日(きょう)黒木さんに来て貰ったのは、私たちの考えを聞いて欲しいからなんです」

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 改めて、彼女たちはダイニングにてテーブルを挟んで座った。黒騎士の正面に桜桃、その左右に葵と黄美が座り、志由は未だに黒騎士にコアラよろしくくっついている。ふぁーたんはテーブルの上に腰掛け、そんな黒騎士と志由に半眼を向けていた。

 

「それで、話とは」

 

「あ、その状態で続けるんですね・・・・・・。

 その、志由ちゃんから聞きました。黒騎士さんたちが、なんのために戦っているのか。どうして、コワガーレを暴れさせているのか」

 

「全部理解してる訳じゃ無いけどね。感情をエネルギーに、とか、その結果みんな感情が無くなった、とか、スケールが大きすぎるわよ」

 

 そう言って、葵は肩を(すく)める。頭よりも身体を動かす事が好きな彼女にとって、黒騎士たちの事情は複雑すぎた。

 

「それで、私たちも、考えたんです。戦わないで、黒騎士さんたちの問題を解決できる方法は無いかって。

 志由ちゃんも、その可能性に気付いたから、私たちと話そうとしてくれたみたいで・・・・・・」

 

「そちらの問題を解決できれば、もう侵略する理由も無くなりますよね」

 

 桜桃は純粋な善意によって黒騎士たちの手助けをしようとしていたが、それだけではない。黄美の言うように、侵略を止めさせる事にも繋がるのだ。

 

「・・・・・・そうだな。志由、どこまで話したんだ?」

 

(わたくし)の知る限りの事は、ほとんど。それが、仲間に対する誠意だと、思ったので・・・・・・」

 

 そう言って、ばつが悪そうに顔を背ける志由。だが、黒騎士は彼女が桜桃たちを『仲間』と言う事に照れているのを的確に見抜き、内心で萌えていた。

 

「そうか。なら、手立てはあるのか?」

 

『マギアカリーナのまほうも、かんじょうをちからにしてる。だいすきとか、まもりたいってきもちが、マギアカリーナのちからになる』

 

「・・・・・・そこだけ聞くと、彼らの二の舞になりそうよね」

 

『ぜんぜんちがう! かんじょうをなくすとか、ありえない!』

 

・・・・・・・・・・・・」*3

 

「ふ、ふぁーたん!? 二人がショック受けてるから、そういう言い方は・・・・・・」

 

 明らかに暗い雰囲気になった二人に、桜桃がふぁーたんを止めに入るが、彼(?)は構わず続ける。

 

『それに、まほうはだれかにきぼうをあたえるもの! キラキラをあたえることはあっても、うばったりなんてしない!』

 

「良いことを言うな、ふぁーたん。全くその通りだ」

 

「急に元気になりましたね、黒木さん!?」

 

 ある意味では、マギアカリーナによって感情を取り戻した存在である黒騎士は、力強くふぁーたんの言葉を肯定した。神妙な顔でウンウン頷いている。

 

『くろき! わかってる!』

 

「え、まさかふぁーたんさんもライバルですか!? 流石はお姉様、魔性のヒト・・・・・・」

 

 仲良さげな空気感の二人(人?)に、志由は思わず反応した。いつまでも引っついたままの彼女に、葵と黄美は白い目を向ける。

 

「志由、アナタもう冷静なのにタイミング失ってそのままでいるだけでしょ。満足したならさっさと離れなさい」

 

「っ!?」*4

 

「興奮しちゃったのはわかりますけど、流石に真剣な話し合いの最中もずっとそれは・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・はい」*5

 

 顔を真っ赤にした志由は、すごすごと黒騎士の隣の席へと居住まいを正す。しかし、それでも黒騎士にかなり近い。

 

「えっと、どこまで話したんだけ・・・・・・あそうだ。

 もしかしたら、私たちの魔法を使えば、黒騎士さんたちの故郷の人達を、助けられるかもしれないんです」

 

「確実に出来る、とはまだ言えませんが・・・・・・そちらにも、研究職の方はいるんですよね。なら、協力すれば可能性は・・・・・・」

 

 続く黄美の言葉に、黒騎士はしばし瞑目(めいもく)する。が、三秒もせずに目を開いた。

 

「──協力は、出来ない」

 

「ッ! ・・・・・・理由、聞かせてくれるかしら」

 

 一瞬、怒りの感情をぶちまけそうになった葵だが、踏みとどまって聞く姿勢を取る。

 マギアカリーナたちからすれば、これはかなり黒騎士たちに寄り添った提案だ。最大限の譲歩をしていると言っても良い。侵略を受けている側でありながら、その侵略者側の問題を解決しようとしているのだから。

 

「理由は幾つかあるが──まず、説得が難しい。組織も一枚岩では無いのでな、協力に頷くかも怪しい上、手を取り合う事は出来ても、いつ後ろから刺されるかわからない。そんな状況に、君たちを置くことは出来ない」

 

 黒騎士の脳裏に浮かぶのは、セニオの顔。協力を提案しても、「敵の情けを受けるなど!」とか言い出しそうだ。

 次に浮かんだのは、レインの顔。研究者としてもかなり癖の強い部類である彼女が、マギアカリーナたちをどう扱うかわからない。最悪、装備を(いじ)くり回されて壊したりしかねない。流石にマギアカリーナたち()実験するような事は無いだろうが・・・・・・切羽詰まったら、やりかねない。

 

「それから、君たちへの負担を看過(かんか)できない。侵略している我々が言うべき事では無いだろうが──君たちにも、日常はあるだろう。そこに我々の研究や実験に付き合う事になれば時間は大きく消費される。

 更に言えば、最終的に魔法を使うのは君たちになる。母星の生命体(すべ)てに適用されるような魔法ともなれば、君たちにかかる負荷も相当なものになる」

 

 母星を救うために目の前の彼女たちを犠牲にするなど、黒騎士が許すはずもない。故郷のために推しに死ねと? 冗談じゃない。黒騎士の表情が(けわ)しくなる。

 

「・・・・・・お姉様」

 

 それをどう読み取ったのか、志由は彼へ心配するような視線を向ける。

 

「すまないな、色々と考えてくれたのだろう?

 だが、我々の問題は根深く、そして大きい。少なくとも今は、現状を維持するしか無いと、私は思っている」

 

 黒騎士は、そう締めくくる。

 

 少女たちは、沈痛な面持ちでそれを聞いていた。胸に抱いているのは、無力感か、怒りか、悲しみか。けれど彼女たちがそれを外に出す前に、黒騎士は席を立つ。

 

「私も、出来る限り君たちの力になろう。だが、私はあくまで『アークス』の──悪の組織の立場にいる。それを忘れないでいてくれ」

 

 そう言って、悲しみを(たた)えている志由へと目を向けた。

 

「ああ、そうだ。いつまでも人の家に世話になるのも迷惑だろう。志由は私の家で預かりたいが、問題ないな?」

 

『・・・・・・・・・・・・はい?

 

 黒騎士以外の、全員の声が重なる。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! アナタ今『悪の組織側』って言ったばっかりでしょう!? なのに志由を連れて行くとか、良い訳ないじゃない!?」

 

「そ、そうですよ! それに、男女が同じ家で過ごすなんて、どどど同棲みたいじゃないですか! あれ、でも黒木さんは性別が無くて・・・・・・? 良いんだっけ・・・・・・?」

 

「きぃちゃん!? 鼻血でてるよ!?」

 

「お姉様と同居!? つまり、おはようからおやすみまでお姉様と一緒!? そんな、まだ早いです・・・・・・でも、お姉様が望むのなら(わたくし)は!」

 

『まじめなはなししてたのに! くろきは! いつもそう!』

 

 混沌とし始めた空気の中で、黒騎士は一つの実感を得る。

 

 ──よし、これでまだ魔法少女たちの戦いが見られるな!*6*7*8

*1
要審議

*2
偵察、という考えは微塵もない

*3
すっごい凹んでる

*4
図星を突かれた顔

*5
何も言い返せない顔

*6
い つ も の

*7
台無し

*8
オタクくんさぁ・・・




黒騎士
ダブスタクソオタク。
悪の組織としての仕事もするが、それはそれとして魔法少女の戦いも見たい。マギアカリーナの提案を断った理由の七割くらいがコレ。

マギアネーロ/黒木志由
色々と吹っ切れたため、黒騎士が付けてくれた名前を名乗る事にした。
なんならこのあと黒騎士に付いていって同居生活を開始している。

マギアカリーナ
色々と考えたのに断られてショック。
けれど魔法少女なので、悪の組織の事情を知ってもなお街を守るために戦う精神を持ってる。

ふぁーたん
妖精だから性別は無い。外見は可愛い寄り。
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