悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】 作:高々鷹々
1日休んだら普通に復活しました。
私は、悪の組織の幹部にして、魔法少女をこよなく愛する者──黒騎士。*1
そんな私は、数々の訓練によって、様々な技能を身に着けている。自分で決めた時間の通りに起床できるのも、その一つだ。
故に、私は朝は寝起きはかなり良いと言える。ちなみに、寝付きも良い。寝られる時に寝ておかなければ、何かあったときに動けないからな。
そして今日、私が目を覚ましてまず目に入ったものは──じっとこちらを見つめるシュヴィーの顔だった。
「おはようございます、お姉様」
「・・・・・・ああ、おはよう」
色々と言いたいことはあったが、取り敢えず挨拶は返した。
「シュヴィー、いくつか質問がある」
「はい、なんなりと!」
「まず。私は君にベッドを譲り、布団で寝ていた訳だが。なぜ同じ布団にシュヴィーがいる?」
「お姉様のぬくもりが恋しくて・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・まあ良い。次だ。
なぜ私の寝顔を見ていたんだ? 様子から察するに、それなりの時間そうしていただろう」
「はい。実は、寝顔を見ていたら夢中になって一睡も出来ませんでした。
ご安心を。一日程度、寝ていなくても問題なく動けますので」
そういう問題じゃない。
本当に・・・・・・どうして彼女はここまでこう、アレになってしまったんだ・・・・・・?*2 もう少し、元悪の組織
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・まあ、良いか。
さっさと起きるぞ。遅刻する」
「はい!!」
シュヴィーの元気の良い返事を聞き流し、身体を起こす。シュヴィーもまた、ようやく布団から出たようだった。
彼女の呼び方については、昨晩「二人っきりの時は、以前のように呼んでくれませんか?」と言われたのでそうするようにしている。理由は全くわからないが。*4
布団を片付け、昨日と変わりないベッドを
そのまま部屋に戻り、服を着替えようと寝間着を脱いだ。すると、かつてないほどの視線を横から感じた。
「・・・・・・・・・・・・」
ねぇ、私の元部下、怖いんだけど・・・・・・?
半裸のこちらをガン見してくるシュヴィー。彼女の朝の支度は、まるで進んでいる様子がない。
ふぁーたんの提案で、彼女はユスラたちと同じ学校に通う事になったらしく、キミが色々と手を回していたそうだ。『しゆはまず、じょうしきをしったほうがいい。なんならくろきも』とか言っていた。
全く、私は常識バッチリだろう。*5
そんな私の心配なんて知るはずもなく、彼女の視線は私の肉体へと注がれていた。
「うっわ、腹筋えっろ・・・・・・」
おい聞こえているからなシュヴィー。
ボスの提案に乗っかった形で彼女を私の家へと招き入れたが、少し性急だったかもしれない。
「私の半裸くらい、もう何度か見ているだろう・・・・・・」
「はい。
なんか噛み合って無くないか?
私は色んなものを諦めて、さっさと着替えを完遂する。その間のシュヴィーの様子は、言うまでも無い。
「シュヴィー、君の支度は大丈夫なのか?」
「ご心配なく、お姉様。
「は?」
彼女はあろうことかマギアカリーナのステッキを
恐らく、身支度を整える魔法。どうやら彼女は、魔法少女デビュー一週間にして、私生活でまで魔法を使い始めたらしい。
「これで問題ないですね。さあお姉様、どうぞ続きを」
「・・・・・・私生活では、魔法は極力使うな。こんな事で魔法を使っていたら、堕落まっしぐらだ」
「そんなっ!? 魔法でこっそりお姉様を撮影しているのに!?」
「よし、魔法禁止だ。ふぁーたんにも伝えておくからな」
「そんな、
まさか、私のプライベートを撮っていたとは・・・・・・私もそこまではまだしていないぞ。*6
ともかく、このままでは魔法が悪用されてしまう。そんなのは魔法少女的にNGだ。魔法少女の扱う魔法とは、誰かを助けるためのものでなければ。*7
「うう、畏まりました・・・・・・鎧の復旧、急がないと」
「メンテナンスのために、没収しても良いんだぞ」
そんな
「・・・・・・ふふっ。冗談ですよ、お姉様。
ごめんなさい。またちょっと、舞い上がってたみたいです」
「『ちょっと』とは言い難い気もするがな」
私がそう釘を刺すと、本人も自覚があったのか申し訳なさそうにした。
まぁ、長く所属していた組織を裏切り、敵であったマギアカリーナへと寝返ったのだ。精神的に、不安定な部分もあるのだろう。普段の彼女ならば、ここまでの言動はしない。いやまぁ、魔法で身支度は素でやっていそうだが。
「・・・・・・君が不安がる気持ちもわかる。だが、言っただろう。私は君の味方だ。何があっても、な」
組織への偽装工作も行っているし、恐らくセニオが放ったのだろう監視も既に対処してある。シュヴィーの居場所が組織にバレる事も無ければ、新たな日常が壊される事も無い。そうなるよう、手は尽くしている。
「おねえ、さま・・・・・・」
私の言葉の意図が伝わったのだろう。彼女は泣き崩れるようにして、涙を浮かべた。
そんな彼女の不安を払拭するべく、私はシュヴィーの頭を撫でながら言う。
「安心しろ。君の『黒木志由』としての日常は、私が保証する」
当然の事だ。彼女には、組織とは違うこの星での『普通』の生活を送ってもらいたいからな。
だって、そうだろう? 日常を守るために戦うのが、魔法少女だ。シュヴィーには是非とも地球での日常を大事も思ってもらいたい。
「・・・・・・ありがとう、ございます」
耳まで赤くなっている彼女の瞳に、既に涙は無かった。彼女のメンタルケアは、こんなものだろうか。
余裕が出来たので、改めて彼女の制服姿を見る。
紺色のブレザーは新品なのもあって汚れ一つ無く、彼女の黒髪がよく映えている。膝丈のスカートは折り曲げていないはずだが、やや短く見えるのはシュヴィーの足が長いからだろう。整ったプロポーションだ。
どこに出しても恥ずかしくない、美少女中学生だ。まぁ、中身はやや常識知らずだが、それすらギャップとなって人を惹き付ける事だろう。
「そろそろ時間だな。学校への道に迷わないようにな」
「あっ、そうですね。では、行ってきます」
名残惜しそうな顔の彼女から手を離し、登校するよう促す。そうでもしないと、ずっと離れなそうだったからな。
玄関まで連れ添い、彼女が扉に手をかけた。そこで、シュヴィーは振り返る。
「・・・・・・お姉様。こういうの、同棲みたいですごくドキドキしています、
「そうか」
シチュエーション萌えの話、で合ってるのか? 言葉の真意を掴めないまま、私は彼女を見送った。
──さて。早速ボスに学校近くにガツンドを出撃させるよう進言するか。マギアネーロ含めた名乗りとか見たいし。
黒騎士
組織にはシュヴァルツの居場所は未だ不明と報告しているし、監視とかも全て誤魔化している。鎧が多機能なのが悪い。
順調に恋愛フラグを積み立てているが、本人は全て無自覚。
志由/シュヴィー
黒騎士は魔法少女への『好き』によって感情を取り戻したが、
彼女もまた、黒騎士への憧れから感情を取り戻している。
ちょっと最近展開に行き詰まってきたので、もしかしたら番外編みたいなのをちょいちょい挟むかもしれません。