悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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なんか10評価いただいたんですけど!? ありがとうございます!
感想も普段より多く頂けて、お陰様でモチベが完全復活しました。


追加戦士のお約束①

 市内にある、とある中学校の屋上にて。シュヴァルツ──現在は黒木志由(しゆ)と名乗っている彼女は、深く息を吐いた。

 

「ふぅ・・・・・・流石に疲れましたね」

 

 朝方に黒騎士と同棲中のようなやり取りをしたのが、随分(ずいぶん)前の事のように思えてくる。それくらい、濃密な1日だった。

 

 転入生として彼女が所属する事になったのは、桜桃(ゆすら)たちと同じ二年生のクラス。一応、志由は彼女たちよりも年上なのもあって、少々複雑だった。母星とは、月日の流れ方や歳の数え方も違うので、一概(いちがい)に比べられるものでも無いのだが。

 

 それから、隣の席になった桜桃が授業中ずっとこちらを気遣ってきたり、休み時間に(あおい)に学校内を案内してもらったり、教科書がまだ無いと知るや否や黄美(きみ)がじいやを使って用意させたり──こんなのは、まだ序の口だ。

 休み時間に質問攻めされるのは当然のこと、歴史の授業では母星とは違いすぎる文化にまるで理解できず、体育の授業では全力を出し過ぎて桜桃たちに説教され、スポーツ系の部活の勧誘を幾つも受け、ついでに愛の告白も受け──もちろん断った──ようやく昼休みになった今、人の居ない屋上に避難してきたところだ。勧誘を止めに来てくれたと思った葵にすら部活へ誘われた時は、本当に逃げ出したくなった。

 

 本来、屋上は開放されていないが、下の階の窓から跳んで移動した。バレたらまた桜桃たちに何か言われるだろうが、それよりも落ち着ける時間が欲しかったのだ。

 

(しかし、同じ学校でも、色々と違っていますね)

 

 思い返すのは、母星での日々。憧れの背中を追いかけて、多くの時間を自己(じこ)研鑽(けんさん)(つい)やした過去だ。

 学校も、志由──シュヴァルツが居たのは軍学校に近い戦士を育てるための場所で、そこで主席の座を獲得し、組織へと入ったのだ。

 

「まさか、地球でまた学び直す事になるとは思いませんでしたが」

 

 自身の制服を見る。肩は動かしにくいし胸元はやや窮屈だし、スカートで動くのは気を遣う。体育の際に着た体操着の方が、よっぽど動きやすい。こんな物を身に着けなければならないのも、大きな違いだった。

 

 黄美から渡された、この星の携帯端末──スマホで、今朝(けさ)撮った黒騎士の寝顔を眺めて心を休めていると、不意に屋上の扉が開かれる。*1

 

「あ、本当に居た! もう、駄目だよ志由ちゃん。勝手に屋上に来たら」

 

 真仲(まなか)桜桃(ゆすら)──マギアマゼンタの変身者。組織の敵にして、今は志由の仲間だ。面と向かってそう呼ぶのは、まだ気恥ずかしいが。隣には、妖精であるふぁーたんも浮遊している。

 

『ふぁーたん、おてがら?』

 

「うん、私たちじゃ気付けなかった。ありがとう、ふぁーたん!」

 

 どうやら、探されていたらしい。転校初日に姿が見えなくなったのだ、心配されただろうと、志由は察した。彼女たちの善性は、お泊まり会やらで嫌と言うほど知っていた。

 

「すみません、少々疲れてしまって。落ち着いて休みたかったんです」

 

「あはは、志由ちゃん大人気だったもんね・・・・・・」

 

 桜桃は席が隣になったのもあり、今日一日の志由の様子を身近で見ていた。色んな生徒に声をかけられ。色んな質問をされたり。途中、何度か危ない返答を志由が口にした時には、フォローに回ったりもした。

 

「面倒ですね、学校と言うものは」

 

「でも、楽しそうだったよ? 志由ちゃん」

 

「・・・・・・新しい環境に、振り回されていただけです」

 

 志由はそう言って顔を逸らすが、桜桃の言葉を否定しない。そのことが、桜桃にとっては(たま)らなく嬉しかった。他の星の人とも、黒騎士たちともわかり合えると、そう思えるから。

 

 その時、学校のほど近くから、人々の悲鳴が響いた。二人は即座に反応する。

 

「ッ!」

 

「あ、ちょっと志由ちゃん! 一人じゃ危ないよ!」

 

 呼び止める声に構わず、志由は屋上の金網から飛び出した。そのまま校舎の壁を蹴って勢いを殺し、自転車置き場の屋根を踏んで、地面へと着地。そのまま悲鳴のあった方向へと駆け出す。

 

「えっ、えっ? わ、私もアレやった方が良いのかな!?」

 

『ゆすら、おちついて! あおいたちとごうりゅうして、おいかけないと!』

 

 あまりの人間離れした身体能力に混乱する桜桃だったが、ふぁーたんの声で正気に戻る。

 

 慌てて桜桃は屋上の扉から階段を駆け下り、二人を探しに行った。

 

 

 

 

 校舎から飛び出した(わたくし)は、走りながらマギアカリーナへ変身するためのアイテム──マギアコンパクトを取り出し、そのまま目の前に掲げます。

 

「マギア、リナッシェレ!」

 

 視界が光に染まったのも一瞬のことで、直ぐに(わたくし)の姿は魔法少女としてのもの──マギアネーロへと変化しました。

 ()(まど)う人々を(さかのぼ)るようにして屋根の上から移動していけば、そこでは予想通りコワガーレが暴れ回っています。

 

 あの見た目──察するに、ブロック塀を元にしたコワガーレでしょうか。それなりに身体も大きく、厄介そうです。

 ガツンドも側で高笑いしています。端的に言って、ウザいですね。

 

 そちらへと駆けながら、周囲を見渡せば──居ました。お姉様です。今日はどうやら黒騎士モードのようですね。鎧姿からもわかるオーラがステキです。

 

 さて。では、あそこから見て一番良く映える角度を計算して──(わたくし)は、ブロックコワガーレに跳び蹴りを叩き込みます。

 

「ハァッ!」

 

 しかし効果は薄いようで、ダメージを与えている感覚がまるでありません。そのままコワガーレを足場に跳んで、反撃を許さずに距離を取ります。

 

()おったか、シュヴァルツ! なんや、今回は一人みたいやなぁ!」

 

「貴方程度、(わたくし)一人で十分ですから──それと。

 今の(わたくし)は、マギアネーロです!

 

 決まった。これはもう、お姉様も(わたくし)にベタ惚れでしょう。*2

 

 その確信と共に、再びコワガーレへと攻撃を仕掛けに行きます。構えるのは、使い慣れた大剣ではなく、マギアカリーナの武器であるステッキ。ただ、他の三人のとは異なり、黒がベースとなっていて、頂点の星は紫紺に輝いています。

 

「まずは、ラーマ(刃よ)!」

 

 ステッキから光の刃を出現させ、斬りかかる。が、ブロックが(かた)すぎますね、刃が弾かれてしまいました。というか、今の一回で折れました。(もろ)すぎませんか? この魔法。*3

 

「今までの戦い方では、いけないようですね・・・・・・」

 

 呟き、ブロックコワガーレの攻撃を回避します。

 

「ナァーッハッハッハ! どうや、ブロックコワガーレのこの硬さは!」

 

 うるさいですね、気が散るでしょうが。

 ガツンドの声に眉を(しか)めながら、(わたくし)はコワガーレを分析していきます。

 

 ブロック塀が集まり、人型になったような姿のあのコワガーレは、全身が防具で、全身が武器。付け入る隙があるとすれば、関節くらいでしょうか。ひとまず、足の関節を狙って動きを封じましょう。*4

 

「けど、お前にはもっと良い相手を用意してあるんや。裏切り者のお前に、相応(ふさわ)しい相手をなぁ!」

 

 その言葉と同時に、死角から鋭い斬撃が飛んで来る。全身の感覚が警鐘を鳴らし、(わたくし)は全力で回避行動を取らざるを得なくなりました。

 

 (わたくし)の前に現れたのは、よく見知った姿の戦士──黒騎士。

 ・・・・・・まぁ、なんとなくそんな気はしていましたけれど。

 

 お姉様の部下である(わたくし)が裏切った以上、次に疑われるのはお姉様となるのは自然な事。だからこそ、ここで(わたくし)と戦わせて、(みそ)ぎをさせようとしているのでしょう。あるいは、お姉様に裏切るつもりが無い事を、証明させようとしているのでしょうか。

 

「頼んまっせ、黒騎士サン。アンタの不始末や」

 

「・・・・・・貴様に言われるまでもない」

 

 お仕事モードのお姉様も、かっこいい・・・・・・。いえ、いけない。こんな調子では、一瞬でお姉様にやられてしまう。

 

 恐らく、お姉様は裏切り者でない事のアピールのために、本気の一部を出すはず。(わたくし)はそれをしのぎきって、ガツンドが引き上げるまで──桜桃さんたちがブロックコワガーレを倒すのを待たなければなりません。

 

「・・・・・・行くぞ。せいぜい耐えて見せろ」

 

「黒騎士様。貴方が相手であろうと、(わたくし)は負けません」

 

 声が震えているのは自覚していますが、それでもそう言い放ちます。

 

 だって、お姉様が夢中になっているのは。どんな時も諦めず、折れない。そんな魔法少女たちなのだから。

 

(桜桃さんたちの事は、仲間と思っていますが──ライバルだとも、思っているんです)

 

 (わたくし)は、負けない。負けられない。お姉様の一番に、なるために──!*5*6

*1
ホーム画面にしてある

*2
満点のどや顔

*3
黒騎士やシュヴァルツの武器が特別頑丈なだけ

*4
思考があまりに戦闘向き

*5
動悸が不純すぎる

*6
誰かさんの影響




黒騎士
大体30代中盤。地球人換算だともっと下になる。

黒木志由
ちょうど20歳くらい。地球人換算だと高校一年生くらい。

ボス
ざっくり■歳。地球人換算だと30歳手前。

ふぁーたん
妖精なので年齢の概念が無い。生まれてからは20年ほど経っている。
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