悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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誤字報告、いつもありがとうございます。特殊タグなんかもちょいちょいミスってるみたいで、報告していただけてとても助かってます。


追加戦士のお約束②

 屋上から飛び出していった志由(しゆ)を追いかけ、桜桃(ゆすら)たちマギアカリーナは、街の中を走っていた。建物の間から見えるのは、コワガーレの巨体。戦っている様子はなく、暴れ回っているように見えた。

 

「志由ちゃん、先に行っちゃったんですよね。大丈夫なんでしょうか」

 

「あの子に限って、コワガーレに負けるとは思えないけれど・・・・・・もしやられていたら、後で説教ね」

 

 負けたことにではなく、一人で先走ったことに、だ。無論、小言の一つや二つを言うのは確定だが。

 

「みんな、そろそろだよ!」

 

 二人に言いながら、コンパクトを取り出す。それに倣って、葵と黄美も構えた。

 

マギア・リナッシェレ!

 

 詠唱を口にすれば、彼女たちの姿が光と共に変化する。平和を守る魔法少女、マギアリーナへと。

 そのまま、コワガーレを止めるべくステッキを構えた。

 

「そこまでよ、コワガーレ!」

 

「これ以上は暴れさせない!」

 

「街を無茶苦茶にした事、許せません!」

 

 彼女たちがそう高らかに言えば、コワガーレがこちらを振り返る。側に立っていたガツンドもまた、マギアカリーナを見下ろした。

 

「遅かったなぁ、マギアカリーナぁ! コイツで叩き潰したるわ、ブロックコワガーレ!」

 

 咆哮するコワガーレに向けてマギアカリーナが魔法を放とうとすれば、両者の間を何かが(すさ)まじい勢いでかっ飛んでいった。

 

「え・・・・・・?」

 

「今の、まさか!」

 

 土煙(つちけむり)が立ちこめる中、飛来してきた物体に目を向ける。それは予想通り、彼女たちの新たな

仲間となった少女──マギアネーロであった。

 

「っ、つぅ・・・・・・流石は黒騎士様、どこまでも容赦の無い・・・・・・」

 

 そう言いながら立ち上がるネーロの頬は、笑みで歪んでいた。直後、轟音と共に黒騎士の放った斬撃が複数、ネーロへと襲いかかり、彼女は跳び上がって回避。マゼンタたちの視界から離れていく。

 

「え? えっと・・・・・・? と、とにかく! 私たちはコワガーレを倒そう!」

 

「そ、そうですね! 」

 

 どう見ても割り込めないような激しさに、マギアカリーナたちは一旦(いったん)目を逸らす事にした。

 改めて、コワガーレへと向き合う。

 

「なんや、あっちも盛り上がっとるみたいやなぁ・・・・・・こっちも行くで! コワガーレ!」

 

「みんな、行くよ!」

 

 マギアカリーナの魔法と、コワガーレの攻撃が、ぶつかり合う──

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

 剣を振るう。斬撃を飛ばす。放たれた魔法の(ことごと)くを斬り捨て、近接攻撃には反撃でもって返す。

 

「うぐっ・・・・・・ギアーショ(氷よ)!」

 

 私の斬撃を(わず)かに受けながらも放たれた氷塊を、マントを操作し受け止め、投げ返す。

 このマント、実は私の意思で動かせるのだ。久しぶりに使ったが、やはり便利だな。

 

「くっ、うああ!」

 

 返ってきた自身の魔法を()けながら、マギアネーロはこちらに接近し、ステッキを構えて魔法を放つ──

 

「はぁっ!」

 

「甘い」

 

 というのはブラフで、本命は蹴りだ。読み切っていた私はそれを片手で受け止め、そのまま足を掴む。ついでにスカートの下も見ておくか。*1

 

「ふ、うっ!」

 

 しかし、そんな猶予(ゆうよ)は無かった。発声と共に、もう片方の足から蹴りが飛んでくる。剣の腹で防いだ。しかし、それまで見越していたのだろう。両足を掴まれた状態で、彼女は魔法を準備していた。

 

フラム(炎よ)ブルーチェ(燃えよ)!!」

 

 至近距離にて放たれる、二言(にごん)詠唱の炎の魔法。このまま受けたら、私だけでなくネーロまで怪我をしかねない。私は剣の機能を使ってネーロの魔力の流れを無理矢理(むりやり)操作し、魔法そのものに使われる魔力を外へと逃がす。

 

「ぁ、んうう!?」

 

 他人に魔力を操られたからだろう、どこか(つや)っぽい声を上げるネーロに、少しばかりの興奮を覚えながらも、小規模ながら暴発した魔法によって彼我(ひが)の距離が離れる。

 

「お、おね──黒騎士様!? 今のは何ですか!?」

 

「剣の機能だ。多少ならば、魔力を操れる。最近レインが付けた」

 

「ズルくありませんか!?」

 

 この剣から近い範囲でしか使えないし、魔力のコントロールを完全に奪える訳では無いのだが。そういった欠点は、態々(わざわざ)伝える必要も無いだろう。

 

 しかし、私が彼女と戦う事になるとはな。身の潔白を証明しろとの指示だったが──ただボスがこの対決が見たかっただけでは?*2

 

 だが、追加戦士が強すぎると面白味に欠けるからな。既存メンバーとは他の敵と闘うのもまた、追加戦士のお約束だ。

 

 彼女たち四人が揃っての変身と名乗りを見られなかったのは残念だが、これはこれで悪くない。

 それに、敢えて四人での名乗りを引っ張るとは・・・・・・わかっているじゃないか!*3

 

「はぁ、はぁ・・・・・・あはぁっ」

 

 ただ、どうして先程から彼女は満面の笑みを浮かべているのだろうか。彼女がシュヴァルツとしてマギアカリーナと戦った時には、もっとキリッとした表情だった気がするのだが。

 

「本当に、お強いですね、黒騎士様・・・・・・!」

 

 今にも倒れそうな程に、彼女の足は震え、肩は激しく上下している。当然だ、かなり本気を出したのだから。

 しかし、私の予想の──期待の通りに、彼女は(しの)ぎきった。折れる事なく、最後まで諦めず、戦った。

 

「シュヴァルツ──いや、マギアネーロ。貴様も、悪く無かった」

 

 そう言いつつ、剣にエネルギーを溜める。黒い剣に、血が通ったような赤いラインが現れ、発光しだした。

 

 え、なにこの発光。まさかレインめ、また勝手に機能を付け足したな!?*4

 

 ま、まあ良い。出力は以前から変わっていないようだしな。私の、数少ない『大技』と呼べるような攻撃だ。

 

「これで終わりだ」

 

 そう言いながら、黒剣を振り下ろす。この攻撃が当たれば、マギアネーロと言えども無事では済まないだろう。

 

 ──もし当たれば、の話だが。

 

スクード(盾よ)! 更に、バリアラ(障壁よ)!」

 

 私の攻撃は、乱入してきた少女──マギアイエローの魔法によって防がれた。生み出された盾と、それを更に強固にする障壁が、私の斬撃を受け止める。

 しかし、それだけでは防ぎきれない。当たり前だ、これは敵の要塞などを破壊するための技なのだから。*5

 

「うくっ、ううう・・・・・・!」

 

 徐々に押され始めるイエロー。この攻撃は、一人で受け止めるには荷が重すぎる。

 しかし、ただ守られているだけのネーロではない。彼女もまた、誰かを守るために、魔法少女となったのだから。

 

スペッキオ(鏡よ)ジョカーレ(弾け)!!」

 

 展開されるのは、巨大な鏡面。それはイエローの作ったバリアに重なり、私の攻撃を弾き、逸らした。

 轟音と共に、斬撃が地面へと打ち付けられる。同時に、周囲が見えなくなるほどの砂煙が舞った。

 

サーヴィア(砂よ)・・・・・・今だよ、シアン!」

 

「言われなくても!」

 

 そう声が聞こえたのも(つか)()。マギアカリーナたちの気配が遠のいていく。

 なるほど、マゼンタが目くらましを用意し、シアンが二人を抱えて離脱したか。良い判断だ。流石は私の推し。

 

「けっ、逃げよったか・・・・・・まさか、黒騎士サンが敵を取り逃がすなんてなぁ」

 

「・・・・・・そちらも、敗北しているようだが」

 

 これ見よがしに(あお)ってくるガツンドに、私も煽り返しておく。彼は(しぶ)い顔を作ると、何も言わずに背を向けて、先に帰還した。

 

 一先(ひとま)ず、これで組織から私への疑いは晴れただろう。*6 けっこう本気出したし。大技まで使ったのだ。

 

 これで心置きなく魔法少女たちの戦いを見られるな! 私は晴れやかな気分で、拠点へと転移するのだった。

*1
変態行為

*2
半分正解

*3
偶然

*4
大正解

*5
魔法少女に向ける技ではない

*6
早計




黒騎士
相手がギリギリ耐えられるくらいの力を出すのが上手い。立ちはだかる壁としてもエリート。

マギアネーロ
元々のスペックが高いので、他のメンバーがまだ使いこなせていない魔法も使える。でも燃費が悪い。
黒騎士に対してのみ、ちょっとMっ気がある。

ブロックコワガーレ
高い攻撃力と防御力を持っていたが、攻撃が単調だったため三人の動きに翻弄され、同じ場所を何度も攻撃されて体勢を崩す。その隙に『セレスティア・セレーネ』を撃たれて敗北した。
例によって戦闘用のため、感情エネルギーはほとんど集められなかった。
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