悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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お久しぶりです。今後の展開を考えて筆が進まなかったのですが、納得いくものを思いついたので再開します。


予想外の一手①

 私は、悪の組織の幹部にして魔法少女愛好家──黒騎士である。

 

 前回の戦いの件でボスに呼び出された私たちは、ボスの部屋にて膝を突き、(ひざまず)いていた。私たちと言うのは、私とレイン、そしてセニオとガツンドだ。

 

「さて。何で今回呼び出されたか──わかってるよな、ガツンド」

 

 今のボスは、普段とは違って人型を取っている。灰色のウルフヘアは肩甲骨の辺りまで襟足が伸び、頭頂部には犬耳が起立している。目鼻立ちも地球人に近くなっており、かなりの美形だ。しかし、目付きの鋭さと、翡翠色の瞳は変わらない。

 

「お、俺が前回の戦いで、マギアカリーナを倒し損ねたから──」

 

「違う。・・・・・・セニオ、お前は把握しているよな?」

 

 有無を言わさぬ、肌を刺すような威圧感。それに当てられ、セニオは息を詰まらせる。

 

「ッ、! ハッ、感情エネルギーの収集が、まるで出来ていない事にあると愚考します」

 

「そうだ。ガツンド、お前の作るコワガーレは戦闘向き、かつ燃費が悪いせいでエネルギーがまるで集められていない。

 しかも、先日の──ミラーコワガーレを作った際には、これまでブダーンが集めたエネルギーも使ったそうじゃないか。それで、元を取れないうちにマギアカリーナに倒された、と」

 

「も、申し訳ありません!」

 

 ミラーコワガーレを生み出す際のエネルギーに関しては、恐らくレイン辺りに許可は取ったのだろう。だが、その分の補充が成されていないのが問題なのだ。

 多くの人々を鏡の迷宮に閉じ込めこそしたが、それでも集められた恐怖の感情は使った分には足りなかったらしい。撃破されるまでもっと時間がかかれば、膨大なエネルギーも回収できただろうが。*1

 

「それに加え、前回のブロックコワガーレ。黒騎士がマギアネーロを請け負ったにも関わらず、ロクに感情エネルギーを集められないまま敗走──なぁ、ふざけてるのか?

 

「──ッ!」

 

 ボスの発する圧が、一層強くなる。それはガツンドにだけではなく、直属の上司であるセニオにも向けられていた。

 

「お前らの任務は、魔法少女を倒す事じゃねぇ。エネルギーを集める事だ。そこを履き違えるな」

 

「し、しかし! マギアカリーナを倒さねば、エネルギーを集める際に、毎回妨害(ぼうがい)が入ってしまいます! ならば、奴らを倒すのが先決かと、」

 

「──で? そのためならエネルギーをいくら使っても良いってか? 随分と偉くなったモンだな、お前も」

 

 ボスは(かかと)を鳴らしながら、セニオへと近づく。彼女の怒りがそのまま外に出ているかのように、ボスの髪や尻尾は逆立ち、放たれたプレッシャーが部屋を揺らす。

 

「良いか? 私たちの目的は、あくまで感情を集めることだ。戦う事じゃねぇ。ましてや、地球を母星の二の舞にする事でもねぇ。『恐怖』っつー、比較的(いだ)きやすい感情を、エネルギーとして収集する事だ。それを、忘れるなよ?」

 

 要は、魔法少女と戦いつつ、負けても良いからエネルギー集めはしろと──割と難易度高くないか? ブダーンはよくこれをやり遂げていたな。改めて見直したぞ。

 

「か、必ずや! 必ずや次こそは、任務を成功させて見せます!」

 

 深く頭を下げるセニオ。隣にいるガツンドは、プレッシャーに当てられてか冷や汗まみれで言葉すら発せないようだ。

 なあ、大丈夫か? セニオの言い方から、『必ず魔法少女を倒して見せます』というニュアンスを感じ取ったんだが。ボスも小さく溜め息をついているし。

 

「レイン、お前は引き続き研究を頼む。本部の方でもやっているらしいが、あちらも手詰まり気味らしくてな。地球人の感情エネルギーからなら、新しい発見があるかもしれねぇ」

 

(おお)せの通りに。とは言え、最近は研究のためのエネルギーも、あまり回ってきませんが」

 

「ぐ、ヌゥ・・・・・・!」

 

 遠回しにつかれた悪態に、セニオは(うめ)く。額に血管がビキビキと浮き出しており、床に突いた拳を強く握りしめていた。

 

「黒騎士、お前も同じくマギアネーロ、ひいてはマギアカリーナへの対処に当たれ。やり方はお前に任せる。

 ま、いつも通りだな」

 

 そう軽く言うボス。私に対しての指示は、いつもこんなもんだ。

 

「なっ、シュヴァルツという裏切り者を出したというのに、黒騎士は見逃すと言うのですか!?」

 

 自分たちがかなり(しぼ)られたからだろう、セニオが抗議の声を上げる。だが、ちょっと待って欲しい。私はその分ちゃんと働いたぞ。*2

 

「・・・・・・私は出来うる限り全力で戦ったが」

 

「貴様、何を言う! 貴様が全力で戦えば、あの裏切り者程度一瞬だろう!」

 

「そこまでの力を出せば、街を巻き込む。それは我々の本意では無いだろう」

 

 誰もそんなの望んでいないし。私も、ボスも、マギアカリーナも。

 

「つー事だ。私の目から見ても、黒騎士は手を抜いてなかった。シュヴァルツの離反に、コイツは関わっていないと、私は判断する」

 

 まぁ、実際はズブズブのズブだが。ボスも、直接私に伝える事こそしていないが、最初からそのつもりだっただろう。

 

「では解散だ。各々(おのおの)業務に当たれ」

 

 そう言ってボスは自分の机に戻り、腰掛けて背もたれに体重を預ける。アレは、かなり疲れているな。恐らく、本部の方とシュヴィーの事で揉めたのだろう。

 今度、何か差し入れを持って行くか。さしあたっては、魔法少女コラボスイーツ辺りを。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

「セニオ様が!?」

 

「ああ。あの様子だと、本人が直接出てきてもおかしくない」

 

 ボスに呼び出しを受けたその日、午後休暇を取った黒騎士は、黄美(きみ)の家にて情報共有を行っていた。相変わらずのダブルスタンダードっぷりである。組織からしても、これは予想外だろう。

 

「その、セニオって人って?」

 

「前に一度、戦った事があるだろう。君たち三人を分断し、各個撃破しようとした奴だ」

 

 「あ~」と曖昧に頷く桜桃(ゆすら)だが、思い出しているようには見えない。隣に座る(あおい)は思わず溜め息をつき、黄美は苦笑した。

 

(わたくし)もその時の記録は見ましたが・・・・・・セニオ様を相手によく勝利したものです。素直に驚きました」

 

「彼は戦術眼こそ優れているが、肉体面は抜きん出ている程ではない。それでも強力だが」

 

「アナタが言うと、なんだか弱そうに聞こえてくるわね・・・・・・」

 

 あくまで今のは、黒騎士の基準だ。葵の記憶の中のセニオは、とんでもない強敵だった。一度は退(しりぞ)けられたものの、もう一度やれと言われても上手くいくかわからない。

 

「確か、山一つをコワガーレにして、私たちを壁で(へだ)てた──」

 

「あ、あの坊主頭の人!」

 

 ようやく思い出したのか、桜桃が納得したように声を上げる。そんな彼女に、志由(しゆ)は半眼を向けた。

 

「・・・・・・セニオ様と戦って、勝てるのでしょうか」

 

「勝てるさ、君たちなら。私はそう信じている」

 

「お姉様・・・・・・!」

 

 黒騎士の言葉に感動した様子の志由だが、彼は一応敵対者である。まるで保護者枠かのように振る舞ってはいるが。

 

『くろき、どっちのたちば・・・・・・?』

 

 相変わらずな二人に、ふぁーたんが呆れていたり、桜桃は微笑んだり、葵が額を押さえたりしていたが──突如、地面が揺れる。魔法少女関連か、自然災害かはともかくとして身構える。

 だが、明らかに地震の揺れ方ではない。徐々に傾き始めた建物に、真っ先に悪の組織の仕業だと判断したのは、志由だった。

 

「まさか、この家をコワガーレに!?」

 

 彼女は自分の正体からこの家を嗅ぎつけられたと、考えた。

 だが、黒騎士は否定する。

 

「いや、違う──あの男!」

 

 彼はこの一瞬で思い至った可能性を、信じられないままに口にした。

 

()()()()()()()をコワガーレにしたのか!」

 

「えっ!?」

 

「はぁ!?」

 

 その言葉を裏付けるように、街全体に地の底から這い出るかのような、コワガーレの咆哮が響いた──

*1
出来なかったのは一部コイツのせい

*2
要審議




ブダーン
生み出すコワガーレはそんなに強く無いが、コスパが良いので基本的に回収率が高い。

ガツンド
生み出すコワガーレは強力だが、燃費が悪く回収したエネルギーも一部使ってしまう。

コワガーレ
地球の物質から生み出される怪物。資源を使わずに作れるため、侵略兵器という観点からは非常に優れていると言える。
対象とする物質の捉え方は広く、概念的な物であるため、今回のような事も出来る。
また、生み出す際には『恐怖』の感情エネルギーが必要。これは組織が保有する中で一番多い感情が『恐怖』のため。
装置が暴走し、感情を奪われる際に人々が抱いた最後の感情は、大半が『恐怖』だった。
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