悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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前回は沢山の感想を頂き、ありがとうございます。とてもモチベになりました。
それもあってか、今回はちょっと長めです。


予想外の一手②

 マギアカリーナたちが住み、日々守ってきた街。それが今、過去最大級に危険な状態へと(おちい)っていた。

 

「せ、セニオ様・・・・・・()えんでしょうか、こんな事して」

 

「ヌ? 何がだ」

 

「さっきエネルギーを集めろって言われたばっかりやのに、こないにエネルギーを使ってしまって・・・・・・」

 

 街そのものがコワガーレと()した怪物──シティコワガーレが咆哮を上げる中、ガツンドは(おの)が上司へと伺い立てる。

 

「何を言う。確かにエネルギーを使いこそしたが──見よ。今までに無い速度で、『恐怖』の感情が集まっているぞ! このペースで集め続ければ、ボスも文句はあるまい!」

 

 確かに、感情エネルギーは集まっている。既に、使った分の半分ほどは回収が出来ていた。

 しかしながら、それは異常事態が起きた直後だからだ。このままなら、収集速度は段々と落ちていくであろう事は、ガツンドにもわかっていた。

 

「なに、案ずるなガツンド。我とて、これだけで万事解決とは思っておらぬ。

 ──さぁ、()()()()()! コワガーレ!」

 

 返答の代わりに、今まで以上の地響きが溢れ出す。シティコワガーレが立ち上がろうと、()()を起こしているのだ。

 街が端から、段々と90度傾いていく。そう、今のコワガーレは身体を寝かせた状態であり、ここから起立させていくだけで、多くの『恐怖』が集まるであろう事は明らかだった。

 

 だが、そう簡単にはいかない事もまた、セニオは理解している。なぜならば──

 

「そこまでだよ!」

 

「これ以上、誰かを傷つけさせません!」

 

 この街には、マギアカリーナ(魔法少女)が居るのだから。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「心を照らす、炎の(きら)めき! マギアマゼンタ!」

 

「心が磨く、剣の輝き! マギアシアン!」

 

「心で包む、慈愛の(またたき)き! マギアイエロー!」

 

「心に従う、憧憬の光! マギアネーロ!」

 

星の導きと共に、誰かの平和を守り抜く!

 

我らこそ、マギアカリーナ!

 

 私は今、心から感動している・・・・・・・!

 

 とうとう、四人揃っての名乗りが! この目で見る事が出来て、本当に良かった! 魔法少女最高! 魔法少女最高! ほらお前も、魔法少女最高と言え!!*1

 

『くろき? あらぶってる?』

 

「すまない。少々取り乱した」

 

 私は今、ふぁーたんと共に物陰からマギアカリーナたちを見守っていた。無論、様々な角度からの録画も行っている。*2

 

「お出ましか、マギアカリーナ。だが、このコワガーレは止められまい。貴様らではな!」

 

「セニオ様・・・・・・いえ、セニオ! どうしてこのような暴挙を!」

 

「ヌ、シュヴァルツか。貴様も、黒騎士などではなく、我の部下だったならば、マギアカリーナなぞにならずに済んだと言うのに・・・・・・愚かなモノよ」

 

いま黒騎士様のこと悪く言いました???

 許せませんねラーマ(刃よ)ジラーテ(回れ)!」

 

「ちょ、ネーロ!?」

 

 会話をしながら怒りと共に魔法を放つマギアネーロ。こっわ、どうしてああなったんだ。*3

 しかし、その斬撃は防がれる。他ならぬ、コワガーレによって。

 

「ッ!?」

 

 交差点にあった道路標識が、突然セニオを守るように移動し、攻撃を(さまた)げたのだ。

 そのまま標識は壊れ、アスファルトに転がる。

 

「あーあ、シュヴァルツのせいで壊れてしもたなぁ。さっすが、裏切り者はやることが違うわ」

 

「ガツンド・・・・・・!」

 

 ここぞとばかりに煽るガツンド。やはりアイツ、シュヴィーに恨みでもあるのだろうか。ちょいちょい突っかかっている気がするな。

 

「ネーロちゃん、落ち着いてください。怒りに身を任せては、相手の思う壺ですよ」

 

「それと──怒りたいのは、アナタだけじゃないのよ!」

 

 言うが早いか、シアンがセニオ目がけて飛び出し、急接近していく。いつかのように、ステッキと剣での二刀流だ。

 

「はぁッ!」

 

「フン」

 

 シアンの攻撃を、セニオは避ける事すらしない。突如、隆起(りゅうき)した地面が彼を守ったからだ。彼女が斬ったのはアスファルトのみで、セニオには傷一つ付いていない。

 

「くっ!」

 

「まだだよ! パーラ(弾よ)!」

 

 そこに、回り込んだマゼンタが魔力で生み出した弾丸を放つ。側面からの攻撃は、しかしどこからか移動してきたブロック塀に(はば)まれた。

 

「ッ・・・・・・!」

 

スペッキオ(鏡よ)・・・・・・!」

 

 だが、その攻撃も防がれるのはわかっていたのだろう。イエローの魔法によって姿を隠していたネーロが、セニオとガツンドのすぐ背後に現れ、ステッキを振るう。

 

「おん? なんや、隠れてコソコソ攻撃とか、やることが卑怯やなぁ」

 

 けれど、それもアスファルトが変形し、二人を高い位置へと移動させた事で、空振りに終わる。

 

「どうした、マギアカリーナ。我々を止めるのでは無かったか?」

 

「言ってくれるじゃない・・・・・・!」

 

 魔法少女たちの攻撃は、(ことごと)く防がれ、無効化される。状況は、最悪と言って良い。

 

 今までであれば、コワガーレを攻撃し、弱ったところを合体魔法で倒していた。しかし、あまりに巨大で大規模なコワガーレであること、また下手に攻撃すれば一般人を巻き込んでしまうことから、今回はシティコワガーレを生み出したセニオを直接叩く事にしたのだ。

 何を隠そう、私の提案である。*4

 

 しかし、想定よりも厄介だな、このコワガーレは。マギアカリーナたちも攻めあぐねているのか、ステッキを構えたまま動けないでいる。きっと、街を傷つける事への忌避感もあるのだろう。

 

『くろき! どうしよう!』

 

「ここでも私を頼るのか・・・・・・」

 

 手詰まりなのはふぁーたんも同じようで、あたふたした様子でこちらを見てくる。

 とは言え、私も解決策を見つけられていない。強いて言うなら、防がれる前に攻撃を当てる事だろうか。*5

 

「・・・・・・そうするしか、無いようですね」

 

「うん。みんな、やろう!」

 

 彼女たちも同じ考えに至ったのか、一斉にセニオとガツンドへと突撃し、魔法を放っていく。

 

「舐めんなや! お前らの考えは、お見通しや!」

 

 攻撃を防ぎつつ、ガツンドが手を掲げる。ちょうど、マゼンタが炎の魔法を放とうとした時だった。

 

「ひ、ひいぃっ!? なんだこれぇ!?」

 

「えっ!? くうっ!!」

 

 一般人の乗ったままの車が、セニオたちの前へと引き寄せられた。乗っていた男性は異常事態に悲鳴を上げ、混乱している。

 マゼンタは魔法の狙いを逸らし、上空へと放つ事でどうにか最悪の事態を回避する。

 

「貴様らの弱点は把握している。他者を守るために戦っている事だ。

 そして、この街の全てが貴様らへの人質となった今、貴様らに勝ち目は無い!」

 

 言いながら、セニオは手を振って目の前の車両を退()かす。このままでは、建物にぶつかる勢いだ。

 

「っ!!」

 

「ぐっ!!」

 

 それを彼女たちが見過ごすはずもなく、全力で移動したマゼンタとシアンが、(すんで)(ところ)で衝突を防いだ。

 

「おーおー健気やなぁ。ほな、もっと頑張ってもらおか」

 

 言いながら、ガツンドは片手を掲げる。そこが起点となったように、周囲から車やバスといった車両が集まってくる。どれも、人が乗ったままだ。

 

「まさか・・・・・・!」

 

「はい、どーん」

 

 軽い口調と共に、腕が振り下ろされる。同時に、磁石が反発するかのように、車両たちが周囲へと吹き飛ばされていく。

 

「ッ、周りのは(わたくし)が! イエローはバスをお願いします!」

 

「!? は、はい!」

 

 イエローが全力で駆け、バスを受け止める。ネーロは魔法を駆使し、起こりえる事故を全て防いだ。

 しかし、これすらその場しのぎに過ぎない。彼女たちが対処できるギリギリを突いて、ガツンドが手を動かしたのだ。

 

悪辣(あくらつ)な・・・・・・」

 

 思わず、そう口にしてしまう程に、彼らの戦い方は最悪だ。

 

 もしこれが戦争ならば、良い手段だろう。こちらの心を折りにかかりつつ、人々から恐怖の感情を集められている。相手には何もさせずに、一方的に苦しめる。なるほど、非常に賢い手だ。とてもセニオらしい。

 だが、これは戦争ではなくニチアサだ。

 

「ナァーッハッハッハ! 今度はコレや! コイツを相手に、お前らは魔法を使えるんかぁ?」

 

 今も、幾つもの車両を無理矢理くっつけ、人型を取らせた怪物がガツンドの手によってマギアカリーナたちへと襲いかかっていた。当然、中に人々が乗っている。

 

「ほう。ならば我もそうするか。少々手間取りそうだがな」

 

 セニオもまた、それを真似て住宅を合成し、怪物を作ろうとしている。中にいる人々の混乱の恐怖の声が、耳を澄まさなくても聞こえてくる。

 

「くっ、きゃあ!」

 

「うぐ、こんの・・・・・・!」

 

「うう・・・・・・なんとか、しないと・・・・・・!」

 

「まだ、です・・・・・・まだ・・・・・・!」

 

 反撃を許されず、傷付いていくマギアカリーナたち。けれど、それでも立ち上がる彼女たちの、なんと高潔な事か。どこまでも、彼女たちの心は気高く、美しい。

 お前らが卑劣で醜いって意味でもあるぞ。セニオ。ガツンド。

 

『マギアカリーナ・・・・・・みんな・・・・・・』

 

 涙混じりなふぁーたんの頭に、私は手を乗せた。出来れば、もう少し後に取っておきたかったが・・・・・・このままでは彼女たちが敗北しかねない。何より、調子に乗ってるセニオとガツンドが気に食わない。

 

『くろき・・・・・・?』

 

「私に考えがある。協力してくれるな、ふぁーたん」

 

 そう言いながら、私は懐からペンライトを取り出す。マギアカリーナたちのステッキをデザインに落とし込んであり、我ながら良い出来だ。ちゃんとそれぞれのカラーに合わせて四種類を用意してある。

 

『え、くろき? なにそれ』

 

「これか? 私が作った、マジカルライトだが」

 

『???』

 

 宇宙猫──いや、ふぁーたんは宇宙から来た猫型の妖精だが、そういう意味ではなく──しているふぁーたんを一旦放置し、私は準備を始める。

 

 本当は、劇場版用に取っておきたかったのだがな。背に腹は代えられない。

 

「ふぁーたん。私たちの思いを、マギアカリーナに届けるぞ」

 

『・・・・・・くろき。ぜんぜんわからない。せつめいをちゃんとして』

 

 説明なら今しただろう。

 

 そう──みんなの応援で、マギアカリーナに力を!だ。

*1
過激派オタク

*2
抜かりなき変態

*3
大体コイツのせい

*4
ドヤ顔

*5
脳筋




黒騎士
こっそりペンライトを作っていた。感情をエネルギーに変える機構を組み込んでいるので、本当に応援が力になる代物。ボスにはもう渡してある。
本当は劇場版展開に向けて用意していたらしい。

ふぁーたん
名実ともにスペースキャット。最近は黒騎士に振り回されてばかり。

セニオ
どこまでも(いくさ)思考。過去に戦争に必要ないと判断した感情を全部エネルギーにしてしまっているので、冷静な思考が出来ない事がある。本人は無自覚。

ボス
拠点からセニオとガツンドにキレながら見守っていたが、黒騎士から『ペンライトを使う』と連絡が来てテンションMAX。四色それぞれ三本ずつ持っている。
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