悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】 作:高々鷹々
それもあってか、今回はちょっと長めです。
マギアカリーナたちが住み、日々守ってきた街。それが今、過去最大級に危険な状態へと
「せ、セニオ様・・・・・・
「ヌ? 何がだ」
「さっきエネルギーを集めろって言われたばっかりやのに、こないにエネルギーを使ってしまって・・・・・・」
街そのものがコワガーレと
「何を言う。確かにエネルギーを使いこそしたが──見よ。今までに無い速度で、『恐怖』の感情が集まっているぞ! このペースで集め続ければ、ボスも文句はあるまい!」
確かに、感情エネルギーは集まっている。既に、使った分の半分ほどは回収が出来ていた。
しかしながら、それは異常事態が起きた直後だからだ。このままなら、収集速度は段々と落ちていくであろう事は、ガツンドにもわかっていた。
「なに、案ずるなガツンド。我とて、これだけで万事解決とは思っておらぬ。
──さぁ、
返答の代わりに、今まで以上の地響きが溢れ出す。シティコワガーレが立ち上がろうと、
街が端から、段々と90度傾いていく。そう、今のコワガーレは身体を寝かせた状態であり、ここから起立させていくだけで、多くの『恐怖』が集まるであろう事は明らかだった。
だが、そう簡単にはいかない事もまた、セニオは理解している。なぜならば──
「そこまでだよ!」
「これ以上、誰かを傷つけさせません!」
この街には、
▽▲▽▲▽▲
「心を照らす、炎の
「心が磨く、剣の輝き! マギアシアン!」
「心で包む、慈愛の
「心に従う、憧憬の光! マギアネーロ!」
「「「「星の導きと共に、誰かの平和を守り抜く!」」」」
「「「「我らこそ、マギアカリーナ!」」」」
私は今、心から感動している・・・・・・・!
とうとう、四人揃っての名乗りが! この目で見る事が出来て、本当に良かった! 魔法少女最高! 魔法少女最高! ほらお前も、魔法少女最高と言え!!*1
『くろき? あらぶってる?』
「すまない。少々取り乱した」
私は今、ふぁーたんと共に物陰からマギアカリーナたちを見守っていた。無論、様々な角度からの録画も行っている。*2
「お出ましか、マギアカリーナ。だが、このコワガーレは止められまい。貴様らではな!」
「セニオ様・・・・・・いえ、セニオ! どうしてこのような暴挙を!」
「ヌ、シュヴァルツか。貴様も、黒騎士などではなく、我の部下だったならば、マギアカリーナなぞにならずに済んだと言うのに・・・・・・愚かなモノよ」
「いま黒騎士様のこと悪く言いました???
許せませんね
「ちょ、ネーロ!?」
会話をしながら怒りと共に魔法を放つマギアネーロ。こっわ、どうしてああなったんだ。*3
しかし、その斬撃は防がれる。他ならぬ、コワガーレによって。
「ッ!?」
交差点にあった道路標識が、突然セニオを守るように移動し、攻撃を
そのまま標識は壊れ、アスファルトに転がる。
「あーあ、シュヴァルツのせいで壊れてしもたなぁ。さっすが、裏切り者はやることが違うわ」
「ガツンド・・・・・・!」
ここぞとばかりに煽るガツンド。やはりアイツ、シュヴィーに恨みでもあるのだろうか。ちょいちょい突っかかっている気がするな。
「ネーロちゃん、落ち着いてください。怒りに身を任せては、相手の思う壺ですよ」
「それと──怒りたいのは、アナタだけじゃないのよ!」
言うが早いか、シアンがセニオ目がけて飛び出し、急接近していく。いつかのように、ステッキと剣での二刀流だ。
「はぁッ!」
「フン」
シアンの攻撃を、セニオは避ける事すらしない。突如、
「くっ!」
「まだだよ!
そこに、回り込んだマゼンタが魔力で生み出した弾丸を放つ。側面からの攻撃は、しかしどこからか移動してきたブロック塀に
「ッ・・・・・・!」
「
だが、その攻撃も防がれるのはわかっていたのだろう。イエローの魔法によって姿を隠していたネーロが、セニオとガツンドのすぐ背後に現れ、ステッキを振るう。
「おん? なんや、隠れてコソコソ攻撃とか、やることが卑怯やなぁ」
けれど、それもアスファルトが変形し、二人を高い位置へと移動させた事で、空振りに終わる。
「どうした、マギアカリーナ。我々を止めるのでは無かったか?」
「言ってくれるじゃない・・・・・・!」
魔法少女たちの攻撃は、
今までであれば、コワガーレを攻撃し、弱ったところを合体魔法で倒していた。しかし、あまりに巨大で大規模なコワガーレであること、また下手に攻撃すれば一般人を巻き込んでしまうことから、今回はシティコワガーレを生み出したセニオを直接叩く事にしたのだ。
何を隠そう、私の提案である。*4
しかし、想定よりも厄介だな、このコワガーレは。マギアカリーナたちも攻めあぐねているのか、ステッキを構えたまま動けないでいる。きっと、街を傷つける事への忌避感もあるのだろう。
『くろき! どうしよう!』
「ここでも私を頼るのか・・・・・・」
手詰まりなのはふぁーたんも同じようで、あたふたした様子でこちらを見てくる。
とは言え、私も解決策を見つけられていない。強いて言うなら、防がれる前に攻撃を当てる事だろうか。*5
「・・・・・・そうするしか、無いようですね」
「うん。みんな、やろう!」
彼女たちも同じ考えに至ったのか、一斉にセニオとガツンドへと突撃し、魔法を放っていく。
「舐めんなや! お前らの考えは、お見通しや!」
攻撃を防ぎつつ、ガツンドが手を掲げる。ちょうど、マゼンタが炎の魔法を放とうとした時だった。
「ひ、ひいぃっ!? なんだこれぇ!?」
「えっ!? くうっ!!」
一般人の乗ったままの車が、セニオたちの前へと引き寄せられた。乗っていた男性は異常事態に悲鳴を上げ、混乱している。
マゼンタは魔法の狙いを逸らし、上空へと放つ事でどうにか最悪の事態を回避する。
「貴様らの弱点は把握している。他者を守るために戦っている事だ。
そして、この街の全てが貴様らへの人質となった今、貴様らに勝ち目は無い!」
言いながら、セニオは手を振って目の前の車両を
「っ!!」
「ぐっ!!」
それを彼女たちが見過ごすはずもなく、全力で移動したマゼンタとシアンが、
「おーおー健気やなぁ。ほな、もっと頑張ってもらおか」
言いながら、ガツンドは片手を掲げる。そこが起点となったように、周囲から車やバスといった車両が集まってくる。どれも、人が乗ったままだ。
「まさか・・・・・・!」
「はい、どーん」
軽い口調と共に、腕が振り下ろされる。同時に、磁石が反発するかのように、車両たちが周囲へと吹き飛ばされていく。
「ッ、周りのは
「!? は、はい!」
イエローが全力で駆け、バスを受け止める。ネーロは魔法を駆使し、起こりえる事故を全て防いだ。
しかし、これすらその場しのぎに過ぎない。彼女たちが対処できるギリギリを突いて、ガツンドが手を動かしたのだ。
「
思わず、そう口にしてしまう程に、彼らの戦い方は最悪だ。
もしこれが戦争ならば、良い手段だろう。こちらの心を折りにかかりつつ、人々から恐怖の感情を集められている。相手には何もさせずに、一方的に苦しめる。なるほど、非常に賢い手だ。とてもセニオらしい。
だが、これは戦争ではなくニチアサだ。
「ナァーッハッハッハ! 今度はコレや! コイツを相手に、お前らは魔法を使えるんかぁ?」
今も、幾つもの車両を無理矢理くっつけ、人型を取らせた怪物がガツンドの手によってマギアカリーナたちへと襲いかかっていた。当然、中に人々が乗っている。
「ほう。ならば我もそうするか。少々手間取りそうだがな」
セニオもまた、それを真似て住宅を合成し、怪物を作ろうとしている。中にいる人々の混乱の恐怖の声が、耳を澄まさなくても聞こえてくる。
「くっ、きゃあ!」
「うぐ、こんの・・・・・・!」
「うう・・・・・・なんとか、しないと・・・・・・!」
「まだ、です・・・・・・まだ・・・・・・!」
反撃を許されず、傷付いていくマギアカリーナたち。けれど、それでも立ち上がる彼女たちの、なんと高潔な事か。どこまでも、彼女たちの心は気高く、美しい。
お前らが卑劣で醜いって意味でもあるぞ。セニオ。ガツンド。
『マギアカリーナ・・・・・・みんな・・・・・・』
涙混じりなふぁーたんの頭に、私は手を乗せた。出来れば、もう少し後に取っておきたかったが・・・・・・このままでは彼女たちが敗北しかねない。何より、調子に乗ってるセニオとガツンドが気に食わない。
『くろき・・・・・・?』
「私に考えがある。協力してくれるな、ふぁーたん」
そう言いながら、私は懐からペンライトを取り出す。マギアカリーナたちのステッキをデザインに落とし込んであり、我ながら良い出来だ。ちゃんとそれぞれのカラーに合わせて四種類を用意してある。
『え、くろき? なにそれ』
「これか? 私が作った、マジカルライトだが」
『???』
宇宙猫──いや、ふぁーたんは宇宙から来た猫型の妖精だが、そういう意味ではなく──しているふぁーたんを一旦放置し、私は準備を始める。
本当は、劇場版用に取っておきたかったのだがな。背に腹は代えられない。
「ふぁーたん。私たちの思いを、マギアカリーナに届けるぞ」
『・・・・・・くろき。ぜんぜんわからない。せつめいをちゃんとして』
説明なら今しただろう。
そう──みんなの応援で、マギアカリーナに力を!だ。
黒騎士
こっそりペンライトを作っていた。感情をエネルギーに変える機構を組み込んでいるので、本当に応援が力になる代物。ボスにはもう渡してある。
本当は劇場版展開に向けて用意していたらしい。
ふぁーたん
名実ともにスペースキャット。最近は黒騎士に振り回されてばかり。
セニオ
どこまでも
ボス
拠点からセニオとガツンドにキレながら見守っていたが、黒騎士から『ペンライトを使う』と連絡が来てテンションMAX。四色それぞれ三本ずつ持っている。