悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】 作:高々鷹々
魔法少女マギアカリーナは、絶体絶命の
相手は一般人を巻き込んだ怪物に、街そのものを素材としたコワガーレ。こちらは人々に被害が出かねないため魔法を使えないのに対し、セニオたちは怪物を操り一方的に攻撃を繰り出してくる。
コワガーレだけを合体魔法で倒そうとしても、あまりの巨体に意味を成さない。加えて、それだけの魔法を使おうとすれば、ガツンドが察して妨害してくるだろう。
「はあ、はあ・・・・・・!」
「ぇほ、っく、う・・・・・・!」
「まだ・・・・・・まだ、
彼女たちはその負けん気と折れない心で、どうにかまだ立っていたが──敗北は、時間の問題だった。
「まだ、負けてない! 諦めてない!」
だが、それでも。
打開策が無くとも。体力も魔力も、限界に近いとしても。
負ける訳にはいかない──
『みんな、きいて!』
そんな彼女たちの思いに応えるように、声が響いた。
▽▲▽▲▽▲
「よし、繋がったな。仮想モニターも展開できる。いつでも行けるぞ、ふぁーたん」
『あいかわらずのなぞぎじゅつ・・・・・・え、ほんとにやるの?』
「君がやらなければ誰がやる」
『くろきとか・・・・・・』
「こういうのはマスコット枠がやるのが鉄則だ。それに、私がやっても胡散臭いだろう」
というやり取りがあったのが、少し前のこと。
現在、ふぁーたんの姿と声は、この街の人々全員に見えている。私が鎧の機能を使ってハッキングしたり、映像を映し出したりしているためだ。
『いま、マギアカリーナがみんなをまもるためにたたかってる! けど、このままだと、マギアカリーナがまけちゃう!』
それと同時に、転移を応用した物質転送で、この映像を見ている人々の元へ、私の作ったペンライト──マジカルライトを転送していく。ふぁーたんの協力もあって、星型のポップな光と共に手元に現れる、魔法少女らしい演出が出来ている事だろう。
『だから、おねがい! このマジカルライトをふって、マギアカリーナをおうえんして!』
後は、ふぁーたんの呼びかけにどれだけの人が応えてくれるか次第だ。まぁ、この状況で魔法少女を応援しないような人間は居ないだろうが。
何も、私の中でだけの確定事項ではない。彼女たちは正体こそ隠しているが、マギアカリーナが日々戦っている事を、街の人々は知っている。彼女たちに助けられた人も居れば、戦いを見た人も居るだろう。名前だけは、噂だけは知っている、という人もきっと居る。
だが、知らない者は居ない。彼女たちはずっと、誰かの平和のために、戦い続けて来たのだから。
『みんな、いっしょにおうえんして!
がんばれ、マギアカリーナ!!』
ふぁーたんが、ライトを振る。その明かりは小さく、頼りない。だが、一つではない。
少しずつ、ゆっくりと、光が増えていく。街の中に、幾つもの明かりが灯っていく。
『まけないで、マギアカリーナ!』
私は勝利を確信し、自分のペンライトを構えた。
▼△▼△▼△
事態を正確に把握できている者は、きっと殆ど居なかった。誰もが混乱していて、恐怖していて、自分たちの事で、精一杯だった。
けれど、モニターから、自分のスマホから、町中のスピーカーから聞こえてくるその一生懸命な声に、誰かが意識を向けた。
「がんばれ・・・・・・頑張れ、マギアカリーナ!」
ある人が、ペンライトを掲げた。モニターに映る、今も必死に戦う少女たちに、負けて欲しくないと願った。
「負けるな、マギアカリーナ!」
「諦めるな!」
「頑張って、マギアカリーナ!」
「私たちも、応援しているぞ」
彼女たちの家族もまた、祈った。子供たちの無事と、少女たちの勝利を。
「お嬢様・・・・・・いえ、マギアカリーナ。いつでも、応援しております」
「魔法少女のお姉ちゃん! 負けないで!」
いつの日か、志由──シュヴァルツに助けられた少女もまた、声援を送っていた。あの日助けてくれた人を、今度は自分が助けるために。
「・・・・・・私も、全力を尽くそう」
そして、その様子を端末にて確認していた黒騎士は、テンションが限界突破し全力でオタ芸を打っていた。両手にペンライトを四本ずつ、それを全力で振るう姿は、戦士としての技量を感じさせるキレと激しさを
『・・・・・・みんなのちからをかして!
マギアカリーナに、ちからを!』
そんな黒騎士の様子にドン引きしながらも、自分の姿が生放送中であるふぁーたんは、どうにか表情を変えずに人々へと訴えかける。マギアカリーナを、助けて欲しいと。
そうして、多くのペンライトの光が、街を照らしていき──その光が、マギアカリーナたちの元へと、集まっていく。
「これって・・・・・・もしかして」
「みんなの想いが、伝わってくる・・・・・・」
「これは・・・・・・じいや、ありがとうございます」
「・・・・・・今度は、嘘をつかなくて済みそうですね」
その光に触れれば、魔力と共に想いが伝わってくる。それは僅かな量でだったが、彼女たちを温かく包む光は、数え切れないほどだった。
「な、なんや!? 何が起きてるんや!」
「ええい、ガツンド、何をしている! コワガーレ、奴らを始末しろ!」
焦ったセニオの指示を受けたはずのシティコワガーレだが、まるで反応が無い。まるで、街そのものが嫌がっているかのようだった。
『がんばって、マギアカリーナ!』
「ありがとう、ふぁーたん、みんな・・・・・・!
これなら、すっごく頑張れる!」
全身から、力が
声援に背中を押され、彼女たちは手を繋ぐ。自分たちの魔力を、一カ所に集めるために。
「光溢れる、心、想い」
「心は重なり、広がる」
「想いは途絶えず、繋がる」
「みんなの心を、ここに重ね合わせて」
「「「「クーラ・デ・ステラルーチェ」」」」
普段とは異なる、静かな詠唱と共に、光が世界を包み込んでいく。傷付いた街を癒やし、恐怖を拭い去り、いつもの日常を取り戻していく。
それは正に、浄化の光。何一つ傷つける事の無い、温かな輝き。星の
「馬鹿な・・・・・・何故だ、どうして。意味がわからん」
「ど、どないしましょ、セニオ様!? 回収したエネルギー、消えてってまう!」
「・・・・・・・・・・・・」
放心したセニオは、地面に膝を突く。
マギアカリーナを確実に倒しつつ、感情エネルギーを集められる、最善の手だったはずだ。コワガーレを作るのにエネルギーこそ使うが、それも必要経費であり、それ以上に回収できる見込みがあった。
だが、実際はどうだ。マギアカリーナを倒せていないどころか、集めた『恐怖』まで失う始末。失態どころの騒ぎではない。
失意の中、セニオは思考を巡らせる。偏った考え方と感情のまま、彼の心は渦巻く。
セニオにとって最悪であったのは、彼が多くの感情をエネルギーへと変換し、失っていた事だろう。冷徹な将であろうとした彼は、喜びも悲しみも楽しさも、既に持っていない。そして、残った感情に火が着くのは、当然の事だった。
「マギアカリーナ・・・・・・マギアカリーナァァアアアアアア!!」
そう、『怒り』だ。彼が捨てきれなかったもの。己への不甲斐なさ、装置の暴走を止められなかった自責の念だったはずの怒りが、歪んだ矛となって少女たちへと向かう。
「せ、セニオ様!?」
「そうだ、貴様らが! 貴様らさえ居なければ、我が失敗する事も無かった! 我が醜態を晒す事も、無かったのだ!」
獣じみた咆哮と共に、セニオの肉体が変化していく。額からは鬼のような角が突き出し、筋肉は膨張し、肉体は音と共に強大になっていく。
当人にとっては、正当な。しかし、周囲から見れば八つ当たりにしかならない怒りと共に、セニオは全ての力を引き出した。
「なんなの、アレ・・・・・・!」
「セニオ様の、全力の姿です! あの姿となったセニオ様の強さは、黒騎士様にも迫ります!」
「・・・・・・冷静に考えてみると、黒木さんって強すぎませんか?」
「きいちゃん構えて、来るよ!」
「マギア、カリーナアアアアア!!」
かくして、平和を取り戻したはずの街で、予想だにしていなかった更なる戦いが勃発した。
黒騎士
自宅でペンライトを作っていたら、存外楽しかったため寝ずに1000個ほど作っていた。
志由にはバレないように全力で隠蔽していたので隠し通せた。
しれっと街の電子機器の大半をハッキングしたりしたが、そのヤバさに気付いていない。
セニオ
冷徹な機械にもなりきれず、しかし自分の欠陥にも気付けていない状態。本人としては最善を選択しているはずだった。
ボス
描写できなかったけど黒騎士と同じくらい全力で応援していた。なんなら三人に分身してライトを振っていた。
ふぁーたん
本来魔法少女の素質が無い人には見えないが、黒騎士の鎧の機能で映してなんとかしていた。
街の人に応援させるのにはあんまり乗り気じゃなかったが、マギアカリーナがピンチなので全力でやった。