悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

31 / 55
前々回辺りの後書きで透明文字を使ったんですけど、あんまり気付かれてなさそうだったので普通の文字色にしました。わかりにくいみたいなので今後やらないようにします。


マジカルライトで、マギアカリーナを応援しよう!

 魔法少女マギアカリーナは、絶体絶命の窮地(ピンチ)にあった。

 

 相手は一般人を巻き込んだ怪物に、街そのものを素材としたコワガーレ。こちらは人々に被害が出かねないため魔法を使えないのに対し、セニオたちは怪物を操り一方的に攻撃を繰り出してくる。

 コワガーレだけを合体魔法で倒そうとしても、あまりの巨体に意味を成さない。加えて、それだけの魔法を使おうとすれば、ガツンドが察して妨害してくるだろう。

 

「はあ、はあ・・・・・・!」

 

「ぇほ、っく、う・・・・・・!」

 

「まだ・・・・・・まだ、(わたくし)たちは!」

 

 彼女たちはその負けん気と折れない心で、どうにかまだ立っていたが──敗北は、時間の問題だった。

 

「まだ、負けてない! 諦めてない!」

 

 だが、それでも。

 打開策が無くとも。体力も魔力も、限界に近いとしても。

 

 負ける訳にはいかない──

 

『みんな、きいて!』

 

 そんな彼女たちの思いに応えるように、声が響いた。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

「よし、繋がったな。仮想モニターも展開できる。いつでも行けるぞ、ふぁーたん」

 

『あいかわらずのなぞぎじゅつ・・・・・・え、ほんとにやるの?』

 

「君がやらなければ誰がやる」

 

『くろきとか・・・・・・』

 

「こういうのはマスコット枠がやるのが鉄則だ。それに、私がやっても胡散臭いだろう

 

 というやり取りがあったのが、少し前のこと。

 

 現在、ふぁーたんの姿と声は、この街の人々全員に見えている。私が鎧の機能を使ってハッキングしたり、映像を映し出したりしているためだ。

 

『いま、マギアカリーナがみんなをまもるためにたたかってる! けど、このままだと、マギアカリーナがまけちゃう!』

 

 それと同時に、転移を応用した物質転送で、この映像を見ている人々の元へ、私の作ったペンライト──マジカルライトを転送していく。ふぁーたんの協力もあって、星型のポップな光と共に手元に現れる、魔法少女らしい演出が出来ている事だろう。

 

『だから、おねがい! このマジカルライトをふって、マギアカリーナをおうえんして!』

 

 後は、ふぁーたんの呼びかけにどれだけの人が応えてくれるか次第だ。まぁ、この状況で魔法少女を応援しないような人間は居ないだろうが。

 

 何も、私の中でだけの確定事項ではない。彼女たちは正体こそ隠しているが、マギアカリーナが日々戦っている事を、街の人々は知っている。彼女たちに助けられた人も居れば、戦いを見た人も居るだろう。名前だけは、噂だけは知っている、という人もきっと居る。

 だが、知らない者は居ない。彼女たちはずっと、誰かの平和のために、戦い続けて来たのだから。

 

『みんな、いっしょにおうえんして!

 がんばれ、マギアカリーナ!!』

 

 ふぁーたんが、ライトを振る。その明かりは小さく、頼りない。だが、一つではない。

 

 少しずつ、ゆっくりと、光が増えていく。街の中に、幾つもの明かりが灯っていく。

 

『まけないで、マギアカリーナ!』

 

 私は勝利を確信し、自分のペンライトを構えた。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

 事態を正確に把握できている者は、きっと殆ど居なかった。誰もが混乱していて、恐怖していて、自分たちの事で、精一杯だった。

 けれど、モニターから、自分のスマホから、町中のスピーカーから聞こえてくるその一生懸命な声に、誰かが意識を向けた。

 

「がんばれ・・・・・・頑張れ、マギアカリーナ!」

 

 ある人が、ペンライトを掲げた。モニターに映る、今も必死に戦う少女たちに、負けて欲しくないと願った。

 

「負けるな、マギアカリーナ!」

「諦めるな!」

 

 桜桃(ゆすら)たちと同じ中学に通う生徒たちも、正体を知らないまま、けれど応援した。

 

「頑張って、マギアカリーナ!」

「私たちも、応援しているぞ」

 

 彼女たちの家族もまた、祈った。子供たちの無事と、少女たちの勝利を。

 

「お嬢様・・・・・・いえ、マギアカリーナ。いつでも、応援しております」

 

 黄美(きみ)に仕える老年の執事は、普段のように捧げた。その忠誠と、祈りを。

 

「魔法少女のお姉ちゃん! 負けないで!」

 

 いつの日か、志由──シュヴァルツに助けられた少女もまた、声援を送っていた。あの日助けてくれた人を、今度は自分が助けるために。

 

「・・・・・・私も、全力を尽くそう」

 

 そして、その様子を端末にて確認していた黒騎士は、テンションが限界突破し全力でオタ芸を打っていた。両手にペンライトを四本ずつ、それを全力で振るう姿は、戦士としての技量を感じさせるキレと激しさを(ともな)っていた。絶対に発揮する場所を間違えている。

 

『・・・・・・みんなのちからをかして!

 マギアカリーナに、ちからを!』

 

 そんな黒騎士の様子にドン引きしながらも、自分の姿が生放送中であるふぁーたんは、どうにか表情を変えずに人々へと訴えかける。マギアカリーナを、助けて欲しいと。

 

 そうして、多くのペンライトの光が、街を照らしていき──その光が、マギアカリーナたちの元へと、集まっていく。

 

「これって・・・・・・もしかして」

 

「みんなの想いが、伝わってくる・・・・・・」

 

「これは・・・・・・じいや、ありがとうございます」

 

「・・・・・・今度は、嘘をつかなくて済みそうですね」

 

 その光に触れれば、魔力と共に想いが伝わってくる。それは僅かな量でだったが、彼女たちを温かく包む光は、数え切れないほどだった。

 

「な、なんや!? 何が起きてるんや!」

 

「ええい、ガツンド、何をしている! コワガーレ、奴らを始末しろ!」

 

 焦ったセニオの指示を受けたはずのシティコワガーレだが、まるで反応が無い。まるで、街そのものが嫌がっているかのようだった。

 

『がんばって、マギアカリーナ!』

 

「ありがとう、ふぁーたん、みんな・・・・・・!

 これなら、すっごく頑張れる!」

 

 全身から、力が(みなぎ)ってくるかのようだった。今ならきっと、このコワガーレを倒して、人々を助ける事が出来る。その確信が、マギアカリーナたちの中にはあった。

 

 声援に背中を押され、彼女たちは手を繋ぐ。自分たちの魔力を、一カ所に集めるために。

 

「光溢れる、心、想い」

 

「心は重なり、広がる」

 

「想いは途絶えず、繋がる」

 

「みんなの心を、ここに重ね合わせて」

 

クーラ・デ・ステラルーチェ

 

 普段とは異なる、静かな詠唱と共に、光が世界を包み込んでいく。傷付いた街を癒やし、恐怖を拭い去り、いつもの日常を取り戻していく。

 それは正に、浄化の光。何一つ傷つける事の無い、温かな輝き。星の(またた)きのように、常に寄り添ってくれる優しい(きら)めきだ。

 

「馬鹿な・・・・・・何故だ、どうして。意味がわからん」

 

「ど、どないしましょ、セニオ様!? 回収したエネルギー、消えてってまう!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 放心したセニオは、地面に膝を突く。

 マギアカリーナを確実に倒しつつ、感情エネルギーを集められる、最善の手だったはずだ。コワガーレを作るのにエネルギーこそ使うが、それも必要経費であり、それ以上に回収できる見込みがあった。

 だが、実際はどうだ。マギアカリーナを倒せていないどころか、集めた『恐怖』まで失う始末。失態どころの騒ぎではない。

 

 失意の中、セニオは思考を巡らせる。偏った考え方と感情のまま、彼の心は渦巻く。

 セニオにとって最悪であったのは、彼が多くの感情をエネルギーへと変換し、失っていた事だろう。冷徹な将であろうとした彼は、喜びも悲しみも楽しさも、既に持っていない。そして、残った感情に火が着くのは、当然の事だった。

 

「マギアカリーナ・・・・・・マギアカリーナァァアアアアアア!!」

 

 そう、『怒り』だ。彼が捨てきれなかったもの。己への不甲斐なさ、装置の暴走を止められなかった自責の念だったはずの怒りが、歪んだ矛となって少女たちへと向かう。

 

「せ、セニオ様!?」

 

「そうだ、貴様らが! 貴様らさえ居なければ、我が失敗する事も無かった! 我が醜態を晒す事も、無かったのだ!」

 

 獣じみた咆哮と共に、セニオの肉体が変化していく。額からは鬼のような角が突き出し、筋肉は膨張し、肉体は音と共に強大になっていく。

 当人にとっては、正当な。しかし、周囲から見れば八つ当たりにしかならない怒りと共に、セニオは全ての力を引き出した。

 

「なんなの、アレ・・・・・・!」

 

「セニオ様の、全力の姿です! あの姿となったセニオ様の強さは、黒騎士様にも迫ります!」

 

「・・・・・・冷静に考えてみると、黒木さんって強すぎませんか?」

 

「きいちゃん構えて、来るよ!」

 

「マギア、カリーナアアアアア!!」

 

 かくして、平和を取り戻したはずの街で、予想だにしていなかった更なる戦いが勃発した。




黒騎士
自宅でペンライトを作っていたら、存外楽しかったため寝ずに1000個ほど作っていた。
志由にはバレないように全力で隠蔽していたので隠し通せた。
しれっと街の電子機器の大半をハッキングしたりしたが、そのヤバさに気付いていない。

セニオ
冷徹な機械にもなりきれず、しかし自分の欠陥にも気付けていない状態。本人としては最善を選択しているはずだった。

ボス
描写できなかったけど黒騎士と同じくらい全力で応援していた。なんなら三人に分身してライトを振っていた。

ふぁーたん
本来魔法少女の素質が無い人には見えないが、黒騎士の鎧の機能で映してなんとかしていた。
街の人に応援させるのにはあんまり乗り気じゃなかったが、マギアカリーナがピンチなので全力でやった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。