悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】 作:高々鷹々
思った以上に話が膨らんだので、嬉しい悲鳴を上げています。現状だと、50話近くかかりそう・・・
「マギア、カリーナアアアアア!!」
獣じみた咆哮と共に、全力の姿となったセニオが、こちらへと突っ込んで来ます。その速度と巨体も相まって、まるで砲丸のよう──とは言え、
「マゼンタちゃん!
「わかってる!
「ヌウゥウウウ!」
マゼンタとイエローが息の合ったコンビネーションで攻撃を防ぎ、防御が破られないうちに拘束します。二人は幼馴染みらしく、時折こうして相談もなしに意思疎通を取っています。
羨ましいですね。
「合わせて!
「ええ!
シアンと連携し、セニオに斬撃を放ちます。
・・・・・・ちょっとキャラ被っているんですよね、彼女と
「ヌオオオオ! フッ! ハァッ!」
しかしセニオは鎖の魔法を
そのまま地面へ拳を叩き付け、破壊したアスファルトの塊を殴ってこちらへと撃ち出す姿は、あまりに規格外でした。
「くっ、無茶苦茶ですね!」
「ネーロ! ありがとう!」
ステッキから出現させた刃で攻撃を
なんて、戦いやすい・・・・・・連携しての戦闘が、ここまで快適なものだったとは。彼女たちと息が合ってきたのと、同じ目的を共有しているからでしょうか。三人の考えている事が、なんとなく伝わってきます。*2
お姉様ともこれぐらい以心伝心したいものです。四六時中、寝ている時までずぅっと・・・・・・。
「あ、あはは・・・・・・」
「戦いに集中しなさい、ネーロ!」
「・・・・・・すみません」
そこまで伝わらなくても良いのですが。イエローも赤面してしまっていますし、切り替えなければですね。
「マギア、カリーナァァアアア!」
「全く、それしか言えなくなって、しまったのですか!」
連続して繰り出される拳と蹴りを回避しながら、背面へと回し蹴りを入れる。魔法でも何でも無い蹴撃なので、大した威力にはなりませんが。
「貴様らが、貴様らさえいなければァ!」
「ああもう、うるっさいわね!
気炎を吐くセニオに、シアンが刃を叩き込みます。セニオの肉体は
「これなら!
「ヌオオオオ!?」
マゼンタの放ったイカズチが、セニオの動きを鈍らせ、隙を作り出します。そこへ、更に
この勝負、勝てる──
▼△▼△▼△
『アークス』幹部、セニオ。彼の全力の姿は、確かに強力であった。並外れた筋力に、生半可な攻撃を許さない鋼の肉体、そこから繰り出される膂力。戦士としては、確かに強い。
しかし、言ってしまえば
対してマギアカリーナは、四人という数の有利の上、様々な魔法による攻撃が可能だ。限界だった体力や魔力も、人々の声援の力によってかなり回復している。気力だって十分だ。故に、負ける要素が無かった。
もしセニオが、本来の戦術眼を発揮し、確かな下準備をしてこの戦いに挑んでいれば、マギアカリーナたちに勝ち目は無かっただろう。
もし彼女たちが人々から応援を受けた後ではなく、コワガーレとの戦闘で疲弊していたら、敗北は濃厚だった。
だが、怒りに支配され、己を失った状態の彼は、突き進む事しかしない。ひたすらに、マギアカリーナへ敵意の矛を向けるのみだ。
「マギア、カリーナァァァァ・・・・・・!」
「そこです!
「援護します、
「ヌ、ガアアアア!」
だが、わかる事もある。このままでは、自分は負ける。怒りの中でも、セニオはその事実を肌で感じ取っていた。
「我は・・・・・・負ける訳には、行かぬのだァアアアアア!」
自分たちが負けるとは、母星の危機を救えないという事。故に、敗北は許されない。どんな手を使ってでも、勝利しなければならない。
「ヌアアアアアア!!」
雄叫びと共に、彼は更なる力を求める。自分はどうなっても良い、ただひたすらに、『力』を。そのためなら、この『怒り』も、全て
「このエネルギー量・・・・・・まさか!?」
「あ、アカン! セニオ様、それ以上は!」
ネーロ──シュヴァルツと、ガツンドは真っ先に気付いた。彼が、何をしようとしているのか。
「ま、まさか、もっと強くなるんですか・・・・・・!?」
「だとしたら、不味いわね。今のうちに体勢を──」
「そんな事を言っている場合ではありません! 早く、セニオ様を止めなければ!」
「ネーロ!?」
「セニオ様、
「ヌオオオオオオオオオオォオオ!!」
マギアカリーナたちも、ガツンドも、彼を止めようと駆け出した。魔法も使ったし、コワガーレだって生み出して加勢させた。しかし、膨大なエネルギーに全て吹き飛ばされてしまう。
「ヌアアアアアアアアアァァァァ──!!」
そして、セニオの身体から溢れたエネルギーが、渦となって周囲を巻き込み──
「・・・・・・そこまでだ」
突如現れた黒騎士が、一撃でもってセニオの意識を刈り取った。
「・・・・・・くろきし、さま」
「・・・・・・・・・・・・」
彼は気絶させたセニオを脇に抱えると、何かを問いかけるようなネーロの視線には答えず、衝撃で吹き飛ばされたガツンドの元へと向かう。
「く、黒騎士サン・・・・・・セニオ様は・・・・・・」
「・・・・・・命に別状は無い」
いつも通りの
「どういう事、なんでしょう・・・・・・」
「黒騎士さん、なんでそんなに、悲しそうなの・・・・・・?」
「帰還するぞ。立て、ガツンド」
「ちょっと、待ちなさいよ!」
彼はマギアカリーナには何も言わず、ガツンドを連れて姿を消した。恐らく、転移で拠点へと戻ったのだろう。
「ネーロ──
そうなれば、彼女たちが訊く先は、志由一択になる。変身を解いた三人の視線を受けながら、彼女は目を逸らした。
「・・・・・・恐らくですが、セニオは・・・・・・自身の感情の全てを、
「それって・・・・・・」
「はい」
悔しさと共に唇を噛む志由。そのまま噛みきって流血しかねないほど、彼女は自分を責めていた。
「彼は、感情の全てを失ってしまいました」
「そんな・・・・・・!」
「うそ・・・・・・」
確かに彼は、敵だった。地球を侵略し、人々を恐怖に
だとしても、これは。こんな結末は、あんまりだ。
街を守り切り、強敵を打ち倒した。だと言うのに、彼女たちの心は、晴れないままだった──