悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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実はこの作品、最初は31話で終わらせる予定だったんですよね。ちょうど一ヶ月で。
思った以上に話が膨らんだので、嬉しい悲鳴を上げています。現状だと、50話近くかかりそう・・・


予想外の結末

「マギア、カリーナアアアアア!!」

 

 獣じみた咆哮と共に、全力の姿となったセニオが、こちらへと突っ込んで来ます。その速度と巨体も相まって、まるで砲丸のよう──とは言え、(わたくし)たちも対処できない訳ではありません。

 

「マゼンタちゃん! バリアラ(障壁よ)!」

 

「わかってる! カテーナ(鎖よ)!」

 

「ヌウゥウウウ!」

 

 マゼンタとイエローが息の合ったコンビネーションで攻撃を防ぎ、防御が破られないうちに拘束します。二人は幼馴染みらしく、時折こうして相談もなしに意思疎通を取っています。

 羨ましいですね。(わたくし)もお姉様と幼馴染みになりたいものです。*1

 

「合わせて! スパーダ(剣よ)!」

 

「ええ! ラーマ(刃よ)ジラーテ(回れ)!」

 

 シアンと連携し、セニオに斬撃を放ちます。

 ・・・・・・ちょっとキャラ被っているんですよね、彼女と(わたくし)。どっちも斬撃系統で。だから(わたくし)も色んな魔法を使うようにしているのですが。

 

「ヌオオオオ! フッ! ハァッ!」

 

 しかしセニオは鎖の魔法を()千切(ちぎ)り、こちらの攻撃を鉄拳で砕いて見せます。

 そのまま地面へ拳を叩き付け、破壊したアスファルトの塊を殴ってこちらへと撃ち出す姿は、あまりに規格外でした。

 

「くっ、無茶苦茶ですね!」

 

「ネーロ! ありがとう!」

 

 ステッキから出現させた刃で攻撃を(さば)けば、その隙を補うように彼女たちが魔法で仕掛ける。

 

 なんて、戦いやすい・・・・・・連携しての戦闘が、ここまで快適なものだったとは。彼女たちと息が合ってきたのと、同じ目的を共有しているからでしょうか。三人の考えている事が、なんとなく伝わってきます。*2

 お姉様ともこれぐらい以心伝心したいものです。四六時中、寝ている時までずぅっと・・・・・・。

 

「あ、あはは・・・・・・」

 

「戦いに集中しなさい、ネーロ!」

 

「・・・・・・すみません」

 

 そこまで伝わらなくても良いのですが。イエローも赤面してしまっていますし、切り替えなければですね。

 

「マギア、カリーナァァアアア!」

 

「全く、それしか言えなくなって、しまったのですか!」

 

 連続して繰り出される拳と蹴りを回避しながら、背面へと回し蹴りを入れる。魔法でも何でも無い蹴撃なので、大した威力にはなりませんが。

 

「貴様らが、貴様らさえいなければァ!」

 

「ああもう、うるっさいわね! ラーマ(刃よ)!」

 

 気炎を吐くセニオに、シアンが刃を叩き込みます。セニオの肉体は(わず)かにですが傷付き、しかしこちらへと突進してきます。

 

「これなら! トーノ(雷よ)!」

 

「ヌオオオオ!?」

 

 マゼンタの放ったイカズチが、セニオの動きを鈍らせ、隙を作り出します。そこへ、更に(わたくし)たちが追撃していく。

 

 この勝負、勝てる──(わたくし)たちは小さく、しかし確かにそう感じ取っていました。

 

 

 

 

 『アークス』幹部、セニオ。彼の全力の姿は、確かに強力であった。並外れた筋力に、生半可な攻撃を許さない鋼の肉体、そこから繰り出される膂力。戦士としては、確かに強い。

 

 しかし、言ってしまえば()()()()だ。黒騎士のように絡め手や特殊機能も使わなければ、コワガーレのように厄介な能力も無い。

 

 対してマギアカリーナは、四人という数の有利の上、様々な魔法による攻撃が可能だ。限界だった体力や魔力も、人々の声援の力によってかなり回復している。気力だって十分だ。故に、負ける要素が無かった。

 

 もしセニオが、本来の戦術眼を発揮し、確かな下準備をしてこの戦いに挑んでいれば、マギアカリーナたちに勝ち目は無かっただろう。

 もし彼女たちが人々から応援を受けた後ではなく、コワガーレとの戦闘で疲弊していたら、敗北は濃厚だった。

 

 だが、怒りに支配され、己を失った状態の彼は、突き進む事しかしない。ひたすらに、マギアカリーナへ敵意の矛を向けるのみだ。

 

「マギア、カリーナァァァァ・・・・・・!」

 

「そこです! カテーナ(鎖よ)!」

 

「援護します、ギアーショ(氷よ)!」

 

「ヌ、ガアアアア!」

 

 だが、わかる事もある。このままでは、自分は負ける。怒りの中でも、セニオはその事実を肌で感じ取っていた。

 

「我は・・・・・・負ける訳には、行かぬのだァアアアアア!」

 

 自分たちが負けるとは、母星の危機を救えないという事。故に、敗北は許されない。どんな手を使ってでも、勝利しなければならない。

 

「ヌアアアアアア!!」

 

 雄叫びと共に、彼は更なる力を求める。自分はどうなっても良い、ただひたすらに、『力』を。そのためなら、この『怒り』も、全て()べてしまおう。

 

「このエネルギー量・・・・・・まさか!?」

 

「あ、アカン! セニオ様、それ以上は!」

 

 ネーロ──シュヴァルツと、ガツンドは真っ先に気付いた。彼が、何をしようとしているのか。

 

「ま、まさか、もっと強くなるんですか・・・・・・!?」

 

「だとしたら、不味いわね。今のうちに体勢を──」

 

「そんな事を言っている場合ではありません! 早く、セニオ様を止めなければ!」

 

「ネーロ!?」

 

 尋常(じんじょう)では無い様子のネーロに、マギアカリーナたちも只事(ただごと)では無いと理解した。

 

「セニオ様、()まるんや! それ以上は!」

 

「ヌオオオオオオオオオオォオオ!!」

 

 マギアカリーナたちも、ガツンドも、彼を止めようと駆け出した。魔法も使ったし、コワガーレだって生み出して加勢させた。しかし、膨大なエネルギーに全て吹き飛ばされてしまう。

 

「ヌアアアアアアアアアァァァァ──!!」

 

 そして、セニオの身体から溢れたエネルギーが、渦となって周囲を巻き込み──

 

 

 

 

 

「・・・・・・そこまでだ」

 

 突如現れた黒騎士が、一撃でもってセニオの意識を刈り取った。

 

「・・・・・・くろきし、さま」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 彼は気絶させたセニオを脇に抱えると、何かを問いかけるようなネーロの視線には答えず、衝撃で吹き飛ばされたガツンドの元へと向かう。

 

「く、黒騎士サン・・・・・・セニオ様は・・・・・・」

 

「・・・・・・命に別状は無い」

 

 いつも通りの抑揚(よくよう)の薄い声が、どこまでも硬く聞こえた。ネーロはそれだけで、全てを察した。ガツンドもまた同様だ。

 

「どういう事、なんでしょう・・・・・・」

 

「黒騎士さん、なんでそんなに、悲しそうなの・・・・・・?」

 

「帰還するぞ。立て、ガツンド」

 

「ちょっと、待ちなさいよ!」

 

 彼はマギアカリーナには何も言わず、ガツンドを連れて姿を消した。恐らく、転移で拠点へと戻ったのだろう。

 

「ネーロ──志由(しゆ)さんは、何が起こったのか、わかるの?」

 

 そうなれば、彼女たちが訊く先は、志由一択になる。変身を解いた三人の視線を受けながら、彼女は目を逸らした。

 

「・・・・・・恐らくですが、セニオは・・・・・・自身の感情の全てを、(エネルギー)に変えてしまいました」

 

「それって・・・・・・」

 

「はい」

 

 悔しさと共に唇を噛む志由。そのまま噛みきって流血しかねないほど、彼女は自分を責めていた。

 

「彼は、感情の全てを失ってしまいました」

 

「そんな・・・・・・!」

 

「うそ・・・・・・」

 

 確かに彼は、敵だった。地球を侵略し、人々を恐怖に(おとしい)れた存在だ。

 だとしても、これは。こんな結末は、あんまりだ。

 

 街を守り切り、強敵を打ち倒した。だと言うのに、彼女たちの心は、晴れないままだった──

*1
物理的に不可能

*2
声援バフ

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