悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】 作:高々鷹々
「う~~~み~~~!!」
目の前に広がる、雄大な
「お姉様! 皆さん! 海ですよ海! ほら早く!」
「・・・・・・どうしてあの子はあんなにはしゃいでいるのかしら」
「お話が出た時も興奮していましたし、好きなんでしょうか。海」
「志由さん! そのままだと濡れちゃいますよ! 先に着替えないと!」
青い空に青い海、白い砂浜。
ここは
「ほう、地球の海は青いのか。美しいな」
「そちらの海は、違った色なのですか?」
「ああ。海の中に含まれる微量のエネルギーによって、色が変化する。基本は緑だな」
「緑の海って・・・・・・なんだか汚そうね」
「君が想像しているよりも鮮やかな色だ。そうだな、エメラルドグリーンと言えば伝わるか?」
「そっちの海も、すっごく綺麗なんですね!」
「まぁ、今はエネルギーの暴走で酷い色合いだろうが。恐らく、何十色もの色が混じり切らずに渦巻いているような状態だ」
『それこそ、きたなそう・・・・・・』
「あっ、これはクラゲですか!? きゃっはー痛い! 本当に刺すんですね!?」*1
一人だけはしゃぎ回ってる志由を一旦放置し、黒騎士たちは雑談していた。が、彼の口から聞かされる母星の現状に、
「わぁ、すごいですよお姉様! すっごい
「ちょっと誰かあの子
「無理ですよ
IQの
『・・・・・・くろき、しゆのてんしょん、へん。なにかした?』
「ふぁーたん、なぜ真っ先に私を疑うのかはこの
・・・・・・恐らく、彼女なりに考えての事だ。自分が積極的に遊ぶ事で、桜桃たちもリラックスしやすくしているのだろう」
「あ、魚いましたよ魚! 食べられますかね!? 小さすぎて栄養なさそうですが!」
『ほんとうに・・・・・・?』
「・・・・・・・・・・・・」
何も考えていなそうな志由の奔放ぶりに、黒騎士も思わず口をつぐんだ。この状況で頷くには、あまりに説得力が足りない。
「・・・・・・志由が落ち着くのを待つ間に、先に紹介しておこう。そろそろ来るはずだ」
「? 来るって、なにが・・・・・・」
桜桃がそう言い切らないうちに、遠くから凄まじい足音が
ずざーっ! と砂をまき散らしながら彼女たちの前に現れたのは、美しい銀髪を揺らす、水着の女性だった。
あれだけの速度で走っておきながら、汗一つ流していなければ目元のサングラスもズレていない彼女は、桜桃たちの様子に首を傾げる。
「ん? もしかして、驚かせたか。だったら悪い、
『えっ』
「えっと、貴方は・・・・・・?」
「!!!???? !!??!!??」
志由が声にならない声と共に口を開閉させるのには気付かず、桜桃は尋ねる。
「こちらは、今回
「おう。くろきs──黒木から頼まれてな。詳しい事情は知らねぇが、特訓するんだろ? 身体を動かす事に関してなら、私も力になれると思うぜ」
そう言いながらかけていたサングラスを額にまで上げ、微笑む女性。その姿は、とても絵になっていた。
言うまでもなく、黒騎士たちの上司──ボスである。クールなフリをしているが、魔法少女たちに会うために全力で仕事を片付け、全力疾走で移動し、内心では狂喜乱舞している、ボスである。
「助っ人って・・・・・・アナタの知り合いって事? ならどう考えても、悪の組織の──」
「今回
「あっあの、お姉様? 勘違いでなければ、というか勘違いのしようも無いのですが、そちらの方はどう見てもボs──」
「君たちを鍛えるのに呼んだ、助っ人だ」
「答えるつもりは無いみたいですね・・・・・・」
『くろきはいつもそう・・・・・・』
機械のごとく同じ事しか言わなくなった黒騎士に、黄美とふぁーたんは半眼を向ける。しかし、彼はまるで
「えっと、お姉さんの事は、なんて呼んだら良いですか?」
「そのまま『お姉さん』でよろしくお願いしたい──っつーのは、流石に冗談だけどよ。*2
しかし、呼び方か・・・・・・ん、私は
「じゃあ真神お姉さんって呼ばせてもらいますね!」
屈託のない笑みでそう告げる桜桃に、ボス改め真神は思わず胸元を押さえ、黒騎士へとアイコンタクトする。
(オイ黒騎士、もしかしなくてもこの娘、天使か? このまま浄化されそうだ・・・・・・)
(あながち間違いでは無い・・・・・・が、ここで成仏するのは早いぞ。まだ水着姿を見ていないだろう)
(むむ、お姉様がアイコンタクトで会話している気配が! ズルいです、
(馬鹿な、アイコンタクトに乱入だと? やるようになったな、シュヴィー)
(お姉様・・・・・・!)
(コイツら怖くねぇか?)
まさかのボスの登場に驚いていた志由だが、重すぎる愛で持ち直したようだ。強い日差しの中だと言うのに、ボスは若干の寒気を感じる。
「という事で、特訓には真神も参加する。私一人だと、全員を見る事が出来ないからな」
「それは確かに、
「気を許すにはまだ早いですよ、桜桃ちゃん」
「でもきぃちゃん、鍛えて貰えるんだから、ここは甘えようよ。
じゃないと・・・・・・また、助けられないかもしれないから」
桜桃が思い浮かべるのは、先日の戦い。自分たちと全力で戦い、そして感情の全てを失った、悪の組織の幹部の事だ。
彼は自分たちの敵であり、街をメチャクチャにした存在だが──それでも、助けたかった。
「そのためにも、特訓だ。一先ず、水着に着替えて来ると良い」
「お姉様は着替えないのですか?」
「着替える。が、君たちと一緒には着替えられないだろう? 私は男性では無いが、女性でも無いからな」
などと言っているが、黒騎士はただ着替えにネタバレされる事なく水着を楽しみたいだけだ。
そんな心情を知る
「ま、当然よね。アナタって見た目はほぼ男性だし」
「・・・・・・? お姉様はお姉様ですよ?」
「ねぇ。もしかして性別の基準ってそっちだと違ったりするのかしら。それともこの子がおかしいだけ?」
「種族によって異なる、としか言いようが無いが・・・・・・志由の種族は地球人とほぼ変わらない外見的特徴のはずだがな」
「そんな!? それじゃ
呆れた表情の葵に引っ張られていく志由と、更衣室へと案内する黄美についていく桜桃。四人を見送ると、ふぁーたんが黒騎士の耳元へと近づいてくる。
『くろき! なにかんがえてるの! そしきのぼすをつれてくるとか!』
「問題ない。彼女は敵では無いからな。
・・・・・・というか、彼女がボスだと知っていたのか、ふぁーたん?」
黒騎士の指摘に、ふぁーたんはわかりやすく表情を変えるが、角度的に黒騎士からは見えていない。
『・・・・・・みればわかる! あのひと、くろきぐらいつよい!』
「
組織のボスに5割以上は勝利できるという発言の異常さはともかく、ふぁーたんにボスの事がバレてしまった事実をどうするべきか、黒騎士は考え──別に良いかと
「桜桃たちには黙っておいてくれ。後でややこしい」
『もうややこしくなってるきがするけど・・・・・・わかった』
「黒木? さっきからどうかしたのか? 独り言なんて、珍しいな」
今は偽装しているが、彼女の本質は獣に近い。会話の内容までは聞かれていないだろうが、何か話しているのはわかったのだろう。
「いや、彼女たちの水着が楽しみだなと思ってな」
「わかる。ただでさえ
『あー・・・・・・てきではないって、そういう・・・・・・』
ふぁーたんの脱力した声を背に、黒木と真神は彼女たちの水着について推察を重ねていく。
かくして、魔法少女オタクたちのプロデュースする、魔法少女の特訓が始まろうとしていた──
黒騎士
地球での無性の立場がわからないためやりにくい。
黒木志由
初めての地球の海にハイテンション。黄美に借りた恋愛漫画からの知識で、海で黒騎士と色んなイベントを満喫しようと画策している。
ボス
態度に出していないが内面では嬉しくて踊り狂っている。
ふぁーたんの事は見えていない。