悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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感想・評価など、いつもありがとうございます。
もしかしたら明日は投稿できないかもしれませんが、完結までできる限り毎日投稿していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。


夏だ! 海だ! 水着回だ!③

 黒騎士の発案で始まった、ビーチバレーによる特訓。それはマギアカリーナたちにとって、想像以上に熾烈(しれつ)なモノだった。

 

「そこォッ!」

 

「くぅっ、なんの!」

 

 明らかに志由(しゆ)しか取れず、また取れるかギリギリのボールを真神(まかみ)は放つ。それを滑り込んでトスし、志由は打ち上げた。

 

「良いわ、今度はこっちから!」

 

「あらよっと!」

 

 しかし、(あおい)によって放たれたボールは何なく弾かれ、場外へ。

 連続してボールに触れて良い、という特殊ルールこそあるものの、真神は圧倒的な運動能力で攻撃も防御もこなしていた。時折、人間離れした動きも(まじ)えながら。

 そうなると、真神のボールに対応しなくてはならないのは志由だ。彼女は必死に攻撃球に食らいつき、葵へと繋げる。運動量が段違(だんちが)いだった。

 

「そら、まだまだへばるンじゃねぇぞ、志由(シユ)ヴァルツ!」

 

「はぁ、はぁ、変な呼び方しないでもらって(よろ)しいですか!!?

 

「うし、まだまだ元気だな! 次はもっとギア上げるぞ!」

 

「くっ、しまった・・・・・・」

 

「・・・・・・連携の特訓なのよね、これ」

 

 葵は思わず疑問を口にする。どう見ても、志由の負担が大きい。

 隣は大丈夫だろうかと黒騎士たちの方に目を向ければ、

 

桜桃(ゆすら)、君は黄美(きみ)を信じるあまり彼女に甘えている部分が見て取れる。信頼である(うち)は良いが、寄りかかりすぎるのは危険だ。

 黄美は桜桃のサポートに思考を()きすぎて、戦う相手から意識が外れる事がある。もう少し全体を俯瞰(ふかん)して見るんだ。

 今すぐ出来る必要はない、だが忘れずに動け」

 

はい!!

 

「・・・・・・思ったより大丈夫そうね」

 

 中々黒騎士に対して気を許せないでいる彼女は彼がキチンと特訓してくれているか心配だったが、優れた観察眼による的確な指導は、十分に効果があるだろう。

 

「それに比べて、どうして私はこんな──」

 

「葵さん!? あの、ボールが!」

 

「──へ?」

 

 直後、頭上から落下してきたバレーボールを、葵はその頭部で受ける事になった。余所見(よそみ)をしていたせいで、今も試合中である事を失念していたのだ。

 

「・・・・・・上等じゃない。やってやるわよ!」

 

「ほぉ、葵ちゃんもやる気だしてきたか。良いじゃねぇか、本気で来な!」

 

「行くわよ志由! こっからが本番よ!」

 

「あの、(わたくし)はずっと本番だったのですけど!? ずっと本気だったのですけど!?」

 

 志由の(なげ)きは一旦スルーした葵は、高ぶった感情のままにボールを高く上げ、スマッシュを放つ。

 

『・・・・・・』

 

 そんな二つの試合を遠巻きに眺めているのは、ふぁーたんだ。コートの外側にふよふよと浮いたまま、むすっとした顔で彼女たちを見ている。

 

『くろきに「しんぱんやれ」っていわれたけど・・・・・・そもそも、るーるわかんないし!

 それに、ぜったいしんぱんいらない、これ!!』

 

 もはや点数など関係なく行われているビーチバレーに、ふぁーたんはむくれた様子で叫んだ。それだけの声量を黒騎士が聞こえないはずも無いが、彼は特訓に夢中になっているのか耳に入っていない様子だ。

 

『もう・・・・・・くろきのばか!!』

 

 ふぁーたんはそう悪態をつくのだった。

 

 

 特訓が一区切りつき、ペア交代の時間となる。超公平なじゃんけんによって次に志由のペアとなったのは、黄美だった。

 

「黄美さん、よろしくお願いしますね。では(わたくし)たち、お姉様の方に・・・・・・」

 

「おっと、志由はこっちだ。黄美ちゃん、よろしくな」

 

「はい、よろしくお願いします・・・・・・あの、お手柔らかにお願いしますね? 本当にですよ?」

 

「そ、そんなぁ! お姉様ぁ!!」

 

 抵抗も(むな)しく、真神に()()り戻される志由と、それを見て決めたくなかった覚悟を固める黄美。敬語コンビの幸先(さいさき)は、不安だった。

 

「次は桜桃と葵のようだな。少し休憩を(はさ)んでから始めよう」

 

「はい! 葵、よろしくね!」

 

「桜桃・・・・・・今だけは、その真っ直ぐな笑顔が腹立たしいわ」

 

「えっ葵!? 何でそんなこと言うの!? 私、なんかしちゃった!?」

 

 全身の筋肉が余すところなく疲れ切っている葵は、少々気が立っているようだ。それだけハードな特訓だったのだが、自分の事に集中していた桜桃はそのことに気付けず、かなり驚くことになった。

 

「ふぁーたん、そっちにスポーツドリンクがあるだろう? 持ってきてくれ」

 

『・・・・・・ぷいっ』

 

 少女たちを(ねぎ)おうと手の空いているであろうふぁーたんを頼った黒騎士だったが、当の本人(人?)からそっぽを向かれ、困惑する事となった。

 

「ふぁーたん?」

 

『くろきのことなんて、しらないっ』

 

「???」

 

 ここまで()ねられる原因がまるでわからなかった黒騎士だったが、ならば自分で動けば良いかとあっさり思考を放棄した。

 

『むぅ~~~、くろきのあほ!!』

 

「なぜ突然暴言(ぼうげん)を・・・・・・?」

 

 黒騎士からしてみれば意味不明な事態に、首を傾げるばかりだ。

 

「む、なんだか急に(わたくし)の立場が危ない気がしてきました!

 お姉様のヒロインは、(わたくし)一人で十分ですのに!!」

 

「急にどうしたんですか!?」

 

「良いスマッシュだ、でもまだまだ足りねぇな! そら!」

 

 そんなこんなで、特訓は続いてく。

 

 最後は桜桃と志由のペアとなった。

 

「よろしくね、志由ちゃん! 最後まで頑張ろう!」

 

「そうですね、最後くらいお姉様と特訓を・・・・・・」

 

「残念だったな、今日一日は私と特訓だ」

 

「そんな気はしてましたけど!! うぅ、お姉様~~~!」

 

 涙すら(にじ)ませる志由だったが、現実は非情だ。桜桃に手を引かれ、真神のいるコートへと戻っていく。

 

「お疲れ様、黄美・・・・・・よく頑張ったわね」

 

「葵ちゃん、私、私・・・・・・っ!」

 

(急にシリアスな空気感!? いやまぁ、ボスのあの特訓を味わえばそうなるか・・・・・・)

 

 黒騎士もまた、過去にボスに鍛えられた経験を思い出し、腕組みしてウンウンと頷いた。

 

「休憩をしたら再開するぞ。黄美、君は体力が多い方では無いだろう、少しでも体調が悪くなったら伝えてくれ」

 

「・・・・・・私、黒木さんのこと誤解してました。黒木さんって、優しくて思いやりのある(かた)だったんですね・・・・・・! 私、気付いていませんでした」

 

「黄美!? しっかりしなさい、相手は黒木よ!?」

 

 まるで悪いホストにでも釣られるかのごとく、少しの気遣いで過剰に舞い上がる黄美。どうやら彼女もかなり限界が近いらしい。

 

「むっ、また急にライバルの気配が!

 負けません! お姉様、(わたくし)は負けませんからね!!」

 

「志由ちゃん、すっごく気合い入ってるね! 私も負けてられない!」

 

「お、息が合ってきたンじゃねぇの!? 良いぜ、その調子だ!」

 

 隣で繰り広げられる超次元バレーからは目を逸らし、黒騎士たちも特訓を再開する。

 

 彼女たちの合宿は、色んな意味で濃度の高いものになりそうだった。




黒騎士
いつもマギアカリーナのことを見ているだけあって、その分析はかなり精密。
個人指導塾くらいの丁寧さと熱心さ。

ボス/真神
魔法少女たちに会えてテンションがバグっているのもあり、スパルタ方式に。別にシュヴァルツが組織を裏切った事で発生した色んな面倒事の分をぶつけているとか、けっしてそんなことはない。

志由
ぜんぜん黒騎士と特訓できなくて泣いた。特訓そのものは普通にこなしている。

桜桃
持ち前の真っ直ぐさで特訓に励んでいる。辛いけどめげない、折れない。


もともと運動は得意だったが、それでもキツい。が、弱音を吐かず気丈に振る舞う。

黄美
真神の特訓に心を折られかけた。志由がサポートをそんなに必要としないので噛み合いが悪く、大苦戦した。
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