悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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いつになるかわからないんですけど、完結した後に番外編も予定してます。
取り敢えず、黒騎士と志由が水着を買いに行く話はそこかな・・・


合宿の定番はカレーらしい

 黒騎士やボス──真神(まかみ)とビーチバレーを繰り広げたマギアカリーナ。全てのペアでの試合が終わり、彼女たちは黄美(きみ)の家の別荘にてダラダラとしていた。詰め込み過ぎても良くないという事で、今日はもう特訓終了らしい。

 

「いっつつ・・・・・・怪我はしてないけど、全身の筋肉が痛いわ。もう動きたくない・・・・・・」

 

「いま湿布(しっぷ)を持ってきましたので貼ってください。ほら、そんなところで寝ないで」

 

「ありがとう、きぃちゃん。ほら(あおい)、行儀悪いよ」

 

 痛みを訴えながら、全身を床に投げ出した葵だったが、桜桃(ゆすら)と黄美の言葉に渋々(しぶしぶ)身体を起こす。

 

「あの真神とかいうヒト、加減しなさすぎなのよ。お陰で酷い目に合ったわ」

 

「? 加減なら、してくれていたじゃありませんか。

 あの人がもし手加減していなかったら、(わたくし)たちは今ごろ海の藻屑(もくず)になっていますよ」

 

 (うら)めしそうに湿布を貼る葵へ、志由(しゆ)は何でもないように言う。彼女だけは特に身体の不調を口にしておらず、普段と変わらない様子でリラックスしていた。扇風機に向かって「あ~~」とやる姿は、とても異星人とは思えない。

 

「アレで手加減しているとか、冗談じゃないわ・・・・・・何者なのよ、あの人」

 

「黒木さんの知り合いって時点で、普通の人じゃないとは思ってたけどね」

 

 桜桃の苦笑に、黄美も困った顔で頷いていた。真神が何者なのかについて、黒木に訊いたとしても答えは得られないだろう事はわかりきっているから、今更詮索(せんさく)などしないが。

 

「でも皆さんは良いじゃありませんか、お姉様と特訓できたのですから。(わたくし)、ぜんぜんお姉様と過ごせていません!」

 

「確かに、意外とちゃんとした特訓だったわね。黒木の方は」

 

「自分たちですら気付いていないところを指摘されて、ちょっと怖いですけどね・・・・・・」

 

 彼の指導は的確だが、的確すぎるのだ。それこそ、気持ち悪いくらいに。

 

「それに・・・・・・あの水着だと、ちょっと集中しにくいよね」

 

「そ、それは、確かに・・・・・・」

 

「そうね。あんな格好で大真面目な顔してるから、何回か吹き出しかけたわ、私」

 

 あの黒いガムテープを巻き付けたかのような水着を思い出し、三人はちょっと笑った。

 

「え、皆さんそんな風に思っていたんですか!? 格好いいですよね!? え!?」

 

「・・・・・・そろそろ誰か、志由の頭をなんとかした方が良いかもしれないわよ」

 

「黒木さんにお願い・・・・・・するのは、悪化する未来しか見えませんね」

 

 どうやらけっこう本気であの水着を気に入っていたらしい志由に、葵と黄美は溜め息をついた。

 

「夕食が出来たぞ。動けるか?」

 

 ガチャリと扉を開け、話題の渦中にあった黒騎士が顔を出す。同時に、扉によって押しとどめられていた夕飯の香りが(ただよ)ってきた。

 

「あ、この匂い・・・・・・もしかして、カレーですか!?」

 

「ああ、そうだ。すまないな、簡単な物しか用意できなくて」

 

「そんなそんな! 私、カレー好きなんです!」

 

「桜桃ちゃん、子供舌ですもんね・・・・・・」

 

 黄美の言葉は既に耳に入っていないのか、桜桃は上機嫌に部屋を出て階段を降りていく。この別荘は二階建てで、一階にリビングやダイニング、キッチンなどのスペースがあり、二階が各自の部屋と割り振られていた。

 

「お、来たか桜桃ちゃん。早かったな」

 

「はい! カレー、好きなので!」

 

 彼女がダイニングに向かうと、真神が皿を並べているところだった。ふぁーたんの姿が見えないが、彼(?)は食事を必要としないので、どこかで昼寝でもしているのかもしれない。

 

「・・・・・・黒木さん、ふぁーたんちゃんがどこに行ったか、わかりますか?」

 

「疲れたので仮眠を取ると言っていたが──ふむ。どうやらこちらで寝ていたようだ」

 

 黒木に確認を取ってみれば、リビングのソファで丸くなっていた。恐らく、長距離を移動してきたのもあって疲れたのだろう。運転してくれた黒木には感謝だ。

 

「そう言えば、アナタって免許(めんきょ)持っていたのね。運転も手慣れた感じだったし」

 

「・・・・・・・・・・・・ああ、そうだな」

 

 黒騎士は曖昧に濁して、席に着いた。

 実際は免許など取っていないし、運転も鎧の機能を使って操作していたので、彼に車の乗り方はわからなかったりする。

 

(まぁ、私は地球人では無いのだし、免許証自体は偽装した物だが持ってはいる。嘘は付いていないな)

 

(お姉様、ちょっと焦っていますね。恐らく鎧の機能を使ったのでしょうが・・・・・・(わたくし)は出来る女ですので、黙っておきます!)

 

 なお、黒騎士ガチ勢こと志由には筒抜けだった模様。

 

 そんな彼の心情はさて置き、各自がテーブルに座る。桜桃、葵、黄美が一列に並び、向かい側には黒木と、その隣には当然のように志由が座った。真神は苦笑しながら、長方形のテーブルの短辺──いわゆる『お誕生日席』に腰掛ける。

 

いただきます!

 

 全員で合わせてそう言ってから、カレーを口に運んでいく。

 ふぁーたんと同じく、食事が必要ではない黒騎士と真神──ボスだったが、マギアカリーナと席を囲みたいがためだけに食事を摂っていた。

 

「んー、これ美味しいですね!」

 

「そうか。私たちが作った訳ではないが、それならば何よりだ」

 

 黒木の言葉に、黄美が納得した顔で頷く。

 

「やはりでしたか。これ、塚井沢(うち)の出してるレトルトカレーですよね」

 

「私も黒木も、料理はできねぇンだ。いや、私はやろうと思えば出来るが、栄養重視で味が最悪になる。

 だから、棚にあった物を使わせてもらったぜ。賞味期限も近かったしな」

 

「本当に簡単な物だったのね・・・・・・」

 

 少し呆れたように葵は言うが、ゲテモノを出されるよりはマシだと考えたのだろう。不満はカレーと一緒に飲み込んだ。

 

「お姉様、食べさせ合いっこしませんか? 具体的には、今お姉様がスプーンに乗せている一口とこの(わたくし)の一口を」

 

「同じ味だろう。それと、肉ばかり食べようとするな。野菜もしっかり食べなさい」

 

 自分の欲望を満たしつつしれっと肉とにんじんの不等価交換(トレード)を行おうとした志由だったが、あっさりと看破(かんぱ)され断られる。

 

「はーい・・・・・・あ、ならせめてスプーンだけでも交換しませんか?」

 

「まぁ、それなら別に良いが・・・・・・」

 

「えっ良いんですか!?」

 

「・・・・・・? 何かいけないか?」

 

 疑問符と共に、スプーンを交換して躊躇なく使う黒騎士。黄美はやや顔を赤くして手で顔を覆った。指の間から、バッチリ目が見えているが。

 

「黒木、もしかしなくてアナタ、志由に毒されすぎて基準がおかしくなってない?」

 

「ちょっと葵さん!? ここまで頑張って基準値を下げてきたのに!」

 

「志由、お前そんな事までしてたンか・・・・・・」

 

 彼女のあんまりにもな手口に、真神でさえやや引いた様子である。なお、当の黒騎士本人は気にせずカレーを食べている辺り、元から割と気にしていないのかもしれない。

 

「お姉様、違うんです! その、皆さん誤解をしているみたいでして・・・・・・」

 

「そうか」

 

 あまり意に介していない黒騎士だが、焦っている今の志由からは素っ気なく距離を取られているようにしか感じられない。

 

「本当に違うんです、(わたくし)は決してお姉様を罠に()めようなどとは・・・・・・!

 聞いてください、お姉様~!」

 

「食べにくいんだが・・・・・・」

 

 腕を掴んでくる志由に、黒騎士が苦言を(てい)する。

 

 特訓合宿一日目は、(なご)やかな時間と共に終了した。




黒騎士
普段は殆ど食事を摂らない。志由の分の食事は買ったりして用意している。
たまに毎回「あーん」されたりしている。

志由
組織に居た頃は携帯食料や栄養バーばかり食べていたので、地球の食文化はかなり気に入っている。

ボス/真神
口寂しい時はガムを噛んだりしているが、食事を摂る事は少ない。

桜桃
けっこうな健啖家。よく食べてよく寝る。子供舌だがピーマンにんじんゴーヤは嫌いじゃない。


好き嫌いが激しい。カレーは甘口以外食べられないが、黒木はもちろん把握していたので甘口を用意していた。

黄美
桜桃ほどでは無いが食べる方。お肉が好きなので、焼き肉なんかでは意外と多く食べている。
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