悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】 作:高々鷹々
クオリティに納得がいかず、時間がかかってしまいました。
お姉様が発案した特訓の合宿も、気付けば一週間が経過しました。最初は五日間と聞いていたのですが、お姉様の事ですから楽しくなってつい延長してしまったのでしょう。可愛らしいですね。*1
そんな特訓も、今日でお
まぁそもそも、労働基準法で一定数のお休みが──いえ、これは地球での話でしたね。すっかりとこの星に染まってしまったようです。
「
「・・・・・・
振り向いた
・・・・・・以前は『志由さん』と呼ばれていた気がするのですが、いつの間に『ちゃん』呼びになったのでしょう。まさか、
「私も、ちょっと寝れなくって」
今は、深夜に該当する時間帯。元々睡眠をそれほど必要としない
いつものように、お姉様の部屋に行って布団に潜り込もうかとも考えたのですが、どうやらお姉様は忙しい様子で作業していましたので、こうして時間を潰していたのです。*4
「また黒木さんの事でも考えてた?」
「それはいつもです。けれど、そうですね・・・・・・
今は、母星の事を考えていました」
そう言って、
「そっか・・・・・・。
ねぇ、志由ちゃんたちの故郷って、地球から見えるの?」
「はい。あれです」
そう言って指を差せば、桜桃さんは隣まで来て空を見上げてくれます。
「あの、周りと区別が付かないような星。あれが、
「うーんと、どれだろう・・・・・・? あ、あれかな」
「違います。あれです」
やはり桜桃さんはわからないようで、難しい顔をして夜空を見ていますが、この調子ではどれかわからないでしょうね。
「でも、凄いね。志由ちゃんたち、あんな遠くから来たんだ」
「・・・・・・必死でしたから」
そう、必死だった。混乱の中、残った人々でどうにか解決策を考えて、上手くいくか確信の無いままに宇宙に飛び出して。どうにか、地球までやってきた。
今は、あの頃のような切羽詰まった感じはありません。母星は必ず元に戻す、その思いは変わってはいませんが──焦って、自分の気持ちを見失うような事になりたくないのも、本音です。
「・・・・・・今すぐは、難しいかも知れないけど。
絶対、助けようね! 志由ちゃんの故郷の人たち!」
そう言って、桜桃さんは
決して、口に出す事はしませんが。
そんなお姉様ですら、打開策を見つけられていない現状ですが──いいえ。違いますね。
「えぇ、必ず」
・・・・・・
あ、
▽▲▽▲▽▲
マギアカリーナたちが特訓合宿を行っているのと、時を同じくして。
彼らの星の平和維持組織『アークス』の拠点内にて、ガツンドはセニオの世話をしながら鬱屈とした日々を過ごしていた。
「くっそ・・・・・・待機命令でてるから出撃するワケにも行かへんし。こっちは今すぐにでも、セニオ様の
そう言いながら、ガツンドは廊下を進んでいく。逆恨みである事はわかっている。でもそうでもしないと、感情の無くなったセニオと接する時にどうしていいかわからなくなるのだ。やるせなさや、感情を失う事への恐怖で、上手く動けなくなってしまう。故に、マギアカリーナへ感情を向ける事で、無理矢理にでも奮起しているのが現状だった。
「ん? なんや、この辺りの電気、消えとるやんか」
当てもなく歩いていたガツンドだが、ふと照明の付いていない区域を見つける。一カ所や二カ所ではない、その場所だけ停電でも起きたかのようだ。
エネルギーの循環するこの基地内において、一部だけの停電などあり得ない。あるとすれば、それはエネルギーが何かに使われている証拠だ。
「何事や、緊急事態か!?」
もし万が一、母星と同じように、装置の暴走でも起きていたら。あるいは、エネルギーのシステムに問題が起きていたら。そう考えたのだ。
「アカン、もしそうなってたら・・・・・・!」
ガツンドは目的のためなら手段を選ぼうとしない
感情を失い、まるで廃人のようになってしまったセニオの姿が脳裏を
「どないしたんや!」
ガツンドは最奥にあった扉を開け放つ。その視線の先に居たのは、この組織を支える幹部の一人──レインだった。
「おや。君は確か、ガツンドだったかな」
「レイン様!? なんや、何かシステムの故障でも起きたんですの? ッ、いや──」
普段と変わらぬ様子のレインに気を緩めたガツンドだったが、その光景の異常さに気付く。
組織の構成員たちが、何人も倒れていた。皆
それだけではない。
レインの座る場所の、更に奥。落ちた照明によって見えない暗闇の中に、ナニカが居た。
「レイン様、何を──」
「ちょうど良かった。あと少しだけ、足りなかったんだ。『恐怖』のエネルギーが」
心底嬉しそうに、彼女は笑った。その言葉だけで、ガツンドは察してしまう。
彼女は、己から感情を奪うつもりだ。倒れている仲間たちは、彼女によって感情を奪われたのだと。
「い、嫌や! 俺は
ガツンドの目に、『恐怖』が浮かぶ。感情を失う事への、何も感じなくなってしまう事への恐れ。それを知っているはずのレインが、感情を取り戻そうとしている仲間であるはずの彼女が、それを行おうとしている事への不気味さ、怖さ。
それはこの状況で一番
「・・・・・・・・・・・・あ、」
「──ありがとう。君が『恐怖』を感じてくれたお陰で、完成しそうだよ」
そう微笑んで、レインは背後を振り返る。ガツンドの『恐怖』を奪った、その怪物へと。
何もレインは、感情の全てを奪ったのではない。それでは母星の二の舞だ。だからこそ、『恐怖』に絞って集めた。元より保有している中で一番多い感情だったのだ、研究は一番進んでいた。
だから、そう──偶然、たまたま。感情を奪った相手が、『恐怖』ばかりを浮かべていたから、
「それに──いずれはエネルギーを感情に戻すんだ。だったら、途中でいくら失おうと、問題ないだろう?」
彼女は気付かない。研究のため、いの一番に自分自身の『恐怖』を使った彼女は、気付く事が出来ない。
その道の先には、破滅しか残っていない事に。