悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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ストックとか無いので、いつ毎日投稿が途切れるかわかりません。


私も同行しよう

 先日、私は魔法少女の変身前と(おぼ)しき少女と邂逅した。これは私にとって望外の幸運だ。マジでメッチャ嬉しい。ニヤけそうになるのを、必死に誤魔化(ごまか)すのは、大変だった。今回ばかりは、訓練で培ったポーカーフェイスに感謝だ。

 そっか~マギアカリーナは妖精から力を貰って戦うタイプの魔法少女か~。

 ・・・・・・厄ネタでは?*1

 

 いや、わかっている。純粋に魔法少女に力を貸してくれる妖精だっているし、なんなら妖精自身が魔法少女になるパターンだってある。けど、けどさぁ! 某魔法少女アニメを見ちゃったらさぁ! Qべぇが私に付けた傷痕は根深いのだ。それこそ、これまでどの戦いよりも深い傷と言っても良い。

 

 ともかく、あの妖精については追々調べるとして。私は、彼女たちの素顔を組織に報告するつもりは無い。仕事として調べたならともかく、彼女と会ったのはプライベートだ。公私を分けるのが私のスタンスである。それに、もし報告などして魔法少女の私生活が(おびや)かされるのは不本意だ。そんな殺伐とした戦いはしたくない。もし彼女たちの監視が行われそうなら、喜んでその役割に立候補するが。

 

 さて置き。私はいつも通り真っ黒い鎧を身に纏って、悪の組織へと出社した。

 次は魔法少女の変身シーンとか見たいな~、なんて考えつつ歩いていると、他の幹部に声をかけられる。

 

「やあ、黒騎士。丁度良かった。ちょっと、頼まれてくれないかな?」

 

「・・・・・・要件は」

 

 前に格好いい返しをできなかった、例の幹部だ。飄々とした態度があまり好きじゃない。

 

「今日もブダーンが出撃するらしいんだけど、それに同行して欲しいんだ。彼、いつも失敗してばかりだからね。お目付役が居たら、気も引き締まるんじゃ無いかと思って」

 

「承った」

 

 えっ良いんですか!?

 思わぬ要請に、ノータイムで頷く。ブダーンと共に出撃、つまり任務として魔法少女をじっくり見ることができる、ということだ。こんなに嬉しいことは無い。

 

「助かるよ。それじゃ、よろしく~」

 

 言いたいことだけを言って去って行くのを尻目に、私も移動を開始する。

 

 程なくしてブダーンを発見し、同行する旨を伝えた。

 

「ブヘヘヘヘヘ、組織内でも最強と噂される黒騎士様に同行いただけるとは! これはもう、勝ったもトン然、いや同然だトン!」

 

 彼は私に戦力として期待したのか、かなりの喜びようだが、生憎(あいにく)私は今回、マギアカリーナと戦うつもりは無い。彼女たちの活躍を見たいだけだし。あわよくば、変身シーンは拝みたいけど。

 そんな私の思惑(おもわく)を知るはずもなく、上機嫌なブダーンと共に、私は街へと転移した。

 

 

 目の前で、コワガーレと魔法少女たちとの戦いが繰り広げられている。私は建物の上からそれを見下ろし眺めていた。

 残念ながら、今回も変身シーンは見れなかった。毎回毎回、彼女たちは変身してから戦いに現れる。もしかすると、変身と同時に移動してきているのかもしれない。

 

「ブーハッハッハッハ! 行くトン、信号機コワガーレ!」

 

 信号機を元にしたコワガーレが、咆哮と共に身体のシグナルから赤い光を放つ。それが当たると、動きを止められてしまうのだ。現に道路上には、不自然な形で固まっている通行人が複数いた。

 

 しかし、あのコワガーレは任務向きじゃないな。マギアカリーナとの戦闘では役立つかもしれないが、我々の本来の目的は、人間に強い感情を抱かせ、それを回収すること。だというのに、ああして人間を停止させてしまっては、彼らからは感情エネルギーを得られない。ブダーンめ、魔法少女との戦いにばかり気を取られて、本来の目的を忘れているな? これだから序盤の敵怪人は・・・・・・。*2

 

「くっ、あの光に当たると不味いわよ!」

 

「でも、このままじゃ近づけません・・・・・・」

 

 マギアシアンとマギアイエローが攻めあぐねていると、マギアマゼンタは何かを決心したように拳を握りしめ、信号機コワガーレに向けて駆けだした。

 

「マゼンタ!?」

「マゼンタちゃん!?」

 

「私が攻撃を引き付ける! だから、二人はその間に攻撃を!」

 

 マゼンタは、追い詰められると一人で活路を切り開こうとする傾向がある。その辺りはこれから仲間と解消していく*3のだろうが、やはり戦士としては未熟だな。

 

「残念、そうは(トン)屋が卸さないトン!」

 

 ブダーンの台詞(セリフ)と共に信号機コワガーレは今まで一カ所しか光らせていなかった信号機のランプ、その全てを赤く発光させた。縦一列に並んだ三つの赤い丸は、魔法少女を調べるうちに知った特撮を思い起こさせる。

 

「そんな!?」

 

「マゼンタ、避けて!」

 

「くぅっ!!」

 

 三つに増えた光線を、マゼンタは跳躍して避ける。が、この光はコワガーレの意思によって動く。追従する光線を、マゼンタは必死に躱し──えっこっち来たんだけど!? ファンサ!?*4

 

 しかし、マゼンタを至近距離で見られたのも一瞬のこと。その直後に、コワガーレの赤い光線がこちらに向かってくる。

 

「・・・・・・フン」

 

 私は慌てることもなく、腰の剣を抜刀して、刃の側面で光を反射し、弾いた。別に特殊な力を使った訳ではない。ただ、剣の腹を鏡面として扱っただけだ。

 

 邪魔するなよ! 私は魔法少女の活躍を見たいんだ!!*5

 

 全く、鎧の力で停止するのは一分程度で済むだろうが、私は例え一分だとしても、魔法少女の活躍を見逃すだなんてしたくないのだ。

 

「・・・・・・!」

 

 ふと視線を感じて目だけをそちら──マギアイエローの方へ向ける。あれは、私が光線を弾いたのを見て、何かを得た顔だな。

 

「マゼンタちゃん、シアンちゃん! 私が、あのコワガーレの動きを止めます! お二人は、それまであの攻撃を引き付けてください!」

 

「イエロー!?」

 

 魔法を構築し始めたイエローに、シアンが驚きの声をあげる。恐らく、彼女が心配なのだろう。

 

「何か策があるんだよね。わかった!」

 

 マゼンタは即座に頷き、シアンは困ったように二人へと視線を左右させるも、「あーもう! 仕方ないわね!」と信号機コワガーレへと接近していく。

 

「何を企んでいるか知らないが、無駄だトン! コワガーレ!」

 

 ブダーンの指示に従い、コワガーレが唸り声と共に赤い光をイエローに向けて放つ。

 

「させない! ラーマ(刃よ)!」

 

 シアンはステッキから魔法の刃を出現させ、地面を切り出し壁を作って光線を遮った。しかし、同時に自分の視界も殺してしまっている。悪くない手だが、根本的な解決にはなっていない。

 

「こっちよ、フラム(炎よ)!」

 

 マゼンタもまた、炎の魔法でコワガーレを攻撃し、意識を自分へと向けさせている。距離もあって与えているダメージは微々たるものだが、敵の気を散らすには十分だ。

 

 コワガーレは二人に気を取られ、イエローを意識から外す。それだけの隙があれば、新しい魔法を作り出すのは、魔法少女にとっては簡単な事だろう。

 

「ッ、イエロー、これ以上は──」

 

「出来ました! お二人とも、私の後ろに!」

 

 光線に追われながら、マゼンタとシアンがイエローの背後へと駆け込む。そして三人に光が迫る中、イエローは新たな魔法を発動した。

 

スペッキオ(鏡よ)!」

 

 現れたのは、巨大な鏡だ。魔法によって作り上げられたそれは赤い光の全てを反射し、光線を放ったコワガーレへと跳ね返す。

 己自身の光を受け、コワガーレは動きを停止させた。

 

「今です!!」

 

 イエロ-の背後から、マゼンタとシアンが飛び出す。二人ともステッキを構え、それを交差させた──これは!

 

「刃よ、響き合え!」

 

「炎は、刃と共に!」

 

ラーマ・ディ・フィアマ!!

 

 シアンが初めて魔法少女になった時の、二人の合体魔法──まだ私が魔法少女にのめり込んでおらず、映像でしか見たことのなかったこの技を、まさか生で見ることが出来るとは!*6

 

 二人のステッキから大きな炎の刃が出現し、裂帛(れっぱく)の気合いと共に振り下ろされる。自身の能力によってコワガーレは回避することも出来ず、爆散した。

 

「そ、そんな・・・・・・なんて(こト)ン!?」

 

 コワガーレを撃破され、ブダーンが情けなく叫ぶ。というか、その叫びは無理があるだろ。

 

「ふぅ、なんとかなったわね」

 

「すごいよ、きぃちゃ──イエロー!」

 

「えへへ、何とかなって良かったです」

 

 ああ~、最高~・・・・・・。シアンのほっとした表情とか、それをすぐに澄まし顔で隠すところとか。マゼンタの思わず名前を呼びそうなところとか、すぐさま仲間を褒めるところとか。イエローが仲間の役立てた嬉しさを照れて誤魔化すところとか。これが無料で見られるってマジ? お金払った方が良くない?

 悪の組織で仕事して給料もらって魔法少女たちにお金を払って、なんだ、永久機関が完成してしまうな!?*7

 

「く、黒騎士様! どうかお(ちから)()えを!」

 

 私が魔法少女永久機関について考えていると、ブダーンの鼻につく声が遮った。邪魔しないで欲しい、私の計算通りなら、世界平和は目前だ。

 

「く、黒騎士様・・・・・・?」

 

「断る」

 

 沈黙の重みに焦り始めたブダーンへ、私は否を突きつける。

 

「私の仕事は同行することのみ。助力をするつもりは無い」

 

「そ、そんなぁ!?」

 

 そもそも、何で私がお前に協力しなければならないのか。私は推しと戦いたいなんていう変な性癖は持っていないのだ。スカートの下? あれは必要な戦闘だったから・・・・・・

 

「仲間割れ、でしょうか・・・・・・?」

 

「油断しないで。そういう罠かもしれない」

 

「あれ? この声、どこかで・・・・・・」

 

 不味い、推しに認知される──じゃなかった、マゼンタが私の中身に気付きそうだ。この兜の機能で、声にはフィルターがかかっているはずなのだが・・・・・・あ、機能切ってたの忘れてた。

 慌ててフィルターを起動し、私はマントを(なび)かせながら*8彼女たちに背中を向ける。

 

「また会おう。魔法少女たち」

 

 意味深な発言を残し、クールに去る──そんな悪役ムーヴを決めながら、私は転移を始める。

 

「こ、今回は撤退してやるが──覚えておくトン! 次は必ずお前たちに吠え面かかせてやるトン!」

 

 ブダーンもまたゴムボールのようなものを叩きつけ、撤退することにしたようだ。

 

「あ、待って──」

 

 正直、彼女たちが魔法で街を修復するのまで見たかったが──そう言われて待つ悪役は居ない。

 後ろ髪を引かれる思いの中、私は魔法少女たちの前から去るのだった。

*1
偏見

*2
アニメ脳

*3
コイツにとっては確定事項

*4
偶然

*5
敵組織にあるまじき思想

*6
早口

*7
錯乱

*8
演出。特に深い意味はない。




黒騎士
実はちょっと(?)おっちょこちょい

魔法の系統とか
・マギアマゼンタ 炎の魔法が得意。バランスタイプ。
・マギアシアン 斬撃系の魔法が得意。圧倒的近接タイプ。
・マギアイエロー 防御の魔法が得意。サポートタイプ。
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