悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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超お久しぶりです(超土下座)。
そしてあけましておめでとうございます。まさか年を越すとは思ってませんでした。
身体の事情で執筆が出来ない状況でした。もう回復したので、ゆっくりと投稿再開出来ればと思います。


確固たる(モノ)

 巨大化し、まるで塔のごとく巨大になった未知のコワガーレ──テラー・コワガーレへと、マギアカリーナたちが向かっていく。恐怖の無いディストピアと化したこの街において、残された希望は彼女たちだけだ。

 

「ここまで近づいても、何の反応もありませんね・・・・・・」

 

「妙ね。コワガーレならいつも、暴れ回っているはずだけど」

 

 接近したマギアカリーナたちだが、コワガーレに動きは無い。ただぬぼーっと立ち尽くすだけだ。

 

「コワガーレの素体についてもわかりませんね。スライム? でしょうか・・・・・・」

 

 コワガーレには、基本的に元となった物質がある。それについての共有は、既に行われていた。

 しかし、眼前のコワガーレは、その素体となったモノが何なのか、外見からはわからない。

 

「攻撃魔法じゃ何が起きるかわからないし、まずは様子を見よう!

 身体の異変だけじゃなくて、精神面の違和感も気をつけて!」

 

 マゼンタの言葉にそれぞれ応答し、四人が散開する。

 睨み合いのような形になったが、そもそも相手に意思があるかもわからないのが現状だ。動きがあるか、黒騎士から解析の結果が(しら)されれば、対処する事になるだろう。

 

 しかし、彼女たちの予想に反してテラー・コワガーレは仕掛(しか)けてきた。

 

「え?」

 

 キラリ、とコワガーレの中で何かが光った。(まばた)きにも満たない、気を抜いていたら見逃してしまうような光。それが、テラー・コワガーレの攻撃だった。

 

 気付けばマゼンタは、暗闇の中に居た。明かりのまるで差さない、目を閉じても開いても変わらない視界。

 

「イエロー? シアン、ネーロ! みんな!」

 

 そして、先程までは明確に感じられていた仲間の気配も、どこかへ行ってしまった。呼びかけに答える声も無い。

 

「ふぁーたん! 黒木さん! どこに行ったの!?」

 

 そこには、マゼンタしか居ない、誰も側に居ないという『孤独』。どこにも光が存在しない『暗闇』。それらが恐怖となって襲いかかってくる。

 

「みんな! どこ・・・・・・どこなの!」

 

 混乱と共に暗闇を進んでも、何も見えない。聞こえない。

 『孤独』『暗闇』。そういった『恐怖』が、マゼンタを蝕んでいく。

 

 同じように、マギアカリーナたちは『恐怖』の世界に囚われていた。

 

「くっ、どうして! 倒せないのよ!!」

 

 シアンは、何をしても倒せない相手──格上と戦う恐怖。

 

「待ってください! 桜桃(ゆすら)ちゃん! 待って!」

 

 イエローは大事な人に、友人に嫌われ、取り残される恐怖。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい! 違うんです、貴方たちを見捨てた訳では無いんです! (わたくし)は、ただ!」

 

 ネーロは誰かに責められる恐怖。故郷の人々から『なぜ裏切った』『なぜ早く助けてくれない』と、彼女の負い目を(えぐ)られる苦しみ。

 

 それは、ありふれた恐怖体験。

 孤独も、苦手も、離別も、負い目も。

 誰でも一度は経験するような、よくある話だ。

 

 だが、それが何重にも重なり、リアリティを超えた厚みで押しつぶして来る。呼吸が出来ない程に苦しく、何も考えられなくなるほどに、怖い。今までに何度もコワガーレと戦い、特訓までした彼女たちであろうとも(おび)え、恐れるほどに。

 

 黒騎士がコンパクトに手を加えた事によって、直接的な精神への干渉はされていない。しかし、五感の全てを『恐怖』で埋められた彼女たちは、()(すべ)無く苦しむしかなかった。

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

 私は、魔法少女に入れ込むあまり、戦局を読み違えた者──黒騎士。流石に今回ばかりは私もふざけてはいられない*1ため、真面目に彼女たちをバックアップしよう。いや、別に普段からふざけてなどいないが。

 

 鎧を起動し、パソコンへと変形させた私は、モニター越しにマギアカリーナたちの様子を見ていた。ふぁーたんも何故か私の視界を遮るように画面を覗き込んでいる。

 

『誰も、居ない・・・・・・私は、ひとりぼっち』

 

『勝てない・・・・・・このままじゃ、負ける・・・・・・』

 

『志由ちゃん、葵ちゃん! 桜桃ちゃん・・・・・・! 待ってください・・・・・・いかないでぇ』

 

『ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・! すみませんでした、ごめんなさい・・・・・・!!』

 

「まさか、ここまでの精神攻撃をしてくるとはな・・・・・・」

 

 見ているだけで胸が痛くなるような光景だ。恐らく彼女たちの最も苦しむであろう恐怖を与え、エネルギーを得ようとしているのだろう。

 

 だが、何故だろう。どこか昂ぶっている私がいるのもまた、事実だ。*2

 魔法少女は決してくじけない。諦めない。それは私にとって揺るがぬ事実だが──同時に彼女たちは、等身大の少女なのだ。特殊な事情のある者(シュヴァルツ)こそ居るが、その精神性はまだ未成熟の少女。だからこそ、こうして恐怖に顔を歪め、しかし必死に抗おうとする姿に──どうしようもなく、ときめいてしまうのだ。

 

はぁ、はぁ・・・・・・これが、恋か?」

 

『くろき、ばかなこといってないで! あとかおがきもい!』

 

 ふぁーたんが私の頭をはたくが、(たい)した威力も無いためノーダメージだ。しかし、私を正気に戻すだけの力はあった。

 

「すまない。錯乱していた」

 

『こんなときに!!

 なんとかならない!? またぺんらいとつかう!?』

 

「いや、それは出来ない」

 

『なんで!?』

 

「人々の恐怖心が奪われた事で、危機感が薄くなってしまっている。

 見てみろ。魔法少女たちがあんなにそそる──もとい、あんなに悲惨な目に合っているというのに、誰も見向きしていない。『危機』を『危機』と認識できなくなっているのだ」

 

 恐らく、突然『恐怖』を失った影響で人々の感情が上手く動いていないのだ。バランスの保たれていた感情の均衡(きんこう)が崩れた事で、麻痺してしまっている。

 

『じゃあどうするの!?』

 

「解析結果が出た。あのコワガーレ──言うなれば『テラー・コワガーレ』は、人々の恐怖の感情を奪い、溜め込む存在。今はその一部を使って、彼女たちに恐怖を与えている。

 あちらの恐怖が尽きれば、彼女たちも開放されるだろうが・・・・・・」

 

 町中の人々が持つ『恐怖』を、あの四人にぶつけてるようなものだ。彼女たちの精神が()つ保障は無いだろう。

 私が出ればあのコワガーレを撃破することは可能だが──そうした場合、人々の感情が正常に戻るかはわからない。

 

「あるいは、彼女たちが恐怖に打ち勝つか。

 少なくとも、今すぐに打てる手は無いな」

 

『・・・・・・ほんとうに? くるしむマギアカリーナをみたいとかじゃなくて?』

 

「流石にそこは信用してくれ」

 

 私もそこまで()ちてはいない。疑いの目を向けてくるふぁーたんに、なんとか釈明する。

 しかし、結果的にそうなってしまっているのは事実だ。故に、魔法少女たちの苦しむ姿を目に焼き付けようと思う。

 

『じーーー』

 

「・・・・・・そんなに疑いの目を向けないでくれ。立場上は敵対しているが、私は君たちの味方だ」

 

『そういえば、てきだった・・・・・・』

 

「それに、だ」

 

 私はモニターから目を離し、遠方にあるテラー・コワガーレの巨体と、その周囲にいる魔法少女たちを見た。

 

「彼女たちは、強い。私たちが鍛えたから、というのもあるが──

 そんなことをしていなくとも、この程度の敵に負けはしないさ」

 

 その言葉が、聞こえた訳では無いのだろうが。

 モニターに映る彼女たちに、変化があった。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

「ぐす・・・・・・やらなきゃ。一人でも、戦わなきゃ」

 

 イエローは、立ち上がった。仲間に置いて行かれても、嫌われても。投げ出さずに、向き合うのだと。

 

「このまま、負けるとしても・・・・・・諦めるわけには、行かないのよ!」

 

 シアンは、折れなかった。例え勝てなくても、引き下がらない。勝機を得るまで、戦うのだと。

 

「何も見えなくても・・・・・・わかる。みんな、戦ってる!」

 

 マゼンタは、感じ取った。自分と同じように、仲間が戦っていると。ならば、何も怖い物はない。

 

 瞬間、彼女たちの視界が開けた。恐怖に打ち勝ったのだ。

 

「イエロー! シアン!」

 

「マゼンタ! うぅ、寂しかったです・・・・・・!」

 

「え、なんで泣いてるのよ、イエロー」

 

 合流した三人。だが、まだ一人、恐怖に囚われている魔法少女がいる。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい・・・・・・(わたくし)は・・・・・・!」

 

 それは、テラー・コワガーレの防衛本能だったのだろう。

 五感を奪われたマギアネーロの肉体を操り、武器を構えさせる。()()()精神への直接干渉は出来ないため、身体のみを操ることにしたようだ。

 

「手のかかる子ね、本当に・・・・・・」

 

「ネーロも、必ず恐怖に打ち勝てるはず。それまで、時間を稼ごう!」

 

「頑張ってください、ネーロちゃん!」

 

 

 

 

 声が。いくつもの声が、聞こえる。(わたくし)を責め立てる。

 

『どうして貴方は遊び呆けているの? 私たちはこんなに苦しんでいるのに』

 

『魔法少女に寝返るだなんて、どういうつもりだ? そんな事のためにお前を育てたのではない』

 

(わたくし)は、(わたくし)は・・・・・・・!」

 

 その声を、忘れられるはずもありません。黒騎士様に憧れた(わたくし)を、学校に入れてくれた、両親の声。

 

『貴方はわたしたちを蹴落としてその地位に着いたのに、それを簡単に捨てるだなんて。

 貴方はそのために組織に入ったの?』

 

『お前は、俺たちの中で一番優秀だった。なのに、なんだその体たらくは』

 

 旧友たちの、落胆したような声。同じ学び舎で笑い合ったはずの声が、今は鋭さを伴って(わたくし)の心に突き刺さります。

 

「ごめんなさい、違うんです・・・・・・! (わたくし)は、別の道を探して──」

 

『シュヴィー』

 

 ふと、一番大事な人の声が聞こえました。振り返ってみれば、そこには、鎧を纏っていないお姉様が、こちらを見つめています。見たこともないような、無機質な瞳で。

 

「お姉様・・・・・・」

 

 見たことのない表情に、(わたくし)は恐怖してしまいました。

 きっと、お姉様は怒っている。身体が(すく)むのを自覚しながら、(わたくし)は動くことが出来ませんでした。

 

『お前にはガッカリした。この私が鍛えたにも関わらず、魔法少女に敗北し。あまつさえ魔法少女に成り下がるとはな。

 お前は母星を救うという使命を忘れたのか? もうお前には何も期待しない。私の前から消えろ』

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 ・・・・・・は?

 

 

「お姉様は! そんなこと! 言わない!!!」

 

 あまりの解釈違いに、(わたくし)は全力でお姉様の虚像へと剣を振るいます。

 

「お姉様はそんな尊大な口調ではありませんし!

 魔法少女を悪く言いませんし! (わたくし)に期待を寄せてくれていますし!

 何より!」

 

 開ける視界の中で、(わたくし)は黒騎士様の偽物を作り出した何者かに向けて、言い放ちます。

 

「お姉様の声はもっと艶やかで芯があって聞くだけでもっとうっとりしてくるんです!!!」

 

 そう自信満々に言った(わたくし)

 ですが、目の前に広がっていたのは、こちらを見て顔を強張(こわば)らせている、三人の姿でした。

 

「あ、あはは・・・・・・えっと。黒木さんのこと、よく見てるんだね。ネーロ」

 

「マゼンタちゃん、そのフォローはむしろ逆効果・・・・・・」

 

「まさかアナタ、解釈違いで恐怖を振り払ったの?

 なんと言うか・・・・・・筋金入りね」

 

 三人の反応に、いま自分がどういう状況だったのか、そしてなにを口走ったのか自覚した(わたくし)は──

 

「すみません取り急ぎ皆様には記憶を失っていただこうと思います!

 では、お覚悟を!」

 

「ネーロちゃん!? 正気に戻ったんですよね? 何で戦いを続けようとしてるんですか!」

 

「呆れた。頭を打ったって、そんな都合良く記憶をなくせる訳ないじゃない」

 

「黒木さーん! すみません、ネーロを止めてくれませんか!」

 

 そこでお姉様を呼ぶのは反則でしょう!?

*1
フラグ

*2
おまわりさんコイツです

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