悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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ゆっくりと投稿再開していくと言ったな・・・・・・アレは嘘だ()
皆様からの感想・評価でやる気もらえたので連日投稿です。さていつまで続くのか。


残る敵は──

 自分の抱えていた『恐怖』に打ち勝った*1魔法少女たち。

 

 その姿を眺めていた、今回の元凶たる『テラー・コワガーレ』を生み出した者──レインは、自身の敗北を悟った。

 

()けたか。・・・・・・いや、わかりきっていた結末(コト)か」

 

 白衣のポケットに手を突っ込んだ彼女は、背後に気配を感じて振り返る。

 

「・・・・・・レイン。やはりお前か」

 

「やあ黒騎士。素顔を見るのは久しぶりな気がするね。元気だったかい?」

 

 飄々とした態度は崩さないながらも、その笑みはどこか弱々しい。レインの様子に、黒騎士は眼を眇めた。

 

「あのコワガーレ──戦闘能力がまるで無いな。恐怖をただ集めるだけの存在。

 そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「流石だね。いや、私が作った装備が優秀だからかな? どちらにせよ、(タネ)がバレたのなら、ここまでか」

 

「レイン、お前は──止めて欲しかったのか。誰かに」

 

 黒騎士の言葉に、彼女は困ったような笑みを浮かべる。

 

「まさか、そこまで気付かれるなんてね。君の事を見くびっていたみたいだ。

 君は他者の感情に疎いタイプだと思っていたんだけどな」

 

「最近、ようやくわかるようになってきたところだ」

 

 まるで表情を動かさない黒騎士と対照的に、レインは苦笑する。

 実際は、正反対なのだ。黒騎士の方が内心で感情豊かであり──微笑んでいるレインの感情は、まるで動いていない。

 

「研究のために、自分の『恐怖』を使うことに躊躇いは無かったんだけどね。

 おそろしかったよ。何も怖くない事が。その事実にさえ、恐怖することが無いんだから。

 連鎖するように、自分の感情が死んでいくのがわかった──」

 

 レインの言葉を、黒騎士は黙って聞く。既に、彼女は折れているのだ。

 

「──もう、疲れたんだ。毎日研究をしても、まるで進展がない。

 なのに状況は悪化するばかり。エネルギーだって無駄にできない。

 悪いね、黒騎士。私はここまでだ」

 

 そう言って、彼女はポケットからスイッチを取り出す。

 

「それは、あのコワガーレから『恐怖』を解放するスイッチか」

 

「・・・・・・本当にお見通しみたいだね。その通りさ。

 研究の成果だよ。奪った感情を、持ち主に返す技術──既にエネルギーに変換してしまった感情は、どうにもならなかった」

 

 そしてレインは、悔しそうな顔でそのスイッチを黒騎士へと投げ渡す。

 

「ああそれと──そのスイッチを押せば、コワガーレを作り出すのに使った分の感情は、私にやってくるようになっていてね。

 悪いけど、後を頼めるかい?」

 

「・・・・・・承った」

 

 黒騎士が頷けば、彼女は安心したように笑った。

 

 そうして彼がスイッチを押せば──コワガーレが雄叫びと共に、その身体を霧散させていく。

 同時に、レインが倒れ込んだ。突然の『恐怖』の奔流に、耐えられなかったのだ。セニオと同じように、彼女も暫く何も出来ないだろう。

 そんなレインを拾い抱えながら、黒騎士は思った。

 

 ──これで、心置きなく最終決戦に行けるな。*2*3*4

 

 

▽▲▽▲▽▲

 

 

 マギアネーロの乱心により、何故か魔法少女同士の戦いが続行されそうになったマギアカリーナたちだったが、そのタイミングでテラー・コワガーレが咆哮を上げた事で、全員が意識をそちらに向ける。

 

「ッ! まだ動きますか!」

 

「みたいね。さて、どこから攻めましょうか──」

 

「いえ、様子が変です! これは・・・・・・(しぼ)んでる?」

 

 イエローの指摘に目を凝らして見れば、段々とコワガーレの身体が風船のように縮んでいっているようだった。

 

「恐怖を自力で乗り越えたか。流石だな」

 

「わ、黒木さん! どうしたんですか、その人?」

 

 そこへ声をかければ、予想以上に驚かれた。レインを米俵のように(かつ)いでいるのもあって、普段以上に不審者に見えているのか。*5

 

「コイツはウチの幹部だ。このコワガーレを作り出したは良いが、その反動で動けなくなっていてな。

 さっき回収した」

 

「えっレイン様!? お姉様に担がれるとか羨ま──そうですか、レイン様が」

 

「軌道修正したわね」

 

「頑張って取り繕ってますね」

 

 二人の指摘に、ネーロは耳まで赤くなっているが、そこをツッコむのは野暮というものだろう。直前に、三人に攻撃しようとしていたのもあって、相当な居たたまれなさを感じているはずだし。

 なら、今のうちにそれっぽい事を言っておこう。志由が正気だと看破されかねないしな。

 

「君たちがコワガーレの繰り出した『恐怖』に打ち勝った事で、あのコワガーレも力を失ったようだ。(じき)に町の人たちも元に戻るだろう。

 戦闘能力は無かったようだが──怪我は無いな?」

 

「ご心配なさらず! 見ての通り万全です!」

 

 どうやらバレなかったらしい。自慢げに胸を張る彼女は非常に可愛らしいので写真に収めたいのだが、レインを抱えている今は不可能だな。もう放置しようかなコイツ。*6

 

『あ、いた! くろき、どこいってたの!』

 

「ふぁーたんか。済まないな、同僚を回収していた」

 

 私が突然いなくなったからだろう、はぐれていたふぁーたんがやって来る。コワガーレが倒されたのを見て合流しに来たのか。

 

『もう! くろきはいつもそう! めをはなすとどっかいく!』

 

 まるで古くからの友人のような物言いに、私は苦笑するしかない。だが、彼女たちとこうしていられるのも、ここまでだろう。

 

「さて。君たちは我々の組織の幹部、二名に勝った。

 残る幹部はこの私のみ──というのは、薄々気付いていただろう?」

 

 私は意図して声から抑揚を消し、彼女たちに振り返る。それと同時に、私の武装である黒い鎧を身に纏った。マギアカリーナたちが変身を解いていないのは、好都合だ。

 こらネーロ(志由)(あっシリアスな雰囲気! (わたくし)も合わせますね、お姉様!)みたいな顔をするんじゃない。以心伝心して喜ぶな。

 

「──どうしても、戦わないと、ダメですか?

 私、黒騎士さんと──黒木さんとは戦いたくないんです」

 

 本心なのだろう。魔法少女として満点の問いかけに、思わず顔がニヤけそうになるが、今はシリアスな場面だ。兜の下だとしても、ちょっと意味深な笑みくらいに留めなければ。*7

 

桜桃(ゆすら)・・・・・・」

 

「桜桃ちゃん・・・・・・」

 

「だって、そうでしょ? 黒木さんは、いつも私たちを助けてくれた。*8

 そんな人と戦いたいなんて、思えないよ・・・・・・」

 

 その横でネーロが(え、(わたくし)行けますよ? むしろばっちこーい! です!)みたいな顔をしているが、無視だ無視。見ろ、ふぁーたんが気付いて半眼になっているだろう。

 ええい、しょぼーんってするな。桜桃たちに気付かれたら空気感が台無しだろう!*9

 

「だが、わかっていた事だろう? 私は悪の組織の幹部で、君たちは魔法少女だ。敵対する運命にある」*10

 

「でもっ!」

 

 涙を(にじ)ませながら、どうにか私を説得できないかとマギアマゼンタは言葉を探す。

 あ~、最高の気分だ。*11 葛藤する魔法少女を、目の前(とくとうせき)で見る事が出来るとは。ふぁーたんからの視線が痛いが、コラテラルダメージと言うヤツだ。

 

「マギアマゼンタ。マギアシアン。マギアイエロー。そしてマギアネーロ。

 私と君たちとは、ここまでだ。次に会う時は──敵として、戦う時だ」

 

 そう言うや否や、私は漆黒の剣を取り出し、彼女たちへと向ける。

 それが、決別の意味が込められているのはわかっているのだろう。眼前に武器を突きつけられ、マゼンタは驚きと共に身を(すく)める。

 

「では、さらばだ。マギアカリーナ」

 

「っ、待って!」

 

 待たない。

 私は空間転移を使って、組織の基地へとジャンプした。

 

 これで良いのだ。レインまで敗れた以上、次に戦うのは、私の他にいない。*12

 

 まぁ、黒騎士として彼女たちとは敵対することになっても、黒木としては彼女たちに会いに行くつもりではいるしな。*13*14*15

 

 

▼▲▼▲▼▲

 

 

 そうして、基地に戻れば──ものすっごい疲れた顔をしたボスが待っていた。

 

「・・・・・・よう。遅かったな」

 

「済まない、少し用事を思い出したので帰って良いか?」

 

「良い訳ねぇだろシバくぞ」

 

 ボスのあんまりな形相から思わず逃げようとしてしまったが、許されるはずもなく逃走は諦める。人間モードだが、仮に犬状態だったとしてもわかるであろう濃さの隈と疲弊具合だ。

 すると、背後の扉が開き、()()()()()()()入ってきた。ボスの特殊能力のひとつ、分身だ。分身体にも関わらず疲弊が色濃く見えるのは、流石の精度と言うべきか、それだけ疲れていると見るべきか。

 

「分身するほどの事態なのか。想定外だな」

 

「ああ。レインがやらかしてくれてな。今、ほとんどの部下が使い物にならねぇ。

 数日経てば回復するだろうが──どうすンだよもう。アレか? 私が全員分動くしかねぇのか?

 

「最終決戦より先に過労死するのは勘弁してくれ」

 

 思ったよりも事態は深刻らしい。しかもけっこう物理的な方面で。

 

「クッソ、ちょっと休暇を取ったら直ぐにコレだ。なんで私はいっつもこんなんばっかなンだよ!」

 

 それでも何とか出来てしまうからじゃないか? という発言は飲み込んだ。流石に今そんな事を言ったら、ボスの精神を破壊してしまう。

 

「報告だが。魔法少女たちと敵対することになったぞ。レインが負けたからな、このとおり」

 

「マジかよ面倒事ばっかり増やしやがって!?

 こんなに疲れてるってのに、どうするんだよ私の癒やしは!

 

「ボスとしてではなく、真神として会いに行けば良いんじゃないか?」

 

その手があったか。やるじゃねぇか黒騎士」

 

 うん。ボスは相当疲れているな。これは急いでマギアカリーナたちのデータを編集して上映会をした方が良さそうだ。*16

 

 そのまま私とボスが他愛もない話をしていれば──突然、気配を感じた。

 ボスや私に似た、地球人とは異なる気配。ボスは椅子から立ち上がり、私もまた鎧を身に纏う。

 

 部屋に現れたのは、『アークス』の同胞。しかし、我々とは()()()()()に配属されている者たちだ。

 

「ご機嫌(うるわ)しゅうございますわ。アークス()()()()のボス、タマノマカミ様。

 そしてお久しぶりですわね、黒騎士」

 

「イヤー、久々にこの距離を転移すると酔うでアリマスね。

 ドーモドーモ。お邪魔してるでアリマス」

 

 方や、機械の身体を持つ、白磁の女性。その身体の、水色のカメラアイから純白の長髪から何まで全て武器で出来ている、全身兵器。

 方や、一般戦闘員然とした青い衣装に身を包んだ男。特徴的なとんがり帽子を眼深に被っているせいで表情は伺いにくいが、その口は笑みを作っている。

 

「ミケル・・・・・・それから、ビロー、だったか」

 

「オヤオヤ。自分まで覚えていただいているなんて、恐縮でアリマスね」

 

 アークス()()()、そしてアークス()()()()からやってきた使者たちを前に、私とボスは冷や汗を流すのだった──

*1
約一名要審議

*2
いつもの

*3
台無し

*4
知ってた

*5
自覚はあるらしい

*6
末期

*7
シリアル

*8
本当か?

*9
既に台無し

*10
どの口が

*11
オタクさぁ・・・

*12
ガツンドのことは意識外

*13
何度目かの台無し

*14
涙を返せ

*15
都合の良い時だけ公私を分ける

*16
自分の仕事については考えていない




黒騎士
レインの気持ちはわからなくは無いが、それはそれとしてオタクしている。
全然マギアカリーナたちに会いに行くつもりだった──他の艦隊から使者がやって来るまでは。

ボス(本名:タマノマカミ)
あくまで第一艦隊のボス。
故郷を救うための組織のトップが、こんなオタクばっかな訳ないじゃないですか。

ミケル
本部隊の幹部。詳細は次回。

ビロー
第二艦隊の構成員。詳細は次回。

志由
黒木の思考を見抜いているので、このあと黒木宅で普通に黒木と合流できるとわかっている。
でも空気を読んで黙っていた。

ふぁーたん
黒木の思考を見抜いているので、このあと黒木が普通に顔を出しそうだなとわかっている。
でも空気を読んで黙っていた。

マギアカリーナ
実は黒騎士がコンパクトに細工しなければ、一ヶ月ほど悪夢に魘される事態になっていた(コワガーレに勝てはする)。
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