悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】 作:高々鷹々
突如として現れた、本部隊と第二艦隊からの使者。
彼らは、我々とは別の宇宙で任務に当たっていた筈だ。定期的に通信連絡こそしていたものの、エネルギーを大量に使う転移まで使ってこちらに来る必要は無いのだ。それも、二人同時に。
「・・・・・・何の用だ」
「相変わらずみたいですわね、黒騎士。久しぶりの再会なんですから、もう少しゆっくり話せませんこと?」
ミケルの言葉に、私は口をつぐむ。彼女とはそれなりの付き合いがあるが、私の素顔を知らない。つまり、二人が帰るまで鎧を纏っていなければいけないので、手早く済ませたいのだ。
「突然の訪問になってしまって、申し訳ないでアリマス。何分、定期連絡が途絶えていたので」
「ぁ? ・・・・・・あ」
ボスは怪訝そうな声をあげたものの、直ぐに思い当たったのか全力で目を
「その、だな・・・・・・こっちも忙しかったンだよ」
「それは見れば分かりますわ。こうして会話している間にも手を止めずにいますし」
さてはボス、マギアカリーナとの特訓に熱中しすぎて忘れてたな? で、戻ってきてみれば組織が麻痺していたからそれどころじゃ無くなった、と。
「でも安心しましたわ。この星の敵性存在に敗北したのでは無くて」
「自分たちも、そういった存在には手を焼いているのでアリマス。
どの星にも我々の邪魔をする者が居るのは、星の防衛本能でも働いているのでアリマショウか」
ウンウンと頷いている
つまり、他の星にも魔法少女が居ると言う事か!? 詳しく、詳しく聞かなければならない。
「定期連絡の内容までは把握していなかったが──他の星にも、マギアカリーナのような存在が?」
「・・・・・・本当にお変わりありませんのね、
おい待て、今なんか呼び方おかしくなかったか。
「私たちの攻めている星には、『破面ヤイバー』と呼ばれる存在がおりますわ。
どこかオーパーツじみた鎧を纏った、仮面が特徴的な戦士ですの」
・・・・・・ん? なんか、既視感が。
「自分たちの敵は、『純潔戦隊ヴァージニア
清らかなる正義の心を持つ、戦士たちでアリマス」
「・・・・・・・・・・・・そうか」
コレ、私たちだけでニチアサをコンプリートしてるではないか!!
どうなっているんだ、まだ見ぬ魔法少女たちが居るのでは無かったのか!?*1
「そして、私らが戦っている『魔法少女マギアカリーナ』──ハッ、侵略なんて順調に行く訳がねぇか」
「エネルギーの回収自体は出来ているのですが。
こう、あの戦士がどこまで強くなれるのか見た──コホン。中々に強敵でして、戦いが拮抗しているのが現状ですわ」
まるで誤魔化せていないミケルに、私は兜の中から半眼を向ける。
彼女は昔から強敵と戦う事を好んでいる
今は機械の身体になって感情が表に出づらくなっているようだが、私にはわかる。何せ、数え切れないほど組み手の相手をせがまれたからな。
「こちらも、エネルギー回収量は微増、といったところでアリマス。怪人たちが巨大化するのにエネルギーを使うせいで、回収率が悪くて悪くて・・・・・・。
ああ、決して戦隊内の恋愛事情が気になってそっちにかまけているとか、そんな事は無いでアリマスよ?」
ほぼ自白したビローに、私は兜の中から半眼を向ける。
彼はどうやら外面を取り繕っているようだが、私にはわかる。彼も
「これは定期連絡でも伝えた事だが──ウチが一番進んでねぇな。エネルギーがまるで集まってねぇ。
赤字とまでは言わねぇが、これまで多少あった
改めて聞くと、とんでもない状況だな、我々は。*3 様々な原因が重なった結果ではあるが。
「その様子ですと、前回の定期連絡から更に悪化しましたの?」
「ああ、幹部の一人がやらかしてな・・・・・・どうだ、黒騎士」
「
無論、彼女は頭脳担当なので、研究や実験も出来ない、という意味だが。
それにしても、酷い有様だった。急に戻ってきた恐怖に精神が付いていかないのだろう、
「そうでアリマスか・・・・・・しかし、現状はそうも言っていられない状態でアリマス。
母星の状況が変わったのでアリマス」
ビローの取って付けたような敬語に思うところがないでもないが、今そこを突っ込むと面倒になりそうなので沈黙したまま話を聞く。
「母星の人々の容態が急変したそうです。
今すぐにどうにかなる、という訳では無いそうですが・・・・・・早急に対処しなければ、恐らく未来はありません」
「・・・・・・なるほどな。端的に言えば、滅亡の危機ってヤツか」
ボスの言葉に、二人は静かに首肯した。私も、とうとうこの戦いの終わりが近い事を悟って頷く。
「自分たちも、
無論、なるべく血の流れない方法を取るつもりではアリマスが・・・・・・」
「ンなの、わかりきってるだろ。滅びかけてるのはこっちの事情だ、ここに生きてるヤツらを傷つけて良い訳がねぇ」
これは、組織としての方針の根底にある。もし血に濡れた方法で母星の問題を解決しても、後に残るのは空しさだけだ。これは、我々の過ちなのだから。
「本部隊からの使者としては、ここで全員の力を集結し、どこかの星へと総力戦をしかけては、と一応提言いたしますけれども──」
「無いだろ」
「無いな」
「無いでアリマスな」
「ですわよね」
本人も、そうなる事はわかっていたのだろう。全員で首を横に振った。
「私らのとこのケリは私らで着ける。それに──」
「アクの強い
ミケルの言葉に、今度は全員で頷いた。
断言しよう。確実に内輪揉めで滅びる。
そもそも私たち第一艦隊のメンバーですら仲は良好とは言い難い状況だったので、悪化するに決まっている。
まずミケルが強者と戦いたい病を発揮して私辺りに組み手をしかける。それに武闘派たちが乗っかり、止めようとした面々が巻き込まれ、野次馬が集まり、ついでに基地が壊れる。
そうでなくても、どいつもこいつも思想が強いので意見の対立が頻発する。ウチだけでも起きたのだ、他の部隊も合わせれば結果は火を見るよりも明らかだ。
冗談じゃない。そんな滅び方、嫌すぎるだろう。
「自分は下っ端
「・・・・・・私か」
えっ、まるで記憶に無いんだけど。そんなに因縁を作っていただろうか、私。
「無自覚な辺り手の施しようがありませんわね。
貴方、その強さと振る舞いのせいで色んなところから
その上で目立った成果も上げていないんですもの、顔を合わせたらどうなることやら」
「あー、お前は気付いてないだろうが。知り合いの少ない部隊に配属されたの、その辺が理由だかンな?」
「・・・・・・初耳だが」
おかしいな、私の組織内での立ち位置ってそんな感じだったのだろうか。*4
「まぁ、そういうことですので──何事かと思って転移までしましたが、大事ないようで安心しましたわ。
黒騎士のことは、最初から心配していませんでしたけれども」
「では自分もコレで失礼するでアリマス。
──お互い、悔いの無いよう」
そう言って、長距離転移の準備をする二人。そんな中、ふとミケルがこちらを振り返った。
「貴方、まだ引き摺っていますの? ──ファタルのこと」
「──ッ!」
出された名前に、私は思わず反応する。してしまう。
その様子に、ミケルはこちらに哀れむような瞳を向けた後、転移した。ビローも意図を察しかねたようだったが、転移して姿を消す。
「ファタル、か・・・・・・」
懐かしい名前だ。私にとって、忘れることの出来ない存在。そして、全ての引き金。
いやまぁ、最近は魔法少女に熱中しすぎて言われるまで本気で忘れかけていたんだが。
しかし、ミケルたちの話によれば、我々に残された時間は余りに少ない。元より最終決戦のつもりだったが、やり残しの無いようにしなければ。
「ボス」
「・・・・・・おう、どうした」
「差し当たってはまだ見ていない魔法少女アニメの上映会を提案する」
「おっしゃ分身フル活用して今すぐ仕事終わらせてやンよ」
この後メチャメチャ仕事した。
黒騎士
組織内で戦闘能力だけならトップ。
ミケル
実は戦闘ジャンキー。ある戦いで身体を失い、今は機械の身体で過ごしている。
なお精神や内臓は据え置きなので感情もあるしエネルギーも生み出せる。戦いの際に尤も感情を発露するので、自家発電しながら戦うヤベー兵器と化す。
ビロー
下っ端戦闘員だが、普通に強い。責任から逃れるために昇進を蹴っているタイプ。そのため第二艦隊のボスには体の良い使いっ走りにされている。
実はシュヴァルツ(志由)の同期だが、向こうからは覚えられていない。
破面ヤイバー
別宇宙の仮面のヒーロー。
太古の昔、巨大な悪と戦った戦士の仮面、それを手にした青年が謎の侵略者たちと戦う際に付けられた名前。
変身者には特に変わったバックボーンは無いのだが、何故かメッチャ強いし成長が早いし戦闘センスがずば抜けている。
純潔戦隊ヴァージニア
別宇宙の戦隊ヒーローたち。
清らかなる(ここ大事)正義の心を持つ者のみが戦隊の力を手にする事が出来る。
恋愛感情まではセーフだが肉体関係を持った瞬間に戦隊の力を失う。だが思春期の少年少女のため恋愛事には興味津々。
赤青黒黄桃に追加戦士で白が加わった。なお男女比は1:1。