悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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今回は本編の過去の話──なので、魔法少女成分が薄いかもしれません。
足りないと思う方は、『キミとアイドルプリキュア♪』を見ると良いかもです。なんと、一話が見逃し配信中の上に明日に第二話が放送されるそうですよ?(ダイマ)

今回は特にそうですが、ノリと勢いとライブ感で書いてるので、設定の矛盾があったら済みません・・・極力気をつけてはいるのですが。


追憶 オタクになる前の黒騎士

 ファタル──それは黒騎士にとって特別な意味を持つ名前だ。当人の頭からすっかり抜け落ちていたとしても、その事実は変わらない。

 

 まだ彼がオタクでは無かった頃。もとい、母星で『アークス』の一員として力を振るっていた頃。

 黒騎士は、とある人物の護衛任務を任された。その相手こそが、ファタルだ。

 

「お前が、ファタルの護衛? 護衛なら、顔くらい見せたら」

 

「・・・・・・必要性を感じない」

 

「あっそう。ならいい」

 

 この頃から既に全身鎧を纏っていた黒騎士と相対したのは、一人の少女。

 ウェーブのかかった白い髪に、眠たげな瞳。成長するのを見越して買ったのか、サイズがやや大きい服。そして、黒騎士より(はる)かに低い身長。

 彼女は、黒騎士たちの故郷においても、まだ子供とされる年齢だった。そして同時に、天才的な科学者でもあった。

 

「お前も、どうせファタルじゃなくて、ファタルの才能を守りたいだけなんでしょ?

 自分たちの利益にするために」

 

「・・・・・・? 発言の意図がわからない」

 

「質問に質問で返さないで。それとも、ハッキリ言わないとわからない?

 お前が守りたいのはファタルじゃなくて()()()()()()()()()()()()()()でしょ、って言ってるの」

 

 子供である彼女は、()れに()れていた。幼いながらも大人たちの欲望や悪意に(さら)されていたのだ、ある意味当然とも言える。

 だからこそ、護衛が必要な事態にまで発展してしまったのだが。

 

「君がどう思おうと構わない。私は私の仕事をするだけだ。

 ・・・・・・それにしても、そんな技術があるのか。知らなかった」

 

「はぁ!? ファタル、これでも有名人! なんで知らないの!?」

 

 同時に、黒騎士が一番忙しい時期でもあった。地球とは比べ物にならない程に発展しながらも、資源は有限であり、争いは無くならない。

 彼の武力を持って対応せざるを得ない事態が多発しており、文字通り休む暇なく戦い続けていた。

 それを見かねた、彼の上司である存在──後にボスと呼ばれる彼女によって、黒騎士は重要ながらも比較的戦闘が起きにくい任務へと回されたのだった。

 

「・・・・・・気分を害したなら謝罪しよう」

 

「知らないっ。ふん!」

 

 だからこそ、新しい技術にも明るくなかったのだが、それはファタルからすれば非常に面白くない。

 いや、自分の才能を()(はや)される事も、別に面白くは無いが。

 

 かくして、ファタルは『アークス』の施設内で研究をするようになり、黒騎士はその護衛として彼女の側に付く事となった。四六時中、とまでは行かないが、玄関を開ければ目の前に立っているし、帰りも家まで送られるしで、ファタルが憤慨するまでそう時間はかからなかった。

 

「お前、護衛なのかストーカーなのかわからない!

 大体、ずっと何も起きてないし、護衛とかいらないじゃん!」

 

 プライベートが無いとまでは行かずとも、ずっと視界の隅に黒い鎧があるのだ。嫌にもなる。

 

「・・・・・・気付いていないのか。それは良かった」

 

「なにが!」

 

「今日だけで四組、護衛を始めてからだと三十組ほどか?

 君は思った以上に狙われているらしい」

 

「・・・・・・えっ」

 

 何でも無いかのように言われたのは、予想だにしない事。知らない間に自分が狙われていたともなれば、誰だって青ざめるだろう。

 

「お前、そんな素振り無かったのに・・・・・・」

 

「あの程度の相手、問題にならないからな。

 君の命を狙ったのか、才能を欲しがったのか、はたまた『アークス』に攻撃したいだけなのかは、そのうちわかるだろう」

 

 口ぶりからして、彼が制圧したのだろう。事も無さそうに言う黒騎士に、ファタルは──ドン引きした。黒騎士と同じくらい世間を知らない彼女は、『黒騎士』という存在の規格外さをまだ知らなかったのだ。

 

 しかし、それをキッカケに調べてみれば、黒騎士の逸話は大量に出てきた。『犯罪組織を一人で鎮圧』『誰も素顔を見たことがない』『民間企業の起こした武装蜂起に単独で介入、制圧』『助けられた少女、黒騎士に憧れアークスへ』──etc.(などなど)

 同時に、そんな存在が(あて)がわれる程に自分の存在は重要なのかと、恐怖もした。自分の思っている以上に、自分は価値を見いだされているのだと、自覚した。

 そんな彼女が、黒騎士との距離を近くしようとしたのは、当然の判断と言えよう。

 

「・・・・・・ねぇ。黒騎士なんて呼ばれてるけど、名前はなんて言うの?」

 

「・・・・・・・・・・・・何だったかな」

 

「はぁ!? 何ソレ、そんなにファタルに教えたくないの!?」

 

「いや、違う。思い出せないだけだ。最近は上司も『黒騎士』呼びでな・・・・・・本名を呼ばれた記憶が、年単位で無い」

 

 予想外の返答に驚いたファタルだったが、ならばと彼女は思いつく。

 

「じゃあ、『クロキ』って呼ぶから。黒騎士よりは、名前っぽいでしょ」

 

「・・・・・・好きに呼んでくれて構わない」

 

「そうする。クロキ」

 

 愛称で呼ぶとか、なんか距離近そう──打算と、対人関係の少なさから来た考えだったが、彼女は悪くないものに思えた。

 その後も、彼女が距離を詰めようと奮闘し、黒騎士もまたそれを遠ざける理由が無かった事から、二人はよく話すようになる。

 

「クロキ、いつもそれ着てて暑くないの? 顔も見たことないし、脱いで」

 

「・・・・・・護衛中に武装を外せと?」

 

「いいから。どうせクロキなら生身でも余裕で戦えるし」

 

 否定しがたい事実だったからか、黒騎士は諦めて兜を取った。

 

「ふぅん。クロキって、そんな顔してたんだ。髪もそこそこ長いし」

 

「邪魔なだけだ。そのうち斬る」*1

 

「え、勿体ない。そのままにして」

 

 黒騎士は渋ったが、ファタルもまた譲らなかった。根負けした彼は、以来(いらい)髪をきっていなかったりする。

 

 あるとき、ファタルが研究で失敗し、機械が爆発しそうになった時があった。

 怪我の一つは覚悟した彼女だったが──意識外から黒騎士が機械を破壊したため、事なきを得た。のだが。

 

「クロキ! 助かったけど、せめて一言(ひとこと)言って! 心臓に悪い!」

 

「・・・・・・斬った」

 

「そういうことじゃない! あと一言(ひとこと)すぎる!!」

 

 元より遠慮の無いファタルだったが、黒騎士に対して雑になってきたのは、この辺りからだろう。

 

 またあるときは、休日に出かけたりした。ファタルが買い物に出るのに、黒騎士が護衛として付いていっただけとも言うが。

 

「はいクロキ、これ持って。次はあっちの店」

 

「・・・・・・護衛の任務に、荷物持ちは含まれないはずだが」

 

「どうせクロキは荷物あっても戦える。でしょ?」

 

 否定しがたい事実だったからか、黒騎士は諦めて買い物袋を手にした。その後、刺客を気絶させるのに鈍器として使用して、ファタルにこっぴどく怒られたりもしたが。

 

 そして、ファタルは自身の研究を完成させる事となる。

 文字通り天才であった彼女は、黒騎士が護衛に付いてから半年足らずで感情をエネルギーへと変換する技術を確固たるモノとし、既存のエネルギーとの互換性も確立した。

 

「どう、クロキ? これで争いが無くなれば、クロキも戦わなくて済むんじゃない? 仕事、無くなるかも」

 

「・・・・・・かもしれないな」

 

「そしたら、ファタルが雇ってあげる。また護衛として!」

 

 彼女が生み出した技術は、エネルギー問題を解決した。何せ、元が感情だ。人々が生きている限り無くならないし、誰もが持っている。これが普及すれば、貧富の差も、他者から奪う事も無くなる。

 この星には他にもまだ問題は残っているが、少しは平和に──黒騎士が戦わなくても良い世界に、近づいたのでは無いだろうか。

 

 そう、思っていた。装置が暴走するまでは。

 

 

 

 

「なんで、なんでなんでなんでっ!?」

 

 必死に機械を操作しながら、声が溢れる。頭を抱えたくなる。

 こうならないようにしたはずだ。装置にはリミッターをかけたし、関係者には危険性を十分に伝えたはず。なのに、なんで。

 

「装置が、言うこと聞かない! リミッターが外れてる!?」

 

 焦りから、声が抑えられない。涙も滲むし、喉も乾いてきた。

 何より、感情が。自分の感情すら、自覚できるくらいに奪われている。

 

 誰がこんなことをしたのか──咄嗟に犯人探しをしそうになった思考を打ち切る。そんな逃避(こと)より、今は目の前のことだ。

 どうにかしないと。じゃないと、この星が大変なことになる。エネルギーが溢れて大爆発を起こすか、あるいは全ての生命から感情が消えるか。わたし(ファタル)の天才的な頭脳は、そう導き出した。

 

「だめ、それはダメ、絶対に駄目!」

 

 思い浮かべるのは、一人の顔。『アークス』の中でも、本当に一部しか知らないらしい、あの殺風景な顔。腹が立つくらい、綺麗な顔。

 

「あの人が、クロキが必死に守ってきたのに! それをファタルが終わらせるとか、あり得ない!」

 

 自分を鼓舞するように、声を出す。

 ずっと守られてばかりだったのだ。ようやくお返し出来ると思ったのに、そんな結末、ゼッタイに嫌だ。

 

 そう思って手を尽くしても──どうにかなる可能性は、まるで無い。

 

 わかっていた事ではあった。この事態に対処できるのは自分ひとりだけで、でもひとりじゃどうにも出来ないって。

 この変換器を管理していた人たちは、逃げるか気絶しているかのどちらかだ。気絶、と言うよりアレは、感情を失っている、んだと思う。

 

 わたしも、このままだとそうなる。装置からこれだけ近くてもまだわたしが動けているのは、きっと。この感情があるから──あれ?

 

「──『この感情』って、どれ?」

 

 呆然として、思わず手が止まる。

 

 うそ。まって。そんな。

 

「だめ、だめだめ駄目! ねぇ待って! 返して!」

 

 心が、『恐怖』に支配される。怖くて恐ろしくて、震えが止まらない。

 だって、どこにもないのだ。さっきまであったはずの、大切なナニカが。胸に秘めていたはずの想いが。

 

「かえして・・・・・・・・・・・・たすけて、」

 

 誰の名前を呼ぼうとしたのか、それすらもわからなくなった中で。

 

「言われるまでもない」

 

 抑揚のまるで無い、よく見知った声が聞こえた。

 

「──! クロキ!!!」

 

「端的に言え、どこを壊せば良い? 時間が無い」

 

 色んな場所を駆け回ってきたんだろう。はじめて彼の息が上がっているのを見た。

 そんな感慨もすぐに消えてしまったけど。そのぶん思考はクリアで、伝えるべき事はわかっていた。

 

「中心部の、コア付近! そこを切り離して、でもコアを壊したら爆発するから!」

 

「承った」

 

 どこからか取り出した黒い剣を、彼は振るった──んだろう。たぶん。早すぎて見えなかったけど。

 

 断ち切られた装置は、わたしの予想通りに動作を停止し──あれ?

 

「ねぇ、クロキ。どこまで斬ったの?」

 

「・・・・・・? 言われた通りにしたはずだが」

 

 恐る恐る、わたしは計器に目を向ける。

 計器が示すのは、わたしの想定外の挙動をし、次の暴走を始める数値だった。

 

「全然言った通りじゃない! やりすぎ! 加減も出来ないの!?」

 

「これ私が悪いのか・・・・・・?」

 

 もう、さいっあくだ。爆発こそしないで済みそうだけど、メチャメチャな事になる。

 さっきまでよりも強い光を放ちだした装置を前に、わたしはそう悟った。

 

 でも。彼に恨み言を言わなければ気が済まない。わたしは涙でぐちゃぐちゃな顔のまま、思いっきり叫んだ。

 

「もう! クロキのばかーーー!!!」

 

 ああ、でも。真っ白に染まる視界の中で、わたしは気付いた。

 

 最期にわたしは、取り戻せたんだ。失った感情を。クロキが、好きだって気持ちを。

*1
床屋で、とかではなく自分で




ファタル
装置の光に飲み込まれ、行方は不明。
話し方と黒騎士の呼び方と名前に既視感があったとしても、不明ったら不明。
年齢的には、シュヴァルツ/志由と同年代だった。

黒騎士
このあと装置の光に飲まれたが、しっかり生還。
しかし、ファタルを助け出す余力は無かった。
ボスや他の面々と共に、宇宙へと旅立つ。
いつか咄嗟に使った偽名は、無意識に覚えていたから。
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