悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】 作:高々鷹々
もうクライマックスだし出し惜しみはしない、全てはノリと勢いのままに──!
「これで終わりよ!
「ブッハァ!?」
マギアシアンの斬撃を受け、ブダーンは吹き飛ぶ。故郷にて自身の腰痛と戦いながらもできる限りの鍛錬を欠かさなかったブダーンだが、同じ時間を戦いの中に居たマギアカリーナ相手では分が悪いらしい。
マギアイエローが後方から支援・妨害し、マギアシアンが前に出て攻撃を繰り出す。そしてマギアマゼンタが不意を突いて遊撃してくる。黒騎士とボスによる特訓の成果が、遺憾なく発揮されていた。ブダーンは泣いて良い。
「くっ、まだだトン!」
「いいえ、ここまでです!」
イエローによって作られた魔法の鎖が、ブダーンの動きを縛った。そこにすかさず攻撃を仕掛けるのは、マゼンタだ。
「これで!
「ぶたばらっ!?」
炎を纏った蹴りによって、ブダーンはボウリングの如く下っ端たちを吹き飛ばしながら地面を転がる。その姿に、下っ端たちも
戦いに静寂が訪れたのを感じて、イエローはシアンへと話しかけた。
「大丈夫そうですね、マゼンタちゃん」
「そうね。悩み始めると長いけど、決めたら早いのが
ある種の思考停止でもあるが、マギアマゼンタ──
(それに──うじうじ悩むより、黒木さんに直接文句を言った方が早いもん)
桜桃はすっごい悩んだのだ。この三日間も、どうにか戦わない道は無いかと考え続けていた。
しかし、吹っ切れた。一周回って、腹をくくったのだ。そっちがその気なら、受けて立とう、と。
決して、ヤケクソになどなっていない。たぶん。きっと。
「クッ、まだだトン・・・・・・まだ、負けてねぇ!」
「そこまでにしとけ、ブダーン。病み上がりだろうが」
音もなく現れたのは、銀と緑の毛並みを持つ、獣人だ。やや前屈みな姿勢に、鋭い眼光。そして、いくつもの武器。見るからに
「なっ、ぼ、ボス!」
「よくやった、ブダーン。後は私に任せろ、怪我人を連れて下がれ」
「ッ・・・・・・ご武運を祈るトン!」
ブダーンは悔しそうに唇を噛みながら、しかし指示に従い撤収を始める。
それを振り返ることなく、ボスと呼ばれた獣人はマギアカリーナへと視線を向けた。
「貴方が、組織のボス?」
「そうだ。私がこの星への侵略を指示した張本人──なんてな。
内心で狂喜乱舞しつつも、ボロが出ないように頑張ってクールな雰囲気を醸し出すボス。魔法少女たちともっと会話したいのは山々だが、ようやく生で見る事が出来た魔法少女たちを前に、自分を抑えられる気がしない。
一人で使うとは思えない量の武器を手にしたボスを前に、一触即発の状況。だが、そこに待ったをかける者が居た。
『ちょっとまって』
「え、ふぁーたん!?」
「ふぁーたん、だと?」
今のボスは戦闘のために、全身にエネルギーを回している。
『・・・・・・くろきがいないなら、こうつごう。
──マギア・リナッシェレ!』
そう口にすれば、ふぁーたんの姿に変化が起きる。
二頭身の身体は光に包まれ、中学生ほどの体躯に。白くウェーブのかかった長髪と、そこから覗く二つのネコミミ。
胴体には白をベースに、青のリボンが使われたワンピースが現れ、腰からは同じく白い尻尾がしなる。
足元は裸足のまま、しかし爪は青く塗られており、それは手指も同じだ。
そして、眠たげな碧眼の目尻には、星の輝きが彩られ、その変わり身を仕上げる。
『心は示す、
マギアクォーラ。それが、わたし』
それは名乗りであり、自己への確認でもあった。
マギアクォーラ。その姿は淡く輝きながらも半透明であり、武器も手にしていない。衣装もワンピースの他には何もなく、明らかに戦いに向いていない。
誰もが状況について行けない中、口を開いたのはボスだ。
「──
というか、興奮のあまり言葉を抑えきれなかったが、どうにかそれっぽい事を口に出来たのがボスの現状だ。
訳が分からないままに全力で撮影し、録画し、自分の目にも焼き付けた彼女の心内は、いま嵐が吹き荒れている。
(メっっっっっっっっッチャ可愛いんだけど!? オイオイオイオイ、ファンサが過ぎンだろ、マギアカリーナをこの目で見られただけでも感無量なのに、新しい戦士!? ウッソだろ、頑張って仕事を片付けた甲斐があったァ~!
なんか
低い身長に、幼い顔立ち。ワンピース以外に身に纏っていないのも相まって、小動物的な可愛さが溢れている。そいて、それを補強するかのようなネコミミ、及びシッポ。ボスの好みのドストライクだった。
「マギア、クォーラ? ふぁーたん、一体どういう・・・・・・」
『せつめいはあと。
マゼンタ、シアン、イエロー。あなたたちの
そう言って、クォーラは自身の胸元へと両手を持って行く。そこへ全身から光が集まり、三人のステッキへと浮遊していった。
『マギアカリーナは、わたしがまだ
でもこれで、おもいっきりたたかえるようになる』
その輝きは、煌めく水晶となって、三人の手に現れた。それこそが、魔法の制約を外す鍵だ。
「なら、ネーロにも届けないと!」
『・・・・・・
なんなのもう。そんなところまでクロキににないでほしい』
「あの子らしいっちゃらしいわね」
「あ、あはは・・・・・・」
不満げな顔のクォーラに、シアンは呆れ、イエローは苦笑した。
そんな中で、ボスは武器を構える。
「させると思ってンの、か!」
手に取った武器は、エネルギー銃。ただでさえ今までに無いほどに魔法少女を摂取しているのだ、これ以上供給されては戦いどころじゃなくなる。故にボスは、せめてもの休憩を求めて引き金を引いた。
しかし、銃は反応せず沈黙するのみだ。
「ア?」
『わるいけど、じゃまはさせない』
ボスが手にした銃の動力源は、無論エネルギーだ。そしてそれはクォーラ、あるいはふぁーたんにとって因縁深いモノであり、ある程度までならば干渉して動作不良を起こす事が出来る。
「・・・・・・うん。やろう、シアン、イエロー!」
「ええ!」
「はい!」
即ち、猶予はない。今ここで、彼女たちの新たなる力がお披露目される。
(待って待って心の準備が──!)
ボスの心からの悲鳴を余所に、三人はコンパクトへと水晶をセットする。
「「「マギア・リィンカルマ!」」」
魔法少女たちの姿が光に包まれ、更なる変身を遂げる。
マギアマゼンタの全身のリボンが弾け、新たにチェック柄の短いケープが追加される。手首とスカートにも同じ柄がフリルと共に現れ、輝く。
新たに水色と黄色、紫のリボンが全身を彩り、胸元のピンクのリボンにはフリルが光と共に出現した。
最後にツインテールがボリュームを増し、片側に青いセーラーハットが煌めき、彼女はその位置を両手で微調整。
マギアシアンはインナースーツが光に包まれ、よりスタイリッシュな形状へと変化。スカートはオミットされ、代わりに足を覆うのは白いタイツだ。
アームカバーが輝き、ゆるやかな袖へと変わった後に、手首の部分から桃、水、黄、紫の四つのリボンが揺れ出る。足元のサンダルには星と貝殻のアクセントが加わり、煌めいた。
側頭部に青いリボンが現れ、その感覚を確かめるように彼女はそれを締め直した。
マギアイエローがカチューシャを外せば、黄色い髪がたなびき、長さを増す。
エプロンが弾け、腰元に新たなエプロンが現れる。そこから肩にかけるようにフリルが追加され、エプロンの裾にマゼンタ、シアン、イエロー、パープルのリボンが揺れる。
仕上げに伸びた髪が纏まり、青のシニヨンキャップに覆われ、メイドカチューシャを再び乗せる。
そして、三人の目尻にクォーラと同じ青い星の文様が輝き、同時に背中からは白い光の翼が溢れるように出現した。
「心を照らす、炎の
「心が磨く、剣の
「心で包む、慈愛の
「「「我らこそ、マギアカリーナ!」」」
『ぷらすわん、なんてね』
新たな姿となり、ポーズを取った三人と、しれっと便乗したクォーラ。その顔はどこか満足げだ。
「・・・・・・なるほどな。それがお前らの全力か。
なら私も、最初からクライマックスで行ってやろうじゃねぇか!」
そう言い放ったボスは、全身から銀と緑のオーラを放ち、狼の如く遠吠えする。
「ッ、仲間を呼ぶつもり!?」
「いえ、これは・・・・・・」
気付けば、相対していたボスの姿が、三人へと増えていた。それぞれが異なる武器を手に持ち、三人へと向けている。
「仲間を呼ぶ必要なんか無ぇンだ」
「私が増えれば良いだけの話だからな」
「来いよ、マギアカリーナ──その力、見せて貰うぜ」
獰猛な笑みを浮かべたボスたちは、一斉に飛び出す。それを迎え撃つように、翼持つ魔法少女たちも飛翔した。
かくして、マギアカリーナにとって最後の戦いが始まる。
マギアクォーラ
プロットではふぁーたんのままマギアカリーナたちをパワーアップさせていたが、気がついたら誕生した。
戦闘力は無く、あくまでマギアカリーナの力を解放するための姿。元の姿に戻ろうとして、変身という手順を踏んだ結果こうなった。(元の姿? はて)
実体が無いため物理攻撃は無効。魔法なら効くが、そもそも魔法を生み出したのが彼女なので効果は薄い。
ちなみに、白いワンピースはいつの日か誰かと一緒に買い物に出かけた際に購入した物がベースになっている。
モチーフはネコミミ少女。というか、マギアカリーナ全員が(作者の趣味で)コスプレをモチーフに入れている。
簡易詳細
・マギアマゼンタ・シンティア
シンティア=煌めき。モチーフは制服から進化してアイドル。
・マギアシアン・ブリリア
ブリリア=輝き。モチーフはスク水から進化して競泳水着。
・マギアイエロー・ルーチカ
ルーチカ=瞬き。モチーフはメイドから進化してハウスキーパー。
・マギアネーロ・ブライド
ブライド=結婚。一人だけ命名法則が違うのはクォーラによって解放されたのではなく自力で解除したため。
翼の形も一人だけ違う。我が道を行き過ぎ。
ボス
あまりの供給過多に、戦闘は分身に任せて本人は隠れて休んでいる。推しの過剰摂取で大変な事に。
分身はボスの戦闘力をそれぞれ三割ずつ持っている。そのため、本人は現在かなり弱体化している。が、それどころではない。