悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】 作:高々鷹々
フルスロットル!
三人へと分身したボスは、それぞれ異なる武器を手にしていた。武器は分身できないからであり、様々な戦い方が可能な彼女が状況に対応するためでもある。
一番前に出たのは、鎌を手にしたボスだ。獣由来の膂力でもって振るわれた、身の丈以上のサイズを受け止めたのは、両手に水晶の剣を手にしたシアンだ。
しかし、二振りの剣で攻撃を防ぎながらも、その勢いを打ち消す事は出来ずに吹き飛ばされる。
「くっ!? 押し込まれた!」
「そら、次ィ!」
そのまま大鎌を振り回し、ボスは追撃を仕掛ける。目標はマゼンタだ。
しかし、それを黙っているマギアカリーナではない。後方からイエローが魔法で鎖を出現させ、鎌を持つボスの動きを咎めようとする。
「させません!」
「それはこっちのセリフだな!」
反応したのは、鎌を持つボスの後方──エネルギー銃とダガーを手にしたボスだ。紛らわしいので前者をボスA、後者をボスBとしよう。
ボスBはエネルギーの弾丸でイエローの作り出した鎖を的確に撃ち落とし、ボスAの活路を開く。
「そら、食らいな!」
「っ、だったら!」
振るわれた大鎌を、マゼンタは杖に炎を纏わせ打ち合った。更に、
咄嗟に首を動かして避けた鎌の駆り手は、そのまま蹴りでもってカウンターを仕掛けた。
「うあっ!?」
「そらそらそらッ!」
ハイキックで仰け反ったマゼンタへ、ボスAは嗜虐的な笑みと共に緑雷を
「そこ、ねっ!」
しかし、シアンの刃がそれを許さない。手にした剣と、更に魔法によって出現させた刃でもって攻撃を
「チッ、だが──」
「詰めが甘いなァ!」
AとBがいればCもいる。意識外から奇襲してきたボスCが、その両手の
「あぐぅッ!?」
「シアン!」
「シアンちゃん!」
勢いのままに地面へ激突し、衝撃で土埃が舞う。着地したボスCは、ABと共に三人を鋭い眼光で見据える。
「どうした? お前たちの力はそんなもんじゃ無いだろ」
シアンの治癒を行っているイエローを背中に庇いながら、マゼンタはステッキを構える。その顔には、少なくない焦りが生まれていた。
「この人──強い!」
▽△▽△▽△
ボス三人(一人)とマギアカリーナたちの戦いから、少し離れた位置。戦闘に巻き込まれず、しかし観戦が可能な場所に、ボスの本体は腰掛けていた。
「マギアカリーナたち・・・・・・魔法の詠唱をしてねぇな? 毎回ちょっと楽しみだったンだが」
そう
あの分身たちは全てボスが自ら動かしており、視界も共有している。故に、分身に力を分けた事で非力な本体は隠れて身を守るのが有効なのだが──ボスは自身の趣味のために、こうして観戦していた。
『・・・・・・これが、ほんらいの
「──マギアクォーラ」
そうして映画でも見るように
『みがまえないで。わたしにこうげきは
「・・・・・・なるほどな。存在そのものがエネルギーと同質なのか。
だが、どんな手品だ? 私の武器に干渉した事と言い・・・・・・改めてお前、何者だ?」
質問には答えず、クォーラはその眠そうな瞳でボスを一瞥し、戦うマギアカリーナたちへと目線を戻した。
そのつれない猫のような態度にボスは心躍ったが、必死に押し留める。
『それと。まほうの
──こころをかよわせ、
彼女の視線の先で、魔法少女たちに変化が起きる。それは、分身と情報共有しているボスを振り返らせるほどだった。
「はぁぁぁあああ! これで!」
マゼンタの放つ炎が、青く煌めいている。その魔法は分身の持つガントレットを押し返し、エネルギーの弾丸を寄せ付けない。
温度が上がった? 否、魔法の
「──そうか、そういう事か!
感情を重ね合わせる──『共感』! お互いの思いが交差して、出力を何倍にも引き上げているのか!」
思わずボスは立ち上がる。その心境は、まるで自身の考察が的中したオタクの如しだ。
ボスの目は、青く輝くマゼンタのセーラーハット、シアンのリボン、イエローのシニヨンキャップを捉えていた。
『・・・・・・きづかれてない? いがいと、なんとかなるんだ』
テンションの上がった彼女は、隣のクォーラの呟きに気付かない。
ならばいっそ、と白髪の少女はボスから距離を取って、マギアカリーナの援護に専念することにした。
彼女たちの感情に、自分の思いも乗せれば。彼女たちの勝利に貢献するため、マギアクォーラは独り、精神を集中する。
そして、離れた場所で黒騎士と戦うマギアネーロから伝わってくる偏った感情に、大きくため息をついた。
▽▲▽▲▽▲
マギアネーロの動きが変わった。先程まではこちらがやや押していたのだが、いま斬り合った際に、わずかに押し返された。
彼女は自身の力に驚いたように、掌を見つめている。
「これは、皆さんの思い・・・・・・これなら!」
気付けば、彼女のアーマーの発光が、紫から青へと変化している。なるほど、本領発揮といったところか。
「なら、一段階ギアを上げるぞ」
「望むところです!」
宙を蹴って加速し、黒剣を振るう。それをネーロは避けることなく、その黒い翼で受け止めた。
そして、もう片方の翼が変形し、羽が刃の輝きを宿す。
「お姉様へ向けて──
「ッ!」
ネーロから離れ、自立したように飛翔する黒い翼──否、新たな剣。空へと青い軌跡を残しながら放たれたそれを、私は蹴りで弾いた。
「この距離なら!」
私が自立した翼剣へと意識を逸らしたのを突いて、背後へと回ったネーロが大剣を振るう。魔法によって速度の乗ったその攻撃を、私は左腕の鎧で受け、防いだ。
「──! お姉様に、攻撃が当たりました!
あふぅ!?」
「喜びすぎだ」
気を抜いたネーロへとカウンターを放てば、彼我の距離は開かれる。同時に、白黒の翼剣が彼女の元へと舞い戻った。
「・・・・・・手数は三倍、か」
あの翼が変形した、白い刃の剣。動きからして、ネーロの意識に沿って操作されているのだろう。単純に攻撃の数が増えただけでなく、あれを起点に魔法も放てるようだ。厄介だな。
なにより、アレはアレで男のロマンを感じる。いやまぁ、私は正確には男性では無いのだが・・・・・・可憐さだけでなく、メカニカルな格好良さまでも手に入れるとはな。流石は
「私の趣味を、よくわかっているッ!」
「ずっと憧れて、見ていましたから!」
連続して放った斬撃を、魔法も駆使しつつネーロは空を駆けて旋回、回避。こちらへと翼の片方を向け、魔法によって生成したいくつもの羽刃を飛ばしてくる。
それを空間
「フッ」
だが私は、その攻撃を無視し、
「うぐっ! 流石です、お姉様・・・・・・でも!」
感嘆を漏らしながらも、ネーロは止まらない。私の攻撃を受けながらも、雷を纏った蹴りを放ってくる──アングル的に、見えそうだな。
一抹の邪念によってその蹴撃を受けることにした私は、横っ面への痛みと共に兜を吹き飛ばされながらも全力で目を見開いた。
「・・・・・・あの、お姉様?」
「中々やるな、マギアネーロ」
こちらならば対応できたと見抜いているのだろう、素顔となった私に困惑の顔を向けてくるネーロに、私はポーカーフェイスを維持した。
──白か。シュヴァルツ時代のインナーも白だったもんな。うん。
「~~~っ! お姉様のおバカ! へんたい!」
「さて、なんのことだかな」
あくまで事故だと主張しておこう。顔を真っ赤に染めてドレスのスカート部分を引っ張るネーロに可愛らしさを感じながら、私は剣を構えた。
黒騎士
そういえば結局ネーロのスカートの中は見てないな・・・・・・という煩悩にノータイムで屈した。
シリアスな空気の尽くを壊す、それが黒騎士スタイル。
ボス
同じく興奮のあまりクォーラの諸々に気付きそうで気付けなかった。
寝不足で過去を思い出しにくいのも原因かもしれない。
・マギアカリーナ 最終フォーム
詠唱なしでの魔法、出力の向上、飛行が可能になった。
が、真価はそこではなく、仲間との感情を重ね合わせて互いを強化できる。そのため、クォーラは彼女たちに心を重ねる事で援護する役回りに。
なお、ネーロの感情は「お姉様大好き!」一色だったため、クォーラは色々と諦めた。
・マギアネーロ・ブライド
黒翼の剣は、早い話がソードファンネル。白い羽が変形して刃になり、飛翔する。
全身の発光も紫から青になっているので、どっちかって言うとユニコーン。