悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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全力で書いていたら途中で六千文字を超えていたので分割しました。
最終決戦、楽しすぎる・・・・・・


激闘! マギアカリーナvsタマノマカミ①

 ボスは、興奮していた。念願のマギアカリーナたちと戦えている事に、というのもそうだが──彼女たちが、自身と拮抗できる程に強いからだ。

 

 ボスの操る分身、ボスAが大鎌を振るえば、マギアシアンが青い輝きを宿した剣を生み出し、打ち合う。更に彼女は足元からも刃を出現させ、斬撃を伴う蹴りを繰り出す。

 

 ボスBがその援護のために射撃を行えば、マギアイエローが撃ち出した青い魔力弾が相殺、どころかそれ以上に襲いかかってくる。それらをボスBはダガーで斬り払った。

 

 そして、ボスCがガントレットを纏った拳を突き出せば、蒼炎と共にマギアマゼンタがステッキを振るい、衝撃波を伴ってぶつかる。その衝突は拮抗したかのように見えたが、青い炎は徐々に籠手を焼き、更に内包されたエネルギーを削ってくる。

 

 新たな姿となった彼女たちが繰り出す青い魔法の特徴。それは、出力が高いだけでなく──こちらのエネルギーを減らしてくるのだ。否、エネルギ-を()()()()()と言うべきか。武器と魔法をぶつけ合うごとに、こちらのエネルギーが奪われていく。それによりボスは出力を抑えた攻撃を強いられる事になり、拮抗を生み出していた。

 

 前衛としてのシアンは戦闘センスが優れているのか一対一では厄介。そこで二対一の状況を作り出そうとすれば、イエローからの妨害が入り、マゼンタの遊撃が来る。

 イエローは後衛として優秀であり、こちらの妨害というよりは、他の二人のサポートが上手い。ボスのされたくない動きというより、二人のスペックを引き出すために魔法を繰り出してくる。いかにボスと言えど、手をこまねいていた。

 

 更に、マゼンタの繰り出す多彩な魔法もまた厄介だ。戦いの最中、砂の魔法を使ってこちらの武器の性能を落としに来たのには驚かされた。青い粒子のようなものとして無視しようとしたボスだったが、もしそこで魔法で生み出された砂埃であると気付いていなければ、今頃ボスの武器は動かなくなっていただろう。

 

(楽しませてくれるじゃねぇか、マギアカリーナ! この私が、黒騎士以外にここまで追い詰められるなんてなァ!

 分身たちがやられたら負けってコトにするつもりだったが──もっと見ていたい! 最初で最後の戦いなンだ、まだまだ付き合ってもらうぜ!)

 

 ボスの視界の中で、マゼンタが青く染まった水を繰り出す。本来であればただの水だが、魔力を奪う性質を持つそれを、ボスは武器で受ける訳にはいかない。

 ならばと身体で水を受ければ──それを見透かしたように、マゼンタの杖から蒼雷が(ほとばし)った。

 

「これでっ!」

 

「グッ、いっ・・・・・・!?」

 

 水を通して稲妻を受け、ボスAの動きが止まる。その隙を見逃さず、マゼンタは魔力を纏った足で鎌を蹴り飛ばした。

 時を同じくして、シアンの双剣がボスCのガントレットを破壊し、イエローの鎖がボスBの武器を絡め取る。

 

「勝負あったみたいね」

 

 シアンはそう言いながらも、少しも緊張を解いていない。マゼンタとイエローも同じく、未だ臨戦体勢だ。

 

 本体のボスは音もなく跳躍し、獰猛な笑みと共に三人の前へと姿を見せる。

 

「・・・・・・ハハハ! 良いぜ、マギアカリーナ。私の負けだ。

 けどまぁ、負けたからって引き下がる訳には行かねぇ。もう少し、やり合おうか!」

 

「もう一人・・・・・・っ!」

 

『あれが、ボスのほんたい。さっきまでたたかってたのは、ぜんぶ()()()()

 

 いつの間にやら近くに戻ってきていたクォーラの言葉に、三人は警戒を強める。

 

 ボスは三体の分身を自身に取り込むと、黒と緑のオーラを放つ。尋常ではない威圧感に、マギアカリーナたちは身動きすらできない。

 

「コレは、私も理性を失う技でな・・・・・・力尽きるまで止まれねぇンだ

 改めて名乗ろう、我が真名()はタマノマカミ! 星を守りし獣の血を()ぐ者!」

 

 ボスの身体が、肥大化していく。両肩の筋肉が盛り上がり、尻尾がゆらめいて分裂し、毛並みが逆立つ。肋骨が開き、口と鼻が突き出していく。

 ビキビキと音を立てながら、ボスは両腕を地面へと伸ばし──それは、前脚となった。

 

「くっ、この!」

 

 このままでは不味いと悟ったシアンは魔法を繰り出すも、ボスの纏うオーラが氷塊の魔法を弾いた。

 

 彼女の変化は止まらない。服が音と共に弾け、身体は更に巨大になっていく。

 

「そんな・・・・・・」

 

「お、大きい・・・・・・」

 

 マギアカリーナたちの身体を影が覆うほどの巨大さ。人一人は飲み込めるほどの巨大な口に、金色の瞳。銀色の比率の多くなった緑の混じる毛並みに、三本となった尾。

 タマノマカミ──彼ら(アークス)の母星にて、(あが)(まつ)られる血統を持つ彼女は、その身に感情エネルギーとは別口の『力』を宿している。普段は抑えているそれを完全解放したのが、今の姿だった。

 

「・・・・・・■■■■────ッ!!」

 

 大狼が、咆哮する。思わずマギアカリーナたちは耳を押さえ、既に肉体を失っているはずのクォーラですら顔を顰めた。

 

「っ、耳が・・・・・・!」

 

「何なのよ、アレ!」

 

『タマノマカミ・・・・・・こっちでいう、『かみさま』の()をかくせいさせた、ボスのほんとうのすがた・・・・・・。

 さすがにほんものは、はじめてみた、けど』

 

 クォーラは、自身の存在すら揺るがされているのを感じた。アレは、不味い。物理攻撃が効かなくなった今のクォーラであっても、あの姿のボスの攻撃を受ければ、ダメージは確実だろう。

 

「か、神様!? 私たち、今からそんなのと戦わないといけないんですか!?」

 

『あくまで()()()だけど・・・・・・それくらいのあいてだとおもったほうがいい』

 

 イエローの悲鳴に近い声を、クォーラは肯定する他なかった。

 彼女もあくまで噂としてしか知らなかったが──正直、半信半疑だった。しかし、それはいま現実となって目の前に立ち塞がっている。

 

「────!」

 

『くっ、はやい!』

 

 タマノマカミが低く唸ったかと思えば、次の瞬間には彼女たちの眼前へと迫っていた。クォーラがなんとか防御魔法を展開したものの、黒狼はその有り余る膂力で食い破ろうとしている。

 だが、クォーラが作った時間を無駄にするような彼女たちではない。

 

 マゼンタとシアンはクォーラの作った障壁から飛び出し、二方向から魔法を放つ。

 

「シアン! 合わせて!」

 

「わかってるわ!」

 

 単純な攻撃では効果が無いだろうと、マゼンタは生み出した蒼炎をシアンの前へと放つ。シアンは魔法の剣をその炎へと突っ込み、纏わせる事で攻撃の威力を増した。

 

「■■ッ!」

 

「な、うぐっ!? いぃっ・・・・・・!」

 

 しかし、タマノマカミの三つ尾がその攻撃を防ぎ更に反撃を繰り出した。二本の尻尾が鞭のようにしなり、シアンを打った。

 

「シアンちゃん!」

 

『まって、いまはだめ!』

 

「え、っ!?」

 

 思わず飛び出したイエローを、クォーラは止めようとした。しかし、既に遅い。タマノマカミの右前脚が、刺突のごとく繰り出された。

 

「あっ、ぐ・・・・・・!」

 

 どうにか防御魔法は間に合ったものの、それは一瞬で壊されイエローへと銀狼の爪が襲いかかる。

 

「かっ、あぐぅ・・・・・・!?」

 

「イエローっ!」

 

 加えて放たれた追撃は、どうにかマゼンタがイエローを掬い上げた事で回避される。

 

 それを、みすみす見逃してくれるほど、タマノマカミは甘くない。

 

「──ッ!」

 

 黒銀が鋭く吠えれば、その巨体からオーラが噴き出しそれが炎となってマゼンタへと飛来する。

 マゼンタは魔法を放ち、相殺しながら翼を震わせて飛翔し、どうにか避けていく。

 

「くっ、うぅ──!」

 

 だが、予想以上の弾幕に、回避が追いつかない。なにより、背中の翼の制御が難しい。一人で飛ぶならともかく、イエローを抱えての飛行はかなりいっぱいいっぱいだった。

 

「・・・・・・はっ! あれ、マゼンタちゃん!? 私、お姫様だっこされて、え!?」

 

「ごめんきぃちゃん、そんな余裕ないかも! 重たい!」

 

「重たい!? え、どっちの意味ですか!?」

 

 コントのようなやり取りをしながらも、状況を把握したイエローは魔法でバリアを作り出し、タマノマカミの繰り出す緑炎を防いだ。

 ここで冷静に反応できたのは、黒木と真神との特訓の成果だろう。どうにか余裕を取り戻した二人は、追撃を回避しながら地上へと戻る。

 

「────ッ」

 

『させ、ないっ・・・・・・!』

 

 タマノマカミは攻撃の手を緩めず、巨体に見合わぬ高速移動でマゼンタとイエローを狙うが、どうにかクォーラが割り込んで防御した。

 

「ありがとう、クォーラ!」

 

『ながくは、もたない、かも・・・・・・!

 うっぐ、うぅ・・・・・・!』

 

 クォーラはドーム状のバリアを作り出し、巨狼から繰り出される攻撃の数々を防ぐ。だがそれがいつまでも続かない事は明白だった。

 吹き飛ばされてからどうにか戻ってきたシアンもまた、バリアの中にいる。

 

「どうするの? このままじゃジリ貧よ」

 

「でも、それぞれの魔法じゃ効きそうにありませんし、あの動きに付いていけません・・・・・・」

 

 だが、三人で魔法を繰り出すには、時間が足りない。なにより、タマノマカミがその隙を許さないだろう。

 沈んだ空気の中で、俯いていたマゼンタが顔を上げる。

 

「・・・・・・作戦なら、一個だけ思いついた。

 でも、私一人の無茶じゃ足りない・・・・・・だから、お願い!

 シアン、イエロー! 私と一緒に、無茶して!」

 

 それは、マゼンタにとって選びたくない選択だった。無茶をするのは自分だけで良い、誰かのためなら自分の身くらいは惜しまない。

 だからこそ、シアンとイエローは驚いて目を見開き──苦笑と微笑で、頷いた。

 

「えぇ、聞かせて。そもそも、無茶をしないで勝てるような相手じゃないもの」

 

「あの桜桃(ゆすら)ちゃんが、とうとう、自分から頼ってくれるなんて・・・・・・!

 勿論、私も全力で無茶しますよ、桜桃ちゃん!」

 

「無茶に全力なのは、それはそれでどうかしら・・・・・・」

 

 方針は決まった。マゼンタは二人へとタマノマカミ攻略のための作戦を話し、手順を詰めていく。

 

「なるほど、確かに随分な無理を通さないといけないわね・・・・・・」

 

「えっと、ダメ、かな・・・・・・?」

 

「だ、駄目なんかじゃないです! やれますよ! ね、葵ちゃん!」

 

「他に案もないし、元からそのつもりよ

 せっかく桜桃が頼ってくれたんだもの。乗らない訳ないじゃない」

 

 話が纏まったところで、クォーラの張っているバリアにヒビが入る。

 三人は顔を見合わせ、頷いた。この障壁が壊れた時が合図だ。

 

「■■■──!」

 

『もぉ、むり・・・・・・!』

 

 結界が、壊れる。クォーラが地面に倒れ込むその瞬間、マゼンタたちの作戦が開始した。

 

「みんな、行くよ! まずはシアン、お願い!」

 

「えぇ! さぁ、勝負よ!」

 

「クォーラちゃんは下がっていてください! 後は、私たちに任せて欲しいです!」

 

 全力で時間を稼ぎ、息も絶え絶えなクォーラが見たのは、冷や汗を流しながらも気丈に振る舞う、魔法少女たちの背中だった。




ボス/タマノマカミ
覚醒した本気モード。
ボスの一族は神獣の血を引いているが、ボスは更に先祖返りであり、神獣の姿になれるのは一族でも彼女だけ。
高密度のオーラを纏っているため、並大抵の攻撃を通さない。魔法も当然のように弾くイカれたスペック。
巨体ながらも狼さながらの俊敏さと膂力を持ち合わせているため、非常に難敵。
また、理性は吹き飛んでいるが意識はあるのでマギアカリーナとの戦いを全力で楽しんでいる。
尚、黒騎士はこの姿が相手でも引き分けまでは持って行く。

青い魔法
仲間の『共感』によって出力が上がるだけでなく、相手とも『共感』する。つまりは相手の魔力(エネルギー)すらも吸収し、自らの力にして戦うのがこの魔法の真骨頂。
当然ネーロもこの能力を獲得しているので、舞台裏では「お姉様のエネルギーが、私の中に!?」とかやっている。
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