悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】 作:高々鷹々
巨大な銀狼が唸りを上げる、障壁へと攻撃を加えていく。黒緑の炎による全方位からの炎熱に、真正面からの食らいつき、引っ掻き。それらの全てを抑えきるのは、いくら魔法を生み出した存在であるマギアクォーラと言えど難しかった。
「■■■──!」
『もぉ、むり・・・・・・!』
結界が、壊れる。クォーラが地面に倒れ込むその瞬間、シアンはタマノマカミの目の前へと飛び出した。
「そら、次は私が相手よ!」
「──ッ!」
タマノマカミの鼻先を踏みつけ、マギアシアンは上空へと駆けるように飛んだ。不快そうに鼻を鳴らした巨狼は、緑の炎を纏ってそちらへと襲いかかる。
「っ、あっぶない、わねぇ!
それだけ身体が大きいんだから、少しは遅くありなさいよ!」
悪態をつきつつ、シアンはタマノマカミの猛攻を掻い潜る。攻撃の事は考えず、ひたすら注意を引き、回避に徹していた。
そして、その隙にマゼンタとイエローがステッキを交差し、魔力を交わらせる。
「光よ、心を照らせ!」
「炎よ、光と共に!」
言葉と共に、魔力は満ちた。二人はタマノマカミへと飛翔し、不意打ち気味に合体魔法を叩き込む。
「「フィアマ・デ・パルディーソ!!」」
「■■■ァ────!?」
それは、極大の炎。だがその本質は攻撃ではなく、浄化だ。青の混じった白い炎は、タマノマカミを覆うオーラを焼き尽くし、無力化していく。
「やった、上手く行った!」
「浮かれるにはまだ早いわ! 次!」
「行きます!」
黒いオーラが薄れ、元の銀色の毛並みがよく見えるようになったタマノマカミの前へと、マギアイエローは躍り出た。
「犬の相手なら、慣れてますから!」
既に亡くなっているが、
「──■■■ッ!!」
「うきゃっ!? く、なんのこれしき! です!」
鎖はすぐさま砕かれるも、イエローは焦らず鏡の魔法を使って自身の姿を誤認させ、糸の魔法なども多用しつつ大狼をその場へと縫い付ける。
「イエロー、さすが! 私たちも行くよ、シアン!」
「えぇ!」
繋がれた時間を無駄にしないために、マゼンタとシアンは杖を重ねた。
「刃よ、響き合え!」
「炎は、刃と共に!」
シアンの作り出した剣に、マゼンタの炎が刃となって合わさる。
「「ラーマ・ディ・フィアマ!!」」
「■■■、■■■──ッ!!」
だが、すんでの所で身を
「そんな、あそこから避けるなんて!」
「まだだよ! シアン、イエロー、お願いね!」
だが、傷は与えられた。マギアマゼンタはタマノマカミへと真っ向から突っ込み、ぶつかり合った。
そしていくつもの魔法を連続して行使し、その巨体から意識を引き続ける。
「全く、連続で合体魔法を使った後なのに、あんなに魔法を使って・・・・・・。
結局は自分が一番無茶をするのね」
「マゼンタちゃんらしいです。でも、私たちも負けていられません!」
最初の合体魔法でタマノマカミのオーラを打ち払い、次の合体魔法で急所を作り出した。ここまでは順調だ。
だが、早くも黒いオーラが復活し始めている。この好機を逃せば、次は無いだろう。
失敗は許されない。けれどシアンとイエローは気負う事無く、ステッキを打ち合わせた。
「光よ、影を照らせ!」
「剣は、真を写す!」
編み上げられていくのは、新たな魔法。これまでの合体魔法とは異なる、今この場のためだけの魔法。
「「インキューダー・デ・オンブラ!!」」
二人から放たれたのは、まばゆい光源だ。それはタマノマカミの巨体を照らし出し、その眼を眩ませる。
その色濃くなった影に、いくつもの剣が突き刺さった。魔法の剣は針のように影を縫い止め、動きを封じた。
「────■■■ッ!?」
身動きが取れなくなり、足掻こうとするタマノマカミ。だが、この魔法はこの瞬間のための特注品だ、彼女の力を持ってしても打ち破るのは容易ではない。
それを確認した二人は、最後の仕上げのために、マギアマゼンタへと声を飛ばす。
「マゼンタ!」
「マゼンタちゃん!」
「はぁ、はぁ──みんな、行くよ!」
肩で息をしながらも、マゼンタは止まらない。集合した三人は、全員の力を重ね合わせる。
「剣よ、ここに集え!」
「今一度、その刃を研ぎ澄まし!」
「我らの力を・・・・・・ここに束ねん!」
既に彼女たちは詠唱せずとも合体魔法を扱える。だが三人は息を合わせるため、敢えて口上を述べた。
生み出すのは、光を宿した極大の刃。今と同じように必死な状況の中で編み出した、最大の攻撃力を持つ魔法。
「「「トリニタ・ターリオ!!!」」」
翼を振るわせ、前に出る。三人の動きがシンクロし、巨大剣が回転を伴って振り下ろされる。
それは、タマノマカミに先程出来たばかりの傷を、的確に撃ち抜いていた。
「■■■!? ■、■■■■────ッ!!」
響くのは、つんざくような、悲鳴じみた咆哮。砂埃を散らしながら、タマノマカミは地面へと倒れ伏した。
確かな手応えと共に、魔法少女たちは地上へと降りる。
そのまま倒れるように地面へと手を突いたのは、マギアマゼンタだ。魔法の連続使用で、体力に限界が来ていた。更に、魔力を過剰に引き出そうとした反動で、気分が絶望的に悪い。
「はぁ、はぁ──えほ、えぶっ!」
「ま、マゼンタちゃん!? 吐かないでくださいね!?」
「全く。締まらないわね」
必死に背中をさするイエローと、呆れた様子で腰に手をやるシアン。だがその頬は、少しばかり緩んでいた。
『みんな・・・・・・おつかれさま』
「あら、ふぁーたん──いえ、今はクォーラ、だったかしら。良い名前ね」
『でしょ?』
むふー、とどこか自慢げなクォーラ。表情は薄いのに何故かわかりやすいこの感じは、どこかの誰かを想起させる。
「あはは・・・・・・思ったより、子供だったんですね。ふぁーたんって」
『しつれいな。わたしは
「でも志由から聞いた限りだと、私たちとは寿命の感覚も違うんでしょう?
ならその『年上』っていうのも当てにならないわよ」
『・・・・・・しゆ、よけいなことしかしない』
一転して不満げなクォーラに、三人は笑った。強敵を打ち倒した、達成感がそこにはあった。
だが、それは直ぐに打ち切られる事になる。
「──え、」
『──っ!? う、そ・・・・・・』
ゆらり、と。タマノマカミが、起き上がったのだ。その身体には、確かに小さくない傷があったが──だが、確かな戦意を宿して、銀狼は立ち上がった。
「・・・・・・■■■■■ゥ────!!」
咆哮する。雄叫びを上げる。彼女を突き動かすのは組織のボスとしてのプライドか、本能か、はたまたそれ以外か。*1
神獣の血を引くモノ、タマノマカミは再び立った。
マギアカリーナたちもまた、満身創痍な身体に鞭打って構える。だが、誰もが限界が近い。
その中で、特に消耗していたマゼンタは膝を突く。もう、立っているのもやっとなのだ。
「ぐ、う・・・・・・! このままじゃ・・・・・・」
「あーもう、呼吸が落ち着かない・・・・・・不味いわね」
「今の状態で回復魔法を使っても、焼け石に水ですね・・・・・・」
残りの魔力も、心許ない。撃てて魔法一回分だろうか。
『わたしはまだたたかえる、でも・・・・・・』
クォーラの能力は、どこまでも補助のためのもので戦闘には向いていない。相手は手負いとは言え組織のボスだ。それを一人で相手取るには、力不足だった。
「・・・・・・だい、じょうぶ。私も、戦えるから・・・・・・!」
マギアマゼンタが、立ち上がる。その瞳は、まだ諦めていない。
「そう言うと思ったわ。こうなったら、やることは一つね」
マギアシアンが、隣に並んだ。その精神は、未だに屈していない。
「全員で、全力の魔法を打つ、ですよね。私だって、まだ無茶できます」
マギアイエローが、肩を支えた。その献身は、まるで潰えていない。
『みんな・・・・・・わかった。たりない
マギアクォーラは、前に出た。その心は、既に通じ合っていた。
四人は、タマノマカミを見据える。正真正銘、これが最後の魔法だ。
「────■■■っ!」
大狼は、動かない。傷が痛むのか、マギアカリーナたちを正面から打ち破るためか。*2
マゼンタ、シアン、イエローがステッキを合わせ、そこにクォーラが手を重ねた。
口にするのは、彼女たちの全てを乗せた合体魔法。
「光を
「奇跡の
「我らの心を、ここに重ね合わせん!」
詠唱と共に、三つの魔方陣が重なり、光が集まっていく。それは小さいながらも、確かな輝きを持ってそこに存在していた。
『全てを、取り戻すために!』
「この星の全てを、守るために!」
重なった魔方陣を補強するように、更に青い魔方陣が周囲へと展開され、光が強まった。
ステッキを握る手に、自然と力が入る。
「「「『セレスティア・セレーネ!!!」」」』
放たれるは、極大の光線。曇天を晴らす陽光のような、それでいて懐かしさを感じるような、強くも温かい光。
それは、銀の巨狼を包み込み──タマノマカミの視界は、白く染まった。
「──■■、■■■」
溢れる魔力が、周囲に渦を描いて輝く。そして、傷付いた街を癒やしていく。
それだけではない。魔法を撃ったマギアカリーナたちの傷すらも、回復していった。
「これって・・・・・・」
『・・・・・・きせき。ひとのかんじょうがうみだす、まほうのちから』
クォーラは、先程までよりも
『みんながおこした、きせきだよ』
そう言って、クォーラは微笑んだ。それを聞いて、少女たちは勝ち鬨を上げるよりも先に、その場に脱力するのだった。
ボス/タマノマカミ
既存の合体魔法全部どころか新技・強化技まで受けられたので大満足して敗北した。(※生きてます)
ちなみに、自身の命を引き換えにする第三形態もあったりするが──当然こんな状況では使わない。魔法少女に負けて死ぬなら悔いは無いが、命を彼女たちに背負わせたくないため。
マギアクォーラ
しれっと自身の存在を削って最後の魔法の後押し&皆の回復をしていた。
ただ、それでもボスを撃破できたのは奇跡に近い。