悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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ちょっと期間が空いてしまった・・・すみません。


心を託す、光の翼

 マギアネーロが黒騎士を撃破(?)したのとほぼ同時に、他のマギアカリーナたちも彼女に合流した。

 

「ネーロ、無事!?」

 

「はい、なんとか・・・・・・」

 

「貴方、また凄い格好してるわね・・・・・・」

 

「お姉様と全力で戦った結果です、好きでこうなった訳ではありません!」

 

 ネーロの装備は、どれもがボロボロであった。シュヴァルツとしてのアーマーも既に自己修復こそ始まっているものの半壊しており、彼女の衣装そのものも破れなどによってインナーがかなり見えている。

 黒翼も片方は黒騎士の攻撃で折れており、飛行は可能でも戦闘は難しいだろう。

 

『なおしてあげる。てをだして、ネーロ』

 

「貴方は・・・・・・まさか、ファ──」

 

『しー。くわしくはあとで。みんなも、ちょっとついてきて』

 

 何かに感づいた様子のネーロだったが、指を口元へ持って行ったクォーラによって遮られた。

 そのクォーラは、マゼンタたちへも視線を送り、ネーロの治療をしながらも歩き出す。

 

「すみません。私も治療できれば良かったんですけど、ふぁーたん──クォーラが、魔力を温存してって」

 

『みんなには、やってほしいことがある。

 ・・・・・・こっち』

 

「ここは・・・・・・」

 

 向かう先は、悪の組織の──黒騎士たちの基地である、宇宙船だ。どうにも静かなのは、自分たちが勝利したためか、あるいは罠か。

 

「・・・・・・」

 

『みがまえなくてだいじょうぶ。いま、まほうですがたを()()()()してる』

 

「えっそんな魔法があるんですか!? 後で教えて──あ(いた)ぁ!? ちょ、傷口に塩の魔法を当てるのは酷くないですか!?」

 

「どうして貴方はいつもいつも空気を壊すのかしら・・・・・・」

 

「シアンちゃん、流石に魔法まで使うのはやりすぎですよ」

 

 ネーロに呆れた眼を向けるシアンと、そのシアンに半眼を向けるイエロー。

 そんなやり取りをしながら、クォーラの先導に従って進んでいけば──一つの、大きな部屋に辿り着いた。

 

 無人のそこにあったのは、巨大な円形の機械。洞窟の入り口のような印象を覚えるソレは、沈黙しながらも存在感を(はな)っていた。

 

「これって・・・・・・」

 

『ぼせいまでつながる、ワープゲート。・・・・・・みんなには、わたしたちのほしにいってきてほしい。

 いまなら。いまのマギアカリーナなら、ぼせいのひとたちのかんじょうを、とりもどせる』

 

 クォーラの言葉に、四人は息を呑んだ。

 しかし、彼女の顔は晴れない。後ろめたさをたたえている。

 

『・・・・・・じつは、ぼせいからかんじょうがなくなったのは、わたしのせい。だから、ほんとうはわたしがじぶんでなんとかしないといけない。だから──』

 

「ふぁーたん」

 

 今までそれを黙っていた後ろめたさもあるのだろう。暗い雰囲気の彼女に、マゼンタは明るく声をかける。

 

「ふぁーたんは、それを何とかしたいから、私たちに力をくれたんでしょ?

 それにね、私たちも、黒木さんたちの星を、助けたい。困っている人が居るのに、放っておけないよ」

 

「安心しなさい。元からそのつもりよ。事情を聞いた時からね」

 

「はい。私たちの気持ちは、一つです」

 

「・・・・・・皆さん。ありがとうございます」

 

 思わずといった様子で、ネーロは感謝の言葉を口にした。

 

 そんな四人へ、しかしクォーラは伏し目がちに言葉を紡ぐ。

 

『でも、これはかなり()()()。もしわたしのけいさんがまちがってたら、しっぱいしたら、みんながどうなるか──』

 

 微笑んだマゼンタは、不安そうな表情のクォーラを抱き締めた。今や肉体を失った彼女だが──魔法を身に纏った彼女たちならば、今のクォーラとも触れあえるのだ。

 

『ゆすら・・・・・・』

 

「心配してくれてありがとう、ふぁーたん。

 でも、大丈夫。きっと、みんなを助けてみせるから!」

 

 これから困難に挑むというのに、それを感じさせない朗らかさで、彼女は笑った。我慢できない様子で、イエローも二人へと飛びつく。

 

「もう、桜桃ちゃんはすぐ安請け合いするんですから・・・・・・でも、そういう桜桃ちゃんが好きで、私も手伝いたいんです」

 

「あら、()けるわね。じゃあ私も。

 悪の組織だって倒せたんだもの。よその星の危機だって、打ち倒してみせるわ」

 

 それを見かねて、シアンもまたイエローとは反対側から腕を回して、呆れたように苦笑した。

 

『きみ、あおい・・・・・・』

 

 そして、完全に乗り遅れたネーロが、慌てたようにふためく。そして逡巡したのちに、マゼンタの後ろへと控えめに寄り添った。

 

「も、もうスペースが無いのですが・・・・・・!?

 え、えっと、そう! 私が魔法少女になったのも、元よりそのためですから。

 やることは変わりません。これまでも、これからも」

 

『しゆ。・・・・・・あんまり、かっこうついてない』

 

「ひ、ひどくありませんか!?」

 

『でも、ありがとう・・・・・・げんきでた』

 

 ショックを受けたネーロだったが、それでも笑顔になったクォーラに、安堵の息を()いた。

 そうして、暫く五人は互いの体温を──そして、感情を確かめ合い、心を決める。

 

『それじゃ、ゲートをひらく。

 わたしは、()()のためにむこうにはいけない。だから──みんなに、まかせる』

 

「うん。任せて!」

 

 各々が返事をして、顔を見合わせ頷いた。クォーラが装置へと手を(かざ)せば、光と共に起動する。

 

「それじゃあ、行ってきます!」

 

『ふふ。──いってらっしゃい』

 

 照れたような笑みを残して、マゼンタはゲートへと飛び込んだ。続いて、小さく手を振りながらイエローが、苦笑したシアンが吸い込まれていく。

 最後に、胸元に手を当て、気を引き締め直したネーロが、門をくぐり抜けた。

 

 

 

 

 微笑んでその背中を見送って──わたしは、顔を真剣なものに戻した。

 

(このゲートは、長距離を繋げているのもあって、エネルギーをかなり消費する。

 それに、一度()じてしまったら、また繋げるのは困難。だから──)

 

 半透明の腕が、(かげ)る。わたしは、足りないエネルギーを自分自身で補おうとしていた。

 マギアカリーナとボス──タマノマカミとの戦いでも、そうしたように。

 

 元より、そのつもりだった。感情エネルギーを生み出してしまった事への償いと、後始末。それさえ出来れば、わたしという存在は消えても構わない。

 

(本当は、もっとちゃんとお別れしたかったけど──決心が、揺らぎそうだったから)

 

 わたしは──ファタルは、既に死んでいる。肉体は母星での装置の暴走によって消滅し、残った精神のみがエネルギーと結びついた存在だ。今更、何も怖くない。

 

 ──嘘だ。けっこう、こわい。だけど、恐怖に支配される事は無かった。

 

(ああ、最期に、話しておけば良かったな・・・・・・。

 でも、覚えてなかったら。気付いてくれなかったら。そっちの方が、ずっと怖いし、嫌だ)

 

 纏まらない考えは、ままならないままに流れていく。

 でも、今はそれで良かった。今度は、手放さずに居られるから。胸に秘めている想いは、ここにある。

 

 だから、あるのはちょっとした未練だけだ。

 

『・・・・・・また、あいたいな』

 

 

 

「言われるまでもない」

 

 抑揚のまるで無い、よく見知った声が聞こえた。

 

『──! ・・・・・・・・・・・・クロ、キ』

 

「久しぶりだな、ファタル・・・・・・いや、ずっと近くに居たのに、そう言うのも変か」

 

 微笑む彼は、いつになくボロボロだ。彼はゲートを動かす装置へと、わたしの手と重なるように腕を伸ばした。

 

「今度は間に合ったようで何よりだ。私としても、二度も君を失いたくないからな」

 

『──・・・・・・あ、』

 

 視界が、ぼやけて(にじ)む。いや、あり得ない。もう肉体を失ったわたしは、涙を流せない。

 でも、溢れた(かんじょう)は雫になって、頬を伝った。

 

『・・・・・・・・・・・・もう。クロキの、ばか』

 

 なんとか口に出来たのは、それだけだった。零れる涙を、堪えきれなくて。彼を直視できず、俯いてしまう。

 

 ああ、でも。ぼやけた視界の中で、わたしは気付いた。

 

 やっぱりわたしは、クロキの事が──好きだ。

 

 

 

 

 隣の少女と共にワープゲートの維持を行いながら、私は内心で驚いていた。

 

 まさか、ふぁーたんがファタルだったとは──全く気付かなかった。よくよく考えてみれば、妙に距離感が近かったり、不思議と波長も合っていたのはそれが理由か。

 

「水くさいじゃないか。早く言ってくれていたら、私たちは戦わない道もあったかもしれない」

 

『クロキがそれいう?』

 

 ご尤もだ。反論も出来なくて私は黙る他なくなった。

 

『・・・・・・それに、じぶんのことをおもいだせたのは()()()()

 ゆすらたちと()()()()あったときは、ただなんとかしなくちゃ、っておもってた』

 

「そうか」

 

 恐らく、感情エネルギーの奔流に飲み込まれ、肉体だけでなく記憶も失ったのだろう。多くの人間の感情を一度に受けて、自意識を保てる方が稀だ。*1

 

『だから、みんなに()()()()()をたのんだら、きえるつもりだった。でも──』

 

 『消えるつもり』とは、失踪という意味ではなく、文字通りの事だろう。今も彼女の身体は半透明になっていて、段々と薄れていっているようにも見える。

 

『クロキのかおをみたら、きえたくなくなっちゃった』

 

 どこか清々しい笑顔で、クォーラ(ファタル)は言った。

 

「・・・・・・どういう、意味だ?」

 

『・・・・・・わからずや。にぶちん。ぼくねんじん。

 こっちのことばは()()、クロキをいっぱい()()()いえる』

 

 一転して無表情になった彼女は、こちらへの罵倒を並べてくる。何故かそこまで言われなければならないのか、どうにも疑問だが。

 

「だが君が消えたくなくなったなら、私も嬉しい。最悪の場合、私の持つエネルギーを無理矢理(あた)える事までも考えていたからな」

 

『・・・・・・あぶない。きっと()()ならよろこんでた』*2

 

 何やら気を引き締め直したらしいクォーラと共に、私はワープゲートの奥へと目をやった。

 

 その先では──輝きを放つ四人の魔法少女たちが、その翼を広げながら母星の空を飛んでいる。

 

「あれは──」

 

 その光景に、目を奪われる。その輝きから、目が離せなくなる。

 美しく白い翼を、どこまでも広げながら飛んでいくマギアカリーナたち。その姿は幻想的で、まるで天使のようだった。

 

『あれが、()()()のまほう。ぼせいにあふれかえったエネルギーを()()()()して、みんなのもとに()()()まほう。

 ──わたしひとりじゃ、できなかった』

 

 翼から(こぼ)れた光の(しずく)が、母星を癒やしていく。濁っていた空の色が澄み渡り、高濃度のエネルギーで淀んでいた景色は清らかに。そうして、広がり続ける光の翼が、全てを包んでいく。

 

「そうかもしれないな。桜桃(ゆすら)(あおい)黄美(きみ)志由(しゆ)。そしてファタル。君たちが成し遂げてくれた。

 先んじて、私から感謝を伝えておこう。──ありがとう。心から、感謝している」

 

 私が畏まってそう言えば、ファタルは驚いた顔をした後、笑った。

 

『クロキも、だよ。

 そもそも、あのときクロキがきてくれなかったら、さいしょからダメだった。

 クロキが()()でいてくれたから、あのこたちも()()()()()できた。

 なにより、こうして()()たすけてくれた』

 

 視界の中が、光に染まっていく。(まぶ)しさに目がくらみそうになりながら、しかしお互いに目を逸らさない。

 

『だから、ありがとう。クロキ』

 

 そうして、世界は光に包まれた。

*1
なおコイツは普通に生還した模様

*2
ちょっと消えるフリがしたくなった




を託(オタク)す、光の翼──なんでもありません。


次回、最終回。

また、アンケートを設置しました(できてるかな?)ので、よければ回答お願いします。

各キャラクターたちの設定とかっていります?

  • いる
  • いらない
  • それより番外編を書け
  • ところで白騎士は?
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