悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】 作:高々鷹々
私はオタクとして生まれ、オタクとして生き、オタクであり続ける者──黒騎士。*1
魔法少女『マギアカリーナ』の敵であった私たち悪の組織『アークス』は、彼女たちに敗北した。そして、その彼女たちによって母星は救われ、人々に感情が戻った。
今は母星に戻り、ボスが指揮を執って復興活動を行っている。感情を失っていたセニオやレインも復帰し、本来の役割を果たしているらしい。
志由──シュヴィーは地球に残るそうだ。まだやり残したこともあるし、せっかくの友人と離れたくない、とのこと。また、私たち組織が傷つけてしまった分、地球の事を学んで役立ちたいのだそうだ。
ふぁーたん──ファタルもまた、地球に残るらしい。いつまた私たちのような脅威が現れるかわからないから、とは言っていたが、自分が故郷を滅ぼしかけた負い目もあるのだろう。
二人とも、何か私に言いたそうにしていたが──まぁ、気にしなくて良いだろう。何かあるなら、いずれ言ってくれるだろうし。
彼女たちには、何かアークスから賠償を支払うつもりだったのだが、断られてしまった。金銭を貰っても困ると言うし、我々のテクノロジーはオーバースペック過ぎて地球人には少々刺激が強すぎる。
仕方なく、次の負責として携帯端末──あちらのスマホに寄せたモノを贈ることにした。ボスやファタルとも相談した結果だ。あくまで我々の個人的な謝罪とお礼として、なので母星からすれば型落ち品にすらならない代物だ。
まぁ、地球人が扱える範囲での機能の限りを詰め込んだりはしたが。
無制限の通信機能に緊急時の防御機能、空間に映像を照射する機能やら毒などを検知する機能──果てには、限定的な変身機能も付けさせてもらった。強化形態にはなれないし使える魔法も制限されるが、私が一から再現しただけあって戦闘力は問題ない。非常時には役立ってくれるだろう。*3
いつか来るであろう『オールスターズ』展開に思いを馳せていると、私の端末に通知が来る。
「・・・・・・そろそろ時間か」
では、私もそろそろ行くとしよう。向かう先は、
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『輝く四つ葉! フォルトゥナフィリオ!』
『煌めく翼! フォルトゥナアズール!』
『『希望を繋ぎ、幸運を運ぶ!』』
『『私たちは、フォルタ・フォルトゥナ!!』』
モニターの先で、二人の魔法少女がポーズを取る。私はそれを眺めながら、腕組みして頷いていた。
やはり、魔法少女は良い。地球に危機が訪れる度に、こうして現れてくれ、私を魅了してくれる。身バレ防止のために形を変えたこの鎧が無ければ、私のニヤケ面が晒されていた事だろう。
私は彼女たちの輝きを目に焼き付けるべく、兜の下で目をガン開いた。
フォルトゥナフィリオは白の小袖と緑の袴、という巫女服をベースにした衣装を身に纏っており、長く揺れる垂れ髪も相まって可愛らしい。
また、各所にフリルやリボンが加えられている他、胸元のリボンは四つ葉のクローバーを模っている。
フォルトゥナアズールは黒と青の修道服をベースにした衣装で、ベールや垂れ布が青い羽のような形になっており、こちらは綺麗と言うべきかな。
全体的にレースを重ねたようなフォルムで、それらはまるで鳥の羽のようにも見える。
フィリオが動く度に木の葉のような緑の光が、アズールが舞う毎に羽のような青い光が散り、見ていて非常に美しいし飽きない。
そう、マギアカリーナたちとの戦いが終わろうとも、私のやることは変わらない!
全力で魔法少女のオタクを遂行するのみだ!
『ガァッガッガ! 今日のところはこれで引いてやる! だが貴様らのことは覚えたぞ、フォルタ・フォルトゥナ!』
画面の中では、カラスを思わせる種族の男が撤退していく。これが華々しい、彼女たち──フォルタ・フォルトゥナの初めての戦いか。後でデータを貰って編集しよう、ボスにも見せたい。*4
映像が終われば、会議はすぐに声で溢れることになった。やれ排除しろだの、様子を見るべきだの、無視をしろだの。私の目的は彼女たちの映像を見ることだけだったので、気配を消して会議室を出て行く。
扉から出れば、同じく会議から抜け出したらしい少女と目が合った。
黒い長髪の彼女は、やや鋭い目付きをこちらへと向ける。その背面には、黒い二本の尻尾があった。
「アナタは・・・・・・確か、黒騎士」
「君は、シャノワールだったか」
小さく頷いた彼女は、この組織の戦闘員の一人だ。地位としては、下っ端よりもやや高いくらいだろうか。
そんなシャノワールは、私に疑問を抱いた瞳を向けてくる。
「アナタは、自ら志願してこの組織に入ったと聞く。それは、どうして?」
この悪の組織『デスグラシア』は、地球から『幸福』を奪おうとしている。彼らの思想は『この世界の幸運の上限値は決まっている』というもので、自分たちの星に起きた危機から脱するため、地球に『不幸』を与えることで間接的に自分たちが『幸福』を得ようとしている、らしい。
・・・・・・どこかで聞いた話だな? いやしかし、傍迷惑な連中も居たものだ。
「私が戦う理由はただ一つ。私自身のためだ」
「っ、待って」
そう一方的に告げて立ち去る。悪いが、今日は急いで帰らなければならないのだ。
私の目からして、彼女はほぼ確実に追加戦士枠──だが、私は彼女にかまけては居られない。
何故なら今の私には──帰りを待つ存在が居るのだから。
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「・・・・・・ただいま」
「あ、お帰りなさい、お姉様!」
「クロキ、遅い。二分遅刻」
自宅の扉を開ければ、学生服に身を包んだ志由が出迎えてくれた。奥では、白いワンピース姿のファタルがテーブルに着いて待っている。
「悪かった。少し、寄り道をしていた」
上着を手渡せば、受け取った志由がかけてくれる。
今日は、二人から大事な話があるとの事で、急いで帰ってきたのだ。これでも新しい悪の組織の基地から五分で戻ってきたのだから、許して欲しい。
「謝らないでください、お姉様。
「そうやって甘やかすからクロキの悪癖が治らない。
いっつも
笑顔のままで睨み合う志由とファタル。どうにも二人は犬猿の仲らしく、何かにつけて反発し合っている。困ったモノだ。
「志由は良いの? クロキが大事な約束に遅れたりしても。ファタルはそういうの、しっかりして欲しい」
「もしお姉様が約束に遅れたとしたら理由があるはずですから。それに、そのぶん甘やかしてもらいますので!」
「・・・・・・なんの話かはわからないが。
二人とも、もう少し仲良くできないか?」
私が呆れと共にそう言えば、二人は途端に口を閉じる。そして、顔を見合わせた。
「・・・・・・お先にどうぞ?」
「・・・・・・志由こそ、先に言えば良い」
お前たち、本当は仲良いだろ。
アイコンタクトで会話したらしい二人は、改めてこちらに向き直った。
「お姉様、本気でわかりませんか? どうして、
「もし本気なら、一回クロキの頭を見てあげるけど・・・・・・どう? わからない?」
どことなく真剣な瞳で、真っ直ぐに私に問いかけてくる二人。その意図を探るべく、私もまた見つめ返した。
「・・・・・・全くわからんな。二人が私に対して強い好意の感情を持っているのはわかるが、それ以外が読み取れない」
彼女たちの眼から推し量れたのは、それだけだ。しかし、それが争う理由になるとも思えないしな。*5
などと頭を捻っていると、二人の顔が真っ赤になっているのに気付く。どちらも耳まで赤くなっているし、湯気でも幻視しそうだ。
「? どうかしたか?」
「「・・・・・・
悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます 【完】
【あとがき】
今作はこれにて完結です。これまでご愛読ありがとうございました。と言っても番外編とかやりますが。
途中、諸般の事情で半年ほど期間を空けてしまいましたが、なんとか完結できて良かったです。
自分がこういった作品を読みたい! という思いからの執筆でしたので、多くの方にご覧頂けて嬉しい限りです。どうやら何度かランキングに乗っていたみたいで、有り難いです。物書きとして未熟な自覚があったので、正直ここまでの方に見て貰えるとは思っていませんでした。
改めて、本当にありがとうございました。
また、自分への戒めとして番外編の予定を書いておきます。
・黒騎士と志由、水着を買いに行く
・最終決戦鑑賞会
・志由とファタルの恋愛戦争
・ボス、散歩に出る
取り敢えず今はキャラ設定を執筆中です。アンケート結果を見た感じ、全部やる上で票数が多い順に投稿していこうと思います。
各キャラクターたちの設定とかっていります?
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いる
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いらない
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それより番外編を書け
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ところで白騎士は?