悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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誤字報告、ありがとうございます。けっこう見直してるんですけどどうにも抜けがあって・・・・・・とても助かります。


そのボス、オタクにつき

 私は、悪の組織の幹部である──が、幹部だからと言って完璧超人という訳ではない。我々もミスすることはあるし、上司に怒られることだってある。まぁ、我々幹部の上司ともなると、組織のボスくらいしか居ないのだが。

 

 何故こんな言い訳をしているのか。先日、ブダーンの任務に同行しレポートまで書いた私を、ボスが呼び出したのだ。焦りもする。

 

 もしや、今回のレポートに何か不備があったのだろうか。それとも、魔法少女たちと交戦しなかったことが問題だったのだろうか。あるいは、普段の単独行動についてか。まさかとは思うが、休暇中に見た魔法少女アニメを「ボスも見た方が良いですよ」と勧めたことだろうか。心当たりが多すぎて困るな。

 

 私はそこはかとない緊張感と共にボスの部屋へと向かい、扉をノックする。

 

『おう。入れ』

 

「・・・・・・失礼する」

 

 許可を得てから入室すると、ボスは先日の魔法少女たちとブダーンとの戦いの映像を見ているところだった。良いな、私も後でデータを貰おう。

 それはさて置き。私が入室すると、ボスはリモコンで映像を停止させ、私へとその鋭い視線を向ける。

 

「さて、色々と話したいことはあるが──取り敢えず、その暑苦しい鎧を脱げ。見てるだけでうんざりしてくるんだよ。

 私も今はラフな格好だしな」

 

「承知した」

 

 ボスは、私の素顔を知る数少ない存在である。ので、躊躇無く鎧を脱いだ。すると、鎧は変形・縮小し、手の平サイズの箱に姿を変える。いつもこの機能は便利だ。

 

 ボスがその()()でソファを指したので、そこに腰掛ける。すると、ボスは私の対面へと座った。

 

「それで、要件は?」

 

 そう言って、私は自分よりも幾分か低い位置にあるボスの目を見る。ボスは「まぁ焦るな」と、諭すように一度、尻尾を振った。

 

 そう、ボスの姿は人型では無い──地球で言うところの、犬やオオカミといった種族に近い外見をしている。我々に近い、獣人のような姿を取ることも出来るが、リラックスする時は犬の姿でいる事が多い。

 

 なので、私に先程まであった焦りは、既に無い。ボスがこの姿でいるということは、叱責の類いでは無いからだ。

 

今日(きょう)話してぇのは、魔法少女についてだ」

 

 しかし、ボスの雰囲気は真剣そのものだ。グリーンの瞳は細められ、私を射貫いている。思わず生唾を飲んだ。

 

「魔法少女──良いな

 

 ボスの言葉に、私は静かに頷いた。ボスならばわかってくれると思っていた──

 

「良いよな・・・・・・」

 

「ああ──良い・・・・・・」

 

 多くは語らず、私たちは『良い』とだけ口にして頷き合う。(はた)から見れば異様な光景が展開されていた。

 ボスは私と同じように『ボス』としか呼ばれず、本来の名前を知る者はごく少数だ。だからこそ、私と通ずる部分があったのだろう。新たな同志を得た私のテンションはうなぎ登りだ。

 

「ただの娯楽品だと侮っていたが──少女たちのひたむきさ、真っ直ぐな心、どれも私らが忘れちまったモンだ。見ていて心が洗われるよ」

 

「私も最初はそうだった。あの少女たち──マギアカリーナへの対策のために見ただけだった。

 だが、気付けばのめり込んでいた・・・・・・」

 

「ああ、わかるぜ。女の子たちが努力してる姿ってのは、いつ見ても良いモンだ。その上、どの娘も可愛い。なんだ、無敵か? 魔法少女がこの世で一番(つえ)ぇのか?

 

「あながち間違ってはいない」

 

 現に我々もマギアカリーナに手こずっているし・・・・・・といった現実的な話題は、この場では口に出さない虚しくなるだけだからな。

 

「最近はマギアカリーナの映像を見ながら仕事して、休憩時間はお前に勧められたアニメを見てるよ。心なしか、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)が上がった気がする

 

「それは何よりだ」

 

 早くも地球の言葉を使いこなしているボス。流石だ。

 

「しかし、お前も良いポジションに収まったな。あの振る舞いなら、魔法少女の味方っぽくも見えるだろ。中々やるじゃねぇか」

 

 ボスは鋭い犬歯*1を見せながら笑い、視線を送ってくる。私の顔は、さぞ得意げになっていることだろう。

 

「運が良かっただけだ。・・・・・・まぁ、正直おいしい立ち位置だとは思っている

 

「っかァー、良いなぁ現場に出れて! 私はまだ映像越しにしかマギアカリーナを見れて無いんだぞ!

 私だって戦いに出れば、いくらでもあの娘らと仲良くなれるんだけどな!」

 

「出れば良いじゃないか。その姿ならバレないだろう?」

 

「・・・・・・アリだな。今度やるか」

 

 無論、これは冗談だ。組織のボスが態々戦闘に出るだなんて無謀も良いところだし、組織に何かあったときに連絡が取れないと、いらぬ混乱が生まれてしまうからだ。・・・・・・冗談、だよな?

 

 そうして話し続けていると、私たちの話題はマギアカリーナから組織のメンバーたちの事へと移っていく。

 

「ブダーンは良くやってくれてるな。ちゃんと毎回毎回やられてるし、ほどよく善戦してる。今度ボーナスでもやりてぇくらいだ*2

 

「ああ。こうもテンプレートに沿った序盤の敵キャラムーヴをされると、もはや感動してくる」

 

「あの三下感は中々出せるモンじゃねぇ。レインめ、良い部下を捕まえてきたな」

 

「反面、セニオはマギアカリーナを本気で倒そうとしている様子だ。我々の目的は魔法少女の活躍を特等席で見ることだと言うのに*3

 

「全くだ。もし怪我でもさせたらどう責任取るつもりなんだか*4

 

 そうして、私たちの魔法少女トークは、三時間にも及ぶこととなった。正直これでも語り足りないくらいなので、またどこかで話せる機会を作りたいものだ。

 

 

「そうだ、ボス。今度『プリティキュアーズ』の劇場版を見に行かないか? ちょうどオールスターズの新作が出るんだ」

 

「構わねぇが・・・・・・オールスターってアレだろ、今までの全部キャラが出てくるんだろ? まだ少ししか見れて無いんだよな・・・・・・」

 

「問題ない。ざっと400時間程度だ*5

 

「そうか。なら一日40時間くらい見ればすぐだな!」*6

*1
文字通り犬の歯。

*2
職権乱用

*3
コイツだけの目的である

*4
お前もか

*5
問題しかない発言

*6
問題しかない発言




黒騎士
しれっとボスに魔法少女アニメを布教していた。他の幹部には渡すような仲じゃないため、組織内ではボスにしかしていない。

ボス
人狼みたいな生態。黒騎士とは仲が良い。ちなみに女性。
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