悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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ノリと勢いで書いてる弊害が出ている実感がすごいある。
でもネタはるんだ・・・沢山・・・


お茶会

 私は、悪の組織の幹部『黒騎士』である──がしかし、今日は休日だ。オンとオフは切り替えるタイプである私は、組織のことを頭から放り出し、私服で街へと繰り出す。

 

 休日はゆっくり過ごすのが私のポリシーではあるが──今日は卵の特売日だ。逃す手は無い。

 エコバッグを手に、私は近所のスーパーへと向かった。

 

 ──そこまでは良かったのだが。

 

『ゆすら、このまえのひと!』

 

「わ、また会いましたね、お兄さん!」

 

「久しぶりだな、お嬢さん」

 

 妖精のようなファンシーな生き物を連れた少女──妖精はユスラと呼んでいたか。私の観察眼と勘が正しければ、彼女は恐らくマギアカリーナのリーダーにして中心的存在──マギアマゼンタ。思わず私の心拍数が上昇し、口角が緩みそうになるが、必死にポーカーフェイスで誤魔化す。

 

「あ、あの! この後、お時間ってありますか!」

 

「・・・・・・? 今日(とく)に予定は無いな」

 

 どういった意図なのかはわからないが、取り敢えず答えておく。まさか一度会っただけの相手をどこかに誘う、なんて事は無いだろうし、彼女はどういうつもりなのだろうか。

 

「その、良かったら・・・・・・お茶しませんか!?」

 

「是非ご一緒させてもらおう」

 

 私は何か考えるよりも先に頷いていた。これまでの人生で最も力強い肯定だっただろう。

 

「あ、でも、そのエコバッグ・・・・・・ごめんなさい、お買い物に行くところだったんですよね」

 

全く問題ない。買い物よりも、君と過ごせる時間の方が貴重だ」

 

 まさか、魔法少女とお茶できるとは・・・・・・! 自分でも少々オタクが前に出すぎた発言をしたと自覚しているが、まさか顔を真っ赤にされてしまうとは。共感性羞恥でも与えてしまったか。

 

「そ、そうですか・・・・・・」

 

『ゆすら、かおまっか』

 

「ふぁーたん、からかわないで・・・・・・」

 

 顔を手で覆いながら小声で妖精──ふぁーたんと呼んでいたな──に言う彼女だが、私の高性能な耳はその発言をキャッチしている。こういうの、良いよね・・・・・・。妖精の存在を隠しつつも会話はする魔法少女特有の優しさをまさか(じか)に見られるとは。感動の余り涙を流しそうになるが、気合いで(こら)える。

 

「えっと、それじゃあ・・・・・・い、行きましょう!」

 

「ああ」

 

 かくして、私の魔法少女アニメを見るくらいしか予定のない休日は、望外の幸運に恵まれて華やかなものとなった。

 

 

 彼女の案内に従って訪れたのは、木造の外見が美しい喫茶店だ。アニメで良く見るやつ・・・・・・! 私のテンションは静かにうなぎ登り、このまま天井を貫いていけそうな程だ。

 

 彼女の対面になるように座ると、ユスラは思い出したかのように声を上げた。

 

「あの! 私、真仲(まなか)桜桃(ゆすら)って言います!」

 

「そうか。良い名前だな」

 

 マナカ・・・・・・真ん中か。実に女児アニメ的なわかりやすい名前でとても良い。

 

「えっと、お兄さんの事はなんて呼べば・・・・・・?」

 

「私か。私は『黒騎──」

 

 普段通りに名乗ろうとして、気づく。彼女たちは『黒騎士』という呼び名を知っているし、そもそも地球人の名前として黒騎士はおかしい。

 

「もとい、黒木だ。好きに呼んでくれ」

 

「じゃあ、黒木さん、ですね!」

 

 私の名前を知ったからか、嬉しそうに笑うユスラ。眩しすぎる・・・・・・心が浄化されるようだ。

 ニコニコとしていた彼女だったが、何かに思い当たると、私に視線を向けてくる。

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

 じっと、私のことを見つめるユスラ。態度は露骨でスパイとしては減点だが、魔法少女的には満点だ。ニッコリと笑顔を返すと、彼女は顔を赤くしてしまった。見つめていたのがバレて恥ずかしいのだろうか。

 

 恐らく、前回の戦いで私と『黒騎士』の声が似ていることから、私に疑いをかけた──といったところか。しかし確証もないし見知らぬ人を疑うのも気が引けるから、取り敢えずどんな人なのか知りたい──そんなところだろう。数多(あまた)の魔法少女アニメを見てきた私にかかれば、この程度の分析、造作もない。

 

 注文を済ませると、ユスラは改めて私に向き直る。

 

「えっと、黒木さんは、普段なにをしてるんですか?」

 

「仕事だ。休日はアニメを見ている事が多いな」

 

「お仕事・・・・・・」

 

「ああ。・・・・・・私が働いているのが意外か?」

 

 あまりに下手な話題に、思わず意地悪したくなった私は、少し彼女をからかってみる。すると彼女は慌てて「い、いえ! そうじゃなくて!」と両手をブンブン振った。

 

「その、黒木さんがどんなお仕事をしてるのか、想像できなくって・・・・・・」

 

「そうか? 普通の仕事だが」

 

 普通の悪の組織だ。*1 特に変な幹部や構成員が居る訳でもないし・・・・・・普通だろう。*2

 

「そ、そうなんですね・・・・・・。

 あ、じゃあ見てるアニメっていうのは、」

 

「最近は『プリティキュアーズ』を見ている。長く愛されているだけあって、見ていて飽きないさ。シリーズごとの特色なんかも比べてみると楽しいし。映画もまたド迫力で圧倒されるな。

 その他だと、ああそれこそ『レディ・ガール』も見ているぞ。コンセプトがやや奇を(てら)っていて面白いし、むしろそれがあの作品の長所にもなっている。それから──」*3

 

 そこまで語って、私はユスラが目を丸くして呆然としているのに気付いた。ふぁーたんもまた『ぽかーん・・・・・・』と口に出している。

 

「すまない。熱くなりすぎた」

 

「い、いえいえいえ! すごい伝わって来ました、魔法少女が好きなこと!」

 

『すごいはやくち・・・・・・』

 

 そう言ってユスラは(ほが)らかに笑うが、その笑みに苦笑が(にじ)んでいる事に気付かない私ではない。しまったな。オタクを前に出し過ぎた。

 

「次は、君の話を聞かせてくれないか?

 私ばかりが話しても、つまらないだろう」

 

 ユスラは「そんなことは・・・・・・」と言ってくれたが、私が聞く姿勢に入ったのを感じ取ったのか、少し照れながらも口を開く。

 

「それこそ私も普通、ですよ。普通の中学生です。平日は学校に行って、友達がいて、好きなアニメがあって・・・・・・」

 

「そうか。素晴らしいな、君の言う『普通』は」

 

 純粋に、そう思う。それを普通と思えるのがどれだけ素晴らしいことか。私は満面の笑みで頷いた。私のそんな様子に、ユスラは首を傾げるばかりだ。

 

「えーっと・・・・・・?」

 

「君がそれだけ日常を大事に思ってる、ということだ。そうだろう?」

 

『そうなの! ゆすらのにちじょう、だいじ!』

 

「それは・・・・・・そうかもしれません」

 

 ヨシ、何とかニヤけたのを誤魔化せたな!*4 気を取り直すように、私はコーヒーを飲み干す。

 

「さて。名残惜しいが、そろそろ私は帰るとしよう」

 

 心底後ろ髪を引かれるが、これ以上妖精(ふぁーたん)の側に居ると、私の正体が露見しかねない。私自身、かなり感情の動きがあったからな。もしマギアカリーナという存在が私の推察通りなら、私がこの星の存在で無いことがバレかねない。

 

「あ、お会計・・・・・・」

 

「気にするな。こういう時は素直に(おご)られるのが礼儀だ」

 

 地球の文化として、それが合っているかは知らないが。(なか)ばでまかせのようなものだ。

 

 そうして私は、会計を済ませてユスラと別れ──完全に彼女の視界から消えた後で、スキップしながら帰路につくのだった。

*1
普通とは。

*2
おまいう。

*3
ものすごい早口

*4
台無し




黒騎士
この後、ボスに「魔法少女とお茶してきた」とメッセージを入れたら、「なにそれ裏山」と三秒もせず返ってきた。
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