悪の組織の幹部だけど、魔法少女のオタクやってます【本編完結】   作:高々鷹々

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魔法少女の血はなに色だ

 私は、地球侵略を企む悪の組織の幹部であり──魔法少女『マギアカリーナ』たちの敵である。

 

 そんな私は、現在マギアカリーナと戦闘を繰り広げていた。理由は一つ、以前同様に気になることが出来たのだ。

 

 ──魔法少女って、流血アリなんだろうか*1

 

 私のこれまで視聴してきたアニメや漫画においては、『モノによる』としか言い様がない部分。だがしかし、気になるものは気になる。他にも、重傷による魔法少女の途中退場があり得るのか、魔法少女は死亡するのか等、一度気になり出すとあらゆる事柄が気になるが──流血の有無で判別できると見て良いだろう。*2

 

 そのため私は、ブダーンの繰り出したコワガーレとの戦闘を乗り越えたマギアカリーナの前に姿を見せたのだ。尚、ブダーンは既に撤退している。

 

 だって、血に汚れて戦う魔法少女も見たいじゃん! 可憐な衣装を汚しながらも折れない姿、見たいじゃん!!

 

「アナタ、また私たちがコワガーレと戦った後に・・・・・・!」

 

「卑怯とは言うまいな」

 

 ステッキから魔法の刃で斬りかかってくるシアンに応戦しつつ、私は答える。

 

 私としても、彼女たちを傷つけるのは本意ではない。だが、探究心は止められないんだ・・・・・・!

 

「そこです!」

 

「甘いな」

 

 魔法の弾丸を難なく回避し、反撃として飛ぶ斬撃を放つ。無論、ギリギリ怪我をするかな? しないかな? くらいの威力だ。しかし、防御に()けたイエローは必死な表情で防御魔法を展開する。

 

 魔法少女は、基本的に怪我をしない。多くの創作においてもそうだし、マギアカリーナもそうだ。無論、視聴者の年齢層に寄るのだろうが、これまで彼女たちと戦う中で、不思議なくらいに彼女たちが血を流すことは無かった。*3 それこそ、何かの力が働いているんじゃないかと疑うくらいに。*4

 

 いや、『不思議な力』も何も、魔法の力で肌を守っている可能性は大いにあるのだが。

 

「なら、これは!」

 

「威力不足だ。私の防御を突破するには足りない」

 

「そんなっ!」

 

 炎の魔法をマントで打ち消し、剣を振るって距離を作る。

 

 そもそも、彼女たちのスカートの下を見るのにあんなに苦労したのも、もしや魔法で防いでいたからなのでは?*5 そうか、そう考えると辻褄(つじつま)が合う・・・・・・!

 

「くぅっ!」

 

「イエロー!」

 

 しかし、これだけ戦ってもまだ血を流さないとは・・・・・・どういうことだ!? 私は魔法少女の血は見たいが、魔法少女を傷つけたい訳では無いのに!*6

 

 ステッキを構える彼女たちは、所々に(すす)けたような黒い汚れこそあるものの、外傷はまるで無い。おかしいな、直接刃を当てていないとは言え、飛ぶ斬撃は何度か当たっているはずなのだが。

 

 しかし、これ以上こちらからの攻撃を強めては、彼女たちに重傷を与えかねない。どうしたものかと構えを解かないままで考える私に、ふとマゼンタが口を開いた。

 

「ねぇ! 貴方はどうして悪の組織に居るの!?」

 

 ・・・・・・え? ・・・・・・何でだっけ? 

 

「マゼンタ!?」

 

「今も、この前も! 貴方が本気を出せば、私たちなんてすぐ倒せるのに、貴方は手加減して私たちの力を引き出そうとしてるんだよね。どうして!?」

 

 いや誤解ですけど!? 私にそんなつもりは無いし、勘違いだ。しかし、そんなこと言えるはずもなく、私は黙るしかない。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

「どうして、そんな貴方が悪の組織なんかに入っているの!?」

 

「マゼンタちゃん・・・・・・」

 

 え、私はどうすれば良いんだ? この誤解をどうにかしようにも、この戦いは組織も見ている。ボスも絶賛鑑賞中だろう。(すなわ)ち、私にはどうしようも無いのだが・・・・・・。

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 考え込む私から何を感じ取ったのか、マギアマゼンタは私を見る顔を歪ませ、「・・・・・・そっか」と一人納得する。お願いだから勝手に納得しないで欲しい。

 

「何か、事情があるんだよね。なら──」

 

 そう言ってステッキを下ろすマゼンタ。だが、納得したのは彼女だけだ。

 

「ハァッ!」

 

「フン」

 

 突っ込んできたシアンを、剣でいなす。シアンは難なく着地し、私に刃を向けていた。

 

「マゼンタ、アナタが何を感じたのか分からないけど──敵に(なさ)けをかけて、不意打ちされたらどうするつもり!」

 

 あくまでマギアシアンは私を敵として見ているらしい。マゼンタが心配なのだろう。思わず頬がニヤけるのを感じる。

 

 なんだか変な空気感になってきたので、また適当なことを言って煙に巻こう。

 

「そうだ。それで良い」

 

「ッ、本当に、調子が狂うわね・・・・・・

 ともかく! 私はアナタのことを敵としか思わない! 覚悟しなさい!」

 

 そう言って再び突撃してくる彼女。私はその攻撃を受け止め、意味深な言葉と共に立ち去るつもりだったのだが──ふと、視線の中をあるモノが動く。

 

 それは、コワガーレとの戦闘によって崩れかけていた建物の一部だ。このまま崩れ落ちれば、シアンの身体に激突するだろう。

 

「・・・・・・!」

 

 マギアカリーナが、流血したり、死亡したりするタイプの魔法少女かはわからない。だから──

 

「シアン!」

「シアンちゃん、危ないです!」

 

「え・・・・・・──」

 

 私は、落下してきた瓦礫とマギアシアンの間に割り込み、(はじ)く。この程度、彼女たちには何とも無いかも知れない。もしかしたら、怪我をしても重体にはならず、次に会えばケロッとしているかもしれない。

 

 だが、そうではない可能性もある。怪我をするかもしれないし、入院して暫く戦えないかもしれない。そうなってしまっては困る。彼女たちは私の推しなのだから。

 

「・・・・・・興冷めだな。ここまでにしよう」

 

 それは、ある意味では本心だった。魔法少女の流血がどうとか、馬鹿らしくなったのだ。いずれ分かることだ、今すぐ確かめなくても良い気がしてきた。スカートの下? だからアレは急ぎの案件だっただろう。

 

「あ、待って!」

 

 待たない。

 

 私は身を(ひるが)し、転移によって彼女たちの前から去った。

*1
狂人の思考

*2
アニメ脳

*3
偶然

*4
思い込み

*5
勘違い

*6
支離滅裂な思考




黒騎士
別に、助けたくて無意識に身体が動いた、とかではない。
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