クレタ島の雷光   作:ここあ(♂)

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基本的にアステリオスくんには優しくするつもりです。
アステリオスくんはバーサかわいい。はっきりわかんだね。



それではどうぞ。


第二話

アステリオスが生まれてから数年の時日がたった。

父ミノス王からアステリオスと名付けられた牛の角を持つ子供はその出生から親族からは怪物扱いされた。

アステリオスに恐怖を感じているミノス王は彼とはほとんど会わず、部屋にはあまり出ないように命じ、常に仮面をつけさせることを義務づけ、己の息子とは扱わずに怪物として育て続けた。

しかし、民衆からはゼウスの化身、<ミノス王の牡牛>ミノタウロスと崇められて毎日クレタ島で採れるオリーブや海産物が捧げられていた。

 

家族には化け物と扱われ、民衆から化身と扱われ、人として扱われることのない日々。

その中で唯一アステリオスとのことを気にかけている人物がいた。ダイダロスである。

アステリオスの誕生に大きく関わっており、母であるパシパエーを死なせた罪と後悔の象徴たるアステリオスだがそんなアステリオスをダイダロスは自分の子供同然に扱った。

家族というものを知らないアステリオスはダイダロスを父のように感じ懐いていった。

 

しかし、数年がたち成長するとアステリオスの怪物としての面が現れた。同い年の子供はおろか大人よりも体格が大きくなり、力もそこいらの大人でも敵わないほどの怪力を持っていた。ある時は宮殿の壁をその怪力でぶち破り、またある時は大人の兵士を片手で持ち上げたりなどしていた。

それを見た兵士たちや側近たちは恐怖を覚え始める。ゼウスの化身ではなく、怪物として。

 

周りの反応を見たミノス王はしたり顔で決意する。かの怪物を島の奥深くに迷宮を立て、幽閉し現人神として未来永劫奉ろうと。

ミノス王はダイダロスに迷宮の祭壇を作らせた。

しかし、迷宮を作る中ダイダロスは考え決意する。かの子供をクレタ島から脱出させ、ミノス王の計画から守りぬくと。

 

後に語られる英雄アステリオスの旅立ちである。

 

 

 

side:ダイダロス

迷宮に連れていかれる前の前日。クノッソス宮殿のアステリオスの部屋。

わしは急いでアステリオスに蝋の翼を取り付けようとしている。

アステリオスを逃がすためだ。

このまま成長してもクレタ島にいてはアステリオスは怪物として扱われてしまう。

ミノス王はこの状況をみてほくそえんでるのだろう。自らの汚点を清算することができると。

だが、それは元々ミノス王が神に白き牡牛を返上することを拒んだことから始まる呪いだ。

 

 

アステリオスは優しい心の持ち主だ。

アステリオスは実夫のミノス王に命じられれば自ら迷宮の中に入っていくだろう。

それでミノス王は自らが犯した海神ポセイドンとの約束を違えた事実を無かったことにするつもりなのだろう。

しかし、これはわしとミノス王の問題なのだ。

この子には何も関係のないことだ。

 

アステリオスに蝋の翼を取り付けが終わり、アステリオスに逃げる準備ができたと思ったその時だった。

ぞろぞろと兵士たちが部屋に突入し始めた。

ニヤニヤしながらミノス王が兵を指揮していて現れた。

おそらくわしがアステリオスをクレタ島から逃がそうとしていることを察知し、それを阻止するために兵を率いてやってきたのだ。

ここでアステリオスを殺して迷宮に放置し、海神ポセイドンとの約束を違えた事実そのものを無かったことにするために。

この兵士の数ではアステリオスでも逃げられない。

間に合わなかったか。

 

 

そしてミノス王は兵に告げた。コロセと。

わしはアステリオスに告げた。逃げろと。

 

一人の兵士の剣がアステリオスの身体に突き刺そうとしたその時だった。

その兵士の腕をつかみ投げ飛ばしたのだ。

そして、アステリオスは大きな雄たけびを上げながら、宮殿の柱をその怪力で引きちぎり片手で振り回し始めたのだ。

苛烈な攻めに兵士たちはなぎ倒され兵士たちがチリ紙のように吹き飛ばされていった。

部屋の中が倒れこんでいる兵士でいっぱいになり、兵士たちはあの子を恐れて武器を振るう手を止めてしまっている。

その光景をみてある兵士は呟いた。「怪物」と。

この空間にいる者たちはみなあの子の動向を注視している。

静寂がアステリオスは窓際の壁に向けて柱をぶん投げた。そして、壁には大きな穴が開いた。外の景色が見え、アステリオスの大きさでも出られる大きな穴が。

 

アステリオスはわしとミノス王を見つめて言った。

「いって…くるね…とうさん。」と。

 

蝋の翼を広げ、アステリオスは飛び立った。わしとミノス王に別れを告げて。

 

なんてことだ。あの子を怪物と呼ばせてしまった。おそらくアステリオスは暴れまわることで自らを怪物として怖がらせようとして、兵士たちを怖気させ、死人を出さないようにしたのだろう。実際見たところ負傷者はいても死人は一人も見当たらなかった。

やはりアステリオスは怪物なんかじゃない。

 

ミノス王はアステリオスを殺せなかったことを悔しがり、撃退された兵たちの中から動けることができる者たちを指揮しアステリオスを逃がしたことを罪に問うためにわしを捕らえるように命じた。おそらくわしは迷宮に幽閉されるだろう。

兵士たちによって連行される中、わしはアステリオスが飛んで行った方角を見つめ心の中でアステリオスの旅路と幸運を神々に願った。空は快晴。曇り空一つない青空であった。

 

 

旅の神ヘルメスよ。ご覧あれ!

このクレタの島からこの広き世界に羽ばたかんとするかのものを導き給え!

そして、亡き王妃パシパエーの父たる太陽神ヘリオスよ。

ご照覧あれ!!

この空からあなたの孫たるかのものを見守り給え!!

 

 

 

 

かくしてアステリオスは故郷のクレタ島を旅立った。実夫と養父に別れを告げて。

悠々しく羽ばたく姿は兄弟であるかの駿馬ペガサスのようであったとされている。




・ダイダロスの翼
 ダイダロスが蝋で作った翼。
 空を飛ぶ事ができるが、太陽に近づきすぎると溶けてしまう。

 自らの出自を超えて羽ばたい欲しいという
 ダイダロスからの祈りが込められている。
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