改めてギリシャ神話について読み返したり、マテリアルやFGOイベントなどで出てくるギリシャ英霊についての解像度を上げるために見返してたりしていたら投稿が遅れてしまいました。
遅れながら、キルケーと初遭遇のお話になります。
それではどうぞ。
旅の神ヘルメスのお導きによりアステリオスはとある島にたどり着く。
その島の名はアイアイエー島。
あの鷹の魔女キルケーの住む島である。
太陽神ヘリオスを父に持ち、アステリオスの母の姉でもあるキルケー。
アステリオスとっては初めて出会う母の親族である。
後の世においてアステリオスと魔女メディアの魔術における師とされる彼女は
島に来る船乗りたちをたちまちピグレットに変えてしまう恐ろしい存在でもある。
そんな悪名高い彼女がいくら身内の子供であるとはいえ同性のメディアまだしも
男性であったアステリオスをなぜピグレットにせず英雄を手ずから育てようとしたのか。
これは後世における謎とされる。
果たしてアステリオスがアイアイエー島に到着した時、キルケーはアステリオスに何があったのか。それは本人たちのみぞ知る。
side:キルケー
ある日のことさ。その日はメディアに魔術を教えていてね。午前の魔術の研鑽を終えて昼食にしようとかなと思ったその時だった。海岸の浜から大きな砂ぼこりがしたんだ。その衝撃で私のかわいいピグレット達が驚いて暴れだして大変だったんだ。私は急いで墜落した場所に行くとそこには気を失っていたアステリオスがいたってわけさ。
いやぁ、船乗りたちがこの島に来るのならならまだしもまさ自力で飛んでくるやつがいるなんてなんて初めての経験だったから驚いたよ。しかも、頭に角が生えた子供だったんだぜ?
見た目からしてまともな出自でもないだろうと思ったよ。迫害でもされたか討伐でもされかけたかってね。まぁ、どこの誰だかわからないけれどどうせ面倒ごとに決まってるし、さっさとピグレットにしてしまおうかと思ってアステリオスを起こそうとしたんだ。
そんな時さ。
頭に妙な痛みが走ったんだ。何事かと思って魔術探知をおこなって辺りを探知したよ。そしたら目の前におぼろげながらも男の人影のようなものが立っていた。
「キルケーに応答を願う。当機は神ヘルメスである。」
それヘルメスからの
続けてヘルメスは私に向けてこう言い放った。
「太陽神ヘルメスの要求によりパシパエーの子アステリオスの保護及び育成を要請。なお、当機の要請はオリュンポスの神々の総意である」
そういってその人影は私の目の前から消えていったのさ。
その時私はさっきまでヘルメスがいた場所に向けて文句を言ったよ。
「冗談だろ。私が妹の子の面倒を見ろっていうのかい?何でそんなことしなくちゃいけないのさ。あのメディアの面倒で手一杯なんだよ、こっちは!!大体なんだい?子育てをしろって。この島は託児所なんかじゃないんだぞ。こちとらまだ婚姻すらしていなのに身内の子供たちの面倒を見ろとか恋人がいない私への当てつけか!?そんなことをして婚期が遅れたらどうしてくれるんだい!?」
そんなことを言いながらも神に任された以上は命令に逆らうと何をされたもんかわかったもんじゃない。私はアステリオスを治療するために膝枕をして魔術で治療を施していたらアステリオスが目を覚ました。
「やあやあ、よく来たねぇ。このアイアイエー島に何の用だい?
ほらこれ、挨拶代わりと言ってはなんだけど、まずはキュケオーンをグイっと一杯どうだい?」
アステリオスは黙ったままこっちを見ていた。数秒の沈黙の後アステリオスは首をかしげながらこちらを見てこう言い放った。
「…お母…さん…?」
衝撃だった。ただひたすら衝撃だった。私は生まれて初めての感覚を全身で感じたのだ。なんだ、何なんだこの感覚は。さっきまでみずぼらく感じていたあの子が、なんということだ。その赤い目はおろか人ならざる角に至るまでいとおしく感じてしまうのだ。
思えば姪のメディアはいつもこちらを困らせるはあんな見た目をして破天荒だわとまるで世話のかかる妹のようだとは思っていた。だけどそれとは違う。ましてやピグレット達のような愛玩とも違う。
そう。
これは母性本能。自らの身を賭しても自分の生きた証をあらゆる障害から守らなくてはならないという母というものがこの世に授かりし究極の包容力。その力を私は自らの身体からわき上げってくるのを確かに感じた。いや、あの子を見るたびに力が強くなっていっている。
これほどの力に抗えるわけがない。なるほど、これが母になると持ち得る力なのか。今の私ならばあの子の為ならばたとえ神であろうとも見事にねじ伏せるほどの力の高鳴りを感じる。
いかんいかん、冷静にならくては。落ち着け。そう、まずは自己紹介だ。
「おっほん、私は鷹の魔女キルケー。君のお母さんのパシパエーのお姉さんさ。君のことは知っているよ、アステリオス。遠いところからわざわざここまで来たんだろう?大変だったねぇ。寂しくはなかったかい?でも大丈夫さ。ここには君を傷つけるようなものはいないさ。安心くれたまえよ。ああ、私のことは好きに読んでくれたまえ。なんならお母さんと呼んでもいいんだぞ?なあに君にとってはここが第二の故郷になり、私が第二の母となることはもはや決定事項さ。だからお母さんと呼んでも何も問題ないよ。それともママと呼びたいのかい?良いねぇ、その方が他人行儀じゃなくなるし、私も親しみを感じて互いの関係により素晴らしさを感じるよ。さあ、遠慮することはない、私を母と思って私に語り掛けてくれたまえ。」
私の言葉を聞いてあの子はそのかわいらしい赤い目をこちらに向けてぴくぴくとおびえながらもその赤い唇を開き、まるで後世に残る偉大な詩を語るかの如くゆっくりとその言の葉を発した。
「…じゃあ……おば…さん……?」
「おばさんって呼ぶんじゃないよ君!!誰だこの子に変な知識を教えた奴は!!」
私が生まれて初めて感じたものは一瞬にして消え去っていった。
キルケー母性拳を習得しかけたが、できなかったキルケーとの初会合でした。
なおこの小説においてはヘルメスは星間距離無線ネットワークシステム(中継機)としています。