001 機体について
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YMF-X10NNPT(Non-Nuclear Power Test type) フリーダム非核動力化試験機
本機は第二次ヤキンデューエ攻防戦において、プラント、地球連合のいずれにも属さない第三勢力『三隻同盟』の主戦力として破格の性能を示したモビルスーツ「ZGMF-X10Aフリーダム」の性能をバッテリー駆動機として再現することを目指した実験機である。
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開発背景
C.E70年に勃発した第1次連合・プラント大戦はC.E72年に締結された条約、通称ユニウス条約によって停戦することとなった。
条約では賠償や領土返還に関する事柄の他に、兵器保有や開発に関する取り決めもなされた。
戦後のザフトでは、このユニウス条約に対応した兵器を開発するために様々な開発案が検討され、その中で有力であったのが後に「セカンドステージシリーズ」と呼ばれる兵器群の開発プランである。
全大戦においてザフトは後にファーストステージシリーズと呼称される「フリーダム」や「ジャスティス」に代表される超高性能機群の開発に成功していたが、その高性能を支える基幹技術であった「NJC(ニュートロンジャマーキャンセラー)」の兵器使用がユニウス条約によって禁止されることとなった。
そのことを受けて、「セカンドステージシリーズ」計画の目標は「ファーストステージ機と同等もしくはこれを上回る性能を有するバッテリー駆動機の開発」となった。この目標の達成のために、まずはバッテリー駆動機において「フリーダム」の性能をどこまで再現することが可能なのかという検証が行われることとなった。
そのデータ収集のために、「フリーダム」の部材を流用して建造されたのが本機である。
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機体概要
「フリーダム」や「ジャスティス」に搭載された武装をバッテリー駆動機で使用することが困難であることは「YFX-600R火器運用試験型ゲイツ改」の運用データで既に判明していた。そのため開発にあたっては、バッテリーシステムの改良が最優先で取り組む事項となった。
機体全体の外観は原型機である「フリーダム」とほぼ同様であり、フェイズシフト装甲も原型機同様に搭載している。なお、セカンドステージ機以降の機体に広く採用されることになるヴァリアブルフェイズシフト装甲については、本機の建造時点では実用化に至っていないため搭載していない。
非核動力化に伴い核エンジンとそのエコシステム一式が撤去された胴体部にはバッテリー駆動機としてのシステムを新規搭載している。
核エンジンの撤去に伴う電源容量低下に対しては、パワーエクステンダー搭載式の新型バッテリーの採用とバッテリーの搭載数、搭載容積を増やすことで対策としている。
パワーエクステンダー搭載式のバッテリーは戦中の混乱期のオーブ連合首長国から流出した技術によって製造されており、以降のザフト機が搭載するバッテリーのスタンダードとなっている。
本機と原型機の外観上の最大の差異となるのは、背部のウィングユニットとサイドスカートである。
原型機では「M100バラエーナプラズマ収束ビーム砲」がバインダー翼内に左右1門ずつ搭載されていたが、本機ではこれを撤去しバッテリーユニットに置き換えている。このバッテリーユニットは「バラエーナ」と同寸法で設計されており、内部に多数のバッテリーパックを搭載している。これにより本機の電源容量は従来のバッテリー機に比べて大幅に増加している。
原型機の大きな特徴であった大口径ビーム砲を失うことになったため、その代替として左右腰部に装備されていた「MMI-M15クスフィアスレール砲」搭載ユニットを試製のビーム砲ユニットに交換している。このユニットは核動力を使わずに同等の大出力を確保するために元の「バラエーナ」よりも大型化しており、武装としての取り回しは悪化しているが実験機である本機においては大きな問題とはされなかった。
このユニットは後に「ZGMF-X23Sセイバー」に搭載される「M100アムフォルタス プラズマ収束ビーム砲」の原型ユニットとなり、大出力ビーム砲を機体両脇にレイアウトして運用するアイデアの元にもなった。
ビーム砲に換装された左右腰部ユニットについては、実弾兵器の検証のため電磁砲タイプのものも用意された。また、マルチロックシステムの検証時には「フリーダム」と同等の砲門数を確保するために、背部メインブースターの左右側面にアームユニットを増設し、そこに接続した電磁砲ユニットを原型機で「バラエーナ」を展開していた位置に展開する形で装備することもあった。
ビームサーベルについてはサイドスカートのユニットが変更されたため固定兵装からは除かれた。使用データを収集する際は腕部装甲に臨時でマウントユニットが設けられた。
ビームライフルは専用のものは開発されなかったが、新規開発の試製ビームライフルを複数種運用した実績を持つ。新型バッテリーと大型の追加バッテリーによる出力の余裕からビームライフルに限らず、ユニウス条約の締結以降に開発された携行兵装の多くが本機で試験運用されることになった。
シールドについては基本的に原型機と同型のものを携行したが、試験の目的上シールドの携行が重要でない場合は装備しないことが多かった。
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搭乗者
本機の試験運用に当たっての最大の問題は搭乗者の選定であった。
本機の運用を行うテストパイロットについては、開発チームは当初、ザフトのトップエース、イザーク・ジュール氏の配属を要請した。同氏は前大戦において「フリーダム」の正規パイロットとなる予定であったこともあり、パイロット適正的にも最適であると考えての要請だった。
また、同氏は大戦中の戦争犯罪について恩赦が下された直後でもあり、配属部隊が決まっていない状態であった。そのこともありこの配属要請は希望通り受理されるものと開発チームは想定していた。
しかし、ここでプラント最高評議会から「待った」がかかった。
前評議会議長のパトリック・ザラ氏の死亡後、プラント国内では同氏に敗戦の責任を問う世論が強く残っており、評議会においても同氏が戦時中に虐殺行為を意図していたことが問題視され、同氏が筆頭を務めていた「ザラ派」に属する議員は排斥される状況に立たされていた。
そうした情勢下において、本機の開発に悪く影響したのがイザーク氏の母エザリア・ジュール氏の存在であった。
エザリア氏は前大戦中は最高評議会議員を務め、主戦派であった「ザラ派」の中心人物でもあったが、第二次ヤキンデューエ攻防戦の最中、アイリーン・カナーバら「クライン派」の起こしたクーデターにより失脚。戦後は先述のとおり国内からも敗戦の責を問われるなど求心力を失っていた。
そのため新体制のザフトの象徴となるモビルスーツ開発計画に「旧ザラ派が関与した」という印象が付くのを嫌った当時の評議会は、エザリア氏を母に持つイザーク氏が計画に関与することを認めなかった。
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開発への影響
イザーク氏の代わりにテストパイロットとして配属されたのは、ヤキン・ドゥーエ攻防戦では主としてプラント防衛に当たり、問題となった大量破壊兵器「ジェネシス」の防衛には参加していなかったモビルスーツ部隊のメンバーであった。
開発チームとしては、単機運用でありながら多様な戦局において圧倒的なパフォーマンスを発揮した「フリーダム」の再現を目指すには、一人の優秀なパイロットによる検証が望ましいと考えていた。
そのため、配属パイロットの変更は試験スケジュール全体に大きな変更を及ぼすことになり、パイロット個々人に合わせたセットアップが都度必要になった。
開発チームにとっては不測の事態であった搭乗者変更であったが、これは結果的に「セカンドステージ」計画本体に少なくない影響をもたらした。すなわちマルチロール性能ではなく特化性能重視への転換である。
「フリーダム」はあらゆる戦闘距離で多彩な搭載火器を適切に使い分け、格闘戦においても無類のパフォーマンスを誇ったが、これは搭乗パイロットの資質によるところが大きかった。
その最たる例が機動性と運動性を重視した「ハイマットモード」と砲撃火力と射撃安定性を重視した「フルバーストモード」という二つの運用モードを高速で切り替えるどころか二つを組み合わせた運用さえ可能とし、原型機を高速移動する超火力の機動兵器せしめた点である。
マルチロックオンシステムでの射撃は本来であれば、味方を巻き込まないような「適格な射線の確保」、射撃中には自機の足が止まるため、射撃中に敵機から反撃射を受けない「ポジション取り」、この双方の条件を満たす必要があり、これを作戦中に幾度も使用して戦場を制圧することは開発時には想定していない使用法であった。
パイロットチームもこの運用を再現することは出来ず、シミュレーションですら射撃形態への移行中に被弾し射撃機会を失う、射撃が命中しなかった敵機から反撃をくらうといったような事態が多発した。
ある程度の攻撃はフェイズシフト装甲で防御出来るとしても、体勢を崩されることで射撃の命中率が大きく下がることは問題とされ、加えて、ザフト、地球連合の両軍においてモビルスーツの携行火器はビーム兵器への置き換えが進んでおり、フェイズシフト装甲の防御力も絶対視出来ないことからこの問題への対処方法が模索された。
結論として行き着いたのは「機能の分担」であった。
元々「セカンドステージシリーズ」計画では、「ファーストステージ機と同等もしくは上回る」性能の獲得を目標としていたが、この検証結果によりザフト兵器開発部はこの方針を改め、次期主力機開発における指針を「マルチロールに高性能を発揮すること」よりも「投入する戦域において最大限性能を発揮すること」に重点をおいて進めることになった。
この方針転換は「セカンドステージシリーズ」計画においてコンセプトプランとして挙げられていた「カオス」、「アビス」、「ガイア」、「インパルス」、「セイバー」らの開発計画の採用を後押しすることになった。
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運用
原型機の部材の多くを流用したことにより本機の建造は順調に進み、C.E72年の5月には機体は組み上がっていた。そこから新規開発された部材の搭載が進み同年7月には検証運用が開始された。本機によるデータ取得は順調に進み、同年内には全ての試験項目の検証を終え、同年半ばからプロジェクトが本格始動していた「セカンドステージシリーズ」各機の開発計画へと役目を受け渡す形で本機の当初の目的での運用は終了した。テストパイロットチームもこの時点で解散している。
その後は、プラント本国の兵器開発部で新型火器の射撃試験などに使用されていたが、「ZGMF-1000ザクウォーリア」などの新世代機が本格的に運用され始める頃になるとその役目も譲り、本国倉庫で保管されることとなった。
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その後
第2次連合・プラント大戦の終結後、プラント、オーブ、大西洋連邦が共同で出資して設立された世界平和監視機構コンパスでは、プラントとオーブが共同でモビルスーツ開発を行った。そのひとつである「STTS-909ライジングフリーダム」の開発に際して、プラント側からは本機の開発・運用データが提供された。
SEED FREEDOMでは核動力か否かはあまり重要で無い感じでしたね。どちらかというと高出力を支えるための冷却系の方が機体性能を左右しているように感じました。バッテリー機であっても時間制限はこそあれ、サードステージ機並の出力が出るようになっているとかだとロマンがありますね(疑似太陽炉チックで)。ブラックナイト機は単独で宇宙に進出してたっぽいシーンがあったので流石に核動力かなとは思いましたが。