僕と先輩の恋ラスト   作:牧葉

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美術室と僕と先輩と

僕が高校に入ってすぐ、こんな噂を聞いた。

とても可愛く、勉強も運動も出来る文武両道の二年の先輩がいる。名前は兎希(うさき)恋石(こいし)。小柄で可愛いその姿に惚れ、告白する人は後を絶えない、と。

 

 「なぁ唯月(いつき)ー、こんな噂知ってるかー?」

 

そう言ってきたのは、中学からの友人、三瀧(みたき)桐谷(きりや)だった。

 

「知ってるよ。どうせ二年の先輩の話だろ。色んな人に言われて聞き飽きてるところだよ。」

 

と、少し気だるめな声で返事をする。

 

「まっ(桐谷)、さすがに知ってるよな、一年でもう告ってるやつも居るらしいし。」

 

桐谷は言葉を続ける。

 

「じ(桐谷)ゃあこれは知ってるか?先輩が告白を断る理由!」

 

 

そう。先輩はその多くの告白を全て断っているのだ。

 

「告白を断る理由ぅ?」

 

「どうせタイプじゃないとか他の学校に彼氏がいるとか、そんなんだろ?」

 

「いや(桐谷)、俺も最初はそんなんだろうなと思ってたんだけど、違うっぽい。この前告ったやつに聞いてみたんだよ。」

 

「『趣(桐谷)味に時間をかけたいから、ごめんなさい』って言われたってさ」

 

「なんだそれ、そんなの断るための方便だろ」

 

「まぁ(桐谷)、だよなぁ~」

 

「お前も先輩に惹かれてんの?」

 

と、少し揶揄ってる風に言ってみる。

 

「んな(桐谷)訳ねぇだろ!俺には立派な彼女が居るんだから!」

 

「まぁそうだよな笑」

 

桐谷は小学生の時からの幼馴染で、中一の頃から付き合っている皆水(みなみず)(かえで)という彼女がいる。楓は僕とも仲が良く、高校が変わった今でも、よく三人で遊びに行っている。

 

「唯月(桐谷)こそ、先輩、気になったりしないのか?」

 

と質問を投げかけられる。が、

 

「興味ないよ、強いて言うなら、そんな言われるほどの人なのかなーくらい」

 

そう返答すると桐谷は「そっかー」と、何故か残念そうな声を漏らす。

 

「お前(桐谷)、可愛いものとかは好きなくせに、女の子には全く興味示さねーもんなー。……もっと人と関わった見たらどうだ?絵ばっか描いてないで…」

 

「悪かったなコミュ障陰キャで」

 

 僕は夜野(やの)唯月(いつき)、今年、この青海(あおみ)高等学校に入学した一年生だ。桐谷とは中学からの友達でよく一緒にいる。僕は普段、趣味で絵を描いて過ごしているためか、桐谷や家族以外と話したりすることが少なかなってしまい、年が経つに連れ、周りに対する興味も無くなっていった。そうして、恋愛よりも趣味という、今の僕ができた。

 

 時間は経ち、放課後になった。

 

 「じゃ(桐谷)あ唯月ー、また明日ー!」

 

「またなー!」

 

今日もいつも通り学校が終わり、桐谷は先に帰っていく。僕は帰らず、美術室に行く。今日の美術の時間に鉛筆を忘れたからだ。美術室に入って僕がいつも座っている席へ視線を移すと、そこには僕の肩くらいの身長の女の子がいた。

 

「これ(???)、君の?」

 

『これ』とは、おそらく手に持っている僕の鉛筆のことだろう。

 

「はい、僕のです。」

 

彼女は赤のリボンを着けていたので、二年だということはすぐに分かった。

 

「ありがとうございます」

 

鉛筆を受け取り、軽くお辞儀をしてから振り返って美術室を出ようとする。すると、鉛筆を持っていた先輩が口を開いた。

 

「君、(???)絵を描くの…好き?」

 

と、質問される。このまま帰れると思っていたので、少し驚きつつその質問に返答する。

 

「まぁ、少しは……」

 

「ふー(???)ん。」

 

「鉛筆、ありがとうございました」

 

「あっ(???)、うん」

 

またお辞儀をし、そのまま美術室を出ようとすると

 

「…ね(???)ぇ」

 

声を掛けられた。少し驚きつつパッと振り返る。

 

「君…(???)私に絵、教えてくれたり…しない?」

 

「は???」

 

何を言ってるんだこの人は?急に何で?

 

「君、(???)今『何で』とか思ったでしょ?」

 

その先輩はそう言ってグイッと顔を近付けてきた。

 

「私、(???)絵を描きたいの、キャラクターイラスト」

 

「調べ(???)るだけじゃ、あんまり上手くいかなくてさ、…描ける人に教えて欲しいなって」

 

無表情で、淡々と、絵を教えて欲しい理由を説明してくる。

 

「君、(???)明らかに引いてるでしょ?」

 

「……引いてませんよ」

 

嘘だ。全然引いてる。

 

「顔に(???)出てるよ、面倒臭いタイプだって」

 

「まぁ(???)確かに、急にこんな事お願いするのはやばい人かもだけど」

 

心でも読んでるのか??もしくはそんなに顔に出てたか……??

 

「それ(???)で?明日、ここに来てくれるの?」

 

「……これで来ないって言ったらどうしますか?」

 

「来る(???)まで何時間でも何日でもここ(美術室)で待つ。」

 

間違いなくヤバい人じゃん。拒否させる気ないだろこの質問…。

 

「………」

 

「……(???)…」

 

「……わかりましたよ………来れば良いんでしょ…来れば……」

 

「明日の何時、ここに来たら良いんですか?」

 

と、明日来る時間を聞く。

 

「放課(???)後すぐで」

 

放課後すぐ、大体今と同じくらいの時間だ。

 

「分かりました。最後に、先輩の名前、教えて貰っていいですか?」

 

「いい(恋石)よ。私は二年の兎希(うさき)恋石(こいし)、君は?」

 

兎希恋石!この人だったのか……。確かに背は小さいし顔も整ってるが、……話してみればただの変人な気が………。そんなことを思いつつ、自分の名前を言う。

 

「僕は一年の夜野唯月です。」

 

「夜野(恋石)君、だね」

 

「じゃ(恋石)あ夜野君、明日、お願いね?」

 

「分かりました……」

 

そんなことから始まった。僕と先輩の、交わることがなかった二人の恋が。

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