僕が高校に入ってすぐ、こんな噂を聞いた。
とても可愛く、勉強も運動も出来る文武両道の二年の先輩がいる。名前は
「なぁ
そう言ってきたのは、中学からの友人、
「知ってるよ。どうせ二年の先輩の話だろ。色んな人に言われて聞き飽きてるところだよ。」
と、少し気だるめな声で返事をする。
桐谷は言葉を続ける。
そう。先輩はその多くの告白を全て断っているのだ。
「告白を断る理由ぅ?」
「どうせタイプじゃないとか他の学校に彼氏がいるとか、そんなんだろ?」
「なんだそれ、そんなの断るための方便だろ」
「お前も先輩に惹かれてんの?」
と、少し揶揄ってる風に言ってみる。
「まぁそうだよな笑」
桐谷は小学生の時からの幼馴染で、中一の頃から付き合っている
と質問を投げかけられる。が、
「興味ないよ、強いて言うなら、そんな言われるほどの人なのかなーくらい」
そう返答すると桐谷は「そっかー」と、何故か残念そうな声を漏らす。
「悪かったなコミュ障陰キャで」
僕は
時間は経ち、放課後になった。
「またなー!」
今日もいつも通り学校が終わり、桐谷は先に帰っていく。僕は帰らず、美術室に行く。今日の美術の時間に鉛筆を忘れたからだ。美術室に入って僕がいつも座っている席へ視線を移すと、そこには僕の肩くらいの身長の女の子がいた。
『これ』とは、おそらく手に持っている僕の鉛筆のことだろう。
「はい、僕のです。」
彼女は赤のリボンを着けていたので、二年だということはすぐに分かった。
「ありがとうございます」
鉛筆を受け取り、軽くお辞儀をしてから振り返って美術室を出ようとする。すると、鉛筆を持っていた先輩が口を開いた。
と、質問される。このまま帰れると思っていたので、少し驚きつつその質問に返答する。
「まぁ、少しは……」
「鉛筆、ありがとうございました」
またお辞儀をし、そのまま美術室を出ようとすると
声を掛けられた。少し驚きつつパッと振り返る。
「は???」
何を言ってるんだこの人は?急に何で?
その先輩はそう言ってグイッと顔を近付けてきた。
無表情で、淡々と、絵を教えて欲しい理由を説明してくる。
「……引いてませんよ」
嘘だ。全然引いてる。
心でも読んでるのか??もしくはそんなに顔に出てたか……??
「……これで来ないって言ったらどうしますか?」
間違いなくヤバい人じゃん。拒否させる気ないだろこの質問…。
「………」
「……わかりましたよ………来れば良いんでしょ…来れば……」
「明日の何時、ここに来たら良いんですか?」
と、明日来る時間を聞く。
放課後すぐ、大体今と同じくらいの時間だ。
「分かりました。最後に、先輩の名前、教えて貰っていいですか?」
兎希恋石!この人だったのか……。確かに背は小さいし顔も整ってるが、……話してみればただの変人な気が………。そんなことを思いつつ、自分の名前を言う。
「僕は一年の夜野唯月です。」
「分かりました……」
そんなことから始まった。僕と先輩の、交わることがなかった二人の恋が。