その人は突然現れた。
傑にとって災害との遭遇だったと言ってもいい。地震のように前触れなく(実際にはあるが)、嵐のようにやって来て、聞きたいことを聞き去っていくその奔放さは、まさに噂通りであり、その身に宿したナイスなバディと強さもまた、噂通り──いや、噂以上だった。
その女性の名は──九十九 由基といった。
「君が夏油くん?どんな女がタイプかな?」
「──九十九 由基!!」
(仕事をしないと有名な特級術師!?なぜ高専に??)
「え!?私!!??──いやぁ〜照れるな〜〜」
「自分はたくさん食べる娘が好きです!!」
九十九の話を聞いていなかった傑。エヘヘ〜──と勘違いして照れる九十九。それらのやりとりに違和感を持たず、聞かれた質問に答えた灰原。──九十九の登場から約1分。既に場は混沌としていた。
「それで、何の用なんですか」
「え〜そんなの決まってるじゃないか〜、君の術式を見せてもらいに来たんだよ」
言わせんな恥ずかしい!みたいな、可愛いお姉さんのような態度から一転、研究者兼呪術師のものへと、九十九の纒う空気が変わる。
唐突な空気の変化に傑と灰原は戸惑う──筈もなく受け流す。傑は話を聞いていなかったが故に空気感を察していなかったがため、灰原は持ち前の天然さと特級術師はそういうものだと深く理解するが故、あえてのスルー。
「まあ、正確に言うと術式ではなく史上初めて後天的(・・・)に天与呪縛で縛られた君自身のケースが、私の研究にすっごく必要なんだ」
「へぇ〜九十九さんは研究者でもあるんですね!具体的にどんな研究をしてるんですか!?」
「いい質問だね。灰原くん。では、まず授業をしようか。──呪霊がどうやって生まれるか──」
割愛!!(アニメ・原作でよろ)
「それで、彼には断られちゃった上に死んじゃって……天与呪縛はサンプルも少ないし、研究の方向性を変える必要性があったんだけど、そこで出て来たのが君だ夏油くん」
「……ああ、私のケースを研究すれば人為的に天与呪縛を得ることが可能になるかもしれない。そういうことですか?」
「そうだ。研究が進めば任意の天与呪縛を得る事が可能になるかもしれないし、なんなら天与呪縛で苦しんでる人を治療する一手になるかもしれない」
「おお!!なんだか分からないですけど、なんか凄いですね夏油さん!!」
「いや、そこは分かっときなよ、灰原……」
しかしと、思案する傑。ぶっちゃけ、協力するのはやぶさかではない。弱者生存。弱い立場にある人が生き残るために強くなってもらうというのは、傑の思想的にもマッチしているし、何より……呪霊がいなくなれば仲間が死ぬこともなくなる。しかし、本当にこの人は信頼できるのか?
ニヨニヨと笑うぐうたらな特級術師をみて、傑は訝しんだ。
「大丈夫ですよ!夏油さん!!」
何かを察知したのか、灰原が腕をグッ!として傑を励ます。
「九十九さんはいい人です!俺、人を見る目には自信があるんで、間違い無いです!!」
フン!と灰原は自信満々に傑を後押しする。思わぬ援護射撃にニパ!と笑みを浮かべ、「良いこと言うじゃないか〜!」と灰原にウリウリ〜とちょっかいを掛け、照れを隠す九十九。それを見て、いつの間にか力の入っていた傑の肩から、力が抜けていった。
はぁ〜とため息を吐き、九十九に返事をする。
「いいですよ、研究に協力します」
「え!本当!?じゃあ、早速ポケモン……いや、ピカチュウを見せてくれないかな!!私、ポケモン初代からやってて一度ピカチュウと会ってみたかったんだ!」
「え、ええ……わかりました。ゆけ!ピカチュウ!!」
九十九のあまりの剣幕に押され、ピカチュウいや、生贄を差し出す。
「ピカ?」
ピカチュウは目の前に迫る緩んだ顔の女性を見て思い出していた。週に一度は出会うトラウマ(硝子)の腕に囚われた恐怖を。今自身に迫る彼女(九十九)と同じ表情で迫って来て、己がぐったりとしても尚、解放してくれることの無かった絶望(硝子)を。そして、ピカチュウは知っていた。こうした顔をした女性から相棒(傑)が助けてくれることは無いということを、なんなら自身の保身のために我が身を差し出したことまで、ピカチュウにはマルッとお見通しであった。
瞬間!!ピカチュウは走り出していた!!!
己の身は己が守らねばならない。そう、なぜなら──世界は残酷だから。
しかし、現実は非常である。
「──ピーカーチュウゥゥゥゥ!!!」
「ピッ!?ピカァァァ!!??」
ピカチュウは知らなかった。特級呪術師からは逃げられないことを。
「ピカァ……」
九十九の腕の中にすっぽりと納まったピカチュウは一縷の望みをかけて、相棒を見つめる。
──ぷい。
「ピカ!?」
ガーン!!と音が聞こえそうなほどの失意にピカチュウが陥っているなか、ピカチュウの意思が介在することなく、話が決まっていく。
「よし、じゃあ夏油くん。ピカチュウは借りてくよ」
「え、ええ、どうぞ……」
「ピッ…ピッ……ピィカァァァァァァ!!!!!」
九十九の腕に抱えられ、連れ去られていくピカチュウ。傑と灰原が無意識にとっていたのは、敬礼の姿だった。涙は流さなかったが、哀悼の念があった。念を捧げずにはいられなかった。
ピカチュウが最後にあげた叫び。それは、自身を売った相棒への怒号かこれから自分に起きる事柄への嘆きか。それは、相棒である傑にも分からない。ただ一つ分かることは、なんか凄いことをされるだろうということだけだった。
ピカチュウの真意。それはピカチュウのみぞ知るところであった。
次回「怒りの相棒対決!!ピカチュウvs傑!!!」
決闘(デュエル)スタンバイ!!
???
「灰原!七海!!無事か!?返事をしろ!!!」
「傑!!今すぐ二人を連れて離脱しろ。ここは俺一人で問題ない!二人を硝子のところへ!!」
「──!わかった、油断するなよ!」
「ハッ!!誰に言ってんだか──って言って前にやられたな。少しは真面目にやるか」
To be continue……
Youtubeで見た「どんな女がタイプかな?」→「九十九由基!!」のネタがやりたかっただけの話です笑。