ある日。
桐生悟は生徒会室ではなく、別の場所へと向かっていた。
その場所とは……………秀知院の屋上だった。
「お待たせ。待ったか?」
「いえ。大丈夫ですよ」
悟は、屋上に居た1人の女性に話しかける。
その人物は、金髪のサイドテールの女性だった。
「それにしても、呼び出すなんて、何か話があるのか?早坂」
「まあ、その通りです」
悟はそう話しかけると、その女性はそう言う。
彼女は、早坂愛。
四宮かぐやの近侍でもある人物だ。
2人は、高校一年生の頃に知り合ったのだ。
知り合った経緯は、その頃に遡る。
「………………桐生悟。彼がどうしたのですか?」
「ええ。早坂には、彼に接触してもらおうと思って」
「………………え?」
早坂は、悟の情報をかぐやから渡されて、そう聞くと、かぐやはそう言う。
それを聞いた早坂は、かぐやに理由を聞く。
「どうしてですか?彼の身辺調査なら、かぐや様が生徒会に入った際に行いましたが。特に何の変哲もないただの平民としか」
「いい、早坂。これは会長を堕とす為の作戦なのよ!」
「…………はぁ」
早坂はそんな風にかぐやに聞くと、かぐやはそう言う。
早坂が話を続ける様に促すと、かぐやは話し始める。
「会長はちっとも私に告白してこないから、まずは周りから攻めようって話よ!」
「……………それでしたら、書記ちゃんでも宜しいのでは?」
「分かってないわね。藤原さんは正直、掻き乱される気しかしないのよ。その点、彼はあまり掻き乱す訳でも無いし、会長とは入学の時からかなり行動を共にしているわ」
「……………なるほど。それは一理ありますね」
かぐやはそんな風に言う。
早坂は藤原千花にもそうするべきではと言うが、かぐやはそう言う。
悟は白銀とはよく行動を共にしており、その点ではまさにその通りだと、早坂は分かった。
早坂はかぐやとは長い付き合いであり、無理難題を放り投げてくるのも分かっている。
その為、早坂はため息を吐いて、口を開く。
「……………かしこまりました。少々お時間をいただきます」
「頼んだわよ!」
早坂がそう言うと、かぐやはそう言う。
その翌日、悟が単独行動をしている中、早坂は接触してくる。
「やっほ〜!君が桐生悟君だよね?」
「ん?」
早坂はギャルモードの状態で、悟と接触する。
校内での早坂は、ギャルとして通っているのだ。
悟は振り返ると、話しかける。
「……………どちら様で?」
「私?私は早坂愛っていうの!実はぁ、桐生君の事が気になってて〜」
悟がそう話しかけると、早坂はそう言う。
早坂がギャルの口調で話す中、悟は口を開く。
「………………えっと、何かの罰ゲーム?」
「ちょっと、何言ってるのか分かんないし〜。ウケる〜!」
「いや……………俺、生徒会に所属してるけど、仲のいい純院の人なんてほぼ居ないし、なんかわざとらしいから、ギャル口調で俺に話しかけろとかそんな感じの罰ゲームなのかなって」
「っ!?」
悟はそう呟くと、早坂はそう言う。
すると、悟の言葉に早坂は驚く。
悟は、早坂の演技を見抜いたのだ。
その事は、早坂も想定外であった。
早坂が驚いたのを見たのか、悟は口を開く。
「あ、いや……………傷つけたなら謝るよ」
悟はそんな風に言う。
すると、早坂は口を開く。
「……………君に何が分かるの?」
「ん?」
「人は演じていないと愛してもらえない。弱さも醜さも、演技で包んで隠さなければ愛されない。赤ん坊だって本能で分かっている事です。ありのままの自分が愛されるなんて絶対ない。愛されるために、嘘をつくのが人間だから」
早坂はギャル口調をやめ、そんな風に言う。
それを聞いた悟は。
「………………それは」
「君は見せられるの?背伸びも虚勢もなく、弱さを全て隠さない、本当の桐生悟を」
悟が何かを言おうとした瞬間、早坂はそう言う。
悟はそれを聞いて悟った。
早坂愛という人間が、そんな風に生きていたのだと。
それを聞いた悟は。
「………………そうだな。俺はアンタの事はいまいち分からない。どうして、そんな風に思う様になってしまったのか」
「……………そうだよね」
「でも、その演技は、いずれ限界が来るのは分かる。素の自分なんて、そう簡単に抑えきれないし、ストレスだって溜まるんじゃ無いか?」
悟はそう言う。
早坂がそう呟くと同時に、悟はそんな風に語る。
「……………じゃあ、どうしろって言うの。演じなければ愛されないし、演じ続けたらいずれ限界を迎える。そんな時、私はどうしたら……………」
「……………俺はアンタじゃないから、その問いにどんな風に答えたら良い最適解になるのかは分からない。でも、この世界は広いからな。素の自分を見せたって、愛してくれる人は居ると思うよ」
早坂はそんな風に思い詰める。
悟はそんな風に語る。
早坂が考える中、悟は口を開く。
「……………まあ、俺はそんな風に偉そうに言える立場じゃないけど、相談くらいなら乗るよ」
「えっ?」
「うちの生徒会の会長は、悩める生徒を放っておかない主義でね。俺もその理念に答えたいからな。まあ、気が向いたらでいいから」
悟はそんな風に語る。
早坂が反応する中、悟はそう言って、そのまま去っていった。
早坂は感じた。
(……………変わった人。でも……………何だか気持ちが軽くなった気がする)
早坂はそんな風に思っていた。
その後、早坂は悟に身分を明かした。
自分が四宮かぐやの近侍である事、この事は周囲には内緒である事を。
そうして、2人は友人関係となった。
そして、今は。
「へぇ……………そんな事があったのか」
「本当だよ!全く、かぐや様はもう少し私を大事にして欲しいよ」
悟は、早坂の愚痴を聞いていた。
話の内容は、基本的にかぐやの無理難題に関してである。
中には、白銀にスマホを買わせた際の話も入っていて、悟はかぐやが誘導していた事を理解した。
そんな風に愚痴は続いていった。
悟は、特に何も言わずに早坂の愚痴を聞き続けていた。
しばらくすると。
「あぁ、ごめんなさい。かぐや様がお帰りになるので、もう大丈夫です」
「分かった」
早坂のスマホに連絡が入り、早坂と悟はそう言う。
早坂が帰ろうとすると、早坂は振り返り、悟に話しかける。
「……………桐生君」
「うん?」
「ありがとうね。愚痴に付き合ってくれて」
「気にすんなって」
早坂は悟に礼を言い、悟はそう言う。
そうして、2人は帰路に着いたのだった。
ちなみに、生徒会室では、かぐやが白銀に対して、20の質問を行なって、合格となった。
本日の勝敗 早坂の勝利
今回はここまでです。
今回は、悟と早坂の話です。
2人の関係は、友達という感じですね。
そこから果たして、どうなっていくのか。
次回は、猫耳の話になる予定です。
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